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世紀末な後始末  作者: 柊隼凌
第2章 新たな世界
39/40

#39 激闘の行方

挿絵(By みてみん)

『おまたせ』

何故か戦闘前から傷だらけのタツキ。


タツキのすぐ脇に二体の肉塊が転がる。


『タツキ!油断するなよ!斬るだけじゃこいつらは死なん』


『大丈夫。ムカデの時に学習したから』

タツキは空に舞うエーディンを見ながらポツリと呟く。


『蝶の鱗粉に気をつけて!!』

咄嗟にマリが叫ぶ!


(鱗粉?あぁ、あれか)


タツキは転がる肉塊を薙刀で払い飛ばす。そして薙刀を構え上空に対して水平に持ち上げ高速で旋回させる。


『うおおおおおおお!!!!』


その薙刀は周辺の空気を巻き込みながら上昇気流を作り出す!そしてそれは細く高く伸びていき竜巻となる!


(親善試合で見せた回転より数倍速い!!そして何!?竜巻!?なんて出鱈目な力なの……)


微笑みながら見守る雪舟と口を開けたままのマリ


エーディンは距離をあけ離れた木の上で鱗粉が吸い集められる様子を冷めた目で見つめる。


『おあいにくさま、竜巻でいくら鱗粉を集めようともその回転をやめた時にまた空気中に散布されるだけじゃない。技は派手だけど頭は足りてないようね!』


プチンッ。タツキの中で何かがキレる。


『おおおおおお!!!!』


タツキはさらに薙刀を加速させる!どんどん加速させる!さらに!もっと!もっと!!もっとっ!!!


上空高く伸びた竜巻は雲を巻込み圧縮させていく。そして、圧縮された雲は色を白から黒に変え、雨雲を精製して行く!



『おおおおりゃあああああ!!!!』


薙刀の回転をやめその遠心力を空に投げ捨てるように片手で空に叩きつける!!解放された雨雲が一気に周囲に広がり激しい雨に包まれる!!


『空の鱗粉は流れ落ちた。お前の羽根も濡れてる間は使えなさそうだな』


『ふんっ!可愛くないガキ!』

エーディンは悔しそうに唾を吐いた。


『小細工はやめて3対3のバトルでもしようじゃないか!』


新たな身体を手に入れて戻ってきたマーモンがニヤケながら提案する。


『ふぅ…転移してまたここに戻るのも飽きてきましたよ』

人型に戻っているベリトがため息をつく


『貴様たち、何でこの場に転移先となる同族種を連れて来てないんだ?何故わざわざ遠くから戻ってくる?』


マリがレイピアの剣先を2人に向けながら得意げな顔で質問し答えを待たずに更に続ける。


『答えは転移先を倒されたら残機がゼロになり復活出来なくなるから』


明らかに三人の顔色が変わる。


『図星の様ね。蝶の貴女も保険で何匹か遠くに待機させてるのだろう?』


『だったら何なのさ!』


『都合の良い蟲の身体、蟲の能力も限界があるって事じゃない?斬られてもすぐに即死しないと言うのは従来種と変わらない。餓死させるか出血による栄養供給が絶たれれば動きは止まる。人との違いは神経中枢が脳以外に複数ある事、血液は酸素を運ばず各部位から呼吸出来るから即死しない。それだけの話』


『説明ありがとう。それはあくまで蟲の特性でしかない。私たち半蟲半人は戦闘力が人間のままの貴様らとは違うんだよっ!!』


『そりゃすまんかったの。こっちはまだ無傷じゃが貴様らは何回瀕死になったんじゃったか…強いのなら早く本気でやってもらい物じゃ。ほっほっほ』


ザクッ!!


マーモンが近くの木を鎌で斬り倒す!

『今から見せてやるんだよっ!』


三人の身体に一斉に黒いオーラが立ち上がる。

そしてそのオーラは徐々に彼等を異形の姿へと変えていき半蟲半人の姿に変わる!


