#21 激突!蜘蛛女
『わたしは?なぁに?いいのよぉ答えなんて無理して出そうとしなくても~。あなたも食べる。わたしも食べる。どちらも食べる為に殺す。だからお互い言いっこなし!』
『ちが、、う、、』
『ちがわないわよ!』
『もし、それでもあなたがわたしを許せない、殺すって言うのなら、あなたが悪の化身でわたしはその被害者ってことよね~』
『わたしはあなたとこうして会話をして、食べること以外の殺しはしてないとも伝えている。あなたはわたしに食べるな!飢え死にしろと言う』
『そんな事は、言って、、』
『生きる為に食べようとするなら殺すって脅されてるのよ?わたし~』
『だま、れ、』
『あ、出た出た!だまれ!その台詞って大人が最後に使うやつだぁ!子供に論破された大人が最後に怒鳴ったり手を挙げたり、あなた、わたしよりちっちゃいお嬢ちゃんなのに今からもう大人しちゃってるの~?かわいそう~』
『ぅ、うぅ、、』
思わず悔し涙が零れる。
『はい泣いたぁ!ごめんねぇ一応さフレルティはお友達ってほど仲良かった訳じゃないんだけどさ、おじさんだし!けど数少ない会話できる知り合いだったしさぁ、なんて言うかさちょっぴり仕返し?ってやつ?わたしは別に殺し合いしたいとかもないからさぁ、けど一言何か言ってやりたくなったわけ!あんた力を得て威張ってるのかも知れないけど、がきんちょなんだから帰って家で寝てなさいな!わたしも気が済んだし1週間分の食料も手に入ったしもういいわ』
女は樹海の方を向き立ち去ろうとする。
『お主、帰るならその者達を置いて帰るんじゃぞ?』
『!?』
慌てて女は振り返る。裸の少女の他に老人が1人立っている。
『じっちゃん!、、私、私、、』
雪舟は上着を脱ぎ、あちに掛ける。
『遅くなって悪かったの、そこで見ておれ』
『なぁに?この子の保護者?子供の喧嘩に大人が出しゃばるのってかっこ悪いと思わないのー?』
スッ
雪舟が静かに太刀を抜き両手で構える。
ザッ!タタタタタ!
凄い速さで走り出す、女は驚きつつもニヤリと笑う。
ビュッ!
女の足元から左右に糸が噴射され、木から吊るしてあった繭状になった村人たちを自身の身体の周りに手繰り寄せ繭の壁を作る!
その時、既に女との間合いに入っていた雪舟の太刀の刃が繭の2mm手前で止まる。繭の壁の奥から声がする。
『ちょっとだけ遅かったわね!問答無用とかってやつぅ?刀なんて持っちゃってるしお爺さんは時代劇かなんかしちゃってるのかなぁ?』
シュッ!!!!!
繭の壁の隙間から黒い棘が伸び雪舟の身体に突き刺さる!
『チッ』
女が舌打ちをする。
貫かれた身体は消え、3歩後ろに雪舟がいる。
『残像?まぁいいわ、デザートにしてやろうかと思ったのに。この繭を作ってる糸はねぇ、刀では切れないわ!ピンッと張った状態ならともかく巻いてある繭の糸だけ切ることなんて無理無理。中にいる人間ごと切るなら切れるかも~?やってみたらぁ?』
ほくそ笑むミュリン。
『確かに、なかなか難儀の用じゃのぉ。しかしこのままではお主も動くに動けんじゃろ』
『そうねぇ、たしかにこのままでは動けないわねぇ、うふふ、じゃあこういうのはお好みかしらぁ?』
繭の壁の内側が不気味に光る。
ゴゴゴゴゴ、、、
巨大な大グモ、全長約5m、足を開けば10mをも超えるかも知れない。身体の上部は黒光りをした外殻、いくつか短い角のような突起がある。下部は巨大な腹部。黒と薄ら黄色の縞模様。その身体の倍はありそうな節足が8本カチャカチャと音を鳴らす。
その大グモは巨大な腹を覆い尽くすように繭を次々と吸着させていく!
