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世紀末な後始末  作者: 柊隼凌
第2章 新たな世界
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27/30

#27 神の力を持つ者

双山村 VSムカデ戦、戦場跡地


双山村のほぼ中央を流れる川をやや東に進んだ場所にあの時の戦場跡地がある。天狗山の集落と東の集落を分担するように南北に伸びていた樹海のほぼ中央に野球場位の広さの平地、そこから南北に木々が茂る森林が伸びているがそれはもう樹海では無い。2つの集落を合わせて四隅に設営した祭場と天狗神社、龍の石碑の2箇所が持つ聖地効果により大きな聖地エリアとなり四隅の祭場を支点に繋ぐ四角形に治まる場所は安全な管理区となっていた。


『えー盛悦ながら司会は私、双山村の村田と、元補給隊の遠藤一佐改め【早苗】が務めさせて頂きます』


『おや?遠藤さんもマリさんと同じく苗字では無く名前呼び派に転向されたのですか?』


『勿論です!私含め元隊員の多くはマリさんのファンですからね!今まで上杉隊長とお呼びしてましたが堂々とマリさん呼びができる日が来るなんて思ってなくてとても今幸せでありますっ!』


『そ、それは良かったです、はははは。ではサナエさん実況解説の方宜しくお願い致しますね!』

『こちらこそ宜しくお願い致します!』


『それにしても不思議な地形ですねぇ?森林の中央にすっぽり空いたような平地です』

『そうですね、我々が気を失…いや、死んでいる時にこうなってました!ははは』

『死んでたとか変な冗談やめてくださいよお!』

『はははは、まぁそれは置いといて、今回の第2演目からの対戦はこの平地を戦場として戦ってもらいます。この場所は天狗神社の巫女あちちゃんの癒しの能力ちからを使った場所でその時の強力な治癒効果を保ったままの神聖な場所となっており、なんとこの場所にいるだけで神社の拝殿内とほぼ同等の回復スピードを常に得られるようになっております!』


『ひゃあああとんでもない能力ちからをお待ちだったんですねぇ、補給会場でお菓子と反物を抱えてニコニコしてる子供にしか見えてなかったですもの、、』


『あちちゃんは双山村の俺達からしたら巫女を超えてある意味、神そのもの、、ほんとに凄い子なんですよ』

村田はそう言いながら俯いた。

会場へ向かう途中で二人の旅立ちを告げられた。

(俺たちを守るために…)


『帰って来るのすごく楽しみですね!』

『ええ、早く帰って来れる事を願うばかりです!!』


『さて、そろそろ第一演目参加者の用意が出来た模様です!それでは第一演目、演説のお2人お願い致します!』


『や、やあ!どーもどーも、、笹岡です。自分はこの集落で産まれ育ちました。天狗山や隣の凌神山含めてガキの頃から駆け回ってて、土地勘は勿論、この集落への地元愛は誰にも負けないつもりです!この後の第二演目へ出場出来るような力はありませんが皆の食料調達含め自警団としての維持管理を精一杯これからも務めあげたいと思ってる!ついさっき俺たちの仲間二人の旅立ちを知りました。俺よりも10個以上も離れた子供達です。正直悔しさや申し訳なさで胸が潰されそうになってるんですが、、あいつらが戻ってくるまで俺は先頭に立ってこの村を牽引しなきゃいけないって、そう思ってます!宜しくお願いします!!』


『おおー!それっぽい!』『いいぞー笹岡ー!』

『応援してるぞー!』

パチパチパチパチパチ~


程よい歓声と拍手が起きる。


『まったくあいつらしいストレートな気持ちのぶつけ方でしたよ。』

『地元を思う心、仲間を思う心。とても素敵だと思います。我々、軍を目指し入隊した者は母国愛をもって入ってきてますからね。共感出来る部分も多いと思います!』


『さぁ続いて二人目の方、お願い致します!』


『峰岸と申します。山を左に書く方の峰岸です。えー、んー、ははは、こーゆーのは大の苦手でして』

頭を掻きながらはにかむ


『ついさっきさ、セオリさんが言ってくれたように確かに元軍の方たちの事の進め方って自分勝手で横暴で俺達が汗水垂らして準備してた土地を踏みにじって何様だよって恐らく村民全員ムカついてたと思う』


