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3-2 ガキのくせに生意気だ

   ~前話までのあらすじ~

 ある日、女子高生『飛鳥和(あすかわ)深智(みち)』の部屋のドアが異世界につながった。

 ミチは石器時代やRPGのダンジョンを歩き、長老やイケメン剣士と出会い、別れ、空腹を満たし、自分の部屋に帰った。

 そしてドアを開けたら、今度はドアの向こうから来た少年がミチの部屋に入り、そしてドアを閉めてしまった。

「はああっっっ!!?? なんてことを!!」


 僕はつい叫んでしまった。

 この少年……この異世界から来てしまった少年はドアを閉めてしまった。

 つまり、この少年はもう元の世界に帰れないってことだ。

 僕の声に驚きながら、少年はイラッとした顔で僕に向かって怒鳴りだした。


「何だよテメェ。大声出してうるせーぞ」


「何だじゃないよ! キミ、なんてことをしてくれたんだ」


「はぁ? オレは何もやってねぇし。てかココどこだよ。オレの家に何をした」


「僕は何もしていない。キミが勝手に僕の部屋に入って来たんだ」


「ワケわかんね、なに言ってんだオマエ。キモチわるっ」


 そう言って少年はその場で回れ右してドアをガラッと開けた。

 そのドアの先には赤い空が広がり、魔王が住んでそうな真っ黒な城があった。

 あの"初めてドアが異世界に繋がったときの世界"だ!


「はぁ? なんだこれ、なにが起きてんだ?」


「あ! 待って! 閉めないで!」


 僕は慌ててそう言ったが、少年はそれを聞かずドアを閉めてしまった。

 駆け寄ってすぐにドアを開け直したが、魔王の城ではなくどこかの広大な花畑に繋がった。

 せっかくあの魔王城にまた繋がったのに、この少年はなんてことをしてくれたんだ!


「閉めるなって言ったのに、なんで閉めたの!」


「知らねぇよ、意味不明な事してないで、オレを家に返せ!」


「そんなの無理! キミがドアを閉めたせいだからね!」


「話が通じねぇな、ブサイクババァ。キモい服着やがって、吐き気するからその臭ぇ口を開けんな」


「なっ……誰がブサイクだこのガキ! これでも僕は顔は良い方って言われてんだぞ!」


「プッ、お世辞を真に受けるタイプかよ」


「なんだとぉ!」


  ガギンッ


 少年と口喧嘩していると、窓の方から金属に金属をぶつけるような音がした。

 突然の音に驚き、僕と少年は同時に窓の方を見る。

 窓の外にはハシゴがかかっていた。

 窓に近寄ってハシゴの下を見てみると、父さんがハシゴを登っているところだった。


「ミチ。大丈夫か? 父さんが今からなんとかするから、待ってなさい」


 どうやら父さんは窓を外から開ける作戦に出たらしい。

 ドアを外から開けても無理だったし、どうせ窓もドアと同じだと思うけれど……。

 そう考えているうちに父さんはガシガシとハシゴを昇り、窓の外から僕の部屋を覗き手を振った。

 父さんも脳天気だなぁ……と思っていると、急に父さんの顔が険しくなった。


「ミチ! な、な、なんだ! そ、その男は!」


 何を思ったか、父さんは変な声を出しながら勢いよく窓を開けようとした。


  バッシャァァ――


 父さんが窓を開けた途端、目の前で不思議な現象が起きた。

 僕の部屋の窓は開いていないが、窓の向こう側に向かって大量の水が流れ出したのだ。

 つまり、父さんが窓を開けた結果、窓の向こう側が異世界の水中に繋がったのだ。


「う、わわ、わぁぁぁ……」


 父さんは手をジタバタさせて水の勢いに抵抗したが、結局水に圧されて父さんはハシゴとともに倒れていった。


「父さん! 大丈夫!?」


 僕は急いで窓に駆け寄り、ガラッと窓を開けた。

 すると窓の外はまた真っ暗な工場に繋がった。

 嫌な油の臭いが部屋に流れ込んでくる。


「あぁもう!」


 僕はイラッとしながら窓を閉め、ガラス越しに外を見た。

 窓の外側に流れる水は徐々に弱くなり、次第に外の様子が見えるようになる。

 窓のすぐ下にハシゴが倒れていて、その下に父さんがいた。

 父さんはうまく着地できたらしく、問題なさそうに僕に向かって手を振っている。

 びしょ濡れなうえに頭や腕に小さな魚が噛み付いているが、多分大丈夫だろう。


「おい、ブス。なにが起きてるか説明しろ」


 真横から突然声がしたのでビクッとした。

 いつの間にか、少年が僕の真横で窓の外を見ていた。

 僕は少年と距離をとり身構える。


 少年の顔をまじまじと見る。

 エメラルドグリーンの髪と、同じく緑がかった瞳。

 性格は最悪だが、パッと見は綺麗な顔立ちだ。

 あと5年もすればいい感じのイケメンに育つだろう。


「なぁババァ、人の話を聞いてんのか? 状況を説明しろと言ってる」


「じょ、状況……? ……そこのドアが、異世界につながるようになってて、キミは異世界からここに来た」


「てめぇ、脳みそに綿でも詰まってるのかよ? 異世界なんてあるわけ……」


「じゃあこの状況をどう言ったら納得する? ドアを開けたときに見たでしょ。魔王が居そうな真っ黒な城があったし、ドアを開け直したら花畑になった。全部異世界なんだよ」


 シンと部屋が静まりかえる。

 僕の説明に納得できたのか、生意気な少年はその場に座り込み、何も反論せず押し黙ってしまった。

~あとがき(ネタバレ微含)~


高校生を主人公にすると「親をどう処理するか」が大事になります。親は主人公の上位互換になりかねないので。

特に現代が舞台だと親が事故死しがちですが、今作では設定上「物理的に親が干渉できない」ということになってます。

この設定良いんじゃね?と自画自賛しつつ、偶然そうなっちゃっただけなんですよね……という気分もああります。

ちなみにミチの両親は冒険に出ません。メタ的な事を言うと、母親が冒険に出てしまうと話がグチャって読みにくくなりそうなので、冒険に出ないよう言い聞かせています。

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