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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第五部 秋の風と憑き物

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秋の散歩と川原の風景

既にお腹に収めてしまったパスタとパフェ。目標まではほど遠く、摂取カロリーから考えても到底足りない歩数を稼ぐため、佐伯と水上は地元商店街まで歩くことを決めた。


「早苗ちゃん、道のりは遠いけど心配いらないよ!わたしたちにはこの可愛い、しかもお揃いのトレッキングシューズがあるんだから!」

「そうですね……それなら折角ですし、遠回りして川沿いの遊歩道で行きませんか?歩くにはちょうど良さそうですし、花火大会のときの会場まで辿り着いちゃえばあとはすぐですし」

「いいね〜、採用!川風を楽しむ秋散歩だね!んふふ〜、なんだか風流ですなぁ」


そんなこんなでルートも決定。まずは街を抜け、住宅地を越えるべく歩き出す。途中でコンビニに寄ったりしつつ、普段歩かない道を行くのも二人なら楽しいもの。割とあっさりと川沿いの遊歩道までたどり着いた。


「さぁ先輩、ここから川沿いにひたすら歩きますよ。今歩数はどのくらいですか?」

「えーと……ただいま6,268歩!おぉ、2,000歩くらい増えた!」

「残り約9,000歩ですか……だいたい6kmくらいですね。頑張りましょう!」


さぁ、ここからは本格的にトレッキングシューズの出番である。お揃いの新しい靴は、二人にどんな景色を見せてくれるのか。


ーー


9月はまだ上旬、日中は夏の名残りか日差しも強かったが、川沿いの遊歩道には今涼しい風が吹き始めていた。並んで歩く二人は、川辺の様子を眺めながらどちらともなく秋探しを始めていた。


「ススキはまだ目立たないねぇ。あの金色の穂が波打つところが見たかったなぁ」

「見頃はもう少し先みたいですね。あ、先輩。代わりに猫じゃらしがいっぱいですよ」


吹き抜ける風にそよぐエノコログサに微笑み、今度は川原に目を向けてみる。


「あ、水切りしてる!わたしの最高記録は8回だよ!」

「あっちでは子供が赤とんぼを追いかけてますね。」


(川面がキラキラと美しいですね。初秋の情景にわたくしとても癒されてます)

(川原遊びの子供たちも可愛いのよ。こんな風景は時代が変わっても同じなのね)


二人だけでなく、目目連と座敷童子もこの遊歩道散策を楽しんでいる様子。歩数稼ぎのはずだったが十分に一つのイベントとなっているようだ。夏の盛りを過ぎた水辺には季節の変わり目を表す草花。涼風に誘われてやってきた子供たち。どちらも秋の始まりを感じさせてくれる。


「ふんっ!1、2、3、4、5、あ〜ん、上手くいかないぃ」

「先輩、遊んでると商店街に着く前に夜になっちゃいますよ」


秋を感じるだけでなく、子供たちに混じって水切りを始めてしまう大人もいるようだが、少しならまぁ良いだろう。

疲れたら道端のベンチで小休憩。コンビニで買っておいたペットボトルで喉を潤し、鳴き始めた虫たちの声を聴く。


一息ついた佐伯が、ふと思いついたように水上に問いかけた。


「早苗ちゃん、『どんとこい!秋計画』には書いてなかったけどさ……」

「えぇ、どうしたんですか?」

「このお散歩も、秋の『楽しかったこと』に追加しても……いいかな?」

「んっ!えぇ!もちろんですよ。わたしも今すごく楽しいです」

「んふ!だよね!よし、このあとも頑張ろう!」


(仲良きことは美しきことなのよ)

(同感です。加えて、歩数も順調に増えてます)


歩数稼ぎの川沿いウォーキング。距離はそれなりにあったが、この二人にとっては楽しい寄り道の延長でしかなかったらしい。


ーー


その後も歩くことおよそ二時間、さすがに二人も疲れてきているが、ようやく夏に花火大会を開いた河川敷の会場までたどり着いた。


「ひー、膝がカクカクするぅ」

「わたしもクタクタです。でも、本当にここまで歩いて来ちゃいましたね。そういえば今何歩くらいですか?」

「ん〜、あっ!12,723歩!あとちょっと!」


川沿いの散歩が見事に効いて、目標の歩数まであとわずか。二人で膝に手をついてしばらく息を整えつつ、ほんの数週間前には櫓や屋台が立って賑わっていた会場を見渡す。


「今日は誰もいないね」

「まぁ、あの日が特別だったんですよね」


(打ち上げ花火は壮観でした。わたくしの目に焼き付いてます)

(確かに綺麗だったわね。でも、いやになるほどキャベツを刻んだのよ)


いやはや、思い出はそれぞれ。各自ちょっと過ぎし日を懐かしんだら、後はいよいよラストスパートである。


「さぁ、早苗ちゃん!これから大買い出しツアーだよ!秋の味覚食べ尽くしちゃうんだから!」

「メニューは店頭のラインナップ次第、でしたね。わたしは秋茄子に期待してます」


お揃いのトレッキングシューズは、いよいよ商店街に踏み込むのだった。


ーー


「あっ、おじさんこんにちは!」

「おう、こんにちは。今日は二人で買い物か。まさかおでんじゃないよな?」


「違うよ!今日は秋の味覚食べ尽くしパーティーなの!何かおすすめある?」


無事に商店街までたどり着いた二人を最初に迎えてくれたのは、以前チロリをおまけしてくれた金物屋さんであった。


「そう聞かれたら七輪やら鬼下ろしやら色々あるけどな、まぁ今日のところはやめとこう。それより他の店がみんな本気だぜ。パーティーだってんなら気合入れて買い物してきな」


(ナイスなのよ金物屋。七輪で焼き秋刀魚なんてやりたくないのよ)

(視覚的にはとても秋らしいですけど、確かに難しいですね)


佐伯の暴走を未然に防ぐ金物屋さんの好プレーが憑き物たちの賛辞を集めているが、他の店の本気とは?とにかく大買い出しツアーの始まりである。

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