『私の外殻は粘着糸よりも硬いわよぉ?強度の弱い腹部にはびっしり繭だらけ、これでお前はわたしに手出し出来なぁい!さぁどうするの?戦うの?見逃すの?わたしはどっちでもいいけどさぁ~』
『無論、貴様をそのまま帰す気はない』
『はぁい、ならデザート決定ね、』
シュババババーーー!!!!
大グモの尻から無数の糸が射出される!
雪舟とあち2人に粘着した糸が水を被ったように纏わりつく。
雪舟が斬ろうと刀を振るが切れずにさらに纏わりつく。
ゴオオオオオ!!
雪舟と自身の危機を感じたあちが再び炎化する。身体に纏っていた雪舟の上着ごと絡みついた糸を燃やす。
『ちっ、ほんと厄介なガキ!』
大グモは雪舟に付着した糸を手繰り寄せる。
ジリジリと力負けして引き寄せられる雪舟。
大グモが鋭い顎の口を開き待ち構える、その距離残り2m
スパアアアン!
雪舟が糸を切断する!
『!?』
驚くミュリン。
『付着したままでは切れんがのぉ、糸を張ってくれたら切れようぞ』
敢えて引き寄せられつつ間合に入った雪舟!
腰を落とし刀を構える!
キンッ!キンッ!キンッ!
雪舟の目にも止まらぬ三連撃が繰り出される!
が、大グモの上半部がそれを受け流すように刃を弾く金属音が鳴った!
『無駄よぉ、無ぅ駄ぁ~』
大グモからの3本足による高速の突きが飛ぶ!
後ろに飛び退く雪舟しかしその内の1本が雪舟の胸に届く!
しかし身を翻し薄皮1枚のみを切られ構え直す。
胸から僅かに血が流れる。
『やるわねぇ、じいさん!2本も躱されちゃったぁ!』
『虫の身体じゃとやはり痛覚は麻痺するのかの?』
『痛覚ぅ?何を言って、、』
突き出した3本の足が第1関節と第2関節のどちらも切られ転がり落ちている。
『バ、バカな、、何をした?』
『ただの連撃じゃよ。ワシは痛覚があるから胸の刺された瞬間に身体を捻れたので浅い傷で済んでおる。お主は切られたことにも気付けぬから切り落とされるのじゃのぉ』
(何だ!?このジジイは、、虫共からの報告では炎化する巫女、白い薙刀を投げた男、この2人が驚異であとは有象無象だと言っていた、、そう言えば刀を振り回す爺さんをフレルティが構って遊んでいたとも言っていたか、、こいつがその爺さん、、?)
『ふんっ、足を切った程度で調子に乗るなよクソジジイ!わたしの足はすぐに生えてきて元に戻るのよ!上半部の外殻は刃を通さない、腹部は繭で覆われていて攻撃出来ない!!そっちのガキの炎で燃やすなら村人共々消し炭!結局あなた達に勝ち目はないのよ!』
『そうじゃのぉ、足を切ったとて終わらんじゃろなぁ』
『じっちゃん、、』
雪舟を焼かないように少し離れた位置で静かにその身を燃やしながら見守るあち。
じわじわと大グモに近づく雪舟、
『な、何よ!無駄だって言ってるでしょー!!!』
戸惑うミュリン。
ゆっくりと大グモとの間合いに入る雪舟。
『このクソジジイ!!!!』
大グモからさらに3本の節足の突き!!
シュババババ!!
バタッバタッバタッ
地面に切られた節足が散らばる。
『くっ、、こいつぅ、、』
『あと2本じゃの、』
『喰らえ!クソジジイ!』
残った後ろ足を切ろうとする雪舟に大グモは尻から大量の粘着糸を射出する!
『それはもう何度も見たわい』
一瞬で糸を躱し回り込んでいた雪舟。
シュババ!
