#22 疑問、葛藤、渇望
大グモとの戦いを終え、又しても裸になってしまったあちは村人から服を借りて皆と村へと戻った。村田さんは自警団へ報告に向かい、その他の皆は各家での待機となり、村には厳戒態勢が敷かれた。
村の中央に立てた監視台に交代で自警団が待機し何かあれば笛を吹く。オオムカデとの戦闘の経験を生かし木や竹を弓のように発射出来る木製兵器等の準備もされていた。
雪舟とあちも一旦家に帰った。
『もおおおおおおお!!!』
ドスドスドスドスッ!
『あち、壁は悪くないぞ、、』
『んだってえええ!また皆に、、』
『まぁまぁ、まだ10歳だし見られたところで、、』
とんでもない殺気を感じる雪舟
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ,,,
『待て!あちワシが悪かった!!落ち着け!!家の中で炎化されたら火事になってしまう!!』
キイイイイイイ!!!
床でバタバタするあち
『あ、そー言えばじっちゃん何で帰ってきたの?もしかして私のピンチが解るとかそーゆー能力??』
『んー、ワシの能力では無いのじゃが、、神のお告げってやつになるんじゃろうなぁ、、』
『じっちゃんにも聞こえたのね!!私が火の能力を授かった時に聞こえたのと同じよ!きっと!』
『そうなのかも知れんなぁ、まぁ何より間に合って何よりじゃった。祖母君の話ではあと少しワシが試練の達成に遅れてたら村が全滅してたって仰ってたからのぉ』
『へぇ、そうだったんだぁ、、?、、けどあれだね、試練ってそんなにすぐ終わるものなの??』
『え?』
『え??』
『え、あ、うーん、ま、まぁそうかも知れんの。確かにワシが得た験力や融合の力の成長ぶりを考えたら5、6年で帰って来れたのはすぐ終わったと言っても良いのかも知れんのぉ』
『へ?』
雪舟のおでこを触るあち
『熱は無さそうね、、ん?ん?ん?んー?ちょっと確認するんだけど、、、じっちゃん達が山に入ったのって昨日よね??、、』
ぶうううぅ!!
お茶を吹き出す雪舟
『!?!!、、何じゃと!?!?そんな馬鹿な、、いや有り得るのかあの世界では、、、』
何か考え込む雪舟
それから雪舟は山であった事をあちにゆっくりと話し伝えた。
『お、往復100回って、、じっちゃん良く生きてたね、それだけ聞いてもドン引きなのに湖に沈められただなんて、私さぁ、さっきあの蜘蛛女から化け物呼ばわりされてすっごく傷ついてたからあれなんだけどさ、、じっちゃんってもしかして仏様になっちゃったとかじゃ無いよね?』
ブッはあああー!!!
あちの顔にお茶を吹きこぼす雪舟
『ちょ、、汚いっ!!』
『お前のせいじゃ!!縁起でもない事を軽々しく言うでないっ!』
ポカッ!!(げんこつ)
『痛っ』
『じっちゃん、何かさ、、不思議な事だらけの世界になっちゃったねぇ、それはそうとじっちゃん物凄く強くなった!?いや元々強かったのは知ってるんだけど、走る速さとか!刀の速さも前よりもずっと!それと上手く言えないんだけどさ戦い方?何か頭良いな!って思っちゃった!』
『さっき話した通り基本は根性論の筋トレを馬鹿げた回数させられたのと、湖の試練については呼吸も普段通り出来ておったし、、水族館を見てたのと正直変わらないんじゃけどな。ただ終りが見えない時の中で湖に潜っとるとな、そこに住む生物達の本能の動き方やその動き一つ一つの意味を考えみたりだとか、当然人とは身体の構造も違う。オオムカデと対峙した時のワシは人ではない者との間合や行動パターンが読めずにただ斬りまくる戦いしか選択出来んかった。その弱点を埋める試練だったのかも知れんの。それとワシが強くなったのではなくワシに融合してくれとる魂の主が強くて、その強さをワシがようやく引き出せるようになったという事なのかも知れんわい』
