#17 決意を胸に
オオムカデとの戦闘から時は経ち、半年後
天狗山の集落と東の集落が繋がった事で俺たちの環境は色々変わった。
2つの集落は正式に合併し双方の象徴ともなる2つの山から双山村と呼ぶことになった。外部との交流は無いので内々の話ではある。
2つの集落を結ぶ通路が生まれアルファベットのH型に似た形の土地になったのだが、天狗山の集落でやっていたように土地の端々に祭場を設置し皆で祀っていくうちに聖地効果なのか四隅の角を繋ぐようにH型の真ん中の横線が太くなり最終的には四角形、正確には変形台形型?と呼べるような形の村となった。
左右の北側に2つの山、真ん中に川、東側に海や湖、中央から南にかけては平地が広がる。
村の西側と南の奥、それと山を超えた北の奥と海の沖合が未だに危険区域となり隔離されてる状況なのは変わらず。
『おはよー!、、ございます!』
『あぁ、りゅとおはよ』
『りゅとおはー』
『りゅと君おはよー』
合併後、セオリとタツキも俺たちと共に行動している。
掃除が終わると朝稽古。
『おりやあああ!まだまだぁ!』
『甘いっ!!』
『ガハッ、、くそぉ、、まだ一勝も出来なぁい!』
7つ上のタツキと同じ土俵の立合いは到底敵わない。タツキは大停電後に槍の能力に目覚めたらしく木刀では無く長柄の木の棒を使っていた。師匠の動きを柔とするならタツキは剛だ。棒の長い間合に詰めようとした動きを見せると鬼のように棒をぶん回すので近づくこともままならない(槍適性じゃなくて斧とかハンマーなのでは??)
姉のセオリは武器は持てないが合気道適正に目覚めたらしく素手の組手であればタツキより強い。それと巫女のバイト経験も有り師匠とあちが言うには神聖力も備わってるらしく祈祷や祓い事の勉強にも参加するようになった。村に希少な子供同士とても仲良くなった!
セオリの巫女姿は村の中でも評判となり怪我もしてないのに訪れる者まで出る始末。当然あちから何人も蹴っ飛ばされていた。言い忘れていたがタツキもイケメン、姉弟のDNAの強さを感じるぜ。
あとは村に自警団が出来た。狩猟班や建築班等の組分けや言い回しは廃止され日毎に皆でやる事を決め人員を割振るようにし、村の警備を強化させた。団長は笹岡さんで副団長には峰岸さんが推薦で選ばれた。
そう言えばセオリやタツキからあちの生い立ちについての話が聞けた。
あちと2人は従兄弟だ。あちの母は田舎暮らしが嫌であちが3歳の時に勝手に預けて都会へ行ってしまったとの事。非常に明るく豪快、それでいてとても美人で根本的には良い人なのだそうだが自分勝手の楽感主義で破天荒。
東の集落での暮らしは幼すぎるあちには危険が多く、見兼ねた師匠が養子として引き取ったそうだ。
戸籍上は養子縁組で厳密には父娘なのだが歳も離れすぎてるし、あちが師匠をじっちゃんと呼ぶので祖父と孫娘の関係になった。3歳のあちには母の記憶は無く、捨てられたとか寂しいとかの気持ちは一切ないらしい。気になる父についてだが産んだ母でさえも誰の子かわかっていないらしい。
中々ハードな話だった。
あの日以降、警戒してた危険な事は何も起きず、東の集落の皆の住居も完成!新体制での生活の基盤作りも済んだ。
ようやく一区切りがついた。
師匠が俺たち4人を集める。
『いつかまた異形のものと相対する日が必ず来る。ワシらは弱すぎる。強くならねばならない!』
(言われなくてもわかってる!)
