3-3 ここは僕の部屋だ
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
ミチは石器時代やRPGのダンジョンを歩き、長老やイケメン剣士と出会い、別れ、空腹を満たし、自分の部屋に帰った。
そしてドアを開けたら、今度はドアの向こうから来た少年がミチの部屋に入り、そしてドアを閉めてしまった。
僕も少年も互い黙ったまま時間が流れる。いやな空気だ。
じっと身構えながら、少年の反応を待つこと数分。
少年はまだ悩んでいる。
しびれをきらした僕は、少年を無視してドアの探索を続行することにした。
窓から離れドアに近寄る。
いつの間にか少年がドアに触ったようで、ドアは閉まっていた。
ドアに手をかけ、おそるおそる開く。
今度は、どこかの路地裏のようなところに繋がった。
コンクリートのビルの壁がドアのすぐ目の前にあり、少し薄暗い。
ドアから顔を出しあたりを見回すと、路地裏を抜けたところにたくさんの人が往来していた。
「ここは、現代……?」
路地裏から見ただけではこの世界のどこか別の場所なのか、現代風の異世界なのか、判別がつかなかった。
部屋から出るために体育館シューズを履く。
服装がパジャマだが、少年が部屋に居るので着替えられない。これは妥協しよう。
そこで僕はふと重大なことに気づいた。
――僕の部屋に、見ず知らずの男の子を放置していいのか?
あの少年は無視すると決めたものの、少年を部屋に放置して異世界探索というのはさすがに嫌だ。
僕は部屋のドアを出たり入ったりしながら、どうしようか考える。
この世界がどんな世界か自分で調べたい。
でも部屋から離れるわけにはいかない……。あぁ、もう!
悩んでいると、少年がいつの間にかドアの近くまで来ていた。
そして、ドアに手をかけてようとしていた。
「あっ! こら!」
僕は急いで少年をつきとばしドアから離した。
この少年、僕を異世界に締め出そうとしたぞ!?
「なにすんだババァ!」
「なにすんだはこっちのセリフだ! 僕を異世界に締め出そうとしただろ!」
「はぁ? なに言ってんだ?」
「いまドアを閉めようとしてたじゃん! 閉めたらどうなるか、想像できるよね」
「なに勘違いしてんだブサイク。ちょっと触っただけだろ。自意識過剰かよ」
あぁもう! いちいち口の悪いガキだ。
「じゃあ、君がドアの外を見てきてよ」
「それ、お前が気になってるだけだろ。お前が見てこいよ。このドアはオレが見張っといてやる」
「ここは僕の部屋だ! 僕の言うことを聞け!」
「お前がオレを部屋に連れ込んだんだぞ。お前の言うことに従う義理は無ぇよ、このドブス誘拐犯」
「君が勝手に入ってきて君が勝手にドアを閉じたんでしょうが!」
「はぁ……。犯罪者はそうやってすぐに自分の犯罪行為を正当化するけど、異世界でもその摂理は同じなんだなぁ」
大きなため息を吐きながら、少年はやれやれといった風に言った。
――ああ言えばこう言う! このクソガキ!
このガキに対する怒りは最高潮に達し、おもわずガキの胸ぐらをつかみ可能な限り低い声でいった。
「僕の部屋から、出ろ」
「言い負かされたら暴力か?」
「出てけ!」
「はいはい、本当はこの汚い汚い部屋から出ていきたい気分だったんだよ。ホラ、その異世界を見てきてやるから手を放せよ」
手を放すべきかどうかしばらく悩んだあと、僕は手を放した。
少年は僕が掴んだところを手でパッパとはらい、悠々とドアを通り異世界へと出ていった。
「感情的になってドアを閉めるなよ。このドアは、オレが元の世界に帰るための糸口なんだからな」
「閉めない。それは約束する」
「……頼むぜ」
そう言うと少年はニコッと屈託のない笑顔を見せてから、ドアから離れ正体不明の都会へ去っていった。
突然の爽やかスマイルに僕は少しドキッとしてしまった。
クソガキと思っていたけど、可愛いところもあるじゃん。




