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世紀末な後始末  作者: 柊隼凌
第1章 赤の巫女
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5/29

#5、新生活

チュンチュンチュン


心地よい眩しさ、前までの俺ならカーテンの隙間からの日差しで目が覚めた時はかなり不機嫌になっていたのに。身体の痛みが伴わない朝、素晴らしい!


家から出て朝日を身体で受ける。

『おはようー!』

神社の方から翁の声がする。お年頃なのかやはり朝が早い!

『おはようございます』

少女の声。あちちゃんも起きてたのか。2人で境内の掃除かな。

『おはようございます!2人ともお早いですねー!』

『毎朝の日課の朝稽古じゃよ』

(ほほぅ、なるほど?)

3人で朝食をとった後は集落の中を案内してくれた。

『おはよう!』『新入り?宜しくなー』『お兄ちゃん頭白ーい』

色んな人が声をかけてくれる。皆、突然の客人に特に驚いた様子はない。そして皆、活気に満ちている。中にはあの頃の服装の方もいた。デニムのパンツやTシャツ、Yシャツ、ワンピースを着てる女の子もいた。着回しによるくたびれは見られたけど大切に着てる様子だ。

それと大人はみんな熱心に仕事をしていた。畑仕事の人、木材を加工してる人、川からは竹などを使い水を集落の近くの井戸まで引いていた。農村だったのだろうクワやスコップなどの道具は充実しているようだ。

それとこの集落の近くには幾つか点々と居住区があるらしい。居住区と居住区の間には大型の昆虫や好戦的な猛獣が出るらしいのだが、数人である程度武装し注意しながら行き来することが可能らしい。


狩猟型のスキルの方は木の棒を尖らせた弓や槍を手作りし狩りの準備をしていた。

『そう言えば雪舟さんは何が出来るようになったんですか?』

『確かにまだ話しておらんかったの。ワシが出来るようになったのは、、口で言うより見てもらおうかの』

そう言って翁は傍に落ちていた2本の木の棒を拾い、1つを俺に差し出した。

『天野くん、適当にそれでワシに打ち込んできてくれんか?どんな打ち込み方でもかまわん』

2mほど離れて向かい合って、さぁ来いと待ち構える。

翁は木の棒を持ったまま下にたらんと垂らして仁王立ち。

(頭がガラ空きだ。俺は剣道有段者だぜ。すまん、翁)

『では遠慮なく、、』

静かに息を吐き木の棒の先端を翁の首元に向けて両手で構える。

右足を半歩前に滑らせると同時に腰をやや落とす。そこから一気に飛び込む。

バキッ!!ドスッ!

『グッ、、ハッ、、』

何が起こったか見えなかった。俺の木の棒は見事に折られさらに腹に横抜きで一撃を入れられた、、痛みを超えて息が止まる。

『ングググ、、、』

『手加減はしておるが、治りが早いのを見越しているので入れさせて貰ったぞ、わっはっはっは』

『か、乾杯です、、俺も本気で打込みましたし、、ありがとうございました、』

(治るとはいえ痛みの軽減は無いんだぞクソジジイ!!)

経験ないから分からないけど肋骨何本かイカれたかも知れない。翁に抱えられ俺は神社の中に運ばれた。

本殿の1つ手前、幣殿に俺は寝かされた。そのまま翁が祈祷を捧げる。あちも正座し祈祷してくれてる。

腹部の痛みがすーっと引いていく。回復量の速さを身に染みて感じる。

『凄いですね』

『ここで寝てるだけでも早いのじゃが祈祷をすると更に早くなるのじゃ』

『たくさん検証されてるのですね!』

『神に仕える者としてこの奇跡的な事象にとても感銘を受けてな。ワシらが代々行ってきた祈祷や祭祀、神事などしっかり神に届いていたんじゃと思うと、、嬉しくて、、』

翁の目に涙が浮かんでいた。

(翁は家業だから継いだとか事業としての仕事ではなく心の底から神を祀って来たんだろうな。この人は本物だ)

『何だか自分まで嬉しくなっちゃいました』

素直に思った気持ちを伝えた。

『祈祷ありがとうございました。すっかり良くなりました!神の奇跡凄いです!ところで雪舟さん先程の動きって未経験でって事ですよね』

『左様じゃ、大停電後に錫杖を握った時に何故か構えてみたくなったり刀のように振ってみたくなる衝動が込み上げ、抑えられなくなってのう。一定の長さの棒さえあれば誰にも負ける気がせぬ』