元軍側がざわめき立つ


『けど俺はさ、マリさんの迷いの無い簡潔な指示出し、それに対しての迅速な行動。誰1人迷いも無く機械のように正確精密な集団行動を見れて感動してたんだ。指揮者への忠誠心は勿論として全員の信頼感の大きさを感じちゃったんだよね。俺は笹岡とは違いこの集落には縁もゆかりも無い。けど俺はこの集落も好きだし、見習う事の多い元軍の組織作りや行動力も尊敬する。橋渡し役って訳でも無いけど中立的な意見を出せるのが俺の役割かなって思ってます。以上です』


パチパチパチパチパチパチパチパチー!!

歓声は飛ばなかったが拍手が笹岡よりも多い。共感しにくい内容だけど、そんな役割の人もいいかもなって思いがどう歓声あげたら良いかわからず拍手になったようだ。


『ご両名ありがとうございましたー!サナエさんから見て双山村の2名は如何でしたか?』

『そうですね、程よく2名の個性が違ってて熱血派と理論派それぞれの良さがあったと思いますね!元軍からの拍手は峰岸さんの方が多かったです!』


(分かってるから粒だてるなよ、!!)

峰岸から肩を揉まれる笹岡


『俺は笹岡好きかも?』『峰岸のツンデレ演説嫌いじゃないな』


『おっと村田さん!お茶濁し枠だと思われていた第一演目でしたが2名の演説の純朴さが元軍隊員達の心にしっかり響いた模様!これは予想外の展開かも知れません!!』

『この不可思議な世界で1つの集落を牽引してきた両名ですからね!ここは素直に流石と褒めてやるべきでしょう!』


(村田の野郎、嫌々どころかノリノリじゃねーか)

村田は後日、笹岡峰岸両名からシメられる事になる事をこの時知る由もなかった。


『さぁて皆さんいよいよ本番!第2演目の時間となりましたぁー!』


『うおおおお!!!』

『やっちまえー!!』

『せっちゃん頑張れー!!』

『蓮見ー!かっこ悪いとこ見せるなよー!』

ドン!ドン!ドン!パフ!パフ!パフ!


『凄い盛り上がりですねサナエさん!』

『いつの間にか元隊員達がヘリから楽器を降ろして来たようですね!楽団のメンバーも数人おりますし各言う私も音楽科の出身です!』

『なるほど!確かに軍とは言っても戦闘職種だけではありませんからね!』


『そうなんですよ村田さん!特に我々のこの部隊の8割は後方職種者達なんです!』

『後方職種、気になるワードが出ましたがそろそろ第1試合が始まりそうですよサナエさん!』

『先程の演説とは違い会場の空気が一転しておりますね!村田さん!』


『さっきは良くもマリさんの前で恥じ掻かせてくれたなぁ、、』

『弱さは恥じるものでは無く、そこから這い上がるバネにすべきです』


『村田さん!開始前から両者バチバチのやり合いが既に始まってるようです!』


『ここで簡単なルール説明致します!立会いは一本勝負!この会場は街道設置作戦にて1度結界を張った場所、さらに巫女あちによる能力(ちから)にて強力な治癒を施した跡地でもあり、強力な回復効果を得られる場所となっております!第二の拝殿とも呼ばれています!よって武器の使用も自由なのですが部位欠損や即死となりかねない大技は禁止とさせて頂きます!あくまでも親善試合として臨むようお願い致します!違反者には厳しい罰則が雪舟さんマリさんの双方から与えられますのでご注意願います!!』




『おい!遠藤一佐!いや、今はサナエか、さっさと始めろ』

司会へクレームを入れる蓮見


『いつでもどうぞ』蓮見を挑発するセオリ


『それでは第1試合そろそろ開始となります。第1試合はセオリVS蓮見、お互い武器は持たずに向かい合ってます!!』


『それでは!初めっ!!!』


『うおおおおおおっー!!!』

開始の合図と共に気合全開で飛び込む蓮見!


