20話:化学反応と、置き去りの当事者
「「オレ(僕)と勝負しろ、一ノ瀬!!」」
志摩瑠璃と神原智樹の威圧的な宣言が、空き教室に鋭く響き渡る。
(やばいやばいやばい! なんでオレが当事者としてリスクを背負わなきゃいけないんだよ!?)
志摩と神原の二人に同時に勝負を挑まれ、パニックになりかけたオレの頭の中にスレッドが立ちあがる。
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【緊急】両派閥の刺客に同時にタイマン勝負挑まれた件【絶体絶命】
1:【熱血のオレ】(赤ネーム:情熱・正面突破担当)
││買われた喧嘩だ、受けて立つしかない!!
││志摩の漢字ドリルも神原の数学問題も全部丸呑みして、オレの意地と知性を見せつけてやれ!!
││男ならここでバチッと勝って、サキと天宮さんに良いところ見せるんだよ!!
│└ 2:【冷静のオレ】(青ネーム:論理・リスク管理担当)
│ │却下だ、バカかお前は。勝ったところで「サキの信者を返り討ちにした」
│ │「天宮派の参謀を論破した」というヘイトが各派閥に残るだけだぞ。
│ │そもそも、オレが勝負の当事者になった時点で
│ │「中立の立場」は完全崩壊する。
│ │どちらかに勝てば、どちらかの敵になる……詰みだ。
│ └ 3:【熱血のオレ】
│ │じゃあ負ければいいのか!?
│ │「僕より点数が低ければ天宮さんの前から消えていただきます」って言われてんだぞ!?
│ └負けたら退場、勝ったら敵だらけ……どうすりゃいいんだよ!!
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4:【中立のオレ】(緑ネーム:オブザーバー・誘導担当)
│落ち着け。相手の土俵(タイマン勝負)で戦おうとするから詰むんだ。
│奴らの真の目的は何だ? オレを倒すことか?
│└ 5:【冷静のオレ】
│ │いや、違うな。志摩の目的は「サキのやり方の正しさ」の証明。
│ │神原の目的は「天宮派の知性の優位性」の証明だ。
│ │オレは単なる「ターゲット」に過ぎない。
│ └ 6:【中立のオレ】
│ │ならば、論点をすり替えろ。
│ │「オレと戦うのではなく、お前たち二人が直接それぞれの派閥のプライドを懸けて対決しろ」
│ │と誘導するんだ。
│ │オレはプレイヤーではなく、その勝負を公平にジャッジする
│ └ 『試験官(司会者)』へスライドする。
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7:【統合されたオレ】(オレの総意)
承認。これならサキと天宮さんも「自派閥の優秀さを示すチャンス」としてこの対決を歓迎し、オレへの追及も一時的に逸らせる。
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コンマ数秒の脳内審議を終えたオレは、冷や汗を拭い、二人の前で不敵な笑みを浮かべて見せたのだった。
「……待て。二人とも、何か勘違いしていないか?」
オレは努めて冷静を装い、メガネの位置をすっと直すような仕草で二人を制した。
「オレと勝負してどうする? お前たちが証明したいのは『黒木派』と『天宮派』、どちらの勉強法が優れているか……だろ? ならば、直接戦うべきはお前たち二人だ。オレはその結果を公平に採点する『試験官』になる」
「「……あっ」」
志摩と神原が同時に手をポンと打った。
「確かに……! あたいが勝てば、サキさんのやり方が正しいって証明できる!」
「フッ、一ノ瀬くんにしては理にかなった提案ですね。僕が勝ち、天宮派の正当性を示してみせましょう」
(よし、まんまと審判の立場へ逃げ切れたぞ……!)
オレが内心でガッツポーズを決めた瞬間、両脇から熱い視線が注がれた。