ドサドサッ
『チッ、、』
全ての節足を失い身体のみとなる大グモ。
『、、ふぅ、で?どーするの?この後は?睨めっこして遊ぶのぉ?わたしは時間が経てば足は生える。そしてまたお前に攻撃する!永遠にその繰り返し!クソジジイが疲れて動きが鈍ったら串刺しにしてやるのよぉ!!』
『ほぉ、それは困るのぉ、ワシはこの後久しぶりの孫娘との食事を楽しみにしてるんじゃ、貴様を倒してこやつら全て全員村に返してからの』
そう言いながら雪舟が大グモの後方に移動する。
『な、なんなの?なにするの?何しようとしてるの!?』
振り替えれずに怯えるミュリン。
ザクッ!!シュババ!!
『ギャッ!!!』
大グモが悶絶する。
『ク、クソジジイ、、、、』
雪舟の刀が大グモの尻、噴射口に突き刺さっている。
『上は切れんし、腹も攻撃出来ん、ただお主はさっき糸を射出させてたからのぉ、繭の隙間から射出させてるなら刀が入る隙間があるかと思ってのぉ』
刀を刺したままグリグリと中をエグる。
『ぎゃああああああー!!!!!』
痛みに苦しむも足のない大グモは動けない
断末魔のような叫びが響き渡る。
『お、お前がどんなに腹の中をエグろうが、わたしは死なない!刀の長さでは腹部をエグるのが精一杯!、腹部を失おうがわたしたちは死にはしない、いずれその傷も再生する、わたしはその時にお前らを八つ裂きにしてやる!!!』
『ふむ、知っておるさ。虫は頭部を失おうがすぐに死にはしない。身体を捕食者から食われてる事にも気づかず食事をしてる虫などもおるしのぉ。ただし尻の中を刀でエグられた痛覚があるのを知れたのは良かったわい。主らはただの虫ではのぉて人と虫の融合生物って事かも知れんのぉ』
『だったら何だって言うのよぉぉぉ!!!!切り落とされた足やエグられた腹は再生時に強化されるわ!!痛ぶられるのはムカつくけど、、トドメを刺せる手段がお前らに無い以上わたしの負けは無いのよ!!!』
『1つ教えてやろう、何もワシは痛ぶりたくて尻に刀を立てたつもりはない。そんな趣味はワシにも無い、むしろ大事な愛刀を尻になんか刺したく無かったわい、、』
刀をグリグリと回し続ける雪舟
『グギギギギ、、』痛みに耐えるミュリン
『そろそろ良さそうじゃの、ここまで穴が広がればあちの小さな手が中に入るじゃろうて』
雪舟のエグりつづけた尻の噴出口が大きく開き、その結果腹部もやや外に膨らむように広がり丸見えになっていた。
『あち、主の身体に纏った炎じゃが足元の地面は焦げておるが周辺の地面は焦げとらん。直接触れてなければその影響は軽度で済むじゃろう、ちと悪いが尻に手を突っ込んで中から燃やしてくれんかの。中から燃やせば上部含めて燃えるじゃろうし、身体の外側が焦げ出したら手を抜けば繭の中までは燃えんじゃろう』
『え?』ミュリル
『え?』あち
『あち、早ぉ、ここじゃここ!この穴に突っ込んで燃やしたらこの大グモも復活なぞ出来んて』
『ちょ、、ちょ、やだ、、やめてよ、、、』
『え、、、じっちゃ、そこに手を、、?』
げんなりした表情のように見える炎化したあちが嫌そうにジリジリと近づく
『え!そんな、、やだ、、わたし女なのよ!!やめてよ!お嬢ちゃん!!!止めてよおじい様!!!!』
大グモの尻の前に立ち、あちが右手を手刀のように細める。
『やめっ!!!やめてええええ!!お嫁に、お嫁に行けな、、、』
泣き叫ぶミュリン。
『じっちゃ、私、私、、』
まだ覚悟が決めきれなくて腰が引けているあち。
炎化した指先が火の揺らめきとは違う理由でプルプル震えている。
