友人宅と危険な誘惑
一同はどうにかならないかと試行錯誤を続け、あれからもこけしを定着させようとあらゆる手を試していた。
ある日は、一日中こけしに歌をうたわせた。
しかし、声は届かない
ある日は、これみよがしにこけしを色々な場所に移動させてみた。
水上は、不思議とも思わずサイドボードに戻してしまう。
ゲームが上手くいったとき、家鳴りがこけしを少しだけ動かす。
佐伯も水上も、こけしに気が付かない。
ーー
座敷童子
(どうするのよ?それにいつまで保つかもわからないのよ?)
目目連
(存在の確定、これほど難しいとは……)
すねこすり
(どうするの?)
白沢
(これは、危いかもしれません……)
存在感が希薄すぎる。
いよいよ危ない。
一同が危機感を募らせる。
ーー
そんなとき、不自然に部屋が暗くなった。
冷りとした空気とともに、か細い声が入り込んでくる。
…おや?もう間がないようだ。
家鳴
(なんだ!)
(だれだ!)
(邪魔しないで!)
…みていたよ、ずっとみていたよ
…かわいそうに、このままでは、あと数日も保たないよ
…君は忘れられるよ?
…そうなれば、きっと誰も、思い出しもしない
すねこすり
(そんな!?)
…そう、理不尽な話しさ
…人に生み出され、なのに見向きもされず
…そして寂しく消えていく
(キ、キェタクナィョ)
…大丈夫
…消えたくないのなら、まだ手はあるさ
それは、囁いた。
こけしが、これからも生き残る方法を。
…難しいことじゃない
…ただ、悪意を、嫌悪を、糧としたらいい
白沢の表情が歪む。
(邪魅……ですね、何の用です)
人の不安につけこみ、疑心を生み、不幸を招く。
不穏の種に水をやる。
そうして人の社会に溶け込んで、安寧を脅かす存在。
格で言えば最底辺。
だが、概念として定着した分、希薄ながらどこにでもいる。
ある意味強力な怪異だ。
か細く、小さな声が語り続ける。
…不幸の種なら、私が育てよう
…不審な事故が立て続けに起こるマンションなら
…その原因としてなら
…都市伝説の一部として存在できるかも
…実際、現代ではそういった怪異が定着しているだろう?
一同は一瞬怯んだ。
自分達も、元はそうして生まれたのだから……
邪魅の声が強くなりはじめる。
…簡単なことさ
…まずは少しだけ、部屋を居心地悪くしてやればいい
…眠れない夜とか
…妙な物音とか
…誰もいないはずなのに、とか
…人は勝手に噂する
…人は、不安や不審に名前をつけたがる
…お前も、そうやって名前を得たらいい
…そのための手筈なら、整えてやるよ?
…きっと、立派な名前がつくよ?
こけし
(サナエ、チャ、ト?)
すねこすり
(ちょっと待って!)
こけし
(マダ、ココニイラレル?)




