#4、現状打破
引きこもりからの翌日
相変わらず目覚めは身体が痛い。窓が無く陽も差さない為に小屋から出るまでは時間もよくわからない。寝起き後のルーティンは引き戸開けからなのは決定した。
ギッギッギシッ
ん?こんなに重かったっけ?
『ぐうううううぬぬぬぬ、、、』
ギギギギギギギーーーガタンッ!
やっと開い、、、た、、けども?
『へっ???何これ?』
開いた引き戸から見えた景色が昨日と違う。昨日は確かに雑木林だったんだ。今見えてるのは恐らく太い木、杉の大木?とそれに絡みつく蔦、そして開いた場所から1歩も外に出たくなくなりそうな草むら?控えめに言ってもジャングルの入口のような景色だ。。
とりあえず顔を洗う。干し魚は4匹、木の実や水瓶、部屋の中には異変はない。異変だらけの展開だったので流石にそろそろ、、慣れるわけない!!
なんかちょっとムカついてきた。草むらを掻き分け踏み倒しながら目の前の大樹まで突き進む。樹齢何年経てばこんなにも大きく、、木の先がまったく見えない。一旦目の前の小屋に戻る。1人作戦会議である。
さて、どうするか?まずここにいても拉致があかない。小屋の中にある食料が尽きたら俺も終わり?いやいやいやいやそんな終わり方は流石にごめんだ。宛なんて何にも無いけどとにかく移動しよう。何か見つかるかも知れない。なんの計画性も無かったがとにかく何かを見つける為にこのジャングルを進むことにした。
目の前の大樹まで戻る。左右どっちに行こうか悩んだ時に迷路の必勝法を思い出した。片方どちらかの壁沿いにひたすら進めば必ずゴールにたどり着く。まずは左に進むことにした。左手に進んでいくと数メートル先に再び大樹があり道を塞いだ。ならまた左だ。左手に進むと数メートル先にまた大樹。また左。また大樹。また左。また大樹。また左。ゴーーーール!!!
引き戸前の大樹の前に俺は戻ってきた。。何をやってるんだ俺は、、迷路のように感じただけでこれは人工物の迷路とは違うじゃないか、、、
『ワンッ!!』
(犬!?)
犬だ!間違いない!犬の鳴き声がした!!目の前の大樹の裏手の方角から!そんなに遠くも無さそうだ!
俺は思わずなんの躊躇もなく草むらの中を突き進んだ。この状況を打破したい!何でもいい!とにかく何かの兆しが欲しい!草が茂っていて前が見にくい。大人の身長だったとしてもこの草むらから頭は出なさそうだ。前にっ!前にっ!ま、え、、、えっ!?
ズザザザザザザザーーーーーーーッドカッ!!!
『ゥッ、、、、』
突然足場が無くなった。落ちたらしい。急な落下で心臓が止まりそうになったが真下というより坂道を落ちてったようだ。しかも覆い茂っている草むらのお陰でスピードもかなり抑えられたのだろう。
『ワンワンワンワンっ!!!』
まだ立ち上がれてない俺の近くの草むらがガサガサと動く。
『ワンワンワンワンっ!ハッハッハッハッ』
草むらの影から犬が飛び出してきた。小型犬だ。恐らく豆柴!俺を見つけた豆柴は一定の距離を保ちながら舌を出し、呼吸を整えながら見つめている。
『tututututu..』口を鳴らしワンコに手を差し出す。怖くないよ、こっちにおいでー。落下時の痛みはまだあったが頭も打ってないし裂傷なども無い。軽い打撲や捻挫程度だろう。骨折の経験は無いからわからないけどね。
『ぺとー?おーい??ぺとー??』
(!、?、、、、あ、、、、)
人だ!!人の声がする!!声から察するに女性だな。嬉しさ?安堵?目頭が熱くなる。けどこんな時、何故か声が出ない。(おーい!とか?助けてくれー!とか?なんか呼びかけるのって恥ずかしくてコミュ障にはハードルが高い、、
『ワンワンッ!』
俺の代わりにワンコが呼んでくれてる。
ガサガサガサガサッ
茂みが動く、ほどなくして目の前に現れたのは小学生低学年くらいの女の子。
『ぺとーー、、お、お、お、お、え!?』
『あ、あの、、は、初めまして?』
こんな時どう接していいかがわからない。相手が大人なら素直に助けて欲しいと言えたのかもだけど、相手が子供とわかると頼り方がなんかギクシャクしてしまう。
少女の元にワンコが駆け寄る。すると少女は急いでワンコを抱えそこから立ち去ってしまった。
(あぁぁ、、待って、、)
立ち上がり追いかけようとするも足を挫いていたらしく、再度倒れ込む俺。けど何故か安心感はあった。人の存在をこの目に出来た。ぼっちの世界ではない事が確定した!あの奇妙な人の列の異空間?とも明らかに違う。何とかなるのかも?そんな事を考えていた。
数分経過し身体の痛みも良くなってきた。どうやら大事には至らなそうだ。遠めから会話する声が聞こえてくる。
『じっちゃん、こっちこっち』
『これこれ、あち!走ると危ないぞ』
ガサガサガサ
目の前の茂みが動き先程の少女ともう一人、おじいちゃん?の姿が目に入る。手には長い棒を持っていて浴衣のような服を着ている。少女の方は俺と同じような甚平姿なのがこの時ようやく意識できた。
俺の姿を見て翁はゆっくりと腰をおろし手に持っていた長い棒を地面に置いた、
シャリーン、ドサッ
ほぼ同時に予想してなかった音が出た。
『お兄ちゃん?大丈夫かい?お兄ちゃんは1人?』
(白髪の少年か、ん?この目は、、!)