『待て』
雪舟の声に胸を撫で下ろす2人。
『確かにそうじゃのぉ、嫁入り前のワシの可愛い孫の手をこんな蜘蛛の尻に突っ込めというのはちと酷じゃったのぉ、、ワシの孫娘の黒歴史になりかねんわい』
(クソジジイ、、)
怒りに震えるミュリン。
『仕方あるまい、今から十数える前に村人の繭を解け、そしたらお主の尻には手出しせんと約束してやる』
『わ、わかったわよ!約束守ってよね!!』
大グモは繭の効果を解き村人は開放された。
『村田くん、全員をそこの小麦畑の奥まで避難させてくれ』
『助かりました!雪舟さん!』
拘束されてかなり疲労していた村人達は足を引きづりながらも小麦畑の奥まで下がる。
全ての節足をもがれ動けない大グモの顔の前に雪舟は胡座を組んで座り込む。
『さて、お主らは一体何じゃ?樹海の虫共の仲間?それらを支配する者なのか?それとも他の何かなのか?』
『それを聞いて何がしたいのよ?それにわたしはそんなの何も知らないわよ!気づいたら蜘蛛になってて生きてる為に食える物は食って生きてるだけよ!!』
『左様か、、ただワシらは主に食われてやる訳には行かんのぉ』
『わかったわよ!!わたしはもうこの辺りには来ない!別の狩場で暮らすわよ!』
『二度とワシらの村に手出しせぬようにな、、』
(そろそろ節足が生える!!その瞬間に全ての足で8本全てでこいつを突き殺す!!さっき3本の突きをこいつは1本避けれなかった!こいつを殺してから小麦畑の奥にいる連中を補足する!そしたら炎女も私には手出し出来ない!!村の中まで避難させれば私の粘着糸が届かず手出し出来なくなるとこだったけど、油断したこのクソジジイを蜂の巣にしてやるわ、、)
バババババ!!!
大グモの節足全てが蘇り目の前の雪舟に八方からの爪が襲いかかるっ!!!
『死ねぇえええええええ!!!クソジジイっ!!!』
『あぁ!、、、』
今から起こるであろう惨劇を予感し脱力する村人。
駆けつけようと手を伸ばすあち。
シュパーーーーーーーーーンッッ!!!
太いゴムがブチ切れた様な切断音!!!
『え?』
カチャッ
雪舟が刀を鞘に納める。
大グモの身体が縦に真っ二つにズレていく。
『何が、起っ、、』
ミュリンの意識はハッキリしている。
節足を復活させてから飛び上がり、雪舟に全力の突きを浴びせるまでに約2秒。
雪舟は変わらず座っている。
『ふぇ、、?』
目の前の雪舟が、いや雪舟呑みならず空や大地、景色含めて視界の左右が上下にズレていく。
『左右に割いたとて成仏出来ぬと言うのも地獄じゃな』
シュバババババ!!!
居合抜きからの八連撃、、大グモが細切れになって転がる。
『お主の外殻は本当に硬かったからのぉ、、本気で刀を振ってしまうと何処まで斬り落としてしまうか怖かったんじゃよ。繭が無ければ手加減不要じゃわい。あち、燃やしてやってくれ』
『うん、わかった』
あちが大グモに両手を合わせたあと右手を大グモに向けて手を広げる。
『焼き尽くせ、五行の炎!』
大グモの身体が激しく燃え上がりススとなり風に飛んでいく。
『終わったの、ただいま、あち!』
『じっちゃ!おかえり!!』
炎の身体を解き、雪舟に抱きつくあち。
『あわわわわわわわ』
『あちちゃーーーん!!服服っ!!』
『うおおおおおおお』
小麦畑から悲鳴のような歓声のような騒ぎが、、
『きゃああああああああ!!!!!!』
思い出したかのように手で覆い隠ししゃがみ込むあち。
『やれやれ、変わっとらんのぉ、わっはっは』




