#32 集落を探せ!
西の集落を目指し樹海に潜入したりゅととあち
雪舟の知り合いでもある猫の都の宮司のおじさんと出会い3人で樹海を進む中、食事にお肉を求め癇癪を起こすあちの前に突如として現れた謎のマンガ肉。
『お肉ぅ、、お肉ぅぅ~』
あちは完全にお肉に目を奪われ両手を前に出しフラフラとお肉に向い迫っていく。
(これは、悪魔による幻覚での誘い出しか!?)
おじさんはすぐに脇に置いていた杖、金剛杖を拾いお肉の方向へと構える!
その慌てたおじさんの姿を見てりゅとも遅れて錫杖を構え何時でも縮地で飛べる体勢をとる。
『お肉ぅ~』
『あち!待て!止まれ!』
りゅとが叫ぶ!
そして歩いていたマンガ肉たちが茂みの切れ間から全貌を表し出す!!
ノソッ ノソッ ノソッ
そこにはそれぞれ色違いの3匹の陸亀?が甲羅の上にマンガ肉を乗せ連なって歩いている姿があった。
先頭が赤い甲羅、真ん中が黄色、最後が青い甲羅の亀。
『なんでこんな所に亀が、、?』
拍子抜けして錫杖を下げる。
『え、まさかこれって、、』
おじさんは何かを思い出したようだ。
ノソッ ノソッ ノソッ
『亀がお肉を乗せて散歩してる、、』
我に返ったあちが呆然とする。
『信号、、かな?』
どう見ても信号機を彷彿とさせる色と並びに既視感を感じるりゅと
『りゅとくんこれはきっとね、、』
おじさんが何かを言いかけた時、青亀の後方の茂みがガザガサと音を立てた!
臨戦態勢をとり構えるりゅと!
茂みの音に驚きしゃがみこむあち!
ガサガサガサッ バサッ!
『ふぅ~。やれやれ、用を足すから待ってろと言ってあったのにマイペースな奴らじゃ…』
茂みから現れたのは1人の女性。紫と白を基調とした着物姿の20歳位の女性が背中にマンガ肉を括り付け現れたのだ!
『さてと…』
俺たちに気づいても驚く様子もなく、ゆっくりと3人の顔を見回している。
『お前じゃな!そこのちびっ子!』
あちを指差しニコニコする謎の女性
『ち、ちびっ子…』
当たっているので言い返せずに怪訝な表情を浮かべるあちの横におじさんが歩み寄り片膝をつく。
錫杖を構えたままのりゅとの前に手を出し警戒を解くよう促した。
『貴女はもしかして…救援者?様でらっしゃいませんか?』
『ほほぉ、、』
名乗る前に認識されてた事に驚きつつもご満悦な笑みを浮かべモデル立ちをし髪をかきあげながら流し目の視線を3人に向ける。
『いかにも!わっちは樹海の中の彷徨える困り人の為の救援者!人呼んで救援亀のキュエーン様じゃっ!!!』
両手を腰につけ胸を張っている謎の女性の高らかな口上を聞き、ぽけ~とするりゅととあち。
そして何故か恍惚とした表情で謎の女性を見ているおじさんがそこに居た。
『おおお、、本当に居たんだ、、』
理解の追いつかない2人を置き去りにし喜び勇むおじさん
『お前!そこのちびっ子!お前だ!お前はお肉を食べたいと困ってたよねぇ?困ってるんだよねぇ?』
『え?あ、んー、困ってたと言えば、困ってたかも?』
『そうじゃろそうじゃろ?困っておるじゃろ~、はっはっは!』
『おじさんこの女の人知ってるの?』
いつの間にかりゅとの背後に回っていたあちがおじさんに問う。
『ああ、僕の住む猫の都で時折話題になっていてさ、亀を連れた謎の女性に困っているところを助けられたって人が数人居てさ!そしてその女性を見たものたちがこぞって言うのは亀を連れていて背中に何故かマンガ肉を背負っていると、、オカルト話のように町民たちの間で話題になっててさ!今をときめく有名人だよっ!!』
『ふふ、有名人!!そうかそうか、はっはっはっはーー!!』
ご機嫌なキュエーン様
『ほら!お主の求めている物はこの亀たちの背中に見えているのじゃろ?!好きな亀を1匹選んでみよ!』
『え?好きな亀?えーっと、、』
まだ話の流れについていけてないあちは困った顔でおじさんを覗き込む。するとおじさんは、うんうんと笑顔であちに亀を選ぶようにと促した。
『じゃ、じゃあ…赤で!』
『何?…そうかそうか…お主は赤を選択するのか…。はっはっは~!赤か!赤を選ぶのか!』
無意識に赤を選んだあちの答えを聞き、踊りきつつもとても喜んでいるようだ。
すると先程まで亀たちが背負っていたマンガ肉の姿が消える!
