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世紀末な後始末  作者: 柊隼凌
第1章 赤の巫女
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#9 雨は天よりの贈り物

あちが蛇に咬まれた日から4日目、危険区内への出発は大事をとって暫く見送りにすると集会で話が決まった。


あちはその集会に顔を出し、皆に深々と頭を下げ万全を期して臨みたいから時間が欲しい事や待たせて皆に迷惑をかけて反省している事などを自分の言葉でしっかりと皆に伝えたらしい。


何かかっこいいなって思った。


師匠と俺は河川敷に来ていた。薪を組み火をつけ火吹き棒で息を吹きかける。しかし何度やっても薪にくべた火が少し元気になるだけで終わった。


『こーゆーのはきっと慌てたり求めるものではなく、自然に任せその時が来るのを待てって事かも知れんの。気を落とす事でもないしお前にはまだまだ他に学ぶ事は沢山ある』


師匠は俺を励まし河川敷など足場が悪い場所での動き方を見せてくれた。


『そう言えば師匠、あちが蛇に咬まれた時に俺が毒を吸い出そうとしたんです。その時に笹岡さんが止めてくれたんですけど、元々笹岡さんが知ってた知識からの事ではなくて、俺の能力(ちから)がそう言ってるって』

『うむ、ワシらの能力(ちから)は未経験の何かが起きた時、何かをしたくなる時とかに脳に聞こえるというか感じるというか、んー、思い出すに近いかのぉ、、』

『なるほど、、けど俺が火走り?でしたっけ?火が前方に向かって燃え上がった時ですら俺は何も感じなかったし、俺自身その火を見て驚いくらいですからね、、』

『ふむ、それよりなにより、、ワシらと決定的に違うのは人の出来ることとは違うこと、、』


そこまで言いかけて翁はハッとする。


『祈祷での回復は人が本来成せる能力(ちから)とは違う、祈祷をするといった行為も未経験では無く元々やっていた事じゃ、回復する能力(ちから)の効果を期待して祈祷した訳ではなく、傷ついた仲間に対しただ見守る事しか出来ず、出来ることといえば神に祈る事しかしてやれんと思って祈りを捧げたら思いのほか回復が早まった事例が重なり、祈祷そのものに回復を強める効果があると認識をしただけじゃ、、』

『師匠の身につけた剣技とは違いますね!』

『うむ、火走りを出したいと思う気持ちが足枷になっているやも知れんな。雲が出てきてるそろそろ戻った方が良さそうじゃ』

『師匠、検証のお付き合いありがとうございました!』


途中すれ違う集落の皆に挨拶しつつ境内に戻る。笹岡さんはあの時仕留めた蛇をしっかり持ち帰っていて血清が牛の血でも出来ないかの研究をしていた。


『みんな本当にすごいや、抜け目ないというかよく気付くというか』

『あとから身につく能力(ちから)の方は身体に衝動が走るからのぉ、その衝動が行動を導いてくれるから、意識が違うとか自分はやれてないとかは思わないようにな』


悔しさや歯痒さは中々収まらない。


家に戻りあちの様子を見て小雨の降る中、俺は御社殿裏の祠前で腰を下ろした。ここに来ると山小屋を思い出す。干し魚、木の実、水瓶、大きな杉の木、突然の景色の変化とか。


ピョコン


祠の上にカエルが飛び乗った。


『カエルなのに雨宿り?濡れたく無いカエルもいたんだな』


笑いながらカエルを指で優しく突っつく

すると突然祠が倒れてしまった。


『あわわわわ、貴重な文化財がああああ!まずいっ!』


慌てて洞を起こそうとする。祠が倒れ剥き出しとなった土台に穴が空いてる事に気付く。


(穴?)


特に深く考えずに指を入れてみる。すっぽり人差し指が奥まで入った。浅く無いって事は箱みたいになってるのかな?指を入れたまま持ち上げてみる。少しだけ重いが持ち上がりそうだ。


『うぐぐぐ、、』


ガコンッ


蓋が外れた。中を覗くと棒みたいな物が入っていた。落とさないように丁寧に慎重にそれを引き上げる。


(これは、、笛?横笛ってやつかな?)


