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01/21 本文改変
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
あいつは駄目だ。
近づいては駄目だ。
触れては駄目だ。
本当にあれがあの子と同じ人なのだろうか。
人の皮を被った違う生物なのではないだろうか。
ガンガンッと頭の中で警報が鳴り響いて、自分が怪我をしているような、自分の体に危険が迫っている気持ちになる。
手が震える。
手だけでなく、体も震えている。
かちかち、と歯がぶつかり合って嫌な音をたてていた。
本当に自分はこいつを殺すことができるのだろうか。
嫌、できなくてはいけない。
だって、それが私の生きている理由なのだから。
神聖な彼らが血を流すことを嫌がるのは、それなりの理由がある。
そんな彼らに代わって、私たちのような混血が穢れを受けとらなくてはいけない。
だって、それが私たちの生きている、生かされている理由。
あのこを、まもるための、りゆう。
にやにや、にこにこ、くすくす、けらけら。
さっきからずっと笑っているあいつを切るためには私が落としたあの剣を拾って切りかかるという手間のかかる動作が必要だ。
そもそも、私が持っている剣では傷をつけることはできなかったはずで、あれ? じゃあ、何で精霊様に傷が。
間違って切ることができるのを持ってきてしまったのだろうか、いや、そんなはずはない。
本当に?
おかしい、おかしい。
何かがおかしい。
そんなことを考えるより、早くあいつを殺さなければ。
何のために?
誰かに中をかき混ぜられているみたいで気持ちが悪い。
殺さなければ、殺さなければ、どうして?
「言うことを聞きなさい、可愛い子」
誰かの声が隣で聞こえたような気がした。
ああ、彼女のために殺さなければいけない。
そう、こんな気持ち悪いもの、彼女のために消さないと。
ああ、ああ、きっとそれが正しい。
あの精霊様がどうして彼を守るのか理解できないがそんな理由で傷つける訳にはいかない。
あいつを守っている精霊様を傷つけることはしたくない。
たった一滴でも精霊様の血を流させてしまったのは自分のミスだが、あいつを殺せば精霊様の傷もなかったことになる。
なるはずだ。
ギュッと手を握り、相手を睨み付けた。
精霊様は穏やかに微笑みを浮かべ、あいつは余裕ぶった笑みを浮かべて此方を見ている。
余裕というよりも、優しく慈愛に満ちているように見えた。
そんなあいつの様子も気持ち悪い。
早く、早く殺してしまわなければ。
本当はこれを使うのは契約に反するが仕方ない。
だって、あの子のためだもの。
「すみません、ブランド様……左手に刻み付けろ、氷結」
その言葉を発すると左手に氷色の蓮が描かれていく。
それは刺青のように肌に刻まれていくのが、痛みはないが分かる。
手に刻まれた蓮の刺青の回りには火傷のような痕が現れるが、それにも痛みはない。
その刺青が浮かんだ左手を空で刀を握るように動かせば、左手の近くの空気がピシピシと音をたてながら凍り、不自然な形の氷の剣が現れる。
その剣を見てもあいつは気にした様子もなく、笑っていて気持ち悪い。
ぐっと少しだけ体勢を前に倒すと精霊様が警戒したように私を見る。
いや、先ほどから精霊様は警戒を解いていないから、その言葉は適切ではないのかもしれない。
そんな精霊様には悪いが、あいつを殺さなければいけない。
左手に現れた剣を切るために使うのではなく、足を前に踏み出し、反動をつけて投げつける。
精霊様は目を見開いて、私が投げつけた剣を防ごうと手を上げるが氷の剣は精霊様をすり抜けてあいつに突き刺さった。
殺せたか。
そう思ってほっと息を吐いて、体から力を抜く。
精霊様とあいつを見る。
精霊様が慌てたように、突き刺さって倒れ込んだあいつに近寄り、手に力を込めて傷を癒す動作をする。
だが、直前に何かに気づいたように息を吐いて笑った。
その笑みの意味が分からなかったが、嫌な予感がする。
無意識に足を後ろに下げて様子を伺う。
突き刺さっているあいつの体は二度と動かないはずなのに、ゆっくりと起き上がって笑う。
「……くふっ、ふひひひ、ひははは、あはは! あはははは」
その目は此方を見ているようで見ていない。
焦点が合わないのが、更に恐怖を煽った。
その目をよく見るとさっきまでの瞳の色とは違うことに気づく。
「目が……何で……」
その瞳は見知ったあの人の深紅色。
忘れたくても忘れられないアカ。
「何で! 嘘だ!」
信じたくて首を横に振って叫ぶように言葉を発するが、あいつは何も言い返さず、ただひたすら笑っている。
「何者なの、お前は」
小さく吐くように呟いて、さっきと同じように左手を動かして氷の剣を作ってあいつを睨む。
あいつは声を出して笑うのを止めて聖母のような優しい笑みを浮かべ、まるで私のことを受けいれるように両手を広げる。
その心臓の近くには、剣が突き刺さった穴が確認できた。
氷の剣は溶けてしまったのが分かるが、血がでないように穴の周りには氷が張っているのに気づいて効果がなかったのではないのだと少しだけ安心する。
確かに、そこまで長持ちするものではないが、こんな短時間で溶けるようなものではない。
「あぁ、本当に気持ち悪い」
あいつのことが、まったく分からなくて苛々する。
それでもあいつは笑みを浮かべていて気持ち悪い。
「本当に死ねばいいのに」
そう呟いて私は剣を構える。
今度こそ、あいつを殺すために。