『そこでじゃ、ワシとタツキ、りゅとの3人で山籠りをする。20年振りとなる山伏修行をする!』
俺もタツキも何も聞かずに頷いた。何処で何をするかも理解してないが強くなる為の事ならなんでもやる。タツキも同じ気持ちなのだ。
『山伏修行は女人禁制じゃ、戻るまで神社や家はあちとセオリに任せる。だがあちはまだ十の歳、強い能力は備わっておるが生活となると話は別、未だ小娘のままだ。セオリには済まんが姉としてあちの世話を頼む』
願い事や頼み事とは違う。決定されたお達しの様なものだ。セオリは快く引き受けてくれた。てっきりあちが仲間外れにするなぁ!って怒るかと思ったが私を護れるように強くなって帰って来い!と挑発さえしてきた。
山伏修行の準備としてそれぞれに山伏装束一式、錫杖、一本歯下駄が配られる。
『下駄なんて履いて山登りですか!?』
『伊達や酔狂ではのうてな、古来より山伏修行の際には使われておる。ここのような平地では歩きにくいが山道では泥が足底に詰まらず登りやすい』
『知らなかったです、、』
『皆が山に行ってる間に私は新しい能力の研究して待ってるからね!』
あちにはやりたい事があった。皆を救った炎、背中に生えた羽根、そしてあいつを焼いた炎。あの日語りかけてきた声の主。それらを全て咀嚼したかった。未だ聞かされた話の意味もよく分からない。独りで籠る時間、打ち込める環境を作らねばとさえ思っていた。
『姉さん行ってきます。山での修行は俺には有難い』
『そうかもね、ふっ切れて帰ってくるの待ってるね』
タツキの行動規範は禊だった。龍神様への禊、傷つけた笹岡さへの禊、心が弱く悪魔に負けた自分自身への禊。それと師匠から託された白い棒の管理だ。大薙刀としての戦力目的では無く、一生を掛けて護ると決めていた。
『雪舟さん、居ない間は俺らがしっかりやっとくから安心して行ってくれ!残る俺らも戦闘訓練きっちりやっときますんで!!』
笹岡さん始め村の皆が見送ってくれた。
それぞれが必ず強くなって再会する約束をし、派手な壮行会はせずに3人は山へ足を踏み入れて行った。
村を出てまずは天狗山の東側を流れる川の上流にある滝を目指した。山道など無い。道無き道を行く。不安定な土壌、石や岩でさえも足場としなくてはならない。下駄も慣れてくると悪くはなさそうだ。とは言え俺は2人から大きく離され黙々と足跡を追っていた。
『ぶはぁぁぁ、ようやく着いた、、』
『遅かったなりゅと!1時間は待ったぞ!』
『師匠、こいつはまだ10歳であちと同じ、、』
『ワシは男は甘やかさんっ!』
(ちっ、、親バカクソジジイめ、、)
『ワシらはもう滝修行も済んだ、先に登っておるでな後から着いてこい』
『はいはい、そう思ってましたよ!』
『フッ』
タツキは基本クールな反応しかしない。
夏場とはいえ滝はとても冷たいっ!
打たれながら色々考え事とかをしてる余裕も無く体感1時間を何とか乗り切った!はず。
錫杖で音を鳴らしながら登っていく。
半日ほど黙々と登りつめようやく2人に追いついた。
『お待たせしましたぁ、、』
『思ったよりは待たなかったかもじゃな』
『泣いて逃げたかと思ってたぜ』
『ちっ!逃げねーよ!』
3人とも下駄を履く足から血を滲ませている。
足はもうパンパンで身体中がギシギシ痛い。
『ここから山頂まではすぐに着く。ワシらの寝泊まりする小屋がこの先を回ったところにあるから着いてきてくれ』
師匠の話では山頂には山伏修行で使っていた小屋があると言う。小屋に着き次第白装束に着替え、本格的な山伏修行が始まる。食べたい時に食べず寝たい時に寝ない、自然エネルギーを集める為の散策、山中で経典を読み祈りを捧げる。三つ巴の実戦演習などもするとの事。かなり辛そうだが来たことに後悔はしてない。
山頂近くになると霧が濃く視界がとても悪かった。目標の小屋が見つからない。
『おかしいのぉ、迷うはずは無いのじゃがこれも老いかのぉ、、』
どこか寂しげだ。
ポツ、ポツ、ポツ
雨が降ってきた。雨宿りが出来そうな場所は無い。
大きな杉の木を見つけその木陰で僅かだけ雨を凌ぐ。
ゲコッゲコッ
カエルも雨宿りにやって来たようだ。
(あれ?カエルの雨宿り?前に同じような、、)
突然景色がグルグル周り出す、身体が動かない、渦みたいに何かに飲み込まれていく、、
『う、うーん、、、』
目を開けると3人は何処かの小屋の中で後ろ手に縛られ寝かされていた。すぐ近くでシャーッ、シャーッと音がする。その音が止み小屋の奥から何かが近づいてくる!