『あ、はい。何かこの上から滑り落ちてしまったみたいで、ちょっと痛いですが何とか、、』
『ふむ、とりあえず手当をするから家に来てくれるかな?』
そう言って翁は俺の手を取り先程地面に置いた棒を手に取る。
カシャカシャ
棒の先端に何か装飾品のような物がついていてそれの音が鳴っているのだと理解した。
翁は俺を起こすと目の前にしゃがみ、ワシにおぶされと言ってくれた。少女の手前恥ずかしかったが手間を取らせるのも気が引けたので素直に俺はおぶさる事にした。
少女は豆柴を抱いたまま戻ってきたらしく、抱いたまま翁の後ろを着いてくる。10m程度の茂みを抜けるとそこには神社と数件の家屋らしき建造物が立っていた。俺はそのまま神社からすぐ近くの小屋に通され簡単な手当を受けた。
通された小屋は平屋の家屋なのだろう。俺がいた小屋とは違って生活感が漂う。ふた周りほど大きいかな?
元いた世界の田舎の家って感じの住まいだ。
手当が住み、テーブルの置いてある客間に通された俺に少女がお茶を運んできてくれた。俺と翁、少女の分の3つの湯呑みをテーブルに置き、俺と向かい合わせて2人が座る。
『少しは落ち着いたかな?もし良ければ幾つか聞きたいのじゃが?』こちらの様子を伺いつつ翁は話を進める。
『君はいったいどこから?この集落の外からひとりで?山の奥から歩いてここまで来たのかな?』
『えっと、、この先にある小屋に居て、犬の鳴き声がしたので向かってたら足を滑らせて落ちたみたいで、、』
そこまで言ってから俺はお茶を口に含む。
『熱っ、、』
『え?あ、はい』
何故か少女が小さく返事しこちらをじっと見つめている。その後またまた何故かハッとした顔で下を向く。
『小屋?近くに住んでおったって事かの?』
『それが、自分もよく分からなくて。気づいたら居たというか何か色々と記憶もぐちゃぐちゃで、、あの、ここは日本、、で合ってますよね?』
『ああ、そうじゃよ。多分、日本で間違いない』
『多分?あ、あのぉ西暦って今何年ですかっ??』
(俺はひとつの推測をたてていた。建築物や衣服の感じ、異世界では無いにしてもタイムリープ、、恐らく過去、、よくこの手の物語の設定になるような戦国時代とか、、)
『どこかで何かが狂ってなければじゃが、、西暦2030年、とワシは思っておる』
『!?』
『お、俺も2030年までは普通に暮らしてて!!突然NEWS速報でミサイル日本に撃たれたって聞いて、、』
『なるほど、そこまではワシらの記憶とも一致しておるようじゃな』
そう言って翁はお茶に手を伸ばす。
『少し混乱もしてそうだし、まずはワシの方からこの数日に起きた話をして行こうかの。元々この国、いや地球全体で大規模な戦争が起きておった』
『はい、』
(俺の元々の記憶と同じ!やっぱりあの戦争は夢とかじゃないよな!!)
