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碧海のユーフォリア  作者: 炎華 焔
2章 水没都市
10/11

過去

 彼と出会ったのはどれくらい前だろうか。

 いつから彼の夢に浸るようになったのだろうか、中学の頃か、それとも高校に上がった頃だったか、もうあやふやだ。

 時期はよく覚えていないが、出会いはよく覚えている。

 あれは、父からギアを返してもらってからずいぶん経ってからだったと思う。


 鹿野朱莉は小学校までは明るく、よく輪の真ん中に居る様な人間だった。だが、中学に入ってから音楽にハマり、人付き合いが減った。その内にユーフォリアクラウドの為に直ぐに家に帰る生活が始まり、そのうちに友人と呼べる人が居なくなった。

 人と接する機会が無くなったからか、徐々に人の視線に恐怖を覚えるようになっていた。

 休日は1人でリサイクルショップやCDショップに足を運ぶか、1日部屋で音楽を聴いているかだった。

 高校でも休日の過ごし方は変わらず、部活にも入らなかった。私の高校生活の殆どは人気のない購買のパンとコーヒー牛乳と教室に居ると聞こえてくるカノンの話題を聞いて、ユーフォリアクラウドに保存しているたった一つの夢で自分を責める事でできていた。

 昔は色んな夢を見ていた。映画で見た世界、想像した世界、冒険譚、数え切れないほど探検した。それなのに、約束を破ってからは、部屋で彼女の名前を四ではない手を繰り返すようになってからは、代わり映えのない夢しか見れなくなっていた。


 壁と床は同じ素材。豪奢なワインレッドのベルベッド生地。手触りがとてもいい、洋館のカーテンみたいな感じとでも言おうか。そして、両サイドの壁には豪華な金縁の絵画が飾られている。

 ここは本当に果てが無い。どこまでも続いているのだ。終わりかと思うと、最初に見た絵画の場所に戻っている。

『ループ』

 オープンキャンパスのイベントで読んだ本みたい。あれは運命の人に会うためのループだったから、まだよかったけれどこちらはどこまでいっても地獄のよう。

 飾られている絵画は、全て横顔。

 目線は全くあわない。それなのに何故か鋭い視線で見られている気がするのだ。気持ちが悪い。

 気分を変えたくて歩いてみても、視線を感じて吐き気に襲われる。等間隔に設置されている壁や床と同じ生地で出来た腰掛けに座ってみるものの、やはり気分は変わらない。

 どうにか、この気持ち悪さから逃げたくて夢を探した。

 見てみたい、入ってみたいと思う夢は中々見つからず、夢を映すウィンドウをスクロールしていく。流れていくものの1つに目を引くものがあった。

 日によって水嵩が変わる水没都市。

 ウィンドウに映る退廃的にも幻想的にも感じられる景色。こんな夢を見るのはどんな人なんだろうか。

 ユーザーネームの欄を見てみる。

 kiki?

 可愛らしい少女のイメージを受け、夢の主に会ってみたい、この夢に入ってみたい、と。

 衝動のまま、【水没都市】にログインした。

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