#43 覚醒!妖艶の軍姫
『原田…ダメだ…起きろ…起きて……お願い…』
安らかな顔で目を閉じている原田の手をギュッと握りしめながらマリは何度も何度も原田の名を呼び、事実の受け入れを強く拒否する。
『ぐ…こんな前線にも出てこないような奴に私の捨て身の突きを阻止されるだけでなく、カウンターで致命傷を追わせられるなんて……』
ベリトの外郭は激しく凹み、抉られたナイフの傷から大量の体液が流れ落ちている。
『原田はうちの隊のNo.2なんだ!!貴様になんか引けをとるわけないだろうっ!!!』
マリは涙ながらに原田の評価を強くベリトへと誇示して見せた。
『それにしても何でこんな事に…まぁいいや…私の眷族ももう居ない。私は…ここで終わりだ。新世界となり蟲の能力を手に入れ約千年程も生きてきたんだ…千年静かに森で暮らしてきたら突然立ち入れないエリアが其処彼処に現れ、それの調査をしてただけだったのにな…』
『千年生きた?貴様はさっきから何を…』
『私からするとな、領土に勝手に現れてろくに会話もせずにこの私達の蟲の姿を見て畏怖し攻撃してくる旧世界の人類の姿のお前達の方が残虐で横暴で…化け物のように思えるよ…』
体内の大半の体液を失い意識朦朧としながらも語り続けるベリト
『私の主、バアル様がお前達を滅ぼし、また蟲達が自由に暮らせる森を取り戻して……』
ベリトはここでら力尽き、身体の節々全ての行動が止まる。
『マリさん、原田さんを拝殿までが俺が』
原田はタツキよりも背が高くとてもマリ一人では運べない。そう思ってタツキがマリに代理として名乗り出る。
『そうだな、ゆっくり休まてあげたいしな…頼む。ありがとう』
まだ原田の手を握りしめるマリ
マリさん…マリさん…
『!?、、タツキくん、、?じゃないよね、、』
マリを呼ぶ小さな声のような…
(マリさん、、マリさん!!)
何かに動揺してるマリを見て雪舟は理解を探すようにマリを見つめる。タツキは周囲を見渡し異変が起きてないか様子を探り出す。
『マリさん!!俺っすよ!原田っすよ!』
『!?!!』
思わず空いた口を手で隠しつつ驚嘆の表情を隠せないマリ
『原田っ!?!!』
原田の頬を叩き返事を求めようとするが、既に頬は冷たく握りしめている手の指も固くなり始めている。
『幻聴…』
また涙をこぼれ落とすマリ
『こっちっすよこっち!マリさんの胸の中?俺、、マリさんの魂に融合しちゃったっぽいんすよね、はは』
『なっ、、!!』
マリの驚きの声に驚く雪舟とタツキ
『マリ?』『マリさん!?』
『あ、ごめんなさい、、ちょっと待ってね、私も今、ちょっと考えるから待ってて、、』
―――――
『原田!ほんとに原田なんだな!』
脳内で原田に話しかけるマリ
『本当の本当に原田っすよ。マリさん』
『お前は死んでしまったのでは無いのか…?』
『死んでますね、はは。俺には見えませんけどその辺で死んでません?俺』
『死んでるわよ…この馬鹿……』
『いやぁ、、痛かったなぁ、、あのニードルと毒!!本当に死ぬかと思った!と思ったら死んでましたよ!あはははは』
『ちっとも楽しくないっ!!!!』
『いやまぁ、そうなんすよね、はは』
『そんな事よりマリさん。どうやら俺はマリさんの魂の一部になったらしく、、ただの感覚だけどきっとそうなんすよ。だから俺はマリさんと会話出来るように…これはこれでありなのかも…』
『ちっともありじゃない!!!』
思わず脳内では無く、肉声で声を荒らげ雪舟とタツキの身体をビクッとさせる。
『まぁまぁ落ち着いてくださいよ、はは。そんな事より…俺、魂となってようやく自身の能力に目覚めたと言うか理解出来たと言うか、マリさんの魂の一部となって覚醒したみたいなんすよ』
『何が言いたいんだ?』
『マリさんの魂の中にね、神様が居るんすよ!前に見せてくれた針と糸の神様がさ!』
理解の追いつかないマリ
『毘沙門天様の事か?戦闘前は必ず胸の中で勝利祈願を祈ってはいるがそのような事か?』
『いや、違うっす。毘沙門天様は居ません。マリさんの魂の中にいるのは《摩利支天》様っす』
『原田、こんな時につまらないダジャレとか…』
