すごろく、レース、ゲームの秋
「それでは!五連休完全制覇、二日目!ゲームの日をスタートします!」
(キターッ!)
(イェーッ!)
(ヒューヒューッ!)
色々あったが、どうにか始まったゲームの日。佐伯の宣言に家鳴たちは大盛り上がりだ。
さて、本日プレイするのはパーティーゲームだが、モニターに映し出されたのは色鮮やかな巨大すごろく。
サイコロを振ってマスを進み、途中で発生するミニゲームに挑戦しながら、ゴールまでに集めたメダルの数を競う。レースあり、パズルあり、運任せの大逆転あり。プレイ動画で見たとおり、みんなで騒ぐにはうってつけのゲームである。
「まずはプレイヤー設定からだね。わたしはサエキ、早苗ちゃんは?」
「わたしもシンプルにミズカミにします」
二人の準備が終わったところで、プレイヤーを募集すると気の早いオンラインプレイヤーが早速ルームに入ってきた。
「先輩、もう三人入ってきてますよ」
「早っ!待機してたのかな?」
画面の参加者欄には、三つの名前が並んでいた。
『Pishi』
『Mishi』
『Gishi』
「名前、似てる!三人組かな?」
「……ずいぶん、この部屋らしいお名前ですね」
水上が天井を見上げる。
梁が、どこか得意げに鳴った。
(バレた?)
(気づいた?)
(早苗ちゃん、よろしく!)
いよいよ、前代未聞の人間と憑き物合同のゲーム、スタートである。
――
「よし!それじゃ第一ステージからはじめよう!レッツゴー!」
まずは各キャラ、順番にサイコロを振ってすごろくを進めていく。全員初見のゲーム、かつまだ序盤なので、大きい目でも小さい目でも、今のところ差がつくようなことはない。
「ピシ、ミシ、ギシもサイコロ振ったから……おっ!ここでミニゲームだ!」
「えーっと、これはポイント争奪戦ですね」
種類別にポイントの設定された果物が散らばったマップを走り回り、なるべく高得点の果物を集めていくのが基本的な目標。だが、他プレイヤーに攻撃をして果物を取りこぼさせるといった妨害プレイもできるらしい。
「よし!わかった!スイカとかメロンを集めればいいんだね!」
「ふっふっふ、先輩、それだけじゃ勝てませんよ?」
(総取りだ!)
(横取りだ!)
(妨害したい!)
かくしてホイッスルの音とともに始まったミニゲーム。高得点の果物めがけて猪突猛進の佐伯と、同じく突っ込んだ家鳴改めピシが競り合うが、まずは佐伯がリードをとった。
「よしっ!今のところわたしが一番!このまま走り抜ける!」
しかしここで、ギシが佐伯にアタックをかけた。せっかく集めた果物がこぼれ落ち、そこへ滑り込んだミシが大量得点。
「ぎゃーっ!せっかく集めたのに!」
(アタック成功!)
(漁夫の利プレイ!)
「うぅ、こうなったら……わたしも突貫!」
現在上位にいるピシへ体当たりをしかける佐伯。うまく攻撃を当てたものの、またしても横取りを狙ったミシが突っ込んでくる。しかしなんと、そのミシにギシがアタック。果物が盛大に飛び散る大混戦のなか、終了のホイッスルの音ともにここでタイムアウト。
「あぁ!終わっちゃった!でも、オンライン三人組、仲がいいのか悪いのかよくわかんないね」
「プレイスタイルの違いじゃないですか?ま、今回はわたしの勝ちですけど」
ミニゲームの順位が発表されると、終始周りから距離を取って、こつこつと果物を集め続けた水上がダントツの一位であった。
「うわー!やられた!ピシ、ミシ、ギシに気をとられて早苗ちゃんがノーマークだった!」
(くそっ!やられた!)
(せっかくの漁夫の利が!)
(へへへ、妨害成功!)
悔しがったり、勝ち誇ったり、勝敗に関係ないところで喜んだり。とにかく参加者はみんな楽しんでいるようだ。
ーー
すごろくの結果に一喜一憂し、ミニゲームでは白熱の戦いを繰り広げ、初めてのパーティーゲームはパーティーらしく盛り上がっている。
現在、サイコロだけは大きい目を出すものの、有利なマスにも不利なマスにも止まらない佐伯がメダル二枚。危険なマスを避け、着実にミニゲームで勝利している水上が五枚で首位を走っていた。
家鳴たちは、メダルを狙っては取りこぼすピシが二枚。そのピシから漁夫の利で稼ぐミシが三枚。そして、手に入れたアイテムを妨害にしか使わないギシが堂々のゼロ枚である。
結局、一歩引いて冷静にゲームを進める水上が頭ひとつ抜け出していた。
「あぁっ!パズルでも早苗ちゃんに勝てない!」
「先輩もピシ、ミシ、ギシも歯ごたえがありませんねぇ」
(くっ、くやしい!)