『どこぞかの国の核ミサイルをきっかけとし、僅か数日で時点は急展開を見せ世界各地に核ミサイルが飛び交ったようじゃ。そしてこの日本にもあちこちにミサイルが降ってきたようじゃ。ただ停電や電波障害が起こり詳しい情報はワシらも知らん。その停電は解消することも無く人々は混乱しながらも食料や生きるための物資を求め、犯罪が横行しておった。その状態は2ヶ月程じゃろうかしばらく続き、次に起きたのは謎の流行病。口づてに伝わってきた聞いた話では肌に腫れ物のような物が出来ると数日で亡くなると、ただこの集落では流行病での死者は確認できておらん。そしていつの頃からか集落の外では見たことの無いような生物や巨大化した昆虫等が出るようになり、外の状況も確認したくとも出来ない状況。何故か奴らは集落内には侵入しては来ず、ここに住む約30名ほどの仲間たちで手分けして生活を続けておる状態だ。幸いにして集落内には川が流れており、山側も安全なので食料の調達が出来ているお陰で生きておる』
『生きてこれた理由は他にもあってじゃな』
『?』
『大停電以降、人々に不思議な現象が起きておる』
『不思議な現象??』
『道理はわからぬ。じゃが何故か人々に生きる為の力が備わったというか、、今までしたことも無かった事が何故か出来るようになった』
『どういう事ですか?』
『例えばそうじゃな、ここにいるあち』
『あち、?』
『おっとこれはすまぬ。自己紹介を忘れておった!改めて自己紹介をさせてくれ。ワシはこの神社の宮司をしておる櫻吉雪舟と申す。横におるのが孫娘のあちじゃ』
『サクラキチセッシュウさん、?なんかすごいお名前ですね、、あち?ちゃん?(あ、だからさっき返事を、、)』
『わっはっはっは。よく言われるわい。代々神社を祀って来た一族じゃからな。代々それっぽい名付けで続いておるせいじゃな』
『えと、自分は、、天野流人、あまのりゅうとです』
『では、天野くん。話を戻そう。このあちは突然裁縫が得意となった』
『裁縫ですか?』
『そうじゃ、針に糸を通すこともしたこと無かったのじゃが、、ふと何かに目覚めたかのように布さえあれば衣服が作れるようになっておった。今ワシらが着てる服もあちが作った物じゃ』
『確かに記憶の中にある既製品とは異なる作りをしてますね。手作りだとは驚きです』
『この集落に住む、全ての人が同じような境遇におってな。ある者は大工の技術が身につき、ある者は鍛治などの物作りに長けたり、猟をしたことも無い者が狩りを成功させるだけじゃなく持ち帰りそれを捌き調理まで手際よく出来てしまったり、、』
(まるでゲームのスキル獲得みたいな話だな、、)
『なんかあれですね、信じ難い話というか、、ピンと来ないというか、、』
『にわかには信じられない話よな、明日にでも集落の皆を紹介するので実際に見たり詳しく話を聞いてみると良い』
確かに気づくともう夕方だ。窓の外から赤い空が見える。翁は天井からぶら下がっている明かりの蝋燭に火をつけた。
『幸い神社なので蝋燭の在庫が多くて助かったよ。そうじゃ腹はすいてないか?一緒に夕飯にしよう。あちお願いしてもよいかの?』
あちは軽く頷き部屋を出ていった。今の俺と同じくらいの背丈だった。
『あの、あちさんってお幾つなんですか?』
『今年、確か小学3年生に上がったとこじゃったよ』
『そうなんですね』(って事は俺もそれくらいだな)
暫くしてあちが料理を運んでくれた。焼魚とお吸物と白いご飯だ!体感1週間以来の白飯!ありがたい!
夕飯を囲みながらも話は続いた。
『そう言えば俺のいた小屋に干魚が吊るしてあって、この魚と多分同じ種類のやつでしたよ』
『集落の外れに川が流れとってな。この魚はそこで良く釣れるやつなのじゃよ。集落の誰かが運んでいたのじゃろうか、、しかし山の上に小屋があるのは聞いた事なかったのう、、』
『天野くん、不思議な話はまだ他にもあってな。大停電以降、皆の怪我の治りが劇的に早くなったのじゃ、かすり傷程度なら1晩寝れば治る』
『治るんですか!?』
『うむ、更に不思議な事に治りの早さについてじゃが神社との距離が近ければ近い場所の方が治りが早くなるのじゃ、その事もあってこの不思議な現象総じて我々は神の恵み、神の奇跡などと言っておる』
『確かに身に覚えの無い事が出来るようになったり、身体の回復が早いという現象は神が何か力添えしてくれてるような気持ちになりますね』
『天野くんは何か変化を感じるような事は起きてないのかな?』
『全くないですね、狩りや料理する機会も無かったし、小屋の中で引き篭ってましたし、、』
『ふむ、そうか。ただ怪我については先程体験出来たから天野くんにも効果あるのは間違いないな』
『え?あ、怪我ですか。確かに痛みはほぼ無くなってますね』
『いや、手当してからの話では無く。君が落ちてきた崖。恐らく15m程度はあったはずじゃよ。落ちた直後には最低でも骨折、脳震盪、場合によっては内蔵にダメージがあっても不思議でなない』
『15mもあったんですか!?』
俺は自身の感じた痛みから大したことない高さだったと思い込んでいたらしい。
『その崖も明日また一緒に見に行くことにして、疲れておるじゃろ?今日はもうゆっくりすると良い。風呂の準備もしてやるから入ってから寝なさい』
『風呂があるんですか!!ありがとうございます!!』
外に出て少し裏手の方に竹で作った囲いがあり、その中にドラム缶で作ったお風呂があった。なんかちょっとしたキャンプ気分、人並みの食事も取れたし今日はちょっと癒されたな。
客間のテーブルを片し布団を敷いてくれていた。あの痛みからの解放!!当たり前のように過して感じられなかった幸せを俺は今とても噛み締めている。そう思いながら俺は眠りについた。




