つまらない現実
窓の外に見える若葉が風に吹かれ、舞い落ちていく様を横目に黒板を眺める。連ねられていく現社の課題をノートに書き写していく。
キーンコーンカーンコーン。
静かだった教室にチャイムが鳴り響くと、先生は教材を纏めて出て行き、隣の席の男子が勢いよく席から立ち上がった。
「パン買いに行くぞ!」
その一声で、何人かが立ち上がってわらわらと隣の席に集まる。まるで冒険にでも出るみたいに仲間と一緒に購買の方へと走って行った。
前の席の女子は1人で弁当を広げ始める。
その隣では、グループを形成している女子達が机を4卓合わせて、駄弁り始めた。
一番後ろに座る私は独り、ゆっくりと教室を後にする。大盛況の購買で何故かいつも売れ残るピーナツコッペと自販機で買ったコーヒー牛乳を手に、北階段へ。
上がる事を禁止されている屋上に唯一行く事の出来る場所だからか、誰も足を運ばない。切れかけの白熱灯は薄暗い足元を照らすこともしない。
数段上った所で、腰を下ろす。
やっぱり、この空間が校内で一番落ち着く。
現実をおざなりにしていた時期があったせいで、中学時代の友達も消え、高校では友人を作ろうともしなかった。もう5月だ、新しい友人が出来ていないのは私くらいではなかろうか。将来の夢も希望大学もなく、親が望むままに入学した高校なのだから、勉強以外にすることもないのだけれど。
「はぁ」
一息ついてから外包を外す。
小麦色の肌を露出させたコッペを頬張る。こっくりとした甘さと少々の塩気が口の中を占拠した。ふわふわとしたパンと砕かれクリームに混ぜられているピーナッツの食感も相まって、また一口齧る。
いつの間にかピーナツコッペは跡形もなく消えていて、口の中にはピーナツクリームの余韻だけが残っていた。
手元に残った袋を小さな三角形になるように折り畳み、手をつけていなかったコーヒー牛乳をゴクリゴクリと喉を鳴らしながら飲んでいく。甘さが押し流されて、今度は苦みが広がっていった。
ビター、だが牛乳が入っているからか、きつくはなくて。まろやかさを感じていると200ml程度の飲み物はすぐに無くなってしまった。
味気のない昼食を終えて、教室へと戻る。
静かな食事というものは案外早いもので、戻っても10分も経っていなかった。
一席だけ、異空間のようにポツリと空いている机。ここが私の定位置だ。
みんなはまだゆっくりと、談笑しながらお昼を食んでいる。教室に響くのは明るい声。窓から吹き込む風がカーテンを揺らし、私と世界を遮断する。
最後尾はいまだ、透明人間のようだ。
つまらないな、と。顔を埋めて寝たふりをした。