右手を前に出し軽く腰を落し身構えるセオリ


蓮見が力任せに右ストレートをセオリの顔面に向け放つ!

セオリはその右拳を右手で払いつつ身体を丸め蓮見の左足元へと潜るように身体ごと落とし込み、一気にその身を回転し高速の足払いを蓮見に叩き込む!


ガッ!!


蓮見は軸足を地面から剥ぎ取られ自らの突進力の制御を失い地面に転げ落ちる!


ドゴオオオオン!!


余りの速さに受け身もとれず前方に激しく顔から突っ込んだ蓮見。


『ウオオオオオ!スゲー!!!』

一瞬息を飲んだ観客席から歓声が上がる!


『立ちなさい』

セオリが振り返り蓮見に手招きをする。


『言われなくてもなぁ!』

直ぐさま立ち上がる蓮見。初手と同様に奇を衒う様子もなくセオリに突進を仕掛ける。


セオリの胸元を掴もうとする手を左手で掴み、右手をすぐ前腕中央付近にあてがい一気に手首を決めそのまま地面に押し倒す!


手首を決められたまま蓮見は身体を動かせない。

『ぐっ、、』

一瞬でも身体を動かすとこのまま手首を折られてしまうヴィジョンが脳裏に映りただただ地面に頬を預ける。


『勝負ありです。敗北宣言を』

セオリが蓮見へと促す。


『…』口を紡ぐ蓮見


『このままだと手首が折れますよ?』

グンッ!セオリは力を込め手首を強くしならせる。


『グギッ、ギギ、、』

悶絶する蓮見。


ニヤリッ。苦悶の表情から一転して蓮見の顔に笑みが浮かぶ。


『おおああああ!!』

バキンッ!!


蓮見は手首を極めているセオリごと持ち上げ立ち上がる。その一瞬で手首を折られるがものともせずに折られた腕ごとセオリを地面に叩きつける!!


ドンッ!!!

『ぅっ、、、、』

激しい衝撃に息が出来なくなるセオリ



『あ、あいつワザと折られにいきやがった、、』

観客席がざわめく


ズッシーーン!!!


『うっ、、く、、、』

蓮見の圧倒的体重で馬乗りにされる。蓮見は残った左手をセオリの細い首をしっかり掴み、いつでも折れる状態で力を制御する。


『あんたの体捌きは確かにすげぇけどなぁ、戦場では甘いヤツが死ぬんだよっ!!』


(両腕ごと身体を蓮見にロックされ自由なのは両足のみ、その両足も素足で仕込み武器も一切無しか)

最早勝ち目のないセオリの姿を見てマリが雪舟に告げる。


『勝負ありだ。止めんのか?死ぬぞ?』


無言の雪舟


『雪舟さんっ!!この体勢はマズい!!』

笹岡が青ざめた顔で叫ぶ!


雪舟がそっと立ち上がり両手を合わせる。

『あやつ自身が覚悟を決め戦場に赴いたのじゃ。いかな結果となろうとも仕方の無い話じゃわい、、』


双村山の男たちが雪舟に続くように両手を合わせる。


『合掌?村の習わしか何かなのか?例え女であっても助けには入らず尊厳を尊重するのか。それもまた見事と言うことか、、』

マリが異様な光景に驚嘆する。


ドンッッッッ!!!!!グシャ、、!!


『!?』

(何の音だ!?卵が割れたような音、、)


音に反応し試合中の2人へと慌てて視線を戻すマリ


蓮見の身体がゆっくりと真横に傾きそのまま倒れる。


ドスンッ!


