#38 双山村大乱戦
双山村の南東部に突如現れたベリトと名乗る人物。その男は自らを神に仕えし者だと名乗り調査に訪れたのだと言う。そしてマリが軍人である事を知り戦争を引き起こした張本人として駆除すると発し巨大化した蟻や蝶たちを呼び出した。
(まずいまずいまずいまずいまずいーー!!どーしてこーなった!?神に仕えし者と言えば村に通されるのでは無かったのか!?いや、それは私が足を人体化させるのを忘れてたせいか…それは仕方ない。うっかりミスは誰にでもある。戦争を引き合いにして最もらしい事を話せば信じると思ったら元軍人だっていうから流れで脅しをかけ蟲状態の姿を見せるだけでなく蟻と蝶の軍勢まで見せつけてやったのにどーしてこいつらは逃げ出そうとしないのだっ!!私は霊力者が減って結界が弱まってるから見に行けと言われて来ただけなのにいいい。しかも大して結界が弱まってないのもおかしい!!蟻たちが穴を掘って侵入出来た位置から先にはまだ強力な結界が発動してやがる。個体として力の劣る蝶達に至っては元の境界線からわずかの距離しか侵入出来ずにいやがるじゃないか!!ここまでしといて私から身を引くのはかっこ悪い…どーする?どーすればいい?)
『ふはは…ふはははははーつ!どうだ?私が一声呼べば蟲たちがすぐに駆けつけてくれる!軍隊蟻だけでも総勢2万匹はくだらない数が押し寄せてくるぞ!大人しく白旗を…』
『2万匹?巨大化した蟲どもは確かに強力だがその個体の大きさから繁殖には向かず樹海内でも目にするのは稀のはず。ましてや蟲どもは共存どころか互いに喰い争い生物。2万匹もいるとは到底思えんが?』
(くっ…こいつぅぅ、蟲たちの生態を理解してやがる、、確かに軍隊蟻は樹海の中全てを呼び込んでも精々300匹が良いとこか、、まずい、まずいまずい、、)
『それにどうした?穴から出てきたは良いものの、防御壁側には一行に進行出来ないみたいね。あの辺が貴様たちの結界侵入限界って事になるのかしらね』
マリはレイピアを揺らし、しならせながらベリトに語りかける。
『蝶たちに至っては樹海から出てくる気配も無さそうね』
『私の号令を待っているだけですよ?』
『あらそう、それに関しては私も同意するわ。原田!防衛壁は結界の守護圏内だ!安心して掃除してくれ!』
『イエス、マイボス!射撃隊!前方の蟻に目標全集中!掃討せよ!』
防衛壁の中部の窓と壁上に登って待機していた射撃隊たちから一斉に石の弾丸と弓矢が蟻達に降り注ぐ!!
その集中砲火を喰らった蟻達の身体には無数に空いた穴や突き刺さった矢から流れ出る体液が迸った!
『楽勝っすね!原田さん!』
『油断するなよ。蟻達はまだまだ穴から出てくる見たいだし飛行種達がいつ新手として現れてもおかしくないからな!』
『了解!』
囲まれていたはずのマリの後方の蟻達は原田達射撃隊によってその効力を完全に削がれていた。
『蝶達の能力が気になるところだけど、特段従来種と比べて異形な進化は遂げてない所を見ると…羽根からの鱗粉による毒や麻痺って所かしらね。けど今は北星の風。回り込まれでもしない限り私達に降り注ぐことは無い』
『くっっ、、』
ベリトを会話に集中させながらジリジリと距離を詰めていくマリ
『射撃隊、弓矢は温存だ!スリングショットのみに切り替えろ!後方支援の者は河原から石をとにかく運んで補充しといてくれ!』
(後ろは原田に任せて大丈夫そうだな…)
マリが腰を一瞬落とした瞬間に蜂の姿になったベリトは空へと飛び上がる。
『ちぃ、、』
『いやぁ危ない危ない。しかしここには貴女のレイピアも届きませんでしょう?』
(どうする?このまま消耗戦で風向きが変わるのを待つか、、それか別の昆虫種の増援部隊を集結…いや、それでは私の無能ぶりが明るみになってしまう、、)
『マリさんと言いましたか?もう少しお話をしましょうか?貴女を駆除すると言ったのは言葉のあやです。正式には新聖法によって貴女の罪をしっかりと見計らった上で適切な処置を…』
『貴様らに私の処遇を委ねるつもりは毛頭ない。お前は一体何をしたいんだ?配下の蟲たちの犠牲を増やすばかりでお前は飛んで逃げてるだけか?』
『ぐっ、、』
(こいつぅ…言わせておけばああああ)
ビュゥゥゥーンッッ!!
