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世紀末な後始末  作者: 柊隼凌
第2章 新たな世界
35/38

#35 目的を探して

化け蜘蛛ミュリンとの激闘を終え蜘蛛の巣窟は見る影を失った。


そして樹海の木々すらも焼失した大地から少しづつ水が湧き出てきている。


『やはりここに水源があってそれを止めてたんだね…』


坂巻が水を絶たれた住民達の苦しみ抜いたであろう日々を想像し、静かに涙する。この水源が元に戻って水路を流れていってももうそこには田畑も無ければ人も居ないのだから。


『坂巻宮司、火のお嬢ちゃんの容態は如何ですか?』


『坂巻でいいですよ!あちちゃんは気を失っているだけで大きな外傷も無いので時期に目覚めると思います。ご心配頂き感謝致します』


坂巻はあちの外傷を確認する時にやけに巫女服が綺麗なままなのが気になってはいたが今はその話を出す空気では無いだろうと思い。自身の胸に留めていた。


『それより、りゅとくんが…』


りゅとはまだ呆然と立っていた。涙こそ止まってはいたが自分が仕留めきれなかったこと、矢もすれば三人共に死んでいたかも知れない。その責任は無責任にも勝てると豪語した自分自身の自意識過剰でしかないと自責していた。


ナムチがりゅとに歩み寄る。


『お前は良くやったと俺は思うぜ。正直ここまでやれるとは思って無かったからな。悔しかったら次に活かせ。てめえの強さに納得いかねぇならもっと強くなれ』

そう言うとナムチはりゅとの頭をポンっと優しく叩いてからタマモの隣に戻って行った。


『坂巻さん、そろそろ日も暮れますしお嬢ちゃんを小屋に運んで今夜は皆でここで休みましょう』

タマモはナムチに行きましょうと声をかけ二人で集会所へと歩いていく。


『りゅとくん、僕も君の強さには感服したよ。最後の攻撃を防げなかったのは僕のせいでもある。それに今はあちちゃんを早くゆっくり出来る場所で休ませてあげよう』


坂巻はあちを抱きかかえりゅとの前に立ち、りゅとが静かに頷くのを確認してから二人の後を追った。


『先に行っててください。あちの事ありがとうございます、、』


『うん、わかった。後からおいで』


集会所の中に入るとタマモさんが簡易ベッドを用意してくれていた。あちにシーツをかけてから坂巻を椅子に腰を下ろす。ここまで霊力を振り絞ったのは久しぶりだ。キュエーン様が駆けつけるのが遅かったら三人は死んでいた。どんな理由でどうやってあのタイミングで来てくれたのかは謎のままだが今はそれでいい。生きてるだけで十分だ。


この小屋に時計があったとしたら針の音が聞こえてきそな程、静かな時が流れる。


タマモ、ナムチ、坂巻の三人はそれぞれがそれぞれに胸につかえる何かを抱いていた。


『結界と攻撃の複合術、あのガキ二人もそうだけどあんたも只者じゃなかった。二人のガキ連れて討伐しようってのは伊達じゃ無かったな!』


『いえいえ、僕はただの宮司ですし討伐を舐めていたのも事実です。結果たまたま生きているだけで僕はあの子達を止めるべき立場だったのを見誤っていたのが解り恥ずかしい限りです、、』


『化け蜘蛛のミュリンの力を侮ってたのは私達二人も同じです。あそこまで威力のある一撃を温存してたとは思っていませんでしたので私もナムチに守られていなかったらタダでは済んでいませんでしたわ』


『戦闘は基本先手必勝だ。先手を取って倒しきれなかった奴だけが反撃を喰らう。今まで倒してきた奴らの中にも大技を使おうとしてた奴ららは居たはずだぜ。それをさせなかったタマモみたいな強者は大技出された時の対処が下手なヤツが多いかもな!』


