近所の神社と夏祭り
皆様、変わらず拙作にお付き合いいただきありがとうございます。
第四部は佐伯や水上の部屋から飛び出して、ご近所探訪などいかがでしょう。
これからも二人と憑き物たちのあれこれ、よろしくお願いいたします。
真っ青な空から眩しい日差しが照り付ける。
昼にはまだ少し早い頃合い。
遠くから聞こえてくるお囃子の音と、行き交う祭り客のざわめきが混ざり合う。
そんな明るい初夏の日の下、参道を涼やかに歩く少女がいた。
白地に鮮やかな朝顔を散らした浴衣をまとい、まとめ髪には簪。
足元には、フワフワの獣がついてくる。
(今日はいつもと違う着物だね)
(お祭りだもの、浴衣にしたのよ)
(そんなの持ってたんだ)
(当然よ、昔商家のお屋敷に居た頃は、お着物も帯も色々とお供えされたものよ)
(そうなの?でも、そんなにあるならどこに仕舞ってるの?)
(それは女の秘密なのよ)
そう、座敷童子とすねこすりである。
その数歩ほど前では、水上がストローを差した冷やし飴の瓶を片手に歩き、佐伯は舟にのったたこ焼きを頬張っていた。
「アフっ、アヒっ、オイヒっ」
「ちょっと先輩、まるまる一個一口で食べたら火傷しますよ。ほら、これ飲んで。」
「ンー、プハッ。早苗ちゃんありがとう!早苗ちゃんも食べる?」
「まだ少なめとはいえお祭りの人混みで食べ歩きは無理ですよ。食事用のスペースもありますから、参拝してからそこでゆっくり食べましょう?」
「はーい。じゃあ急いで行こう!」
まったく手のかかる妹と世話焼きの姉のような二人だが、今日も相変わらず楽しそうである。
今日は近所の神社で開かれている夏の初めのお祭りにやってきた。数日続けて開催されるうちの中日のため、今日は屋台も午前中から営業している。
家鳴と目目連も来たがってはいたのだが、福をもたらす座敷童子や基本悪さをしないすねこすりと違い、怖がらせるのが本職の彼らはどうも神域が苦手なようだ。
神事祭礼の伴うお祭り中なら尚のこと。何かの手違いで祓われてしまってはたまらない。
だいぶ悔しそうではあったが、今回はお留守番となった。
ーー
カランカラン
カタッ、コッ、チャリッ
パンパン
鈴の緒を鳴らし、お賽銭を納めてから二拝二拍手一拝。
無事に拝殿までたどり着き参拝を済ませた二人。
佐伯はもうすっかり屋台グルメのテンションだ。
「よしっ、じゃあ早速レッツゴー!」
水上(と座敷童子とすねこすり)を引き連れていざ買い出しへ。
焼きそば、お好み焼きなどの定番はもちろん、最近の屋台には牛串焼きやトルネードポテトなど様々なメニューが揃っている。
あれがおいしそう、これも食べてみたいと目移りしながら立ち並ぶ屋台を巡る佐伯。
「やっぱりここは焼きそばとじゃがバター!」
「はいはい」
「あっケバブもある!」
「多くないですか?」
「お好み焼きも!」
「まだ買うんですか?食べきれます?」
「イカ焼きも買っちゃう!」
「先輩、買いすぎです!」
「お祭りだからセーフ!」
「あっ!いつの間にかビールまで買ってるじゃないですか!」
結局気の赴くままに買い物をしてご満悦の佐伯。
まったく仕方がないと眉尻をさげつつ付き合う水上。
二人に付き合いながら、座敷童子とすねこすりもふわふわとした雲のような綿あめや色とりどりのかき氷、プラスチックのお面が並ぶ屋台などを眺めてお祭りを楽しんでいた。
ひとしきり屋台を巡り終わり、今度は買い込んだ品々を手に席を探すことにした一行。
が、境内に設置された飲食スペースは、ちょうど昼時の太陽のせいでかなり日当たりが良い。
もう少し居心地の良さそうな場所はないものか。
「あ、先輩、あのクスノキの下はどうですか?」
「ホントだ!木陰になっててちょうど良さそう!あそこにしよう!」
メインの飲食スペース設営で余ったのだろうか、境内脇にそびえる大きなクスノキの下にちょうど二、三人用くらいのテーブルと椅子が置いてあるのを見つけた。
「ふう、風が抜けて涼しい。いい場所見つけたね、早苗ちゃん!」
「えぇ、でもまだ昼前だから一本だけですよ」
「はーい、それじゃ早速……」
「「カンパーイ!!」」
佐伯と水上はビールで乾杯後、テーブルに広げた屋台グルメをつまみ始めた。
座敷童子も空いた椅子に座って女子会気分の様子。
夏祭り会場をあちこち行ったり来たりでちょっと疲れたすねこすりは、テーブルの下で丸まってちょっと休憩することにした。
ーー
ところが、
(おーい、そこの毛むくじゃら、おい)
すねこすり
(うん?)
(そうそう、おまえさんのことよ。おーい、ちょっとこっちに来てみんか?)
すねこすり
(へ?何?)
(こっちじゃ、こっち。クスノキをぐるっと回って、ほれ、こっちじゃ)
なにやらすねこすりに呼びかける声がする。
年寄りくさいわりに、妙に楽しそう。
それでいて、神社に馴染んでいる匂い。
どうにも面倒くさそうな匂い。
(なんだか嫌な予感……)
すねこすりはちょっとだけ鼻にしわを寄せた。