不意に飛んできた石がベリトの顔を掠める!
『ちっ!外したかぁ!蜂さんよぉ、そこは俺からしたら射程範囲だ!油断してると頭ぶち抜くぜ!』
原田が防衛壁の上からベリトを挑発する。
『舐めんなよ?一兵卒がああ!』
ベリトが原田に向かって急加速し飛んでいく!そして尻から鋭く伸びたドス黒いニードルが先端から汁を垂らしつつ原田を標的に捕らえる!
『死ねぇ!!』
ベリトのニードルが原田の頭部を捕らえる瞬間、原田は首を傾け紙一重にそれを躱す!そして真横を通り抜けようとしたベリトの脇腹に拳を一撃叩き込む!
ベリトは空中で少しバランスを崩すが大きなダメージは受けていない。
『流石にパンチじゃ倒せねぇか、、メリケンサックでも開発しとけば良かったぜ、、』
『お前が運動神経良いのはわかりました。けど他の連中は私の攻撃を躱せると思いますか?私ならこの位置でも結界効果は影響しない!』
ベリトはそう言うと防衛壁沿いの1番奥でスリングショットを構えている村人に向け飛行していく!
その姿を原田はただ見つめる。
『まず1人っ!』
ベリトはおしりを突き出しニードルの切っ先を村人に向け降下して行く!
ガッ!バババババッッ!!
『何っ!?』
ベリトは何かにぶつかりその障害物に接触している羽根が細かい打撃音を打ち鳴らす!
体勢を整え1度上空へと舞い上がる。
『一体何が!?』
目を凝らして防衛壁周りをよく見るとキラキラ光る何かが見える。
(ワイヤーか!!!)
『残念だったなぁ、蟲に飛行種がいるのは俺らも当然知ってるんだ。屋根も無い壁沿いで戦うだけで飛行種対策をしてないとでも思ったのかい?人が通れても大型種は通れない感覚でワイヤーの屋根を張り巡らせてあのさ!』
『この小癪なぁ、、』
上空のベリトに対し射撃隊がスリングショットを一斉に射撃する!
ガンッ!ガンッ!ドスッ!ブシュッ!
外殻が弾く打撃音とそれの無い腹部へ突き刺さる音が激しく音を立てる。
『ギャッ……』
ややよろけながらも飛行し樹海エリアへと避難するベリト。腹部からは緑色の体液が流れ落ちる。
『いってえなああああクソ野郎どもおおお!!!』
マリの手の届かない木の上で一旦羽根を休ませる。
『茶番はやめだぁ!神に仕えし者?そんなん知るかぁ!軍人?新聖法?どーでもいいわ!!俺は最強のオオスズメバチとしてこの南の樹海を任されたんだ!!お前らは絶対許さない!』
怒り発狂したベリトは木の上で大きく羽根を擦り合わせる。
『マーモンッ!!エーディン!!』
叫び声を上げてから僅か30秒、樹海の奥から2体の大型の昆虫が飛行し向かってくるのがわかる。
『新手の大型飛行種だ!全員壁上から降り飛行種に備えつつ蟻の殲滅を続行!』
『了解!!』
ベリトの元に2体の飛行種が舞い降りる。どちらも大型のカマキリと蝶だ。地上に降り立つと同時に人型の男女に姿を変える。背が高く隆々とした褐色の筋肉に黒のタンクトップ、迷彩パンツに軍用ブーツ姿の男性とカラフルなワンピース姿の金髪の女性。
(あの姿、、米兵か、?)
マリは後方に湧く蟻に注意を払いつつ射撃隊からの動線に入らないようにポジションを取る。
『随分一方的にやられてるじゃないかベリトぉ?』
『元々聞いてた話と随分違ってたんだよ!霊力者が減って結界が狭まってる今がチャンスだって言うから来たのにあの壁を見ろよ!完全に戦闘が起きる前提で待ち構えていやがったんだよ…』
『あら?泣き言ですの?最強のスズメバチ様は何処かに言ってしまったのかしら?』
『ふんっ!俺を弄るのは終わってからにしてくれよ!手前の軍服の女と壁の奥にいる背の高い男には気をつけろよ』
『せっかく来たんだ、精々楽しませて貰うとするよ。エーディン、壁の奥は任せた!俺は手前のかわい子ちゃんの相手をさせてもらうぜ!』
筋肉質の男はそう言うと樹海を出てゆっくりとマリへと距離をつめる。
『よぉネエちゃん、俺と楽しくダンスしようや!』
男の両腕がカマキリの鎌に変わる!右手を大きく振り上げ一気にそれを振り落とす!
