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鳥の羽根を触る機会は、そういえばあまりなかったかもしれない。


昔、小学校の授業だったか遊び係の提案だったか忘れたが、山の中を探索したことがあった。


その時に落ちたカラスの羽根を触った以外では鳥の羽根に触れた記憶はない。


そういうアクセサリーとかペンとか興味なかったから、本当に久しぶりに触る気がする。


どの部分を触っていいのか分からず、困った笑顔で固まっていたせいか、少女はゆっくりと羽根をたたんで誘導するように手に頭を擦り付けてから、羽根に手を近づけた。


犬や猫の背を撫でるような感覚で少女の羽根を撫でる。


力を込めず、優しくを心がけて触っていれば、少女がくすくす笑いながら体を震わせた。


その振動が手に伝わってきて、俺もつられて頬を緩める。


柔らかくてフワフワな感触に、触っているのが楽しくなってくるが、あまり触りすぎるのも少女にとって迷惑だろうと思って早々に手を離すことにした。


動物は構いすぎるとダメだと誰かに教わったからだ。


誰だったかは忘れたし、根拠も分からないけど。


少女は離れた手を追いかけるように見てから、満足そうにもう一度ふるふると体を震わせた。


鳥が特別好きなわけではなかったが、少しだけ、いいなと思ってしまった。


「ねえ、くっついてもいい?」


少女はちらっちらっと、俺の表情を確認しながら聞いてくる。


特に断る理由はなかったが、受け入れる理由もなかった。


どないしよう。


あまり難しく考えるのも面倒だったので、片手を差し出すことにした。


「手、くらいなら」


「……ありがと!」


考え込んでいたのが分かったのか、ダメだと言われると思っていたのだろう。


手だけなのに、とても嬉しそうにお礼を言われた。


すぐに、ぎゅっと抱き枕に抱きつくみたいに腕に抱きつかれる。


何だか、そういうオモチャみたいだと思ってしまった。





いつの間にか寝ていたらしく、少女に声をかけられながら揺り起こされた。


着いた時には日が昇っており、窓から差し込む太陽光のせいで頭がずきずきとした。


「よく眠れたんだね、よかった」


ペタペタと体を触りながら、少女が言う。


擽ったくて、その手から逃げようと体が動いた。


「もう大丈夫だね」


にへらっと少女が笑う。


言葉の意味が分からず、疑問を抱いたが、ふと自分の体なのに違和感を覚える。


体の疲れも空腹も、ない。


少女の言葉と態度に、どうしてなくなったのか想像ができた。


それを証明するように、ぐうっと少女のお腹がなる。


吸い込んだと言えばいいのか、少女が持っていったのは確定だろう。


「……ありがと」


お礼を言って頭を撫でれば、少女はふひっと変な笑い声をたてて、ぴょんぴょんと跳ねた。


「よかった、よかった」と何度も繰り返しながら、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと跳ねる。


嬉しかったにしても大袈裟な行動に少しびっくりしたが、同じようににへらっと笑っておいた。


「そうだ! あのね、国についたから、はやく下りよう?」


ぴょんぴょんと跳ねていたのを、ぴたりとやめて少女が俺の手を掴んで引っ張る。


あれもこれも、ところころと変わる行動に仕方ないなと笑みが漏れた。「可愛い」


少女が羽根を持った人だと思えなかったから素直に彼女を可愛がる気持ちが湧き上がってくる。


羽根を持った人ではなく、人の姿をした鳥だと認識してしまえば、あまり身構える気が起きない。


愛玩動物に対する愛情。


彼女に抱いてしまう好意はその理由以外では考えれなかった。


「さあ、さあ、行きましょう」


手を引かれ、外へと飛び出す。


ガラスに遮られていた太陽の光が俺の体にあたる。


まだ、頭は少し痛かった。


「ようこそ! 私たちの国へ」


彼女が俺の前で自慢するように、手を広げながら言う。


彼女の後ろには綺麗に整備された道と、隙間まで測ってきちっと並べられたかのような家や店などの列。


家の形も古民家のように見えたから、テレビなどでよく見かける昔の京都のような町並みに似ているな、と思った。


空気が少し冷たい。


花の匂いや肉や味噌の焼ける匂いが鼻をくすぐる。


道は舗装されている地面ではなく、土が固められている道だった。


歩いている途中、雨が降った後のような柔らかい地面の感触に、つい地面を確認してしまう。


水たまりに足を入れてしまったらしく、泥が靴についていた。


お婆ちゃんの家に遊びに行く時みたいだ。


違う場所なのに、なんだか懐かしくて足が止まりそうになった。

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