『うわっ!!』
3人とも驚き声をあげる。
着物姿で白髪混じり、小柄だがギョロっとした目に迫力があり右手には包丁を握っている、、
『ややや、、山姥だぁああああ!!』
逃げたくても動けない。足に力が入らない。
まだ本格的な修行も始められてもいないのに、、あちとの約束が、、終わった、、
『山姥じゃと、、?最初に死ぬのはお主からじゃな、、』
『ひ、ひぃぃぃ』
近づいてくる老婆、痛いのは嫌だ!
『た、た、た、たすけ、、、』
失禁しそうになるくらい怖い!顔がとにかく怖い!
ザクッ!!!!
『ぎゃああああああ!!!!』
『何がぎゃああ!じゃバカタレがぁ!!』
ゴチンッ!
山姥からゲンコツを喰らうリュト。
『え?え?』
師匠とタツキを縛ってるロープを包丁で切っていく。
『暴れられちゃあ厄介だから縛っといただけじゃああ!』
拘束からは解かれたが身体が麻痺してるのか動けない。
『このピチピチレディが山姥の訳ありゃせんわぁ!ワシはこの山の管理者じゃて。お主らの今までをよぉく見ておっちゃけぇ、山登って来ちょるのも知っておったでな!』
(山姥では無いのか、、)
(ピチピチレディとは?)
(山姥以外に何があるんだ、、)
キョトンとする3人
『ようこそ!ここは天狗山の山頂、の裏側の世界。裏山頂じゃ!』
『うら、さんちょう、?』
『平たく言えば下界と天界の狭間じゃな。ワシはお主らをずっと待っておった!ギャハハハ』
『…。』
目を合わせる3人
『長話は嫌いじゃけども説明せんとわからんっちゃけん仕方なく教えちゃる。1度しか言わんちゃしっかり聞けっちゃよ』
『そこの坊主!』
タツキを指差す老婆
『ぼんずはワシの息子じゃ』
『ええええええ!?!!』
一同驚愕
『厳密にはぼんずの魂に後から融合しとる魂がワシの息子じゃ』
『魂?融合?』
『お主ら突然何かに目覚めるような出来事があったじゃろ?それが魂の融合じゃ、自身とは違う者の魂が記憶してる能力を投影し扱えるようになってるって事じゃ』
『魂?融合?投影?、?、?』
『黙って聞いちょけ!』
『息子さんってもしかして槍を学んでらっしゃいましたか?』
『あん?槍じゃあ?んなもん息子は使わんわい』
『!?』
『ワシの息子が好んで持っておったのは鉞じゃてなぁ、カッカッカッ』
『ま、まさかり?槍では無かったのか、、』
『そんで次はこっちのぼんず』
『はい』
リュトが返事をする。
『お前じゃのうてこっちのぼんずじゃ』
『え?』
『ワ、ワシの事でしょうか、、?』
『そうじゃ、お主じゃ』
『ぼんず?ワシは齢六十を越えておりまして、流石に、』
『あーん?ワシは齢1000ちょいじゃ!いっちょ前にワシとか抜かすでないわ!僕と言え僕と!』
『え、あ、ぼ、ぼく、、』
キツい、、見てられねー。僕っ子の師匠はキツすぎる、
『ぼんずも面白い魂をしとるわい』
『ワ、、ぼくは、刀に目覚めたようじゃ、でして、、』
『ギャッハッハッハ!そうじゃの!ぼんずに融合しちょる魂の元主の刀裁きは頂点とまでは言わんが最強の一角じゃ、お主の運は引きが強かったのぉ!カッカッカ!』
『…』
言葉の出ない雪舟
(いや、あの動きは只者じゃない予感はしてた)
タツキとアイコンタクトでお互い同意見なのが伝わる。
『で、最後にお主』
老婆の目つきがキツくなる。
『は、はい』
『お主は、、』
ゴクリと生唾を飲むリュト
『俺は、、?』
『お主は、、なぁんもついとらん!ただのお主じゃ!ギャッハッハッハーーーーー!!!』
この日1番の高笑い
『ぼんずはすっかり忘れておるようじゃが、お主が生まれたのはここじゃで』
『え!?!!』
『お主は産まれてまもなく出て行きおったからのぉ』
(いや待て、確かに小屋で目覚めたがこの小屋とは違うし赤子でも無かった!俺はあの小屋で目覚めてからまだ1年も経ってない!)
