#13 悪魔の囁き
タツキは朝から晩まで石碑の前で祈りながら救援隊が来てくれる事を祈り続けていた。
滝さんは陸上部のOBでよく顔を出し可愛がってくれていた。釣りも好きで東の集落にも何度も来てくれてて姉さんともウマが合い、楽しそうにしてる2人をみて滝さんになら姉さんくれてやってもいいかもな!と冗談を飛ばした事もある。
『滝さん、、姉さんピンチなんだよ、、頼むよ、』
何度頼んでも願いは叶わない、神様なんて本当は居ないんだ、、本当に居るなら姉さんみたいな優しい人がこんな目に合うわけないじゃないか!!タツキは声に出してる願いとは裏腹に心の中では神に対する疑心暗鬼を募らせていた。
ザッ ザッ ザッ
『!?』
足跡!?
振り返ると旧イギリスの執事?バトラー服を着た異国の男性が立っていた。
『こんな所にあったとはね』
石碑を見つけ男がボソリと呟いた。
『あなたは、、一体??日本語話せるの、、ですね?』
タツキはゆっくり立ち上がりながら質問を投げかける。
男は少し考える素振りを見せたあと
『私は母国からの依頼でこの周辺の調査を任されたものです。大停電後に上空から生き残りの人々を探しこの辺りも来てたはずなのですが山合のこの集落を見逃してた見たいです。遅くなって申し訳ありませんでした』
服装に乱れや汚れが一切無い。徒歩で来た人ではない。何の音もしなかったしこの辺りにはヘリで降りれるような場所は無いはずだ。
『船?ボートか何かで来られたのですか?』
少し間が空き
『いえ、近くに馬車を止めてあります』
『馬車!?一体どちらから、、いや、そんな事はどーでもいい!姐さんが!他にも病で数人倒れてる人がいて、、助けてください!!』
『それは大変です。勿論です。救助活動は打切りにしてあったのですが生態調査にてこの地に再度訪れたのが幸いしました。まずは倒れてる皆様の状態を見させて貰えませんか?多少なら私も診る事が出来ますので』
『ありがとうございます!どうぞ中へ!!』
タツキはようやく神に願いが届いたと感極まり涙を流して喜び急いで家に招きこんだ。
『では、失礼して、、』
男がセオリの身体を診断する。
寝たままの状態で顔色や瞳孔、脈拍などを見た。
『なるほど、、』
男が静かに呟く。
『これは病ではなく毒素ですね』
『毒素!?』
『何か心当たりは思いつきませんか?』
『、、あ!実は数日前に山崩れがあって、、変な匂いがするようになって、、』
『ふむ、そこからの臭気にで間違いないでしょう』
『!!、今すぐ病院で治療を!!!』
『それは無理ですね』
『え!?近くに馬車って、、』
『いえ、これは医者や治療薬では治せません』
『そ、そんな、、』
『私は医者や治療薬では治せないと言っただけです』
『!?』
『貴方達は運が良かった。少し離れていて貰えますか?』
タツキと父母は素直に離れ見守る。
男はスーツのポケットからハンカチに包まれた何かの粉を取り出し、それを少量つまみセオリの身体の上に振り撒いた。異国の言葉で何やらまじないめいた言葉を呟く。
『どうですか?』
男がセオリに問いかける。
『!?、少し身体が楽になって、きてます』
明らかに改善の兆しが見られ歓喜する家族。
『上体も起こして目を開けて貰って大丈夫ですよ。どうぞ』
背中に手を回し支えゆっくりと身体を起こし目を開ける。
『見える!見えます!ありがとうございます!これは一体?』
セオリの声がはっきりとした口調で話せるようになった姿を見て3人は涙を流す。
『これはこの国で言う所の祟の1種ですね』
『!?!!』
一同が驚き口を開ける。
先程そこの貴方が私とあった場所、あれが災いを呼んでいます。
『石碑だ!』
タツキが思わず口を開く
『あの石碑を壊すだけで臭気は治まります。私が先程お姉様におこなったのは治療では無く悪魔祓いです』
『あ、悪魔、ばら、い、、』
タツキは驚きを隠せない。
『あの、ちょっとすみません、、』
父母が困ったように割って入る。
『あの石碑は代々この土地を護ってくれてらっしゃる守り神の龍神様を祀っていて、、』
『そうです!それがあるからこの土地は護られたのだと、、知合いの宮司様からも大切にするようにと、』
『護られた?先程まで貴女の身体は蝕まれておりましたが、、?悪魔祓いで治ったとい事、いま皆様の目の前で起こった事が事実です?神は見えますか?何か言葉でも投げてくれましたか?この世に神がいるのなら先日迄の世界大戦はどうなりますか?戦争後のこの変わり果てた世界をどう説明されますか?』
静まり返る一同