キュエーンはゆっくりとあちに近づき自らが背負っていたマンガ肉を背中から外しあちに差し出す。
『これはお主の物じゃ、有難く食すが良い。お主、名を聞かせよ』
『え、あ、ありがとうございます、、私はあちです、、』
流石のあちも念願のお肉よりも動揺し躊躇している。
『あちか!良い名じゃ!覚えたぞ。よし、これで本日の一善にもギリギリ間に合った。それに赤を…。はっはっはー!ではさらばじゃ~』
ご機嫌でその場を去ろうとするキュエーン様をりゅとが慌てて引き止める。
『あ、あの、キュエーン様?俺たちの分は?』
おじさんと一緒に両手を差し出したポーズを取りニコニコしながらりゅとはキュエーンにおねだりをする。
『ん?本日の一善はいま済んだのじゃ。それに肉はもう持っとらん。ほれ?』
キュエーンは自身の背中を振り返り見せ、両手にも何も持ってないとアピールする。
『え?さっきまで3匹の亀がそれぞれに1つずつ、、』
『亀たちの背中に見えていた物は幻じゃ、困り人が望んだ物をただ見せていただけじゃな。残念じゃったの!また別の日に困っておったら会えるかもな?はっはっはー』
そう言うとキュエーン様は亀たちを連れて樹海の奥へと帰っていった。
『行っちゃいましたね、結局あの人は樹海の中を一人で何をしてるんでしょうね?』
『一日一善の人助け…もしかしたら神の啓示か何かを受けてそれに従ってるのかも知れないね!』
『神の啓示?』
『僕はまだ経験は無いんだけどさ、突然神の声が脳内に流れてきて能力を授かったり、何かの行動の導きがあったりする人達がいてさ。人が何かしらの不可思議な行動してる時は大体そのパターンが多いかなぁ』
確かにあちも炎の力を手に入れる時に神様と会話したと言っていた。キュエーン様もその神の啓示で人助けをしていてもおかしくはない。
謎に包まれているキュエーン様の事など気にも止めずに1人はしゃぐ姿がある。
『おっにっく!おっにっく!』
ジーーーーーッ
マンガ肉を手にし小躍りして喜ぶあちに2人の視線が言霊となり突き刺さる。
『じーっ』
『じろじろーっ』
『わ、わかってるわよ!ちゃんとあげるから、、』
肉を焼き1つのマンガ肉をちゃんと2人にも分けてから嬉しそうに齧り付くあち
『美味しいーー!!このお肉何のお肉なんだろ?猪や兎でもないし、鹿かな?』
『この骨のサイズで兎はまず無いよあちちゃん、はは』
『太い骨ですね、熊とかかな?』
答えの出ない話に盛り上がりつつ食事を終える。
『ふぅ~、まともなご飯食べれて良かったよぉ』
『明日から先が思いやられるなぁ、、』
『はははは!そろそろ2人とも休みなよ!念の為、僕は見張りをしとくからさ!』
『結界も貼ってあるしそこまで慎重にならなくても大丈夫じゃないですか?』
裏山では結界無しで睡眠をとってた事もあり、りゅとにはおじさんが慎重になりすぎてるようにしか感じられなかった。
『んんー、、1人の時は僕も結界張ったあとは寝るんだけど子供2人の前で寝ちゃうのは何か罪悪感というか倫理観に苦しむというか、、はは』
2人のやり取りを不思議そうに見つめるあち
『まぁ無理に寝ろって言うのもあれだし、、なら自分が早めに起きて見張り役を交代するって事にしましょう!ではお先に寝ますね!おやすみ!』
『そうしてくれるとおじさんも助かるよ!おやすみ!』
『えっと、私は、、??』
『あちちゃんは気にせず寝て寝て!僕らの事は気にしなくて大丈夫だから!』
『それが、、私、外で寝るの初めてで、これってやっぱり地べたに、??』
『ぷっ、そっか!ほぼ手ぶらなんだったね!おじさんのシーツを貸してあげよう!あっ!くるまってからおじさん臭いって返却するのは無しにしてくれよ?ははは』
あちはそれを聞いて余計意識しちゃったじゃない!と心の中で思いながらも素直に感謝しシーツにくるまりながら横になり、すぐに寝息を立てた。
(寝顔見ちゃうと本当に普通の子供たち何だよなぁ、)
神の力を持って無ければこんな危険区域に足を踏み入れる事も無かっただろうに…
さっき僕はこの子達に神の力を持つものと悪魔の力を持つものたちとの戦争とは話したものの、僕がこの子達を守ろうとした時に戦う相手は悪魔では無く神なのかも知れないんだよな、、
『はぁ、、』
坂巻は独り大きなため息をついた。
そして静かに樹海の夜は時を刻む。
途中で見張り役を交代しつつ3人は朝を迎えた。
進路を南西に取り樹海の中を進んでいく。
『りゅとくんそろそろどうかな?』
『ほい!』
『縮地飛翔!』
空高くりゅとが飛び上がり背の高い木の先端付近の枝に飛び乗る。
『いやぁ、口では教えて貰ってたけど本当に一瞬だなぁ、、そしてあの下駄でよくあんな細い枝に立てるもんだよ、、』
『ほんと天狗様の能力って便利ですよねー!』
『僕も何人か神憑きや神持ちと出会ってきたけど毎回個性が違うから驚かされるよ。ちなみにあちちゃんはなんの力があるんだい??』
『私は…回復です。巫女ですし!』
『神憑きの回復特化って事になるのかなぁ、超速回復とか広範囲回復か、虫たちが寄ってこれないってのもあちちゃんの持つ能力の1つでもあるんだろうね!』
(攻撃役って事ではなさそうだな)
この時、あちは自分が炎の姿に変われると言うことを黙っていた。自身の姿が変わるって事がどうしてもオオムカデやオオグモたちと同類に思われそうな気がして話すのを躊躇った。
りゅとは樹海から頭一つ抜ける高い木の枝に乗り周辺を見渡す。東の先には双子の山が見える。方向は間違ってない。西側も遠くには山が見えるが近場はすべて樹海の木々で埋め尽くされている。南側の遠方は海、北側の先は霧なのかモヤっててよく見えなかった。
(見つけた!)