(こうなったら……)
(入力補助をつかって……)
何やら不穏なことを言いだす家鳴たちだが、
(ちょっとあなたたち、ズルはダメなのよ)
(その点はわたくしが監視しております。不正はできません)
即座に座敷童子と目目連に釘をさされてしまった。
(せっかく三体いるんだから、協力すればいいのに)
(はっ!)
(それだ!)
(協力プレイ!)
すねこすりの当たり前すぎる助言に活路を見出した家鳴たち。先頭を走るものを狙うパーティーゲームの定石通り、水上をターゲットに決めて動き出した。
次なるミニゲームはカーレース。コース上にはブーストやジャンプ、妨害用のランチャー、ボムなどのアイテムがあるが、それに気を取られては抜かれてしまうし、飛ばし過ぎてコースアウトすると大幅にタイムロスしてしまう。いかにもパーティーゲームらしい仕様のレースだ。
「今度こそ一位をとる!」
「いいえ、ここもわたしが勝たせてもらいます」
アクセルを吹かして待つ五台のレースカーが、カウントダウンの数字がゼロになるとともに一斉にスタートした。
まず飛び出たのは、アイテムは無視してとにかく首位を狙うピシ。続く佐伯はジャンプをとったものの加速には使えない。
その後にはギシ、水上、ミシが僅差で並んだ。
三番手のギシはアイテムを取れなかったが、水上の進路を塞いで得意の妨害プレイ。五番手のミシはなんとランチャーを構えている。
「二人がかりですかっ!?でも甘いですっ!」
(えっ?)
(うそっ!)
カーブに差し掛かったところで水上が急ブレーキをかけ、ミシの後ろに周りながらボムを落として行く。思わぬハンドリングにもたついたミシとギシは、まとめて吹き飛ばされてコースアウトしていった。
対して首位のピシと二位の佐伯はデッドヒート中。少し遅れたが、ミシの落としたランチャーを拾った水上もまだ冷静だ。
(アクセル全開っ!逃げ切ってやる!)
「くっ!なかなか抜けないっ!」
「こっちにはランチャーがあります!」
連続コーナーをピシが見事なコーナリングで走り抜け、順位が変わらないまま直線に入る。ここで水上が勝負に出た。前方の二台に向けてランチャーを発射。まとめて吹き飛ぶかと思われたその瞬間。
「これを待ってたよっ!」
びょ〜ん
佐伯の操るレースカーが間抜けな音をたててジャンプした。
(ぐわーっ!なんでーっ!)
ランチャーはピシだけに命中し、これで佐伯が単独首位。もうアイテムのない水上はここから挽回は難しい。
「わははは!これでわたしが一位!」
「くぅーっ!まさか避けられるなんて!」
最後のカーブを曲がり、あとはゴールのみ。もう勝負は決まったかに思えたそのとき。
(イェーイ!最高ーっ!)
後方から猛スピードで迫ってきたのは、水上のボムでコースアウト後、ブーストをとって追い上げて来たギシ。このまま佐伯をも抜いて一位を取るかと誰もが思ったそのとき、
(アターック!!)
なんと佐伯に体当たりした。
ゴール前でのクラッシュに水上まで巻き込まれ、まとめて三台ともコースアウト。
「ぎゃーっ!!」
「なんでーっ!?」
(妨害成功ーっ!!)
ぐだぐだのまま、結局このレースはミシが一位となった。
(いひひ、ラッキー)
ーー
レースは散々な内容だったが、ミニゲームはこれで終了。ミシが一枚獲得したものの、メダルの数は変わらず水上が最多である。
「もう終盤ですよ。第一ステージはわたしの勝ちで決まりですかね」
「むーっ!まだ勝負はわかんないよ!」
佐伯の言葉に同意するかのように梁が鳴る。
あとは、最後のすごろくパートとボーナスメダルがあるのみ。
佐伯はまたしても何もないマスで終了。
水上は一回休みマスだが最後なので関係ない。
ピシは強制ストップマス。
ミシはワープマスで僻地へ飛ばされて行った。
そして最後のギシが、なんとひとマスしかない強奪マスに止まった。
「えーっと、自分から一番遠い人の……」
「メダルを……全部強奪!?」
なんと、僻地へ飛ばされたミシのメダル四枚がギシのものに。さらに、最後のイベントであるボーナスメダルのルーレットが示したのは、
『ミニゲームお邪魔キングにメダル二枚!!』
「わーっ!大逆転!」
「うそっ?えっ!?そんなのありですか!?」
(まじか……)
(横取り……された?)
(やったー、優勝ー)
最下位からの六枚一挙獲得で、ギシの勝利となった。
ーー
それから数時間。
納得のいかない水上が優勝を目指してムキになったり。
相変わらずなピシ、ミシ、ギシがゲームをかき回し続けたり。
佐伯が興奮しすぎて絶叫したり。
途中から『Warashi』、『Fuwafuwa』、『Medake』などのプレイヤーも交代で参加してきたり。
「あははは!楽しいねっ早苗ちゃん!」
「はい!でも、今度こそわたしが優勝します!」
五連休完全制覇、二日目のゲームの日。秋の夜長は賑やかな笑い声とともに更けていくのであった。




