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碧海のユーフォリア  作者: 炎華 焔
プロローグ
4/11

歌姫

 どこまでも広がる美しい青空と鏡の床が広がるワタシの夢。

 足元の鏡に触れれば、浅草の街並みに似た妖しい雰囲気の都市が現れる。あれから一部も変わる事のない、心の中を映したような二面性のある世界。

 みんなが見る表はキレイで、誰にも見せない裏は複雑で人を寄せ付けない。

 あぁ、こんなだから彼女は来なくなってしまったのかな。見透かされてしまったのかな。ワタシの醜い裏側が伝わってしまったのだろうか。目の奥がじんわりと熱くなる。

「はぁ……」

 泣いちゃダメだ。泣くのは、彼女がまた会ってくれた時まで取っておかないと。

 彼女と会えなくなってから2年近くも経つなんて、時が過ぎるのはなんて早いのだろう。

 ライトアップされたステージ袖、過去を想い続けて観客の中に彼女を探す。


 今日も、居ないんだね……。


 もうワタシのことなんて忘れてしまったかもしれないけれど、まだ待っているよ、灯。

 あの時、伝えたかったことはもう言えないけど。今は別の言葉を貴女に送りたい。『まだ大好きだよ。貴女のこと忘れたことなんてないよ』って。叶わない願いばかりを増やしていく。

「カノン~!」

「歌を聴かせて、カノン!」

「愛してるぞ~歌姫~!」

 1人だった観客はいつの間にか10人、100人と増えていき、今では数万の人がワタシの歌を聴きに夢にやって来る。

 目を瞑って、呼吸を整える。

 ワタシの歌を楽しみにしてくれている人がこんなにもいる。それだけで満足でしょう? そのはずなのに、求めているのだ。最初の観客を。

「早く、会いに来て……灯」

 今や歌姫と呼ばれるワタシの言葉は、流れ始めた音楽によって掻き消されていった。

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