俺は服を脱ぎ横笛を丁寧にくるみ、地面に1度置き祠の蓋を閉めた後に祠を元に戻した。


急いで家に戻ると夕飯を作っているあちだけが居た。

『あ、おかえりりゅと』

『あち!師匠は!?』

『ん?家に居なければ御社殿じゃない?』


急いで家を出て御社殿にあがる。拝殿で瞑想中の師匠を見つけ、今起きた出来事を師匠に伝えた。

少し遅れてあちも様子を見に来た。


『祠の中に横笛が保管されてたとはのぉ、、』


倒れた事や勝手に蓋を開けた事へのお咎めよりも横笛の存在に師匠は気を取られていた。


多少の錆や傷みはあるものの保存状態は決して悪くはない事に3人は驚いていた。


『ねぇねぇ、音鳴るのかな?』

『うーむ、、』


誰が考えても重要文化財であるだろう笛を吹いていいものかどうか、この神社の宮司だから悩むのも当然だった。


『横笛って確か口をつけない吹き方もあったはずだよ!』

『そうなの?口つけなくてもいいなら試してもバチは当たらないかも?』


拝殿で話したら神に丸聞こえになるとかの心配を一切せずに、2人は翁を他所に話を進める。


我慢できずにあちが唄口(うたぐち)へ口を近づける。


『フゥーーー』


音は出ない。


『りゅと、代わって』

『お、おう、、』


まだ文化財保護の観点から扱いに悩み中の師匠を横目に俺は口を近づける。


『フゥーーーー(ぴーーーーー)』


『鳴った!!』『吹けた!?』


2人は目を合わせる。

と、ほぼ同時に拝殿の奥の本殿から風が吹き入る。


『え!?!!』


全員が風をしっかり感じられていた。

全員慌てて本殿に入る。


古い作りだから隙間風程度なら不思議では無い。しかし隙間風では無く優しくもふわりとしっかり風圧を感じる風。


3人で辺りを見渡す。


『じっちゃん!!!』


そう言ってあちが石像を指差す!


俺と師匠が遅れて石像に目をやると、

石像が左手に持っていた団扇が石のそれでは無くなっていた。


『こ、こんなことが、、』


翁は驚き腰が抜けたのか膝から崩れ落ちるように座り込む。何が何だか戸惑ってる俺に構わずあちは目を輝かせながら団扇を手に取る。団扇はするっと左手から外れた。


『団扇っ!!!天狗の団扇だよっ!!!』


歓喜するあち、口を開けたままの翁、2人を交互に見る俺。


あちは興奮したまま団扇を頭の上で揺らしながら、小さくぴょんぴょん飛んで喜ぶ。口を開けたままの翁。あちに苦笑いする俺。


団扇は5枚の羽根が付いている。明らかに何枚か抜け落ちていて、少し寂しいボリュームとなっていた。


あちが自身を仰いでみたり口を開けたままの翁を仰いでみたりしていたが、いわゆる普通の団扇の風、よりも羽根が空気の抵抗に負けてやんわりとした風を送るだけになっていた。


『カエルが飛び乗って祠が倒れて横笛が出てきて団扇が石から本物になって、、』


頭の整理をしたく1度言葉で音読してみた。

人体の回復の速さへの関与と団扇の物質化?はどちらの方が不思議現象として強いのだろうか?などと不毛な自問自答をしながら俺は団扇を眺めていた。


『じっちゃん、しっかりしてよ!いつまでお口開けてるのー?』


翁の顔を団扇の羽根でバサバサと撫でるあち。


『こらっ!やめんかあち!もっと丁重に扱わんか!!』


さすがに翁も我に返る。


『ふぅむ、、色々と思うところはあるが一連の経緯から神のお導きと言うしかあるまい。りゅとよ、お主の今後の能力(ちから)に深く関与してくる物に違いない。横笛と団扇はお主が肌身離さずしっかり管理せい。破損もしくは紛失の際はワシがお前の片腕でも落として祠に供えてやるわい!』


『師匠あんまりじゃないですかあああぁぁ、、片腕落とされてたまるかよ、、まったくもう、、』


暫く団扇に夢中になっていて気付かなかったが横笛の錆や傷みがすっかり消えていた。


家に帰ると翁は気疲れや悩み疲れですぐ横になって寝てしまった。寝てしまった翁にあちは布団をそっとかけた。テーブルに団扇と横笛を並べ俺とあちは新しい玩具を手に入れたように目をキラキラさせていた。


家の中で横笛を吹いてみると今度は音が鳴らなくなっていた。


『学校に通ってた時ね、フルート習ってたお友達がいたんだけど慣れるまで音が上手く出せなかったって言ってたし少しづつ練習すれば大丈夫だよ!』


あちが団扇で俺を仰ぎながら励ましてくれた。

横笛を置き、あちから団扇を貰い仰いだり羽根を撫でてみたり振ってみたりもするが特に何も起きなかった。


『大丈夫大丈夫!今は使い方がよく分からないだけ!この団扇と横笛は神様?天狗様の私物で間違いないじゃん!じっちゃんが宝物庫から引っ張り出してきた物じゃやくて、りゅとの為に出てきた!って感じしかしないもん!!りゅとも私みたいに人の為になる能力(ちから)が使えるようになる前兆!神のお告げ!神の思し召しに間違いないんだから!』


ふと我に返り、あちってこんなに良く喋る子だったんだ!って思って思わず俺は吹き出した。


『あはははははははーー、あち、俺たちのこの不思議な体験ってまだまだずっと起こり続けるのかなぁ??』

『んー、どーだろーね??でも何かね、今は楽しいよ!』

『そうだな、うん、ずっと楽しく過ごして行きたいね』

『行きたいねじゃなくて、行こうね!だよ!』


そう言いながらあちは団扇でペとを優しく仰ぐ、ぺとは気持ちよさそうに寝ている。


『わっ!、 !』


突然あちが血相を変えて声を出す!


『私、、ご飯作ってる途中だった、、』


慌てて部屋を出ていくあちに驚き飛び起きるぺと。翁はすやすやと寝息を立てたままだ。


何にせよ、変化や兆しがあるのはありがたい、、1度に来るとびっくりするから神様、お手柔らかにお願いします!!


頭の中で神様にメッセージを送り、団扇と横笛を抱き抱えるようにしてテーブルにもたれかかりながら俺は朝を迎えた。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございます!

少しづつでも増えてくるPV数に感謝!!

読者の皆様に大感謝!

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