友人宅と人口密度
すねこすり
(ぜったいヘンだよ!おかしいよ!)
座敷童子
(どうしたっていうのよ?)
平日の昼間、佐伯の部屋ですねこすりが憑き物たちにうったえていた。
すねこすり
(あんな小さい声しか出なくて、しかもこっちの声も聞こえてないんだよ!?)
座敷童子
(そもそもあのこの声はそれほど大きくなかったのよ?)
目目連
(これまでの訪問時の記憶を参照しますと……、確かに先日は活動量も低水準のようです)
家鳴
(活動って……)
(あっ)
(そういえば)
なにか思い当たる節があったのか、家鳴が話しだす。
家鳴
(このあいだちょっと相撲したとき……)
(ほとんどぼくらが動かしてた……)
(こけし……、笑ってるだけだった)
すねこすり
(ねぇ、やっぱりなんかヘンだよ!)
みんなの話をきいて考え込む座敷童子。しかし今すぐ何かができるわけでもない。
(……確かになんだかおかしいみたいね。……仕方ないのよ。次に早苗の部屋にいくときは、白沢にも声をかけましょ。きっと何かわかるのよ)
ひとまず落ち着くよう、すねこすりに声をかける座敷童子。
しかし、なにやら異変があるらしいと知った憑き物たち、みな同じように心配顔でこのあと数日を過ごすことになった。
ーー
じりじりと待った水上宅訪問の日。
二人のスマホにセール情報だのグルメ情報だのを通知しまくり、佐伯と水上をおでかけへの誘導に成功した憑き物たち。
ここ数日の心配ごとについて確認するため、一同はこけしのまわりに集まった。
すねこすり
(すもう、しようよ?)
こけし
(ン……シナイ)
家鳴
(ゲームしようよ!)
(サポートするよ!)
(楽しいよ?)
こけし
(オウエン……シテル)
確かに、少し元気がないようにみえる。
座敷童子
(どういうことかしら?)
目を細め、こけしを注視する白沢
(……あぁ、これは……)
ーー
白沢
(まさか、こうなるとは……)
座敷童子
(……?)
白沢
(しかし、必然でもありますか……)
座敷童子
(どういうことなのよ?)
しばし黙って考え込んでいた白沢が、座敷童に促されて話しだした。
白沢
(昔から、多くの怪異とは人の意識の影から生まれてきたもの。それが恐怖であれ、崇拝であれ。……優しさであれ。)
(付喪神とは、本来長い長い時間をかけて積み重なった人との歴史が魂を成したものです。ですが、このこけしは、さほどの時も経ず動き出しました。私が彼を付喪神の”たまご”と呼んだのもそれがあったから。)
すねこすり
(じゃぁ、なんで動けるようになったの?)
白沢
(最初に言ったでしょう。怪異とは人の意識の影から生まれる。このこけしは、友が寂しくないようにと願う娘の気持ちを託されていた。そこにあなたたちとの出会いが重なったことで、未熟ながらも目覚めたのでしょう。カッパを名乗って動き出したのも、あの二人の思い出を纏っているからではないですか?)
座敷童子
(珍しいことはわかったのよ。でも、それのどこに不都合があるのかしら?)
白沢
(彼は、十分な力を蓄えて生まれたわけではない。つまり、彼自身には自分の存在を固定できるほどの力がないのです。そしてみなさん。今、水上の住むこの部屋を、寂しいところだと思いますか?)
憑き物たちは部屋を見回した。
こけしの存在をきっかけに、水上の部屋にはいつもの面子が行き来するようになった。
もう、水上の部屋は寂しくない。
こけしは役割を終えてしまった。
生まれてきた理由は果たしてしまった。
怪談として語り継がれるということもない。
しかも自認は河童。
事実と自己認識のズレまである。
すねこすりに呼びかけられ、一同が部屋に来たあの日にこけしの中の種は目を覚ました。そして生まれたばかりのこの怪異は、部屋が暖かく笑いに満ちたのを境に、日に日に薄くなっていたのだ。
白沢
座敷童子
家鳴
目目連
すねこすり
彼らは広く知られている。
だから忘れていたのだ。
誰にも知られていない。
それがどういうことか。
ーー
焦る一同。
自分たちのせいでこけしが消えかけている。
なんとか新しく役割を持たせて、
"こけしとはこういう新しい怪異だ"
と世界に存在を定着させなければ
家を守る存在として、座敷童子が家事を教えてはどうか?
座敷童子
(とりあえず、簡単な掃除だけでもいいのよ)
こけし
(ウゴケナイノ)
ゲームをすると現れるなんて、いかにもいそうじゃないか?
家鳴
(ゲームしてるよ)
(応援しよ)
(一緒に)
こけし
(ゲーム?キコエナィ……)
家守り、鎮護ならどうか?
目目連
(見張りならどうです?……あ、もしや……)
こけし
(ョク、ミェナィノ……)
さらに少しずつ薄くなるこけしの影
(キェタクナィ……)
(ズット、サナエチャ、トイッシヨ、ガイィ)
すねこすり
(どうにかならないの!?)
家鳴
(俺たちで動かす!)
(リハビリ!)
(元気になって!)
それでは意味がない
そんなことはわかっている
どうしたらいいか、それがわからない