シュパーーーーーーン!!!!
『え…!?』
迎撃体勢に入っていたマリの顔が予想外の事態に驚愕している。
『遅くなってすまんかった。手伝いは不要じゃったかな?』
マリの左手側から瞬時に飛び出してきた雪舟が下段から
一気に斜めにマーモンを斬り上げた!振り落とす予定だった右腕はその状態のまま上半身と共に地面へと崩れ落ちる。
ベリトとエーディンは口を大きく開けたまま下半身のみで立っているマーモンを見つめる。
『ちと急遽裏山に呼び出されてしもうての』
『(裏山??)今の早業は私と戦った時には見せてくれませんでしたよね?』
雪舟に嫌味を言いながら嬉しそうに微笑むマリ
『そうじゃったかな?出せる機会を潰されておったからの!わっはっは!』
(物凄い安心感。今まで感じたことない気持ちだ)
マリは肩の力を抜き深呼吸をする。
『マリさん!蟻の出現止まりましたので土砂で穴は塞いであります!』
マリが後ろ手にグーサインを贈る。
『エーディン、この樹海の蟲共集められるだけ集めてこの村に突撃させろ。責任は私がとる』
『分かったわ。丁度風も北西だし鱗粉による支配化で蟲たちの理性を壊して突撃させるのはナイスアイデアだわ!』
エーディンは頭上で待機している大型の蝶よりもさらに一際大きい蝶に変わり空に羽ばたく。そして頭上の蝶たちと共に羽根を細かく振動させ鱗粉を大量に空に撒く!
『はーはっはっは!よーく聞けお前ら!エーディンが撒いてる鱗粉の支配効果で今からここに集まる蟲たちは理性を無くす!理性を無くした蟲たちは自身の損壊など一切気にせずに全てを薙ぎ倒し奪ってゆく百鬼夜行と変わる!鱗粉が撒かれた今、お前らの負けは確定した!』
勝利を確信し高笑いするベリト
『随分楽しそうだなベリト?俺の出番はまだ終わってねーのに一斉攻撃させる気かよ?』
樹海の奥から先程斬ったはずのマーモンが現れる。
『いきなり真っ二つにされといて良く言いますよ。全く、、』
『wahahaha!やっぱり蟲の能力は最高だなベリトよぅ!斬られた位では即死にはならねぇし、同族種が近くに入れば簡単に転移出来ちまうからな!』
『ほっほっほ、今の一撃だけで終わられては準備運動にもならんかったから助かるわい』
『じーさん強がれるのは今の内だけだぜ?第2ラウンドからは地獄を見せてやるぜ!』
『これが人型の蟲の戦い方か。なるほど…話に聞いた通りの化け物ってわけね』
『そうじゃ、人にとっての致命傷は奴らにとっては致命傷にはならん。細切れにして燃やせれば楽なんじゃがな。燃やす手段が無いのなら魂ごと斬り落とすしか無いじゃろな』
『魂ごとか…ふふ、こいつらで実戦練習させて貰って身体で覚えることにします!』
『舐めるなよ、軍服女あああ!!』
ピーーーーーーーッ!!!
その場にいた全員が甲高いホイッスル音がした上空を見上げる!
バサッ バサッ
『鳥?』
『どうやら間に合ったようじゃな』
マリの目に映った1匹の鳥を見て雪舟は顎髭を撫でながら上空に向け軽く手を振る。
『なんだあの鳥…デカイな、、鷲か?』
『いや、鳥だけじゃない!何か乗せてる!』
『!?、、人だ!!人が乗ってる!!どんだけでかい鳥なんだ!?』
防衛壁沿いの射撃帯の面々もその鳥に注目を寄せる。
上空を旋回しななら徐々に高度を下げていたその鳥は樹海の上に飛んでいる蝶たちの群れに向かって一気に急降下する!
『速い!!!』
太陽の陽を手のひらで遮りながら見ていたマリがその速さに思わず声を出す!
エーディンはその突撃をひらりと躱すが避けきれなかった数十匹の蝶たちが身体を引き裂かれ落下していく!
ズダーーーーン!!!
鳥の背にいた何者かがベリトとマーモンのすぐ後ろに飛び降り着地すると同時に手にした薙刀で一気に薙ぎ払う!!
物凄い力で両断されたスズメバチと人型のマーモンが地べたに転がる!
『おまたせ』
顔や上半身に爪で裂かれたようないくつかの傷を抱えたタツキが遂に姿を現した!!
やっと挿絵を覚えました!
前のエピソード達にも少しずつ足して行けたらと思います!