『いやいやいやいや、マジっすよ!マジのマジで摩利支天様がいるんすよ!で、俺は針と糸の《真実の使い方》を直々に教わり理解したっす』
『…続けて?』
『元々の生きていた俺は武器開発、武器制作が器用に出来るようになった!ってのを能力として得たって教えたじゃないですか?』
『あぁ、そうね。』
『何かさ、イマイチパッとしない能力だなぁって思ってて。特にこの村でタツキ達の得た力を見て俺はハズレを引いたんだなってやっかんだりもしましたし』
『けど、今なら解る!俺は得た能力も死んだ事もハズレなんかじゃない!!むしろここからが俺の真骨頂になるみたいっすよマリさん!』
何かに高揚した原田の言葉が強く楽しそうに心に響く
『俺は防御壁から前に行けず、前線で戦えない無力さを感じつつも、、実は別の心でワクワクしてた事があったんですよ!』
『お前は何を言ってる…?』
『俺がマリさんの中で眠る本当の《針と糸》の使い方をサポートします!これからの俺はマリさんの魂と共に生き、これからも俺は貴女を護り続ける!!』
―――――
『顕現せよ!針と糸』
突然声を上げるマリ。
無意識に出した自分の声に驚いている雪舟とタツキを見て顔を赤らめる。
握りしめていた原田の手をそっと胸の上に置き、自身の頭上に浮かんだ針と糸に両手を翳す。
『武器融合!!(コンポーズ)』
マリの身につけている軍服と帯刀しているレイピア、サーベルがゆっくりと輝き出す…
更にその周囲で、とある物たちが輝きだした!
ベリトのニードル、マーモンの鎌、エーディンの羽
輝きだしたそれらはマリの元へとフワフワと浮かびながら運ばれてくる。
『これは…』
そして光を放つその6点の装備たちを針と糸がそれぞれ対となるペアで縫い始める!!
レイピアとニードル、サーベルと大鎌、軍服と蝶の羽
縫い合わされていくそれらの装備が光の中で姿形を変えていく!!
『何ともこれは…』
『凄いな…』
驚き見惚れる二人
『え…えと……これが私の本来得た能力』
マリの魂に宿る摩利支天。その神の力を顕現させた針と糸は原田の得た武器開発の想像力との相乗効果によってマリの所持する装備を幾重にも強化、追加させていく能力へと覚醒させたのだった!!
ドサっ!!
マリの元に空からセオリが人型に戻り降り立った。衣服を着てないセオリにタツキが直ぐさま羽織を掛けさせ、ため息をつく。
『マリさん…!!』
マリが生きていたこと、原田が助からなかったこと、雪舟やタツキの無事な姿、それらを空から全て目にし理解ていたセオリはマリにしがみつきワンワンと泣いた。
『セオリも無事だったのね!本当良かった…』
ホッとしたマリからもたくさんの涙がこぼれ落ちる。
一頻り泣き終わったあと…
原田をタツキが抱きかかえ皆で御社殿に戻り、村の周囲の確認、それぞれの情報交換など戦いの後の作業を淡々と行い済ませ、ようやく一息つける時間が出来た。
拝殿に敷いた布団に原田を寝かせ、マリ、蓮見、サナエが優しく囲み弔いの言葉を原田へと贈る。
『皆、落ち着いたら今後の話を…』
雪舟が静かに皆に語り始めたその時、
ドンッ!!
ヒィィィィ!!
凄い勢いで畳を叩くセオリの圧に震え上がる一同
タツキ、笹岡、峰岸の姿もそこに並ぶ。
『納得出来ません…』
怒りに震えるセオリ
『バアル…蟲の王様と名乗る男の事か』
姉を見つめ答えを待つタツキ
『はぁ?そんな奴の事なんかどーでもいいわよ!』
『え?』
『マリさんっ!!!』
『は、はい』
『あなたねぇ、、どー言うつもりなんですかっ!!』
『…。』
返答に困るマリ。暫しの沈黙の後にマリはセオリに気持ちを伝え始める。
『確かにこの毒針は原田の命を奪い…』
『そうじゃないっ!!』
『え…!?』
『マリさん…あなた、若返って無いですか…??』
周りの数名がウンウンと首を縦に振る。
『え?そうなのか?自分ではちょっとわからないのだけれど…』
『確実に若返ってますよ!!しかも何ですかその服のデザインはっ!!!』
『こ、これは別に私の趣味とかでは…』
『露出が多すぎます!!!』
『露出…でも、それを言ったらセオリの着物もしょっちゅうはだけてるような…』
ドンッ!!!
