↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔優等生と天使ギャル ~不器用と狡猾な二人とSNSジャンキーなボク~  作者: 黒船雷光


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/41

21話:昨日の好敵手は今日の恋人

 黒木派代表の志摩瑠璃(しま・るり)と天宮派代表の神原智樹(かんばる・ともき)に勝負を挑まれたオレは、とっさに二人が競う形に主旨変更を提案して難を逃れた。


「瑠璃! あたしたちの『楽しく覚えて点数も取る』効率的勉強法を見せてやりな! 悠、あたしの教え方、すごいでしょ?」


「神原さん、我が家に伝わる伝統と実績に基づいた指導法でねじ伏せなさい。一ノ瀬さん、我が天宮家の知性に頼るのが最も合理的ですわよ?」


 サキと天宮さんは、自派閥の代表を全力でバックアップしつつ、互いにオレへのアピール合戦を繰り広げ始めた。


 こうして、オレを挟んだヒロイン二人の視線劇の横で、志摩(ヤンキー女子)vs神原(ガリ勉男子)の対抗テスト勝負が幕を開けたのだった。


 ◇


 ——数時間後。


 教室内には、当初の刺々しい空気とはまったく異なる、妙な熱気が漂っていた。


「……くっ、志摩さん。この語呂合わせ暗記法、バカバカしいと思っていましたが……視覚と聴覚の双方に強く刺激を与え、記憶の定着率を劇的に引き上げています。まさか、そこまで計算して……!?」


「へっ……当たり前だろ! サキさんのために徹夜で作った特製単語帳だからな! ……ていうかお前、その数学の解説プリント、めちゃくちゃ解りやすいじゃねぇか。あたい、昔から数学だけはサッパリだったのに……」


「志摩さん、公式の丸暗記では応用が利きません。ここは概念の成り立ちから理解した方が理解が早いです。……ほら、僕のノートのここを見てください」


「お、おう……近ぇよ神原……。あ、でも……ホントだ、解かる……!」


 はじめは互いのやり方をバカにし合っていたはずの二人が、いつの間にか一つの机に肩を並べて座っていた。


「志摩さん! 暗記の際はもっと腹から声を出してください!」


「こうか!? 『1603年、江戸幕府爆誕』!!」


「素晴らしいガッツです! その意気ですよ!」


「神原ぁ! お前教えるの上手いな! なんか自信湧いてきたぞ!」


 互いの長所を認め合い、真逆だからこその弱点を補い合う二人。


 いつしか教室全体が彼らの熱量に引っ張られ、黒木派も天宮派も関係なく、互いに教え合う「理想的な合同勉強会」の空間へと変貌を遂げていた。


(……あれ? オレの出る幕、全くな物理的に無くね……?)


 オレとサキ、そして天宮さんの三人は、完全に蚊帳の外でぽかんと二人を見つめていた。


 ◇


「よし、時間だ。二人が解いた予想問題の採点が終わったぞ」

 オレが採点済みの解答用紙を掲げると、志摩と神原が顔を上げた。


 採点結果はなんと、同点。互いに苦手分野を克服し、完璧な満点を叩き出していた。


 勝負の裁定を下そうと口を開掛けたオレだったが、二人の醸し出す雰囲気に言葉を失った。


 志摩は赤くなった顔を背けながら、もじもじと制服の裾を弄っている。


「神原……のおかげで、赤点回避どころか学年上位狙えそうだわ。その……サンキュな」


 神原もどこか気恥ずかしそうに眼鏡のフチを触りながら、優しい笑みを浮かべた。


「いえ……志摩さんの泥臭いガッツには、僕も大きな刺激を受けました。……あの、もし良ければですが。中間考査が終わったら、二人で打ち上げにでも行きませんか? 美味しいカフェを知っているんです」


「ふ、二人で!? ……べ、別に、お前がそこまで言うなら行ってやってもいいけど……!」


「「「……え?」」」

 オレとサキ、そして天宮さんの声が綺麗にハモった。


 いつの間にか成立していた甘酸っぱい空間。赤面するヤンキー女子と、照れくさそうに微笑むガリ勉男子。


「「……は?」」

 サキと天宮さんの声が、地獄の底から響くような低音で重なった。


 いつの間にか成立していた甘い空気。赤面するヤンキー女子と、照れくさそうに微笑むガリ勉男子。

 ついさっきまで悠を賭けた代理戦争の先鋒だったはずの二人が、派閥を完全に無視して青春を謳歌している。


「ち、ちょっと待ってよ瑠璃……! あんた、あたしのために悠と勝負してたんじゃないの!?」

 サキは普段見せない……少なくとも学校では見せないレディース総長の顔が垣間見えて震えているのが分かる。


「なんであたしと悠が全然進展してないのに、あんたが先に良い感じになってんのさーっ!? ズルい! ズルすぎるでしょそれ!!」


「志摩さんのガッツに刺激を受けた……? ふふ、神原さんなかなか面白い見解をお持ちですね……(私という至高の存在を前にして、ずいぶんと視野がお狭いことですわね……?)」

 オレには本音が駄々洩れに見える天宮さんはぴくぴくと眉根を寄せ、目は笑っているが、隠した口元の扇子を骨が折れそうな強さで握りしめていた。


「私が一ノ瀬さんに『理解する時間』を与えている隙に、身内から抜け駆けが出るとは……何の冗談ですの……!?」


『自分たちより先に派閥筆頭の志摩×神原がカップル成立しそう』というまさかの事態。

 二人は自分の立場を忘れ、お互いの配下に対して猛烈なやきもきと焦燥感を爆発させていた。


 オレは躱した矛先が交わった結果が、怒涛のラブコメ的ハッピーエンド(?)に、オレはただただ脱力して天を仰ぐのだった。

 とりあえず、結果オーライ……なのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。