Weezer『Weezer (Gold Album)』(2026年)
⚫︎再び輝く
Weezer、16枚目のスタジオアルバム『Weezer (Gold Album)』のレビュー。
【収録曲】
1. Say Yes
2. Shine Again
3. Don't Make It Weird
4. We Might As Well Be Strangers (ft. Wednesday)
5. C.E.O.
6. Hoops
7. Nowhere
8. The Show Must Go On
9. Up In The Clouds
10. The LA Sound
本作について触れる前に、唐突に「Weezer マイベストソング10」のコーナーです! 彼らのこれまでの作品をどのように筆者か感じているのか、リスナーとしての問題意識がどこにあるのか、それらを知っていただけるのに良いと思いまして…。
それでは、3位から1位まで感想付きでカウントダウン。そのあとに、10位から1位まで曲目を書きますね。
#Weezerマイベスト10
【3位】Zombie Bastards
『Weezer (Black Album)』('19)
マイベスト上位に本曲を挙げる方はまずいないけど、エモやパワーポップのみならず、こんなにキャッチーでポップな歌ものも作れることを知ってほしい。3枚目のアルバムで終わったバンドではない。
#Weezerマイベスト10
【2位】「Say It Ain’t So」
『Weezer(Blue Album)』('94)
父と継父、そしてアルコールをめぐるシリアスな歌。イントロのギターからして甘やかな苦しみが滲み、強い叙情を誘う。歌い出しのこれほど情感のこもった"Oh yeah"は他では聴けない絶品。
#Weezerマイベスト10
【1位】「Across the Sea」
『Pinkerton』('96)
アメリカの彼らが日本の女子高生ファンへの想いを歌っていて胸熱。日本からアメリカへも、その逆も想いは海を越える。赤裸々に綴られたこの曲を歌い、演奏している意思こそがAcross the Seaという曲の精神を体現している。
【Weezerマイベストソング10】
1位「Across the Sea」『Pinkerton』('96)
2位「Say It Ain’t So」『Weezer(Blue Album)』('94)
3位「Zombie Bastards」『Weezer (Black Album)』('19)
4位「Island In the Sun」『Weezer (Green Album)』('01)
5位「High As a Kite」『Weezer (Black Album)』('19)
6位「Only In Dreams」『Weezer(Blue Album)』('94)
7位「Butterfly」『Pinkerton』('96)
8位「Photograph」『Weezer (Green Album)』('01)
9位「Aloo Gobi」『OK Human』('21)
10位「Beverly Hills」『Make Believe』('05)
このバンドで一番のオリジナリティとアイデンティティである初期からのエモ/パワーポップ路線のみならず、リバース以外のメンバーがソングライティングしたり、メタルに近接したり、ラップを取り入れたり、と思ったらチェンバーポップな作品を作ったり、幅広く音楽的な挑戦を続けてきたWeezer。まったく飽きのこない音楽性の変遷をたどっている。
ポップな歌ものが好きな自分としては、どの路線でもポップなところがすごく嬉しい。Xにおける僕の音楽アカウント界隈では、「OasisはJ-POP」という奇怪な説が流行している。(そもそも、J-POPは日本産のポップスというジャンルなので、UKのOasisがJ-POPであるはずはない。)それに倣って言うのなら、WeezerもJ-POPだ。とことんポップに傾いている。
僕も大好物のRadioheadもグッドメロディ。ウィーザーとは音楽性こそ異なり、より実験的なアプローチが目立つが、どの曲も美麗なメロディを備えているのが魅力なのだ。メロディ原理主義者の僕としては、この2バンドは洋楽グッドメロディバンドの双頭だ。吐息のような声がそのまま美しいメロディになり、音楽になる魔法がここにはある。
最近の活動について触れると、(この感想は見たことがないが)よーよー的には創造性について中興の祖と評価している『Weezer (The Black Album)』('19)と『OK Human』('21)という快作をリリース。その後、メタルに振り切れて僕はあまりピンとこなかった『Van Weezer』('21)を挟んで「春」「夏」「秋」「冬」それぞれの季節を歌った4枚のEP「SZNZ」を順次リリース。ヴィヴァルディ『四季』から着想を受けた、4枚とも個性的な作品だ。