『ヒッ、、ご、ごめん!!』
『全く…元々年相応に見えない美貌も持ってたし、おじい様を倒しちゃうほどの強さも持ってたって言うのに…そこから更に若さを手に入れ、武器も強化し、悩めなかしい衣装なんて着ちゃってさ!!しかもその羽ってオート回避機能とかもあるみたいじゃ無いですか!何なんですか!?チートですか!?どんだけ神様に愛されてるんですか!?ずるいですよ!!マリさんばっかり本当にずるい!!!』
『姉さん…』
『いやいや、セオリさんだって十分綺麗で可愛いと俺たちは…』
『おじさんたちはうるさいっ!!』
セオリに睨まれたじろぐ笹岡と峰岸。
『見てみなさいよ!』
そう言うとセオリはマリの横に並び皆に見比べさせる。
『まず、私より小さくて可愛い。それでいて大人っぽさもある癖に、笑うと幼くて可愛らしい。着てる服は妖艶で鮮やかで派手で華やかで…ぐぬぬ……』
『セオリ落ち着けって…』
『これで36歳ってどーなってるのよ!!!!私より16個も上なのに何もかも私より持ってて強くて…』
『セオリ…あまり歳を強調されると私も何だかやるせなく…』
『でも、若返ってるってのは事実合ってますよね?』
峰岸が冷静に議題を元に戻す。
『そうじゃな。マリの話からすると原田くんが魂に融合した事で二人の年齢の擦り合わせが入った。その結果マリよりも若かった原田がその年齢を引き下げた事により若さへ反映した。ってのが理由になりそうじゃがの』
『何にしても若返るのはいい事だし、マリさんもセオリちゃんも群を抜いて美人なんだからいいじゃないですか!!』
笹岡の意見に激しく同意する蓮見、その隣でこの場に居づらくなっているサナエ(自覚ないがサナエも可愛い)
『神の掲示の災いってのは前倒しで訪れてこれで全て終わったって事になるのかな?』
『それは正直分かりません。しかしセオリの出くわした蟲の王の生存の可否は掴めてないですし、これから今日を超える戦力、軍勢で攻め入ってくる可能性は低くない…』
マリが真剣な目で皆を見渡しながら戦いはまだ終わってないとアピールする。
『でも、マリさんその新装備でさらに強くなってそうですよね?きっと俺は勝てないと思う』
タツキは無表情のまま思った事を口にした。
『そうじゃな。正直マリの強さはワシやタツキとは数段階上の次元に届いてるように思えるな』
『そんな事は、装備が強化されただけ、、』
『謙遜せずとも大丈夫じゃぞマリ。お主が強く居てくれる事はこの村に住む全員の宝となり誇りになる』
『はぁ、ならば良いのですが』
『皆、マリに注目が集まっているが別次元の強さになったのはセオリも同じじゃて』
皆、ウンウンと首を振る。
『それは無いです。私は龍化した時のサイズやインパクトが大きいだけで今までと変わらず戦力として前線に出れるような武器も無ければ技術も無いです』
『蟲の王を追い払ったのはセオリ1人の力じゃぞ?マリを意識しすぎて自身の強さに目がいかないだけ。隣の芝はなんとやらってな。ワッハッハー』
新しい力を手に入れたマリとセオリ
イヌワシとタツキの関係性とは?
裏山に呼ばれたと言う雪舟は一体何を?
そしてセオリに吹き飛ばされた蟲の王バアルの生死は?
双山村を出て旅をしているりゅととあち
神の啓示は降りたのか、それとも……
物語はこの後さらに怒涛の展開を迎え、世界と共に急速に進み始める事になる。
いよいよ第2章も次話が最終回
ようやくこの物語の本編となる第3章が始まります。
気になる第3章の舞台や登場人物などは次話の本文、後書き等でその一部はお見せしたいと思っております。
そして、第3章を始める前に投稿してきたエピソード、特に序盤の方の投稿作品が非常に読みにくい改行、書き方になってしまってるのでそれらの修正作業をしてからゆっくり開始して行こうかと、、
また皆様の足跡のPV数やブックマーク、評価などが活動の大きな励みとなっております!
本当にありがとうございます!
それではまた次回、第2章クライマックスの投稿をお待ち下さい!
ではでは(* 'ω')ノ