『なるほど、さっきまともに喰らってわかったのですが力任せの打撃ではなく明らかに剣さばきでした。生活に直接関わること以外の習得?覚醒もあるって事でしょうね』

『ふむ、そーいうことになるじゃろうな。生活をしていく上で何かのアクションをしようとした時や特定のアイテムに触れた時など、何をきっかけにして目覚めるかは人それぞれ、、きっかけは多いに越したことはない。天野くん、このままこの集落にて暮らしなさい。ワシの家に住めば良い』


(山の上の小屋には執着なども無いし他に宛なんてない)

『ありがとうございます!俺に出来ることは何でもやらせてください!』

『ふむ、出来ること、、むしろあれじゃな?』

『??』

『出来ることをしてもらうより、出来ないはずだったのに出来るようになるきっかけ探しをする為にじゃな。ワシの神社で神職としての仕事をしてもらおうかの。簡単に言えぼワシと一緒に神社の仕事をする』

『な、なるほど?』

『ワシの神社は今は宮司のワシと巫女のあちの2人きりじゃ、あちも今は巫女の修行中でな、天野くんはそうじゃな、修行僧ってことになるな』

『修行僧っ!?』

(なんかちょっと厨二心をくすぐる響き、、悪くないか)

『なぁに難しく考えることはない明日からワシと行動を共にすれば良いだけじゃからの、わっはっはっはー!』

『師匠!宜しくお願いいたしますっ!』


こうして俺の新たなジョブ〈修行僧〉が始まった!


翌朝からの流れは、まず朝一での境内清掃、時計は無いけど恐らく5時起き、、早い、、。

清掃が終わると木刀での素振り等の剣の稽古。これは剣に目覚めてからの翁の日課で体力作りを兼ねての物になる。

剣の稽古のあとに朝食、その後あちちゃんは巫女としての舞の稽古や裁縫作業、洗濯などの家事手伝い。

俺と翁は祈祷読みや祀り事に使う道具の手入れや本殿内の細かい清掃だったりお供え物の入れ替えなど、結構細かく色んな仕事があった。もちろん神社以外の集落の皆との共同生活としての復興作業にての清掃や資材集め、食料調達なども欠かせない。


3食昼寝なし、朝稽古は剣道教室に通ってた頃を思い出し懐かしく楽しめたし、神社関係の仕事も初体験の事ばかりで新鮮で自然と身に入った。こっちの世界に来る前の俺は早々に両親ともに他界し独り暮らしをしていたので、翁とあちと俺の3人生活は家族が出来たようでとても嬉しかった。


住み込みを開始して間もなく苗字読みは他人行儀になるからと俺の呼び名は天野くんからリュウトへと代わった。


稽古の清掃中に俺の落ちてきた崖下をもう一度見に行ってみた。確かに高い、、俺、あんなとこから落ちたのか。斜面と言えば斜面ではあるがほぽ落下となる角度だ。謎の治癒力が無かったらここで終わってたまであるな。


境内は割と広い。鳥居をくぐって左手に手水舎と神楽殿、右手に社務所、参道の突き当たりが拝殿、本殿のある御社殿と教えて貰った。神楽殿は主に巫女が神に捧げる舞や演奏をする場所。あちはここで修行してるらしい。その他いくつかの小さい建物も教えて貰ったが流石に聞き慣れない名前だし覚えきれなかった。


集落の中の居住施設含む建物は全て木造建築だ。元々古い町並みだったのだろう。皆が拠点としているここは居住区、裏山など集落周辺で巨大化した昆虫等が入ってこないエリアを生活区、それ以外を危険区と呼ばれていた。そして不思議な話がもう1つあって大停電のあと危険区内の人口建築物の多くは極端に風化劣化が進み植物の異常成長があり景色が一変したそうだ。生態系の異常のみならず環境異常、天変地異と呼ぶ人もいた。


数日が過ぎ、俺は裏山への食料調達に翁と共に狩猟班と同行させて貰える事になった。危険区では無いが熊や猪、鹿などは棲息していてそれなりの危険は伴うとの事。そして今回は食料調達ついでに俺が居た小屋の調査も目的のひとつとなった。


