#7 絶望のち希望ときどき少女
#6のエピソードの閲覧でようやくPVの総トータル100件を超えました!本当に見てくれてありがとうございます!
100件記念で初めての同日2話投稿となります!
これからも頑張ります!
トントン トントン
『リュト、起きて。じっちゃん帰ってきたよ』
『う、うーん、、俺、寝ちゃってたか、おはよ、、??』
『うわぁ!!』
目を開けると目の前にはぺとの顔が!!
『あち、、心臓に悪いよ、、』
豆柴を抱え俺の目の前に突き出していたあちがケラケラと笑う。
『2人ともただいまー』『おかえりなさーい』
いつもの定位置で翁からの報告に備える。
『明日から危険区域での交通手段の確認検証をする事になった。とり急ぎ2人にもやってもらいたい事がある。』
2人とも口を結び前のめりになり次の言葉を待つ。
『2人には明日から榊の葉を取ってきて貰いたい』
『榊の葉?』キョトンとしてる俺にあちが説明する。
『神棚や祭壇に飾ってる葉っぱがあるでしょ。あれが榊って名前の木の葉っぱで主に空間を祓う為の祓具として使われてるの』
『あ、あれか!何に使うのです?』
『榊をを居住区と居住区を最短ルートで通ろうとした際に踏み込むしかない危険区内に設置する為じゃ』
『ふむふむ』
『軍の方で日々、色々検証してくれていてな。神社、寺、教会、祭壇などの特定した場所での回復の早さや祈祷、念仏、聖歌などの影響力。分かり易く神に纏わる事柄が注目されてきたのじゃ』
『そして物資供給で回ってる際に各地で話を聞き集計したデータと照らし合わせ危険区域に住む生物たちへの対抗策、対処法を考えた。今回はそれらを実際に確認しに行き人類存続の大きな1歩にする算段じゃな』
『ふむふむ』
『今、人類は住めるエリアが限られとる。故に得られる資源は決して多くない。しかし幸いにもこの居住区には榊の葉が管理区内で豊富に手に入る』
確かに、人々が自由に行動できる範囲には制限があってたまたまこの居住区には安全圏に山も川もあり元々もっていた田畑も無事で、、俺やこの集落の皆はかなり恵まれているようだ。他の居住区ではもっと逼迫した状況になっててもおかしくはない。
『なるほど、、うちは榊の葉がとれるのでそれを利用した運用の可否を見る検証が可能だって事ですね。分かりました。たくさん採取してきます!』
『うむ、榊の自生地の場所はあちが何度もワシと行っておるから迷わず行けるはずじゃな。あち、案内してやってくれ』
『うん!じっちゃん、リュト、私に任せて』
『それとあち、設営で危険区域に出向く時には今回はあちにも参加して貰わねばならぬ。勿論ワシも一緒に行くから心配はせんでも良い。神楽鈴の手入れを念入りにしといておくれ』
『カグラスグ?』また専門用だな。
『うん、じっちゃんとなら、、怖くない。わかった』
あちは理解しきれてない俺を置いて行き返事をした。
『師匠、俺は?』
『お前には特に来てもらわねばならぬ理由は無いので留守番じゃな』
俺の隣であちが勝ち誇ったような顔でニヤケている。
俺とあち、2人の様子を見ながら翁が続ける。
『検証チームとして行かねばならぬ者、集落に残る者、そのどちらにも役割がある。優劣をつける話では無い。ワシが同行する上で命を張って守れるのは精々1人のみ。あちとりゅとの2人を参加させ予期せぬ事態に陥り、二者選択を迫られしようになればワシは死んでも死にきれない。わかるな?りゅと?』
『…。はい、わかります』
『それからあちよ。危険区域内での活動と言うのは裏山での狩猟や散策とは理由が違う。命がけの挑戦となる。浮ついた気持ちで参加する者がおるとその者が死ぬだけではなく参加者全員を巻き込む。お前は仲間の誰かが死ぬことになってもいいのか?』
『そ、、そんな事思ってなんか無いっ!!、』
翁はため息をつき
『お前のような子供に理解せよと言う方が大人気ない事とはワシも思っておる。ただ、、分かれとは言わんが、、』