『私は貴方と違って強者では無いですよ、』


『ミュリン…お二人はあの蜘蛛の事ご存知だったんですか?』


『名前だけね。今までの旅路で聞いてただけですわ』

タマモは涼しげに返答する。


『そうですか……そう言えば猫の都を目指してらっしゃるんでしたよね?』


『ええ、別名《化け猫の里》を…ね』


『やはり知っておられましたか。タマモさんのその真の姿を見た時に察しは付いておりました。狐?妖狐ですか?』


『ええ、私は人と狐の混血としてこの世に産まれてきました』


『なるほど…ではタマモさんも樹海出身の千年生存者のお一人になられるのですね』

タマモは静かに頷く。


『僕は出来る限り住んでる皆が平等に仲良く過ごせる場所を作りたいと思ってて。元々うちは猫神社という事もあり獣人化、いや人獣化した千年生存者達が自然と集まってくれて。そのお陰で霊力の総量も多く敷地を広く利用できるようになり他と比べれば豊で賑やかな場所になったかも知れません』


『一度おじゃまさせて頂いても宜しいでしょうか?』


『うちには入国制度のようなルールもありません。出入りは自由。住むも離れるもタマモさん方の自由です。ただ…』


ポツポツポツ ザーッ


『あら?雨…』

雨音が聞こえタマモは窓から外を見る。人影すらない集落の景色。かつてはこの窓から見える景色の中に住民達が明るく元気に生活をしている情景も見れたのだろうなと何ともやるせない気持ちになり胸が苦しい。


『猫の都を仕切ってる猫又たちとの共存共栄が可能かどえか?って事ですよね?承知しております』


『なら良かったです。揉め事は苦手で…』


『私達は揉め事が嫌いだったので西の奥地からわざわざ出てきてますのでご安心を』


一方その頃



『雨か…』

激しい戦闘が終わり、熱の冷めた身体で受ける雨は普段よりも冷たい。特に何かを意識した訳ではなかったが自然と目に映った小さい神社へと身体を誘った。


天狗神社よりもだいぶ小さい作り。階段を昇り引き戸を開け中に入る。小さな拝殿、目の前の本殿には何かの神様の仏像が一体祀られている。


(この神様も無念だっただろうな…)


正座をし村人たちの救助が間に合わなかった事を神様に謝った。俺は何がダメだったのだろうか?一つ一つゆっくりと振り返る。


集落に来るのが遅かった?いや、あちから聞いた話で推測するならば蜘蛛女が双山村に来る前にこの集落を襲っていた。卵をその時既に植え付けられていた可能性が高い。住民の救助は無理だっただろう。なら、その後の戦いはどうだっただろう。俺は最初に一人で飛び込んで目の前に映る大蜘蛛達を錫杖や下駄での打撃で叩き落とした。行動不能にさえすれば済んだと思っていた。そのせいで最後の転移を許した。


ミュリンとの戦いではどうだろう。蹴り飛ばしてから一撃目の鎌鼬(かまいたち)は仕込み刀を抜いて斬り込んだ。その時に節足を何本か落としたが斬ったというより叩き割ったんだと思う。二激目の鎌鼬・渦、咄嗟に浮かんだ回転斬り。アイデアは悪くなかったと思う。この時は打撃ではなくしっかり斬撃としての感触は残っている。けど斬り込みが浅かった。致命傷は与えられていない。その後トドメはあちに頼る形になった。で、最後の黒炎の攻撃。この時の俺は何も出来なかった。何も浮かばなかった。立ち止まっていた。


縮地で1人だけ緊急回避しようと思えば出来ていたはずだけどそうしたいと言う気持ちにならなかった。目の前の二人を抱えて飛ぶほどの時間的猶予もなく、俺はあの時絶望していたんだ。諦めていた。俺は負けたんだ。


自問自答を繰り返す。


錫杖から仕込み刀を抜きまじまじと見ながら考える。


鎌鼬では斬れずに鎌鼬・渦では斬れた。あぁ、そうか。この刀は直刀なんだ。振っただけでは刀は斬れない、振ると同時に引かなきゃ斬れないんだっけか、回転の時は自然と引く力が発生していたって事だ。日本刀の斬れ味が鋭いのは反りがあって一振の動作で「引き」も加わるから斬れるんだって師匠が教えてくれてたっけ。


一撃目や二激目で倒せていたら黒炎は撃たれることも無かったかも知れないな。もっと決定力を高めないと…。


最後の黒炎はどうする?何か出来ることは無かったか?二人の救出、縮地のスピードの問題では無い。あの状況では恐らく縮地で数回飛びながら避難してる余裕は無かった。あれを防いでくれたのは亀か…。絶対的な物理防御、盾でも持ってなきゃ無理だ。俺の強みは何だ?二刀流、縮地、団扇の風…風を盾のように…。


黒炎を風で押し返す?いやそれならあの二人を巻き込んだだろう。上昇気流の壁、弱すぎるな。いっそ風の球体を作ってバリアみたいに…何にしても風力や風量をもっともっと増やさないと…。


『随分悩んでおるようじゃな少年よ…』


『え!?』


慌てて周囲に目を配る。神社の中には誰もいない。入口の引き戸も閉まっていて外にも人影はない!


