↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔優等生と天使ギャル ~不器用と狡猾な二人とSNSジャンキーなボク~  作者: 黒船雷光


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/41

3話:プライベート境界崩壊

「……よし、今日は完全リアル・オフライン(現実逃避・自宅待機)だ」


 昨夜の炎上と通知の濁流のせいで、俺は一睡もできないまま朝を迎えていた。


 SNSの炎上に対する最適解を、俺は身をもって知っている。反論も釈明も火に油を注ぐだけだ。

 一番の対策は「何も発信せず、沈静化するまでひたすら放置(ロム)すること」

 だからこそ、今日学校を休むのは逃げではなく、極めて合理的で冷静なリスク回避(リスクマネジメント)のはずだった。


 学校にさえ行かなければ、リアルでの追撃も取り巻きたちの痛い視線もシャットアウトできる。

 親から学校に連絡してもらい、病欠の旨を伝える。

 そのあと、共働きの両親を見送ってベッドに潜り込み、スマホを立ち上げて、別垢に逃避――ひたすら世界情勢についての情報を収集していく。

 普段日中にネットに繋がることがない俺はしばらく無言でその至福を味わっていた。


 ――ズギャン!!


「……ッ!?」


 そろそろお昼か……という時間に1階の玄関から、何かが激しく衝突したような物凄い音が響き渡った。

 泥棒か恐怖体験かとおののく間もなく、バタバタと階段を駆け上がってくる足音が二つ。


 俺がベッドから跳ね起きるより速く、自室のドアが勢いよく蹴破られるように開いた。


「悠(ゆう)っ! 学校休むとかマジで意味かんなくない!?」

 仁王立ちで部屋に踏み込んできたのは、制服姿の黒木(くろき)サキだった。

 手にはなぜか、我が家の予備の玄関鍵(※庭の鉢植えの下に隠してあったやつ)が握られている。

 ……どこからその情報を仕入れたのか考えるだけで恐ろしい。


「一ノ瀬さん。ネットの炎上を沈静化させるための静観……戦略としては理解できますが、現実(リアル)の課題を放置することは許可できません」

 後ろから静かに姿を現したのは天宮莉央(あまみや・りお)だった。

 いつの間にか俺の部屋のハンガーから制服のブレザーを引っ張り出し、逃亡を許さない手つきで俺の膝の上に押し付けてくる。


「え、なんで……? どうやって……?!」


「当たり前じゃん! 悠が休むって連絡が古賀崎(担任)に入ったら、学校の情報に登録されるからね!」


「午後からでも登校していただければ、遅刻扱いで済みます。さあ、着替えてください」


「服脱がせようとしてくんな!! 自分でき着るから一回出てって!!」


 ロム専の防壁(自宅)は、わずか数分で無残にも突破された。


 ◇


 結局、半ば強引に家から引っ張り出され、昼休み中の校門を潜ることになった。


 二人に左右を挟まれながら廊下を歩くだけで、周囲の生徒たちから刺さるような視線が飛んでくる。SNSの炎上火種を抱えたままリアルの渦中に放り出され、俺の精神力は削られっぱなしだ。


 昼休みはほぼ終わりかけている中、屋上に連れ込まれた俺を挟んで、二人が対面で立つ。


 黒木サキの限界値スカートが風ではためく度に際のラインが気になるし、それを凄い視線で睨む天宮の顔も怖い……天気は良いが、気持ちが良いと感じる前に心の中では燃え盛る炎で俺のメンタルは炭になりかけていた。


「でね、悠。さっき莉央とも話してたんだけどさ」

 黒木がどこか開き直ったように、購買の焼きそばパンを頬張りながら口を開く。

(昼飯も食わずに俺の家に突撃してきたのか……)

「確かに悠は一人だし、あたしたち二人から同時に迫られても困るじゃん? いっぺんには無理っしょ」


「ええ。黒木さんの言う通りです」

 天宮が風ではためき顔にかかる髪の毛をかき上げて、淡々と会話を引き継ぐ。


「ですから一ノ瀬さん、提案があります。今日の放課後から『まずはお互いの活動内容を実際に体験していただきます』前半は生徒会業務の見学、後半は文化祭実行委員の準備です。両方の現場をその目で確かめた上で、最終的な判断はあなたに委ねます」


「……は?」


「どう? これなら文句ないでしょ! あたしたちの熱量、どっちが本物か直接見せてあげるから!」


 黒木が不敵に微笑み、天宮もまた譲らない強い瞳で俺を見つめてくる。


 選択権を与えられているようで、実質「どちらも体験しない」という退路は完全に断たれていた。ここで断れば、取り巻きたちの嫉妬はさらに加速し、ネットでも現実でも俺の立場は消滅する。


「……わかりました。従います……」


 どこにも逃げ場がないと悟った俺は、力無く首を縦に振るしかなかった。

 三人が教室に不在という事態を受けて、ひたすら鳴り響くスマホの通知音を聞きながら、俺は今日という長い一日への絶望に包まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。