翁が言葉を詰まらせている。
『むぅぅ、、』
不満気なあち
『し、師匠!実は俺たちからも報告が!』
空気に耐えられなくなり俺は話題を逸らしたくなった。
『ん?何じゃ?』
『さっき風呂の湯を沸かそうと火吹き棒で息を吹き込んだ時に物凄い火柱が前方に走っていって!!』
『、、!?、、火柱が前方に、、火走りが起きたじゃと!?』
『幸いにも壊れたのは竹の囲いのみで、周りに人も居なかったので大事にはならずに済んだのですが、』
『身体への異変は!?何か感じるものは、、』
『それは全くなく、、その後に強く念じて息を吐いたりしてみたのですがその一回切りで』
『なるほど、火種ありきの能力?、、なら再度同じ状況で検証が必要じゃな!火を使うのなら燃え移る可能性の低い河川敷で行うのが良さそうじゃな』
『では明日は朝から榊の葉を集めて午後にでも河川敷で!あち!頑張ろうな!!』
人々の未来の為に愛する孫娘を危険区域内へ同行させねばならなくなった祖父。命を掛けてでも守り抜く覚悟を決め、その孫娘に怖い思いをさせないように自身の緊張を悟られないように普段通りを装って話をしていた。それに対してあちはあちで祖父が同行するという事に全幅の信頼を持つが故にまるで遠足気分を感じさせる緩さだったから、師匠は消化不良を起こしちょっと何か説教みたいになってしまったのだろう。
どちらの気持ちもわかる。2人とも悪くない。
『師匠!湯が冷めます!俺とあちは明日の榊取りの打合せしますのでお風呂入ってきてください!』
一旦、会話の区切りもついたので俺はこの打合せを締めた。
翁は風呂に行き、俺とあちの2人が部屋に残った。
『まったくじっちゃんたら心配性よねぇ、じっちゃんと私の2人がいるんだから誰かが死んじゃうとか絶対無いのにさぁ』
『凄い自信だね?確かに師匠は強いし、2人とも祈祷出来るから怪我の対処とかも出来るけど、危険区域って名付けるくらいだから見たこともないような化け物とかも出るかもじゃん?』
『りゅとってお子ちゃまだねぇ、漫画の見すぎだよ!私は危険区域なんかよりミサイル、戦争の方が怖かったよ、、』
『確かに戦争も怖いけどさ、なんか俺の中ではテレビの中の話っていうか他人事のように思えててさ。実際の戦場とかを生で見たことも無いし、自分が置かれた環境で起こることの方が怖いかな、さっきの2人も喧嘩になりそうで怖かったし』
『戦争ってさ、たくさん人が死んじゃうじゃん?急にテレビや携帯から緊急アラームが鳴り響いて突然停電になっちゃって、その後に私は聞いたの、、ミサイルの落ちる音、暗かったはずの空も何度も明るくなって、、近くではなかったから私達は怪我とかもして無いけど、、朝になって起きたら学校も友達も全部無くなっちゃった、、』
『俺は停電後の記憶?意識が無くて、、そう聞くと俺は今でも戦争未体験のままなのかも、、』
『たくさんの人や前までの景色とか生活とか、、全部全部変わっちゃってさ、ずっと怖かったの、、けどね集落の皆が毎日少しづつ明るくなってきて、何か私にも不思議な力が使えるようになってさ!私ってお祈りすると皆の怪我を治せちゃうんだよ!凄いでしょ!』
『それは本当に凄いよ、それこそ漫画の中の話じゃん。
正直今でもまだ不思議でならないよ!』
『でしょでしょ!凄いの!ちょっと前まで怖がって泣くことしか出来なかったのに。皆があちのこと頼ってくれるのすごい嬉しいの!だから明日は私がいるから大丈夫だよ!リュトが怪我しても全部治してあげるから!』
そう言ってあちは部屋に戻って行った。
怪我しても治せるなら確かに色々怖くなくのかもな。んー、、けど師匠にやられた腹の痛みを思い出すと、治る治らない以前に痛い思いするのは怖いけどなぁ。
ひとりで苦笑いしていると翁が風呂から帰ってきた。
『休んでるとこすまんの、ちょっとだけ話いいかな?』
