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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第四部 ご近所と憑き物

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近所のゲームセンターとちょっとした手助け

ある金曜日のお昼休み。

佐伯と水上はいつも通り一緒にお弁当を広げていた。


「あー、お腹空いたー」

「そ、そうですね」

「食べよ食べよ!いただきまーす!」


佐伯が手を合わせて食事を始める。

職場でのランチとしてはごく当たり前の光景。だが、水上は若干の違和感と心当たりを感じていた。


食事中、佐伯の座っている椅子から、

ギシッ

二人がお弁当を広げているテーブルからも、

ミシッ

ついでに水上の座る椅子も、

ピシッ


二人が少しばかり重くなった……わけではない。

実は今日、佐伯が元気に出勤してきてからずっと、彼女の周りからだけ軋みの音がちょこちょこ聞こえていたのだ。

水上の他に気付いたものはいないようだが、一度気になってしまうと不自然なこと甚だしい。

それに、本人は至って普段通りなのに、佐伯を包んでいる空気だけが妙にはしゃいでいる。


水上は察していた。あぁ、部屋から誰か憑いてきたんだな、と。


ーー


昨晩、つまり木曜日の夜。佐伯と水上はオンラインでゲームをしながら雑談していた。

今日の夕飯はなんだったか、来週の天気、新作のコスメ。

そこで佐伯がふと思いだした。


「新作といえば、ゲームセンターに新作の縫いが入ったらしいよ」

「新作?何かのコラボですか?」

「そう、今期のアニメのキャラ縫いだって。えーと、あの、なんか、妖怪のヤツ?」

「えっ、もしかして"ツキモン"ですか!」

「あっ、そうそうそれ!早苗ちゃん好きなの?」

「えぇっと、好きと言うか?子供向けのアニメですけど、最近興味を持ったというか……」


「そうなんだ、じゃあさ!明日取りに行ってみようよ!」

珍しい反応の水上にゲームセンター行きを提案する佐伯。


「え!えぇ、そうですね。じゃあちょっとだけ行ってみましょうか」

水上も断るでもなく、むしろ嬉しそう。


こうして週末、仕事帰りの寄り道が決定したわけだが、


(つ、ついに……)

(念願の!待望の!)

(ゲームセンターァァ!!)


実はこの時、最大の盛り上がりを見せたのは家鳴たちであった。なにしろ、家鳴たちはこのチャンスを待っていたのだ。


ゲームセンター、なんと魅惑的な響き。

きっと、あらゆるゲームが集められ、名手たちがその腕を競っているのだろう。

この機を逃すわけにはいかない。明日は佐伯の影を借りて何としても憑いて行く。


(あなたたち、出かける気ならわかってるわね)


決して周囲に迷惑をかけるな、もしも何かやらかしたら……と座敷童子にしつこいほど注意され念を押され、どうにか外出の許可も得た。


あぁ、ゲームセンター。明日、我らはその聖地に。


ーー


時間は戻って金曜日の午後。

朝から頑張って仕事をこなし、定時上がりしたおかげでまだ日が落ちるには早い時間帯。

座敷童子からの口酸っぱい注意のおかげで、どうにか軋みを最低限に抑えて数時間を耐え切った家鳴たちの期待は最高潮に達している。


いざ、いざ行かんゲームセンター。

そしてついに辿り着いた。

佐伯の影の中から見上げる、そこは念願の聖地。


見たこともない筐体を彩る電飾

(眩しい……)


全てのゲームのBGMと操作音と喧騒が混ざり合うフロア

(う、うるさい……)


並んでいるのは無数のクレーンゲーム、プリクラ。そして数台の音ゲー。

(ここが……?)


家鳴たちは首を傾げる。どうも思っていたのと違う。

しかしそれもそのはず、佐伯と水上は最初からクレーンゲームをしに来たのだ。家鳴たちの期待していた古今東西、歴史的遊戯から最新機、最新作まで網羅し、研鑽を極めた名手たちの集うゲームの聖地などではない。そもそもそんなところ知らない。


意気込んでゲームセンターへ来た家鳴たちは拍子抜け。


(なんだよぉ……)

(ま、仕方ないよ……)

(ゲームはゲーム……だしね)


期待は無残に砕かれたが、でもまぁせっかくきたのだからと無理矢理気分を切り替えることにした。


ーー


ぶらぶらとフロアを巡る家鳴たち。

すっかりやる気を無くしていたところで、メダル落としに夢中になっている小学生の男の子を発見。ガラスの箱の中からメダルを取り出したいらしいが、なかなか上手くいかない。


家鳴

(ん?)

(メダル取ればいいの?)

(落とせばいいのかな?)


梁を鳴らし、柱を揺らし、壁や天井を軋ませる家鳴たちから見ると、メダル落としなんてちょっと揺さぶってやれば簡単だ。


(よし、ここは)

(ちょっとだけ)

(お手伝い!)


ちょうどいい暇つぶしを見つけた家鳴たち。

男の子にバレないように操作中はじっと待つ。手持ちのメダルがなくなって悔しそうに床を見つめたそのとき、


ミシッ

チャラッ


取り出し口に数枚のメダルを落としてやる。


「あれ?」

時間差でおちたのかな?気付いた男の子はメダルをとり、また慎重に投入口からメダルを入れ始めた。

しかし数枚ではたいしたことはできない。またすぐにメダルは尽きてしまう。


ギシッ

チャラチャラチャラ


何故かまたしても落ちてくるメダル。


「ん?また?」

なんだか今日はついてる、男の子のは都合よく落ちてきたメダルをまた手にとった。


(よしよし)

(上手くいってるっ)

(お役立ち!)

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