二足歩行の足に四本の腕、鬼の様な顔付きになり異形の角が伸びている。もはや蟲とは呼べない様な姿、まるで悪魔の様な印象さえ受ける。


マーモンは四つの腕それぞれが大鎌の2m超の戦士スタイル、エーディンは更に毒々しく大きくなった羽根と禍々しく揺らめく触覚。それぞれの手にダガーのような短剣を持った踊り子スタイル。

そして、ベリトは4本の腕の全てに自らの身体から抜き取った毒針のニードルを四本構えもち西洋の騎士を思わせる黒い外殻に包まれた剣士スタイルに。


四つの鎌を振りかざしたマーモンが雪舟に力任せに襲いかかる!

右側二本の鎌での二段攻撃を雪舟の頭部目掛けて叩き込む!!

雪舟は得意の剣速でその鎌を高速で弾き返す!

そしてガラ空きとなった脇腹へレイピアを突き立て飛び込むマリ!

そのマリの踏み込んだ右足を待ってましたとばかりにベリトのニードルが切っ先を掠める!


『ぐぅぅ………!!』

マリの顔が激痛で歪む!


『私のニードルが毒針なのを失念でもしてましたか?』


マリの顔色がどんどん青ざめていく。

(乱戦では私のステップは邪魔になり使えない、共闘経験の無さをこんな時に噛み締めることになるとは…)


シュバッ!


マリが毒針を掠めた足の太ももの表面を自らのレイピアで斬り毒を抜く。それを見た雪舟がマリの前に出てベリトとマーモンからの追撃を威嚇する。


『ハァ…ハァ…』

マリは軍服のポケットから止血帯を取り出し片手で器用に太ももに巻き付ける。さすが軍用の救急品だ。片手のみで使えるように設計されている。


『マリ、大丈夫か?』

『問題ない』


雪舟の鋭く光る眼光の威圧を感じベリトとマーモンは踏み込むことが出来ない。



―――――



『僕ちゃんはまだやらないのかしら?何だか登場した時から傷だらけだし…ふふっ』

エーディンがタツキを挑発する。


『上空のお仲間は全滅したみたいだぞ?』


タツキはここに駆けつける前に稜神山の山頂に巣くうイヌワシと一戦交えてきたばかりで満身創痍の状態を隠し戦っていた。


エーディンが空を見上げるとタツキを乗せてきた大きなイヌワシが優雅に旋回しながら飛行してる姿が見える。

その空には蝶の姿は一切見えなくなっていた。


『仲間?部下の代わりはいくらでもいるもの』

『随分余裕そうだな?』


ドスッ!


『なっ!?』


エーディンの鮮やかで妖艶な羽根を原田がスリングショットで撃ち抜く!


『上空の脅威が無くなれば俺はお前らを狙い撃ちするだけだ』


『鬱陶しいっ!!』


エーディンが原田に目を向けた瞬間、タツキが薙刀を地面に突きつけそのしなりを利用し一気に飛び上がる!


上空からの渾身の振り落とし!!

しかしエーディンはそれをヒラリと躱し宙に浮く。

対象を失った大薙刀が地面に大きな亀裂を開ける!


(なんて威力…)


ビュシ!ビュシビュシ!!!


狙い済ましていた射撃隊達の一斉放火がエーディンの羽根を捕らえ地面へと戻させる!


『雑魚共が調子に乗りやがって!』


鮮やかで美しかった羽根が見る影を失う程に大量の石と弓矢で射抜かれボロ切れのような姿に変わる。


『お前に飛ばれちゃ厄介そうだからな!それに的が大きくて俺たちの格好の餌食なんだ!悪く思うなよ!はは』


原田はベリト達の意識を向けさせるように壁上から大きな声で挑発する。



―――――



『喰らえっ!!』


マーモンの上腕二本から交差するような振り落としの斬撃!


雪舟がそれを躱しつつマーモンの腹に一撃を入れる!

腹を斬られたマーモンはそれを全く気にせず下腕二本による追撃!

刀を振り切ったままの雪舟にマリがタックルするように身体を入れ替えレイピアとサーベルでガードする!


そこにベリトのニードルの四連撃!!


キィーーーンッ!!カンッカンッカーン!