『今この世界は悪魔に犯されています。高名な悪魔は化けるのです。そう、神と呼ばせ崇めさせ信じ込ませ、そして裏切り苦しませ悲しませ、世界を滅ぼすのです』
『私共はそんな悪魔たちから残された人々を救おうと日々活動しております。が、全ての人は救えません。悪魔を認め、一緒に戦い、平和な世界に戻すために!神と名乗る悪魔をこの世から全て追い払うための同士を集めているのです!』
タツキたち家族の目から光が消えていく
『悪魔を追い払う、、平和な世界へ、神は悪魔、、』
『私の名はフレルティ、皆様はもう同士です。一緒に神を排除しましょう。神の名を騙る悪しき存在を全てを壊し、真実の世界へ』
フレルティと名乗るその男はその集落の全ての家を周り、次々と目の光を奪っていった。
〈満月の夜 夜明けの1時間前〉
『皆、いよいよ決行開始となる。準備は出来ておるな?』
頷く一同
『当初、選抜隊5人での予定じゃったが皆知っての通り峰岸くんから呼び出されワシの作戦にダメ出しを食らってな、、』
『な、、?』
あちこちで小さな笑いが起きる
『ワシもまだまだ未熟じゃった。命懸けの賭けに皆を巻き込むのが怖かったのじゃ、、』
『水臭いぞジジー!』『建設班の腕力を舐めるなよ!』
周りから愛のあるヤジが飛ぶ
『正直悩んだのじゃが、皆すまないな。ワシらと共に覚悟を決めて欲しい。もちろん女子供、、あちとりゅと以外は留守番じゃ。非戦闘員の方には危険区域外での援護に徹して貰う。危険区域内にはワシ、笹岡くん、村田くん、そして建設班のリーダーの大木くんそれとあち、この5人で入る。潜入する5人には細かく指示を出してある。そして区域外での作戦指示役に峰岸くん』
『はい。皆、今回は今回だけは俺に命預けて欲しい。他所者として今まで俺は目立たないように過ごして来た。今回、俺は潜入班から指示役に代わり上手い事言って安全な役に逃げたと思ってくれても構わない。俺はこの作戦を必ず成功させる為に指示させて貰う。一つだけ皆に宣言しとくもし誰か犠牲者が出る状況になったとしたら最初に死ぬは俺だ!その役は誰にも譲らねーと宣言する!』
皆に覚悟が伝わる。峰岸さんの言葉に皆が鼓舞されていく。
師匠とあちは戦闘で祓い儀式の正装をし祓い棒を持つ、師匠の後ろに村田さんが腰に日本刀を付けている。これは宝物庫で保管していた御先祖様の私物で素人ながらもサビを落とし磨いた物。師匠が準備してきた物で前回の潜入時には自らが握っていたのだが今回は祓いに集中する為自らは装着せず万が一の時に受け取るために預けてあった。あちの後ろの大木さんは背中に布で包んだ神楽鈴を巻いている。計画では街道予定のエリアの四隅に祭場を設置し等間隔の榊の葉で繋ぎ結界を張る流れだ。危険区域内での神聖力の低下を懸念し奥の手として神楽の舞を踊れるようにしてある。村田さんと大木さんは派手な武器は持たず、非常時はあちを含め3人で植え終わった榊の葉を辿りつつ逃げに専念して貰う。師匠と笹岡さんで壁になって護る計画だ。その笹岡さんは弓と軍用の特殊ナイフを2本携帯していた。
危険区域入口付近には事前に設置済みのお手製の兵器が組んであった。大木や竹を尖らせた物やバリケード、発電機がらみの照明機器など。それと大きな凧に丸い物体をつけた物が10セット位用意されていた。設置物の手前には皆で作った防空壕のような溝を横一列に掘ってある徹底ぶりだった。
夜明けと共に開始の予定だったが10分程気持ち早く始める事に変更されていた。
『覚悟はいいな?』
『おお!!』男連中の太い声が響く
危険区域の入口手前は河川敷から幅50mほどの平地だ。強めの風が吹いている。
『凧を上げろ!』
凧役が凧を上げる。大きな凧が複数空を上がっていく。
『凧役以外は全員防空壕へ!』
凧の下に付けられた丸い物体の更に下にも綿のような物がぶら下がっている。そこに虫たちが群がる。綿には蜜が含ませてあったらしい。群がる虫たちが紐に引っかかり丸い物体が次々と割れていく。
『くす玉かっ!!』
峰岸さんの傍にいた俺は問いかける。
『ただのくす玉じゃないぜ。中には小麦粉と発火物、それと切麻ようは清めてある紙吹雪だな!発火物には重みもあるからな、あの高さから落ちれば地中にめり込むぜ』
聞いてはいたけれど、罠作りの能力って凄い。俺は生唾を飲んだ。
虫たちに割られたくす玉から小麦粉の粉塵や紙吹雪が舞い虫たちが空でも樹海内でも暴れ出す。粉塵が見事に攪拌されて行く。
『仕上げにりゅと!団扇で低空から風を送ってくれ!』
なるほど!俺に準備してくれと事前に頼んでたのはこれか!