『あ、いえ、全然大丈夫ですよ!明日の話で何か伝え忘れとかありましたか?』
『いや、あちの話でちょっとな。さっきは気まずい思いさせてしまって申し訳なかった』
『いえいえ全然』
『ちょっと長話になるがの聞いてくれるか』
『ならちょっとお茶いれてきますね』
お茶を用意し翁の話を聞く。
『大停電の後、集落の周囲の状況にワシらは皆絶望しておった。全部ミサイルで吹き飛んでしまったんじゃと思っとった。皆、ただ呆然と惰性で毎日を過ごして行く中で集落から出ようとすると見たこともない生物に出くわしたり、まさにこの世の終わりを感じたりもした。そんな中、突然個々に不思議な力が宿っている事に気づき出し、農業のみならず建築や生活する上での道具作りなどの作業?行動する事に意欲が増してな。今までした事も無かったことが誰にも教わらずに急に出来るようになる。生活の不便さを感じる苦しさよりも、それを打破できる力を持ち皆が皆を凄いと褒め合い驚きあって、これを作っただの、こんなことが出来るようになっただの、上手く言えんが毎日を楽しめるようになったのも事実なんじゃ。ワシも小さい頃からテレビで見てたような侍になった気分で高揚したしな。』
『笹岡くんはもうわかるよな?』
『ええ、狩猟班のリーダーされてる方ですよね?』
『そうそう。彼が自らに狩猟の特技があることを知って裏山から猪や鹿を仕留めて来た時に、皆が久しぶりのご馳走様に大喜びしてな。何だかんだで生きるって事に食料調達に優れた力ってのは大変有難いし、シンプルに皆が彼の事を頼り信頼し、彼は彼でちょっとしたヒーロー気分に浸っていた時期があったんじゃ。』
『へー、今の印象とちょっと違うかもです』
『ある日、笹岡くんが狩りに行く時に女子供を連れてった事があってな。ハンティングツアーだなんだと言っておったかな。彼の中では皆を喜ばせるイベントのノリじゃったんだろう。かっこいい所を見せたいって欲も沸いたんじゃろうて、、そのツアー参加者の中にあちもおってな。勿論ワシも着いていった。あちがどうしても見たいと言って聞かないもんじゃからワシは保護者としての参加じゃ』
『ふむふむ』
『子供連れだったし、ツアーとは行っても1番近くの狩猟ポイントまで小高い丘の上で参加者は狩りを見守るように準備してあって、安全策はしっかり考えられておった』
『設置してあった罠に引き寄せられて1匹の猪が現れての。笹岡くんは見事に弓を当て、槍でトドメを刺し皆に戦利品として持ち上げてアピールしたんじゃ』
『嫌な予感が、、』
『うむ、近くの茂みから別の大型の猪が飛び出してきての。笹岡くんは太ももを牙で抉られ倒れ込んだ。他の狩猟班の皆が慌てて笹岡くんの救出に入り、ワシも全力で丘を駆け下り猪との戦闘になった。ワシはワシで必死に戦っておったから笹岡くんの回復してる暇はなくてな、笹岡くんは出血が多く管理区内での回復量ではとても追いつける状況では無かった』
『ワシが戦闘を止めて回復側に回れば助けられる可能性もあるとは思ったが、、助かる見込みの薄い笹岡くんよりもワシは目の前の子供たちの脅威を殲滅する事を優先した』
『それは、当然だと思います。戦場の中での手当は共倒れする可能性が高すぎます』
『やっとの思いで猪を倒したあと、子供たちの歓声が聞こえてきての。ワシはこんな時に歓声などするものでは無いと怒鳴りそうになって振り向いたらの、笹岡くんが立ち上がってる姿がそこにあったんじゃ』
『ワシの代わりにあちが祈祷し出血を止め笹岡くんを救ったことへの歓声じゃった』
『なんて危険な事を、、』
『いや、あちはな、、丘の上から動いておらんかった』
『!?!!』
『距離の離れた状態の相手に祈祷を届けられるのが、あちが身につけた能力だったんじゃ』
読んで頂きありがとうございます!
HOTLIMITの勢いに便乗する気持ちで夏を駆け抜けられますように!