『んー、何にせよじっちゃんが強くて私は嬉しいよっ!』
(じっちゃんがじっちゃんのままで、ね、、)
『そうじゃな!』
『そう言えば、、途中でじっちゃん、私にとんでもない事させようとしたんだっけぇ、、?』
『あ、あち?あれは実際にさせるつもりは毛頭無くて、揺さぶりじゃよ!揺さぶり!!』
分かりやすく動揺する雪舟
『まぁやめてくれたから良かったんだけどさ、私もしあのままやらされてたらじっちゃんごと全員燃やして燃え尽きてたかも、、』
『あち!冗談じゃ無さそうな冗談は言っちゃいかーん!』
『冗談じゃないもーん!私まだ完全に操作?力が使えるわけじゃ無いんだからね!次からは絶対あーゆーことはさせようとしないでっ!!』
『うむ、、そうしよう、、』
お茶を入れに行くあち
『そう言えばりゅとやたっちゃんは一緒じゃないの??』
『3人とも個別に試練が与えられてのぉ、いつ戻るかはワシにもわからんのじゃ、、』
『ふーん、そっかぁ、けどじっちゃんがひと晩で帰ってきた事を考えたらそのうちぶらっと帰ってきそうだね!何だか嬉しいね!!』
ガラガラ、ガタンッ!引戸が開いた。
『あちちゃん!おじい様!!』
セオリが顔色を変えて帰ってきた。
諸々を説明する2人
『良かったぁ、、ほんとに良かったぁ、、』
『タツキもすぐに戻るじゃろうて。ワシの留守の間は色々と迷惑かけたな。すまんかった』
『え?あ、うーん。昨夜のお夕食作ったくらいしか私してないんだけどなぁ、、?』
『あ、そうじゃった、、どーにも時差ボケと言うか数年振りに帰ってきた側としては感覚が、、』
そう言って雪舟は苦笑いをする。
『お、そうじゃ、あち。お前に祖母君様から届け物を預かっておる』
そう言って雪舟は包み物を渡す。
『え?お土産!!!やったー!なんだろ?軽いね!開けてみるね!』
中にはほんのり黄色がかった白い綺麗な反物と手紙が入っていた。
その手紙にはこう記されていた。
『何十代目かはわからぬが初代巫女ツグミ様の血を引く巫女よ、ワシはお主の先輩じゃ。山の上からワシは見ちょるけぇ、巫女の名を汚さぬよう慢心せよ。それからお主の傍にいるタツキはワシの息子じゃ。お主が今のままじゃとタツキの教育上あまり宜しいとは思えぬのでそれを授ける。よろしくな』
『巫女の先輩、、何かたっちゃんの事ばかり?書いてあるけどよく分からないなぁ、、けどこの反物、すっごく綺麗!!軽すぎて空中で離しても中々落ちてこないよ!セオリちゃん見てみてぇ!』
『す、すごいね、、!!』
『こないだの軍からの支給で貰った反物も皆の衣服作りに使っちゃったからなぁ、巫女服のストックあと1着しかなくなっちゃってたし、けど綺麗すぎてハサミ挿れるのちょっと勿体ないなぁ、、』
毎回焼失するのも中々の問題である。
老婆が語った魂の融合。それにより生き残った人々が手製で様々な物を作る技術は手に入れた。しかし近代で溢れていた多くの商品、製品、建築物などは長い文明の発展の中、機械や工場などの生産力で実現されてきた。この世界では人口も少なすぎるし調達できる資源も極わずか。どうしても暮らしぶりが数世紀前までのレベルに留まってしまうのも当然である。
その中でも奇跡的に聖地の範囲内に生き残った機械や工場があるらしく軍が支給してくれた反物は他の集落で機織り機が残っており、そのおかげで入手出来た。ヘリコプターを使える軍は複数の集落の存在を確認していて残り僅かな燃料を使いつつ、そう言った貴重な品々を分配してきた。しかしそれも何時までも続くことではない。人類の発展には少なくても流通や人の往来が可能になる環境が必要である。生き残った大人たちの誰しもがそう感じていた。
『あの蜘蛛女、、西の集落でたくさん食べたって言ってたよ』