狩猟班は弓や槍を持ち、俺と翁は木刀を持った。狩猟班の5人と俺と翁の7人編成のパーティだ。


狩りとはいえ無闇矢鱈に山道を進む訳ではない。元々あった山道を進み、設置済みの罠に捉えられた動物の回収。山鳥や兎、猪などをターゲットにしてあるのだと言う。リーダーの笹岡さんを筆頭に30代前後の人達で構成それた狩猟班達は手際よく捕らえられた獲物を回収、罠の再設置を行い、道すがら食べれる植物やキノコなども回収していた。俺は小屋の周りに立っていた5本の大樹の話をしていたので皆で大樹を目印に付近の捜索も行ったがそこまで背の高い樹木は一切見当たらなかった。


『おっかしいなぁ、、犬の鳴き声を聞いて崖から落ちるまでの距離は数百メートル程度しか無いはず、』

『今いる場所が落下したはずの崖上付近なのは間違いなさそうなんだけど、、あとね、俺の背より高かった草むら自体どこにも無いのは変だよ』


山の中はほぼ雑木林、生活区内なので植物の異常成長も見られない。多少の茂みなどはあるがジャングルを彷彿とさせるような景色はどこにも無かった。


『食料調達は十分出来たし、そろそろ日も暮れ出す、生活区内でも何が起こっても不思議では無いから今日は下山する』

そう言って笹岡さんは俺の肩を叩く。翁も静かに頷いた。


2時間ほど山を下り俺たちは安全に1人も怪我することもなく集落に帰ってきた。


『山の上の小屋に限らず、謎の多い出来事だらけじゃ、今はただ毎日の出来ることを一生懸命に行い。急な変化にも耐えれるよう直向きに準備し、生きてさえいれば神の思し召しがあるかも知れんしの』

慰めるように翁は言った。



小屋が無かった喪失感にではなく、あったはずの物がどこにも無い不思議な違和感による消化不良に対しての慰めをしてくれたようだ。


無事に帰ってきた俺たちを、あちは嬉しそうに出迎えてくれた。あちとは日中の仕事や行動が違う為、朝晩くらいしか中々顔を合わせる機会は無かったけど、一緒に生活をし、同じ家に住み、おはようおやすみなどの挨拶を交わす度に家族としての気持ちは深まっていった。


翌日、今日は翁とあちの3人で集落の各家にある神棚に訪問しつつ簡単な祈祷、供え物などの巡回をする事となった。全ての家にある訳では無いが数十箇所の家を周ったあと、集落を中心に4方向に設置した小さな祭壇を周る。祭壇の周りに4本の竹を立て、しめ縄で囲い祭場と呼ぶ。その土地を清める効果があるらしく、集落の4方向に設置することで結界のような役目もさせてるようだ。


事前に用意した米、塩、酒、水をそれぞれに供え祈祷をしていった。4箇所を終え3人は神社に戻る。


『あとはここで終わりじゃ』

御社殿の裏側の少し先に1本の杉の木が立っていてそこには小さな祠があった。

その祠にも供え物をするのだが祭場とは少し違うのだと言う。

『この祠には天狗様を祀っておってのう、塩と酒は置かず、米の代わりに山で採れた果実、水、それと魚じゃな』

『お清めというより、山や川、自然の恵をワシらと共に分かち合う感じじゃな』

『なるほど、一律ではなく目的?祀り方によって色々、、』

そう言いかけて俺はうずくまる。

『リュウト?どーした!?』

『あ、や、、ちょっと立ちくらみ、、』

『リュト?大丈夫?お水飲める?』

あちが水の入った竹筒の栓を抜き俺に渡す。

そのまま地べたに腰を下ろし水を1口

『あち、ありがとう。何か祠を見てたらモヤっとしてきて、、』

(祭場と違い4本の竹はなく、杉の木にしめ縄を巻いている。果実、、木の実?、水、魚、、)

『なんて言うか、俺のいた山小屋みたいな、いや、何か共通点がいくつかあったから軽くフラッシュバック?したような感じで、、』

『モヤっとしたあとに全身に電気、、んー、、何かが流れる?言語化難しい、、』

『!?!!』

『あち、リュウトを連れて一旦家に戻り休ませて起きなさい。ワシは祠に祈祷をしてから戻るのでな』

『わかった!リュト、行こ!』


あちは比較的大人しい子で口数も多くない。ぼそぼそ喋るせいもあり滑舌?俺を呼ぶ時もリュウトでは無くリュトと呼んでいた。


家に戻り横になって休み、あちは豆柴のペとを膝に抱え2人で翁の帰りを待った。


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