『任された!』
ブォン!ブォンブォン!ブォン!
団扇で低空から樹海に風を送り込む。砂煙や地面に落ちていた小麦粉がさらに空に上がっていく。
『そろそろ頃合だな。凧班!防空壕へ急げ!笹岡さん!やってくれ!全員耳を塞いで伏せろーーー!!!』
火矢を構えた笹岡さんが全員防空壕に入ったのを見終わってから矢を放ちすぐさま防空壕へ飛込み伏せる。
ドカーーーーーーーーーーーーンッッッ!!!!
聞いた事のないような爆音!!光!!熱風が頭の上を通過する!
目の前にあったはずの樹海が炎と煙の塊となっている。
やがて爆心地中央の煙は引いていき、左右の樹海には炎が残り樹木が静かに燃えている。
目の前に拓けた平地、焼け焦げた虫達の死骸や樹木が幾つか散在されてはいるが見事に吹っ飛んで障害物の無い状態になっている。
『爆風で熱も殆ど残ってないはずだ!潜入班出撃開始してくれ!』
まず左側の師匠が熱を確かめるように潜入、大丈夫だとあちに合図を送り少し遅れてあちも入る。10m先までは祈祷のみで村田さんと大木さんも後に続く。中央で笹岡さんが周囲の様子を探りながら進む。外では峰岸さんが皆に指示を出し兵器たちを指定の場所に移動させ最終の組立を行っている。順調に鮮やかに峰岸さんの立てた作戦は実行されて行った。
〈東の集落 爆発の数分前〉
石碑の前にハンマーやバールを持った男達が集まる。
『タツキくん貴方はこの石碑の前で毎日祈り続けた。そうですね?』
『はい』
『何を祈ってらっしゃったのですか?』
『救援が来るのを、滝さんが来てくれる事を祈ってました』
『彼は来てくれましたか?願いは叶いましたか?』
『滝さんは来ませんでした。その代わりにフレルティ様が来てくれて願いを叶えてくれました』
『では神を名乗り、役に立たなかったこの石碑を皆で倒しましょう』
男達は石碑に掛けたロープを一斉に引く
ガタンッ!!
石碑が倒れ砂埃が舞う
『このゴミを悪魔を叩き割って起きなさい』
ハンマーやバールで男達が石碑を砕く。
石碑は無惨な姿となり石の欠片などがゴロゴロと転がり落ちていた。
『悪魔は倒されました!毒素の臭気は時期に収まります!この世に神がいるのなら悪魔を倒した我々が神なのです!!』
『ん?』
演説を続けていたフレルティの顔が一瞬こばわる。
ドカーーーーーンッ!!
やや離れた場所での大きな爆発音
『何事だ、、』
1匹の飛んできた小さな虫がフレルティの肩に乗る。
『そうですか、、可哀想に、』
(虫たちを可愛がってくれたお礼をしませんと)
『タツキくん、いま我々が悪魔祓いとしてこの石碑を砕きました!』
『はい』
『その仕返しとして別の悪魔が隣の集落の人間を操りこちらに向かって来てるとの報告が入りました』
『石碑を倒した後に起きたあの爆発音は聞こえましたね?あれは悪魔の咆哮なのです。石碑を倒したことにより悪魔は苦しみ咆哮をあげ、その報復として人間同士で戦わせようとしております』
『なんて事を、、』
『どうすれば宜しいでしょうか!?』
『なぁに簡単なことですよ、憑依した悪魔を追い払う為に気絶させてあげれば良いのです』
『なら俺がやります!!』
『いい心がけです。貴方が彼らを救ってあげてください。悪魔は狡猾です。自分は憑依などされていない!正常だと言い張るでしょう!何かの間違いだ、話を聞いてくれと懇願するでしょう!それが悪魔のやり口です。決して惑わされぬよう、、』
『それと彼らには悪魔から武器も持たされてるやも知れません。それなりにこちらも武装せねば殺されてしまいます』
タツキの傍にいた男がバールを渡す。
『それだと気絶ではなく相手を殺してしまいます』
(美しくない戦いは方は嫌いなので)
タツキは周囲を見渡す。
砕け散った石碑の近くに長い棒が落ちている。
『フレルティ様、石碑を作成する際に使用したと思われる骨組みが残っておりました。バールのような突起もございませんし、丁度私は槍の心得を神から授かりましたのでこれも真実の神からの神託かと』
『まぁ良いでしょう。決して殺さぬよう。気をつけて下さいね』
(神官クラスの人形が手に入るチャンスかも知れないな)
フレルティはタツキから顔を逸らし、静かに笑みを浮かべた。




