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01/30 本文改変
この世界は綺麗で幸せにならないといけないと、幼馴染は笑顔で言うだろう。
綺麗な部分だけを見ながら幼馴染は言うのだ。
この世界は綺麗で幸せなものなのだと、セオドアは言うだろう。
汚れも綺麗な部分も全て愛しながら言うのだろう。
ああ、それはきっと……。
夢を見ていたような気がする。
どんな夢を見ていたのかは忘れてしまったが、いい夢ではなかったことだけは覚えている。
何時間も寝ていたかのように頭がぼーっとして、体がだるい。
ぐさり、と勢いよく刺さった氷の塊を確認したところまでは記憶があった、と思う。
そこまでは、思い出せる。
だけど、ベッドに寝転がりながら開いたはずの胸の部分に手を当ててみる。
穴は開いていない。
呼吸ができている。
心臓が動いている。
生きている。
確かに、あの氷は自分に刺さったはずなのに、どうしてそれがなくなっているのか。
それ自体が夢だったのだろうか。
そんな馬鹿な。
ゆっくりと体を起こして周りを見渡せば、俺から見て右側には、ニコニコと笑っているセオドアと因香が優雅にお茶をしている光景が目に入った。
意味が分からなくて渋い顔をしてしまう。
因香はまだいい。
どうしてセオドアがここにいるのだろうか。
西洋風なティーカップとかではなく茶道の方のお茶なせいか、この部屋に似合っていない。
だけど、二人はそれが当たり前のように優雅にお茶をしている。
その横には押さえつけられているエルフの女とその女を押さえつける知らない男の姿がある。
よく見えれば、耳がある部分が人の耳ではなく犬のような耳があった。
人間ではないらしい。
腕は鋭い爪に肘まで灰色の獣の毛で覆われているが、かろうじて五本指なのが人の手を残しているように思う。
灰色に近い髪に、右目は赤、左目は緑。
上半身は何も纏っていないが、下は黒のズボンに赤い布を腰につけている。
後、俺が貰った物とは少し形が違う黒のブーツのような物を履いていた。
身長は近そうな感じだが筋肉のつき方が違うな、と現実逃避のように思って息を吐いた。
セオドアと因香がどうしてここにいるのか、あの男が何者なのかは考えていても分からないものは分からない。
それなら、確認した方が早いだろう。
考えるのが面倒になったとかではないし、考えることも馬鹿々々しい様子を見て八つ当たりがしたいとかでもない。
断じて、ない。
足をベッドから下ろし、彼らに近づく。
その些細な動作でも痛みを感じないことから、本当に傷口は塞がっているようだ。
治してくれたのだろうか。
きっと、そうだなのだろう。
俺が起きた時から此方を睨んで警戒している男を無視して、セオドアと因香に近づく。
セオドアと因香の傍に近づくとセオドアが顔を上げて、安心したように笑いながら言った。
「おや、漸く起きたのだね。気分はどうだい?」
その表情に違和感を覚えながら何も答えずにセオドアを見る。
顔を顰めてしまうのも仕方のないことだ。
その隣で行儀よくお茶を飲んでいた因香が、苦笑いをしながら此方を見る。
「あまり警戒なさらないでください。貴方を助けるためだけにセオドア様は此方に来ているだけですから」
その言葉に俺は信じられないようなものを見る目で、セオドアを見た。
予想していた言葉だが、どうしてわざわざ来たのだろう。
本当に意味が分からない。
セオドアはその視線を気にした様子もなく、お茶を飲み始めていた。
おい、説明しろ。
「……セオドア様、説明しないと彼が混乱しますよ?」
心の声が通じたのか、因香がその行動に呆れたように息を吐いて言う。
「まあ、聞かれて困るほどのことでもないから、説明しようか」
セオドアは因香の言葉を聞き、少し考えた素振りを見せてからそう言う。
それは芝居がかった動作だった。
俺は何も言わずにセオドアと因香の傍に座る。
周囲は恐ろしいほど静かだった。
すぐ近くで押さえつけられている女の姿を忘れるくらい。