『…』
『まだ生き残ってる人いるなら助けに行かなきゃ、だよね?』
『私たち東の集落もあちちゃん達のお陰で助かったけど1歩遅かったら壊滅してたと思うよ』
『それについては悩みどころじゃな、、もし助けに向かってる間にこの村が襲われたら、、心苦しいが動くにしてもりゅとやタツキが戻らぬ事には、、』
『あ、あのさ、、』
『なんじゃ?あち』
『蜘蛛女が言ってたんだけどさ、、お前が例の巫女かって。ムカデの仕返ししたかったとも言ってたの、、』
『な、、、』
言葉を出せない雪舟と口を手で覆い涙ぐむセオリ
『ムカデはよく分からないけどさ、蜘蛛女が村を襲ったのって私のせいだよ、、ね?』
『馬鹿なこと言うなっ!!!』
『私だってそうであって欲しくないけど、、けど、けど、、』
『あちちゃん、、』
あちを抱きしめ一緒に泣くセオリ
『お前が居ても居なくてもいつかは襲われる。ワシら人間が狩りをしに山に行くのと変わらぬ!』
『けど、、けど、、、』
只々泣いているあちを見守るしか出来ない二人
まもなく泣き疲れて眠るあちにそっと上着をかける雪舟
雪舟とセオリの無言の時間が流れる。
雪舟はこの時、別の危機感を1人抱いていた。
(蜘蛛女は安全だと認識していた管理区内に侵入していた。ムカデは結界が結ばれたと同時に発火をしていたから村のこの結界さえあれば安心じゃと思ってたが、、結界が安心でないと村中に知れ渡ったら不味いのぉ、、安息の地が無くなるような物じゃからな、、)
セオリにも気取られないように言葉を選ぶ
『あちのメンタルをどうにかして保ってやらねばな、』
『私も何かの力になれたらいいのですが、、』
『いや、あちの傍に居てくれてるだけで助かっとる。今まで通り寄り添ってやってくれ』
『はい、、』
それから数日、いつもと変わらぬように見える村
あちがぼーっと何かを考えてる時間が増えた。
そしてセオリは出来る限りあちの傍につくようにしていた。
『あちちゃん、頂いた反物で作る服のデザイン決まった?』
『、、え?あ、うーんまだ決まってないんだぁ、色々と作りたいデザインは浮かんでるだけどさぁ、
『うん、、』
何かに気づくセオリ
『ん、でもさ?ご祖母様って山の神様?山からあちちゃんの事見てるってお手紙に書いてあったわよね?』
『え?あ、うん』
『それってあちちゃんの能力、火の事は絶対知ってるはずよね?』
『神様なら多分、、』
『あちちゃんの為でも無くタツキの為?に直ぐにでも渡したい風な文面だったし、、これってさ、、』
『!?!!まさか、、!?』
『燃えない生地!?』
2人の意見が一致する!
『あちちゃんが裸を見せるからタツキの教育上に良くないってことだね!!文面的には繋がるよ!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、、
『あちちゃん待って待って!燃えちゃう燃えちゃう!落ち着いてええええ!!!』
ふーっ!ふーっ!
顔を真っ赤にしながら気を落ち着かせるあち
『服を作り始める前に1度燃やして試してみよっか?』
『で、で、でもさセオリ姉!試せなくない!?違ってたら燃えちゃうよ!?』
『うーん、、、』
長考するセオリ
『敢えて試す必要はなし!反物を渡すってことは服を作りなさい!って事だろうし、まずは作る!で、もし燃えちゃったらそれに気づかず渡した神様の落ち度だし、燃えなかったら最高じゃないっ!!!』
『た、確かに、、燃えても私のせいじゃないよね?相手はきっと神様だもんねっ!!私、、作るよ!!セオリちゃんも手伝って貰っていい!?』
『もちろん!!私もお裁縫道具持ってくるね!』
悩み落ち込んでた気持ちを一時忘れ、あちの新衣装?作りに息巻く2人!果たして反物は燃えるのか燃えないのか? つづく




