2-7 気持ち悪い
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
ミチはRPGのダンジョンを歩き、イケメン主人公剣士ダイチと出会い、ご飯を食べて腹を満たした。
ダイチとモンスター狩りをしていたら強力なゴーレムとのバトルになり、逃げようとするも『逃げられない』となってしまう。
突然表示された『逃げられない』に僕は焦り、つい弓をゴーレムに射ってしまう。
3回射って全ての矢がゴーレムに刺さった。
だが、全く効いていない。ゴーレムは僕に向けて進み続ける。
ダイチの制止も全く効かない。一度ダウンをとったら、しばらくダウンしない仕様みたいだ。
全く止めることもできず、ゴーレムは僕の目と鼻の先まで来てしまった。
ゴーレムは腕を大きく上に振りかぶる。
そして、僕に向けて勢いよく拳を振り落とした。
僕は怖くて目をつぶってしまう。
バギィッ
ゴーレムが何かを殴った音がした。
でも、僕の体は全く痛くない。
おそるおそる目を開くと、目の前にダイチがいた。
ダイチが僕を庇って、ゴーレムのパンチの直撃を食らったのだ。
「大丈夫か? ミチ」
僕はこくんとうなずいた。
ダイチは嬉しそうにニッコリ笑った。
バギィッ バギィッ
ゴーレムは続けて何度もダイチを殴る。
そのたびにダイチが痛そうな顔をするので、僕は恐怖と焦りで居ても立ってもいられなくなってきた。
だが、僕はおかしなことに気づいてしまった。
ダイチのHPが全く減っていないのだ。
それどころか逆に、ゴーレムのHPがいつの間にか75%くらいまで減っている。
――ん……? どういうこと?
イーグルアイを使った後、ダイチがスタン攻撃を1回、僕が弓を3回あてただけだ。
それだけでゴーレムのHPが15%も削れている。
ダイチが僕をかばうような体勢になっていたが、ワキの隙間からゴーレムに向けて弓矢を射った。
すると、ゴーレムのHPゲージが目で見て分かるくらい減った。
――あれ……? このゴーレム硬くない。
あんなにダイチが苦戦していたゴーレムが、僕の弓矢でこんなにダメージを喰らうだろうか?
ダイチとゴーレムの相性が悪くてダメージが通っていなかった?
いや、そんなはずない。長年ダンジョンに住んでいる人間が、モンスターの相性を知らないはずがない。
なら、ダイチは戦っているフリをしていただけで、本当は一撃も与えてなかった?
……なぜ?
「うおぉぉぉぉ! ミチは私が守る!」
いきなりダイチが大声で叫んだ。
それに気圧されたのかゴーレムは後ろに吹き飛び、背中からズズンと床に倒れた。
ダイチは急いでゴーレムの方を向き、剣を縦に構えて呪文をとなえ始めた。
「ウィンドエンチャント付与。バーストリミット解除Lv.MAX。ボディエンタングルメント。ラグランジェエクリプス。フラッシュスプリントZ。シナプシスエクスプロージョン……」
呪文を唱えるたびにダイチの剣が輝き、周囲に突風が吹く。
そしてダイチが縦に一閃。
激しい閃光と爆音とともにゴーレムのHPが一瞬にしてゼロになり、真っ黒になったゴーレムがサラサラと砂のように消え去った。
後には斬撃エフェクトだけが周囲に残り続けていた。
そして、ダイチは僕の方へ振り向き、最高のドヤ顔でこう言った。
「ミチは、私が守る。だから、結婚してくれ」
僕の背筋に、かつてないほどの寒気が走る。
コイツ、『ピンチになった僕を助ける』という事をするために、ゴーレムに苦戦している演技をしながら戦ってたのか!
この戦闘は、『ただの茶番』だったのだ。
——キモい。この男、イケメン補正を打ち消すほどキモい。
ダメだ。もう我慢できない。
このダイチという男に対する嫌悪感がヤバすぎて、やっぱりこんな世界には居られない。
僕はダイチを無視し、反対方向へスタスタと歩き始めた。
「オープン」と言ってマップを開き、歩きながら僕の部屋までのルートを確認する。
すると、いつのまにか僕をついてきていたダイチに、後ろから肩をぐっと掴まれた。
「返事は? 私は強いし顔も性格も良いし、キミとの相性も抜群だと思うんだ。ミチを一生守り続……」
「あぁもう! 鬱陶しい!」
ボコッ
僕はイラッとして、振り向きながら鉄拳をダイチの顔面にくらわせた。
今度はお腹がすいていないので、キレイに決まった。
イケメンとか関係ない。キモいものはキモいのだ。
反動でダイチは後ろによろけ、冷たい石の床にドタっと尻もちをついた。
「な、なにをする! 痛いじゃないか!」
無視無視。
顔も見たくない。
気持ち悪い。
「おーい、どこ行ってんだよ。一人で探索するのは危険だぞ」
ダイチの声がどんどんと後ろに遠ざかる。
さすがに空気を読んだのか、もうダイチは僕を追ってこなかった。
僕は出会ったモンスターを片っ端から倒しながら、自分の部屋まで無事戻り、ドアを閉めた。
~あとがき(ネタバレ微含)~
ここまでで2章となります。
1章・2章でパターンを踏み固めたので、3章からは崩していきましょう。
できるだけ印象が悪くなるように描いたダイチですが、彼の出番はここで終了。
この世界の謎は11章あたりで判明はするものの、彼が名誉挽回するチャンスは残念ながらありません……。
話のテンポとか、早い・普通・遅いでいうとどのくらいでしょうか?
作者としてはちょっと早いから、もうちょっと文をクスッと笑える文を増やしてテンポを遅くしたいと思っているのですが、余計なネタを入れてスベるのは怖いのでテンポが早くなりがちです。
感想に、テンポについてどう思っているか描いていただけると至極恐悦の極みです。