『ほっほっほっほ。ワシはこの土地の神じゃ』


『神!?神様!?』


『ほっほっほっほ。まぁその話は別に良い』


(これがあちの言っていた神の声か…)


『もうここの住民は1人残らず旅立った。ワシを祀る民たちものうなった。そのうちワシも消えるじゃろう』


『え!?』


『神とは人々からの信仰ごあって初めて存在できる者、信仰する者が居なくなった神は消えるのが世の理じゃ』


『そ、そうなのですね…』


『ほっほっほっほ。別に悲しむことでもない。ワシもまた別の何かに変わるだけ。そんな事よりもワシが神としていれるこの最後の際に少年の自問自答をブツブツ聞かされ続けても後味が悪くてのう』


『それは、、すみません、、』


『少年よ。まずは己自身をもっと良く知る事じゃ。お前の得た能力(ちから)お前自身の能力(ちから)は何なのか。その眼は映るものを見るだけか?その錫杖はただ刀を仕込んでるだけなのか?その団扇はただ風を吹かせるだけなのか?その横笛はただ音が出るだけなのか?その下駄はただ丈夫なだけなのか?』


『は、はぁ…』


『そしてお前は何者なのか。少年と違ってあの妖狐は自らを妖狐として良く理解できておる。少年、それとあの少女、お主たちは自身が何なのかを理解できてないから能力(ちから)を使う想像すら浮かべられていない。もっと知るべきじゃ。己を。己が何者なのかを。己が持つものが何なのかを!』


『俺が何なのか…』


『さてと、そろそろ時間じゃわい。悪かったのぉこんな老神のお喋りに付き合わせてしまっての。最後に一つだけ教えといてやろうかの。お主の持つ刀、それは二本の様で二本に在らず。一振の刀を二本の刀に変えただけ、主の刀はな、《布都御魂(ふつのみたま)》という名を持つ一振の刀なのじゃ。それがとある戦いで折れたものを加工して二本の仕込み刀として拵えたと言う訳じゃ。お主のその小さい身体で使うには好都合!運にも大分恵まれておるようじゃ。ほっほっほ!』


『一振の刀…ふつのみたま、、』


『ワシはもう消える。この神社は廃れを待つのみとなる。あの少女の五行の炎でワシと共に弔っておいてくれ。宜しくな…』


そしてその声は一切聞こえなくなった。


『りゅと?ここに居たのか!』


『おじさん?』


『雨に打たれて風引くと思って見に来たんだ。あちちゃん起きたよ』


それから俺はおじさんと共に集会所へと戻り、タマモさんとナムチさんはおじさんと共に猫の都に行く話を聞いた。おじさんから俺達も行く宛てが無いなら一緒にと誘われたのだがあまり気乗りはしなかった。行ってしまうとただ甘えてついて行ってるだけのように思えて心がスッキリしない。猫の都の大まかな場所は教えてくれたので行こうと思えばいつでも行けるだろう。


疲れきった俺はすぐに眠りについた。




翌朝




『あなた達にはまた何処かで会えそうね。楽しみにしてるわ』

『りゅとくん、あちちゃん、無理せずにね』

『んじゃまたな』


『お世話になりました』

『おじさん、タマモさん、ナムチさんたちもお元気で!』


おじさんとの共闘は印象強く残るものではあったが出会ってまもない関係。特に別れを惜しむような間柄でもない。

結局タマモさんと狐の姿に関しての話やおじさんの術の話などを聞く意欲が湧かないまま俺たちは別れた。

自分の弱さをどーにかしたいって事ばかりが頭の中をぐるぐると回っていく。



そしておじさん達は猫の都へと向かっていった。

そして俺はあちにだけ神社で神の声を聞いた話を打ち明けた後、五行の炎で神社を燃やし、あちと二人でこの土地の神を弔った。


『タマモさん狐のケモ耳と尻尾付いてたね!』

『ああ付いてたよなぁ、、何か自分の事で悩みすぎてて思考がほわほわで、、』

『姿が変わる人、私の他にも居たんだ、良かった、、』


(ずっと気にしてるんだなぁ、、)