そして本作である。リード曲の3曲である#2「Shine Again」、#4「We Might As Well Be Strangers (ft. Wednesday)」、#5「C.E.O.」を聴いた時点でこのアルバムは傑作になることを予感した。そして、その予感は外れていなかった。個人的に、『Weezer (Black Album)』('19)以来の快作である。エモのムーブメントの火付け役となったFugaziのようにエモく、初期に寄せてノスタルジックな要素もあれば、それだけだはない尊さもあって推せるアルバムです。
#1「Say Yes」。
「Say yes. Like Yoko to John」という歌詞は、ジョン・レノンのリスナー界隈ではよく知られたエピソードである、オノ・ヨーコとジョン・レノンの馴れ初めのきっかけになったヨーコの作品と掛けているのだろう。アルバムがこのような肯定感に満ちた歌で始まるのは、それだけで嬉しい。
(オノ・ヨーコの「YES」は、1966年の作品『天井の絵<イエス・ペインティング>』に込められた、何事も肯定する力強いメッセージ。はしごを登り、虫眼鏡で天井を覗くと「YES」の文字が現れるという作品で、この言葉がジョン・レノンとの出会いにつながったことでも知られている。)
#2「Shine Again」では、Blue Albumに収録されていてもおかしくない、往年のウィーザーのエモが鳴っている! ヘヴィなサウンドだけど、不思議にキャッチー。曲名はGold Albumというアルバムの名称にも由来があるのだろうか。
#3「Don't Make It Weird」は、冒頭の4つ打ちとヘヴィなギターの響きからして、アドレナリンがぽたぽた分泌するジェットコースター楽曲。リスナーの自分も振り回されないように必死なのだが、サビで開けていく景色や、風のようなギターソロに開放感(解放感)を覚えて嬉しくなる。
#4「We Might As Well Be Strangers (ft. Wednesday)」では、リヴァース・クオモとウェンズデイの女性ボーカルであるカーリー・ハーツマンによるヴォーカルの掛け合いが楽しめる。カーリーの歌声は女声としては低音域で新鮮。
#5「C.E.O.」はGreen Album収録曲のようにシンプルでありつつ凝っていて、しなびた残り香のエモがある名曲。イントロ、間奏、アウトロで語りもあって面白い。「昔のような曲を求められる。実験的な音楽も作りたいけど、CEO(最高経営責任者)として現状を見なければどこにも行けない」(大意)という、自虐的な歌詞にCEOという言葉を織り交ぜるあたりにペーソスとユーモアを感じる。
#6「Hoops」。
タイトルは輪っかのことかな? フラフープの「フープ」。「フープを飛ぶ(jump)」というフレーズをサビに持ってくる、リヴァースのあえて外したワードセンスが炸裂している。
#7「Nowhere」。
タメの効いたパトリック・ウィルソンのドラムが素晴らしいね。Apple Musicによるクレジットを見ると、ソングライティングも彼がやっているようだ。
#8「The Show Must Go On」は曲名がQUEENの曲と同じだが、QUEENの曲に悲壮感が漂うのとは違い、Weezerのこの曲はなんとも軽い。このひょうひょうとした軽い感じこそがWeezerであり、これからもその姿勢でショウを続けるという固い意思を感じる。
#9「Up In The Clouds」。
サウンドが簡素だから、歌メロのメロディの良さが際立って聴こえる。そういった点では「Butterfly」『Pinkerton』('96)と近いところもあるだろう。ただ、本曲は終盤に差しかかると重厚なバンドサウンドへと転じ、苛烈なまでにエモーショナルな表情を見せる。そこもまた素晴らしい。
ラストの#10「The LA Sound」。
ミステリー小説で全ての伏線が回収されていくような、掉尾を飾るのにふさわしいドラマチックな曲。24時間テレビで最後に「サライ」がかかるような、温かで熱い余韻がある。
総括。生々しいサウンドとグッドメロディが同居する素晴らしい一枚です。孤独で不器用だけど、「それでも」と奮起するこのフィーリングを伝えたいという、往時と変わらないバンドの熱意が感じられる意欲作。ギターボーカルのリヴァースはいつまでも僕のロックヒーローだし、Weezerはオールタイムで好きなバンドの筆頭です。
Score 9.1/10.0