『おーい、西の先に見える3つの山の左側を目印にして進んだ辺りから煙がうっすらあがってる!下からは見えないかも!』
そう言うとりゅとは数本の木の枝を上手く飛び移り徐々に下に降りてくる。
『急ごう』
おじさんが2人を促す。
半日ほど3人は樹海に茂る草木たちに囲まれながら進んでいく。囲まれてるとは言っても草木を掻き分けなくては進めないような密集林とは違い大型の蟲たちが移動や食い散らかしたりもしているお陰で人が歩くには程よい空間にはなっている。ただ背の高い樹木は多く空を見上げると生い茂る葉々たちに視界は遮られる。
『そろそろだいぶ近くには来てるはず』
『もう一度登りますか?』
『いや、どんな状況が起きるか分からない。ここは慎重に進んでいこう。あちちゃんを残して二手に別れ、、』
『いや、おじさんはあちと一緒にここで。俺が一人で見てきた方が速いので』
『縮地!』
ザッ!!
『行っちゃった!』
『確かにその方が捷そうだ、、はは』
裏山の試練で足の指をひたすら強化したおかげで連続で縮地を駆使して移動が出来るようになっていた。
(あった!集落だ。人の姿は見えないな。煙は集落の中心部辺りかな立ち上がってるな、、)
双山村と比較するとだいぶ狭そうな集落に見える。建築物もお世辞にも綺麗とは言えずなんとか人が住めるように組んであるような作りだ。そして畑もちらほら見えるがどれも枯れているようにも見える。外から見た感じでは何かが争ったような形跡は無さそうに見えた。
(ん?この溝はなんだ?)
集落から樹海に向かって細い溝が一本道のように掘ってあり木枠で補強もしてある。
その溝を追って樹海の中へ辿っていく。
(これは、、!?蜘蛛の巣!)
溝の伸びる先には大量の蜘蛛の巣が樹海の木々に貼られていた。重なって幾重にも見えるので実際の数は分からないがとにかくすごい量だ。1m級の蜘蛛たちも複数確認できる。
(一旦戻って報告だな)
『縮地』
ザッ!!
ザザーッ!
『ただいま!見つけてきたよ。集落には人の姿は見つけれられなかった。それと集落のすぐ脇に蜘蛛の巣窟もあった。蜘蛛は最低でも2、30体はいそう。あちから聞いていた話の大グモほどは大きく無さそうだったけど』
『集落のすぐ傍に巣窟か、、嫌な予感がするな…』
『嫌な予感?』
『蜘蛛種が厄介なのは居住区の外からでも糸で人間を捕食しようとしてくる事だからね』
『あ!私が戦った時も樹海の中から複数の糸を飛ばしてきたよ!人型は何故か居住区域の中にまで侵入も出来てた、、』
『聖地の庇護効果は聖地内の霊力の総量に影響されるから結界を張った外枠まで安心だと思ってはいけないんだよ。双山村は外と連絡手段が無かった見たいだしそう言った知識が得られてなかったとこを出し抜こうとしたのかも知れないね』
『どうしますか?』
『うん、まずは西の集落へ向かおう。蜘蛛と戦闘になった時にミツバチ達に襲われたように自制心を失った蜘蛛たちが西の集落の神の庇護効果内に飛び込んでくる可能性があるからね。まずは住民の安否確認と安全確保を優先しよう!』
『了解!』
『おじさん頼りになるね!』
『そっか、ははは』
西の集落を発見したりゅと達三人。蜘蛛の巣窟駆除を実行する前に住民の安全確保に向かう!
住民達の安否は如何に?そして蜘蛛の巣窟との戦いがもう間近に迫る!