『お主の魂はなぁんも融合されちょらんけどの、この狭間の世界に産み落とされた稀有なやつじゃでな』
『この狭間にあるものは常に姿を変えおる。見た目は変わっておってもこの小屋がお前の産まれた場所じゃ』
『で、でも、目覚めたらこの身体で、、』
『狭間は時の流れも下界や天界とも理が違うだでのぉ、産まれて瞼をあけるまでに時が過ぎたんじゃろうて』
『意味がわかりませ、、』
『そんなん知るかバカタレが!ワシは真実を伝えてやっただけじゃ!』
ゴチンッ!
2度目のゲンコツを喰らう
『よーく耳の穴かっぽじって聞けぼんずらぁ、これからワシが修行つけちゃるじゃでな、そーせんとワシの息子が死ぬかもしれんでな』
老婆がタツキを睨む
『ぼんずぼんずじゃ紛らわしいから名前で呼んでやるわい、キントキ!、、じゃのおてタツキ!お主の霊力は怪力と獣交信じゃ、怪力は目覚めてはおる。じゃが獣行進が滞っておる。故にお主の修行は一日中この先の杉の木の下で寝て貰う』
『寝る!?』
タツキの反応や返答を待つ素振りもない。
『次に雪舟!お主の霊力は剣客じゃがお主は老いており身体がついていけちょらん。持久力が足りんしそれを強化するのは無理じゃ。タツキのノーモーションの突きを躱す剣術体術は持っておるがその後オオムカデの攻撃を喰らっておったのぉ。自らの大振りの連撃や戦闘時間の疲れで限界を迎えておったのが理由じゃ』
『仰る通りです』
『お主の老いた身体で持久力強化は意味を持たん。よって洞察力を伸ばす為に湖に沈んで貰う』
『、、承知致した、』
『最後にりゅとよ、お主はまぁるでだめ、だめだめじゃ。』
『くっ、、』
『お主には徹底的にやってやるからのぉ。ギャッハッハ。お主の修行は凧上げじゃ』
『た、、たこですか!?』
『四の五の言わずにやるんじゃひよっこどもがぁ!』
『説明は以上じゃ、早速始めちょろうぞ。とりあえず準備運動からじゃのぉ、下山して滝に1時間程打たれてからまた登ってこい。100往復終わったら修行開始じゃ』
『ひゃ、、ひゃくおうふくーーー!!!!』
突然現れた謎の老婆
初めて聞かされた目覚める能力の理由
言い渡された無茶すぎる修行目録、、
シュッ、キュッキュッ。パンっ!
『よしっ!!』
巫女装飾を着込み頬を叩き気合いを入れるあち
1つの大きな歯車に連動し無数の歯車が同時に回り出す。
『フレルティさん殺されちゃったんですってねぇ』
『フレ?誰それ?』
『ムカデよムカデ』
『そうなんだ!ウケるー!』
(うーーーん、ここも違う。やはり上か?いや!今度こそ下のはずだ!)
『神の名のもとに私達は前に進むわよ!信託は告げられた!皆!私に続け!』
第1章 完
第1章の完結となります!読んで下さいまして本当にありがとうございました!
引き続き第2章も始まります!
お付き合い頂けますと幸いです!!