雪舟がそのニードル全てを弾き返し、すぐさま上半身を斜めに斬り割く!ベリトの外殻から僅かに体液が流れ出てくるが余裕の表情を見せつける。



『損壊覚悟の攻撃か。あくまでも毒針狙いって訳じゃな』


『私たちは自然治癒力も高いですからね!致命傷さえ避ければ戦闘中にも回復していきますし。ちなみに私の毒針は2回目からは50%の確率で絶命しますからご注意を』


ベリトの顔に笑みが浮かぶ。アナフィラキシーショックは通常20~30%で発症するがベリトのそれは5割で人を死に至らしめる効果を持っていた。


『蜂の相手はワシがする』


雪舟がジリジリとベリトに歩み寄る。


そこに飛び込むようにマーモンの四本腕による連続の攻撃!


一撃!、雪舟が刀で弾く!

二激!、雪舟の伸びきった腕に大鎌を振り落とすがそれをマリがレイピアを当て軌道を逸らす!


そのマリを狙ってマーモンの三激目の振り下ろしの鎌と同時にベリトが腰を大きく落し下から突き上げるようにマリに四本のニードルが迫る!


『はーっ!!!』

気合と共に雪舟が大鎌と四本のニードルを全て一刀のもとに断ち切る!!


『三日月斬り』

振り下ろした刀を下段に構えた雪舟は次の攻撃に備える。


そしてマーモンの四撃目の水平斬りをマリがサーベルで腕ごと斬り落としつつ身体をスピンさせ後ろ手にレイピアをマーモンの横腹に叩き込む!!


ドシュッッ!!


深く突き刺さったレイピアに手応えをしっかりと感じつつすぐさまベリトへと視線を移すマリ!


(!?抜けない!!)


即座に離脱するつもりがレイピアが腹に食込み次の行動に移れない。

それを見越していたベリトが即座にニードルを口から吐き出しマリの右肩を抉るように渾身の突きを打ち込む!


『ちっ、、』

レイピアを捨て身体を捻ったが2回目の毒の注入を許してしまう!


ドクンッ!!


マリの心臓が激しく動悸し視界が二重にブレだす。


『グッ……あああ…』


身体中を襲う激しい激痛!それに耐えるためマリは歯を食いしばる。


―――――


エーディンは羽根を射抜かれた痛みでよろけるように戦闘中の四人とタツキを合わせた五人が直線に並ぶ位置へと移動する。


ニヤリ。


強制羽化(リイクローズ)!!』


エーディンの身体が中心からバリバリと裂け、中から全く同じ姿のエーディンが現れる!そして完全再生した羽根を広げ鱗粉を一気に放出する!


『死の散布(デススプレイ)!!』


散布した鱗粉を自らの羽根の風圧で仲間の二人諸共、雪舟、マリ、タツキに振りかける!!そしてそのまま空に舞い上がり防衛壁全体にもその鱗粉を巻き続ける!!


『あーはっはっは!やられてるフリをしてからの全員まとめての駆除がやっぱ1番そそるわぁ~!ほら、もっと私の鱗粉を浴びちゃいなさいよ!ほらもっとよ!もっと~!!』


狂ったように上空でヒラリヒラリと飛びかいながら鱗粉を大量に撒き散らすエーディン。


それをモロに喰らった三人は口を塞ぎ目も開けられず身体中に痙攣を覚える。ベリトとマーモンも同様にその場でうずくまる。


『ひと吸いすれば目眩や吐き気~、ふた吸いすれば~全身痙攣~、さん吸いすれば~臓器不全~、よん吸いすれ……ぶあ…、あ…あれ?』


意気揚々と謳っていたエーディンを上空から急降下してきた稜神山の主である大イヌワシの鋭い爪でひと握りにされそのまま地面の上に押さえ付けられる!