蓮見の巨体が地面に沈む。


『ふぅ~苦しかったぁ、、岩のように重いんだもん、、まったく、、』


セオリがすくっと立ち上がり、口から泡を吐いて倒れてる蓮見に目を送る。


『甘いヤツが死ぬってのには同意します』


『勝者!!双山村のセオリーーー!!!!』


『おおあおおお!!!やったあああ!!』

『セオリさんかっこいいーーっ!!』

『南無阿弥陀仏、、南無阿弥陀仏、、』


セオリへ祝福する大歓声!!そして男性陣達の中からお経が混じり聞こえてくる。


笹岡や峰岸、その他数名が股間を押さえ青ざめながら蓮見へ同情の目を贈る。


『何があった!!!』

マリが会場が静まるほどに声を荒らげる!


『玉を、、潰されたのじゃよ、、』

雪舟が手を合わせたままマリに答える。


『た、ま、??、、、、セオリの両腕と身体は完全に蓮見の尻が圧迫し動けなかったはずだ!残された素足のみでやれる事は背中への膝蹴りしかなかった!』


雪舟が合掌を解きセオリの方を向く


『セオリの戦闘スタイルを合気道や体術での返し技だけだと認識違いをしてたようじゃな』


『!?』


(確かにセオリは投げや関節の極め技ばかりを使っていた。払い技としての足蹴りは使っていたが打撃主体のシューターの認識は全くない)


『だとてあのマウントされた状態からは何も、、』


『ほっほっほ、セオリはのぉ、、全身全てを鈍器に変える気功師なのじゃよ!』


『気功師だと!?話に聞いた事はある、、全身に流れる氣を練って力に変えるみたいなやつか、、』


『そうじゃのぉ、よく耳にするのは発勁になるかの。氣だけではなく全身の運動エネルギーや重心移動などを全て集結させて爆発的に威力を上げる技じゃな』


『ならば尚更あの膠着された状況で打てるはずも、、』


『それが認識違いと言うておる!』


『セオリはノーストロークの状態で密着されたあらゆる部位から打撃を相手に流し込める。ん?あらゆる部位とセオリが言うておったのじゃが眼球や髪の毛はどうなんじゃろな?今度聞いてみようかの!はっはっは!』

セオリの勝利にご機嫌な雪舟


『あらゆる部位からのノーストロークでの打撃、、まさに神業ではないか、、』

(あいつも神の恩恵の力を持つものという事か)



『俺達、双山村の男たちはあれの痛さや恐ろしさを嫌ってほど味わってるからなぁ、、』

『あんなに股間を密着させてしまったら、、恐ろしや恐ろしや南無阿弥陀仏、、』


『お前らセオリに普段一体どう接してるんだ、、』

呆れるマリ


『認識を誤るな、、あいつの口癖か、、』


『いやぁ凄い試合でしたねサナエさん!』

『私は蓮見さんの勝利を確信しちゃってましたよ、、あれって相当ですよね、、?』

『私は右手にしかあの衝撃を喰らったことはありませんがあれを股間に喰らうだなんて、、想像したくも無い、、』

『村田さん、、あなたも最低ですね、、』


担架で蓮見が運ばれていく。


『中々やるみたいね』マリ

『中々やりますでしょ?フフッ、あなたの試合ゆっくり楽しませてもらいますね!』


涼しい顔をしたセオリが観客席へと去っていく。


『隊長ー!じゃ無かった、マリさーん!』

3試合目選手の原田がマリを呼び止める。


『なんだ原田?』

『俺、3試合目って何だかメインマッチみたいで嫌なんすよね。マリさんが俺の前座みたいになるでしょ?違和感があって、、はは』


『くだらん。このままでいい』


『りょーかいです!ではではご武運を~!』

原田が去っていく


『認識か、、私の相手はあの神官。誰がどう見ても老人だ。以前どれだけ強かったとしても老いには勝てぬ。視力は衰え耳も遠く、瞬発力や持久力も落ちる。それが人だ。ならばその老いが無いものして望めばいい。全力で迎え撃つ!』


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