『ほら!またぼーっとしてる!』

『ごめんごめん』



あちは2人きりの時は饒舌になる。各言う俺も人の事は言えないのだが、、


『そうだ!りゅと!見てみて!』

あちが嬉しそうに巫女服を強調し見せてくる。


『ん?何かイメチェンでもしたのか?』

『ぶー、違うよ!燃えてないの!炎化してもちゃんと残っててくれたの!凄いでしょ!!』


目の前でくるくる回りながら笑顔で喜びはしゃいでいる。双山村で暮らしてた時はずっとこんな風にいつもはしゃいでる姿ばかりを見てた気もするなぁ。


『うんうん、すごいすごい』

『何その言い方!あ…!わかった。残念なんでしょ?ねぇ??服が燃えなくて残念って思ったんでしょ?りゅとのえっち!!』


『そんなんじゃねーし!!お前みたいなぺった…』

『は?ぺった…?』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


『ちょ、、待て、違う!言葉のあやで、、、あ!飛行機!』

『え?』


『縮地っ!!』

ザッ


『あ!逃げた!ずっるーい!あとで蹴っ飛ばすからね!!』


近くの木の上の枝に止まり、ごめんごめんと言いながら周りの景色を見る。山々と海、手前にはまだまだ広がる樹海の森。


『ねぇりゅとー、これから私たちどーするのー??』


『そうだなぁ、とりあえずは計画通りこの集落で暴れたのはうちらだって形跡をここに残して。おじさん達は北東に向かってったし、双山村は東にあるんだから南西にでも少し向かってみようかな!』


『南西かぁ、猪とか鹿とかたくさん居そうなとこが良いなぁ、、そう言えばお腹空いたぁ、、お肉ぅ、、』


『あちは食い意地がほんと張ってるよなぁ、何処につくわけでもないのに、、って違うぞ!背の話ね!背の!』


ガルルルルル…


『早く降りて来なさい。木ごと燃やそうかしら…』

『ひぃぃいいい、、今すぐ降りまーす!!』


ひょいっと枝から飛び降りる。この高さなら裏山の修行で何度も降りているので朝飯前だ。


ツルンッ


『え!?』

ドテッッ!


足元が滑ってコケた!?


『痛たたたた、何だよ?一体何が……亀っっ!?!?』


『はーはっはっはー!困っておったな?困っておったじゃろー??キュエーン様の登場じゃー!』


着地予定の場所に一匹の黒い亀、甲羅の継ぎ目や手足の所々が黄色がかっていて、この色の亀は初めて見る。それに垂らしていたはずの髪を1本に束ねて、いわゆるポニーテールってやつにしていて何処か雰囲気の変わったキュエーン様が立っていた。


ふと気になって背中を見てみるとやはりマンガ肉を背負っている。けど亀は何も背負っていない。


『お、おはようございますキュエーン様!昨日は、昨日も助けて頂いたみたいで本当にありがとうございました!』


あちが何度もペコペコ頭を下げお礼を伝えている。こないだキュエーン様は、亀の背中には困り人が望んでいる物が見えると言っていたけど今日は何も見えていない。


『おチビちゃん困っておったのぉ?困っておった!はっはっはっはー!』


高らかに笑いながらキュエーン様は亀の上に腰掛ける。


『お肉で困ってたかな?』

あちが首を傾げ視線を上に向け何かハンバーグでも想像してるような顔をしてキュエーン様に答えた。


『今日はお肉ではないわ。お主が求めてる物は見えてるじゃろ??』


『へ!?』

お肉の妄想を消し飛ばされ、ぽけーっとするあち。


『これじゃこれ』

着物からはだけて露わになった太ももをペチペチ叩いてキュエーン様は続ける。


『わっちじゃ、わっち!』


『ええええええ!?』シンクロ

第2章も残り数話となります!

このタイミングで申し訳ないのですが数日夏季休暇を…

リフレッシュしてから続きを書いていこうと思います!



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