『わ…忘れて…た…グギギ……』


爪が身体に食い込み、物凄い握力でその腹は握りつぶされ、もう1本の足はエーディンの頭部を握りつぶさんと徐々に力を込めていく。


『て、転移………』


『サセンヨ?我ガ爪は神ノ爪。貴様ノ魂ゴト掴ミ離ス事ハ無イ』


『ぇ………』


エーディンの顔が絶望に変わる。


防御壁内側で待機していた射撃隊の全てが鱗粉を吸い、その誰もが激しく苦しんでいる。


『マ…マリさ…ん…』


原田が激しい悪寒や吐き気、全身の麻痺と戦いながら防御壁から転がり落ち、そのまま戦場の前線へ這いながら進んで行く。


敵味方の全てを巻き込んだエーディンの鱗粉により南東の誰しもが動けずに苦しみもがく惨状に。


そんな中、双山村の北西部、また双山村から2kmほど離れた南側ではそれぞれで別の事態が起きていた。





《旧関東 中央樹海深部》


『りゅと!見てみて!天狗山と稜神山がすぐ近くに並んで見えるよ~!』

『最初は稜神山は殆ど見えなかったのにな!この並びで見えるって事は村の真南まで回ってきたって事だな』


『りゅー坊、前方300m!』

『蟻の群れ?いや行列か!目の色は赤だ!』


『行ってこい!』

『りょーかい!』


キュエーン様と三人で旧関東の百八つの霊場巡りをする中で蟲の行動パターンを目の色で知れる事を教わった。

それはとてもシンプルで青なら通常時、赤なら興奮時という事だ。そして蟲の目を注視してる時に気付いたことがある。俺の目はとても視力がいい!

旧世界での俺は視力2.0、元々とても良いのだがこの身体になった俺は更に視力が伸びていたらしく、あちやキュエーン様が見えない距離の蟲の目の識別をはっきり見分ける事が出来た。そしてそれは驚く事に夜でも意識して注視すれば遠くの物を確認可能にさせていた。


『1列に並んでるなら丁度いいっ!!』


縮地で列の後方まで一気に移動し、錫杖から二本の刀を抜く。


『鎌鼬・風走り渦巻き!!』


最後尾から先頭までの長い行列を一気に縮地で飛びつつ身体を高速回転させる!


巻き込まれた全ての蟻が一瞬で細切れに変わる!


この世界の仕組なのだろう、技名と技の特徴が合えば合うほどその精度が高まるのだそうだ。それを言霊と呼ぶとキュエーン様が教えてくれた。


厨二病万歳な設定だ!



『キュエーン様あああああ!!!!終わったよー!』


まだ追いついてない二人に掃討報告をする。


『わっちの事はキュエと呼んで良いぞ。連れ子二人から様呼びされるのもそろそろ鬱陶しくもなってきおったからな』


『呼び捨てはこっちも呼びにくいから、キュエさんにするね!』

『なら私もキュエさんにする!』


追いついてきた二人が列の先頭に空いた謎の穴を発見する。


『巨大種の蟻も土の中に巣を作るの??』

『それは無理じゃよ。このサイズの蟻が土の中で巣を掘ろうとしてもすぐに硬い地盤にぶち当たるし、頑張って掘り進めば地盤が落ちて圧死するじゃろうな』


『じゃあこの穴はなぁに??おーい!どなたかいませんかー??』

あちが穴に顔を突っ込み返答を待つ。


『目を赤くして行列してたって事はこの先で戦闘になっていてそれの応援部隊としての進行じゃな。で、地上からでは無くわざわざ穴を掘って進んだと言うことは…何じゃろな?まぁいいか』


『うんうん、まあいいか!』

『いいかー!』


『キュエさんこの穴どーします?』

『そうじゃのぉ、穴の先にいる蟻達がこっちに戻って来られても面倒じゃ。蓋だけしとくかの』


『大甲羅どっすん!』

巨大な甲羅が顕現しその穴の上にどすんと落ちる。


『丁度いい。ここで暫し休憩じゃ!』


中身の無いその甲羅は雨風を凌ぐには丁度いいテント代わりとしてキュエさんは仕切りに自慢した。


『りゅー坊!東側の岩山の裂け目の確認。それと南西の茂みの先も何やら動いてるぞ』


『えーっと、東の岩山は…蜂だ!蜂が何かに警戒してるっぽい!目の色は赤!で、南西の茂みはっと、、んー、何か動いてるけど茂みが邪魔でここからじゃ分かりにくいな』


『なるほど。警戒した蜂が裂け目から顔を出してるのならそれは恐らく巣になっておるはずじゃ。あちび!お前が行ってこい』


『あ!ち!!行ってきまぁす』


『んじゃ、俺は南西見てくるね!』



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