友人宅の賑やかな日
玄関から鍵を開ける音が聞こえてくる。佐伯と水上が買い物から帰ってきたらしい。
「いっぱい買っちゃったね〜、楽しかった〜」
「ついつい買いすぎましたね」
「後でファッションショーしようよ!」
「望むところですよ先輩」
部屋に入りながらもおしゃべりに夢中。女子二人、まだまだ元気である。
かしましくはしゃぎながらも、水上は部屋の温度がいつもと違うことを感じていた。
佐伯が来た時から感じていた。今日はみんなが来てくれてるみたい。
迎え入れられた一同もくすぐったい気持ちだ。
ーー
荷物を置いてから、水上はまずこけしを手に取った。大事な思い出の品でもあり、何故か愛着もある。
今も、こけしを手に持ってこう話しかけた。
「なんだか今日は賑やかね。先輩の部屋からのお客様かしらね。」
こけし
(オトモダチ、デキタ)
嬉しそうにこたえるこけし。
聞こえているのか、いないのか、水上は優しくこけしの頭を撫で、微笑みながらサイドボードに戻した。
すねこすり
(あれ?)
座敷童子
(今日はこの部屋もだいぶ賑やかなのよ。早苗もさすがにこけしの声までは聞き取れなかったのね)
確かに一同の気配はこけしよりも強い。
こけしそのものは、生まれたてのせいかいまいち存在感が薄い。
そもそも、水上だって全ての声を拾えているわけではないのだ。こんなこともあるだろう。
こけし
(サナエチャ、タノシソー)
当のこけしも気にしていない様子。
そういうものか。なんとなくモヤモヤしつつも、すねこすりも部屋の喧騒に混ざっていった。
ーー
後日、また一同が様子を見に来た。
今日は佐伯も水上もずっと部屋にいる。
相撲は出来ないのでこそこそおしゃべり。
こけし
(サナエチャ、タノシミシテタ!ミンナクルノ!ボクモ!)
座敷童子
(わたしたちも楽しみにしてたのよ。)
目目連
(リモート参加ではありません、実際に会いにまいりました)
すねこすり
(ともだちだからねー)
おしゃべりだけでも楽しい。
だが、今日はこけしにゲームの楽しさを教えようと家鳴が張り切っている。
家鳴
(きっと、あとで!)
(ゲームする!)
(こけしも!一緒に応援だよ!)
実際、ゲームが始まると大変な騒ぎであった。
目目連
(モニター情報解析。移動最適ルートを予測しました)
家鳴
(よしっ、入力補助開始っ!)
(やった!罠全回避!)
(みた!?こけし今のみた!?)
こけし
(スゴイ!!スゴイ!!)
こけしにいいところを見せられて、目目連も家鳴もドヤ顔全開。
座敷童子とすねこすりもこけしと一緒に観戦。
女子二人にもまして姦しい憑き物たちだった。
ーー
さらに数日後、佐伯と水上は今日もゲーム三昧の予定だが、軽食が欲しいと二人でコンビニへ出かけていった。
すねこすりは二人に同行。そのすきに、家鳴がこけしにすもうの特訓を提案していた。
家鳴
(俺たちで)
(ちょっと動かす)
(これで勝てる!)
こけし
(ホント!?)
座敷童子
(それは特訓じゃなくてズルなのよ)
目目連
(わたくし違反は見逃しません。ですが面白そうなアイデアです)
とりあえずやってみようということになり、家鳴の補助でこけしがカタカタと動き出す。
家鳴
(右っ、右っ!)
(こんどは左っ!もうちょっと!)
(いけいけ!)
キャッキャ、キャッキャとサイドボードの上を動き回る、というか動かされるままのこけし。
結局、帰ってきたすねこすりに見つかり、
すねこすり
(そんなことしてもダメだよ)
しっぽの一こすりでころんと転がされてしまう。
(アーッ、マケターッ)
座敷童子
(まぁ、これからコツコツ自力で頑張ることなのよ)
目目連
(わたくし見ることしかできませんが、特訓ならお付き合いいたします)
勝っても負けても、結局楽しいのが彼らの相撲だ。
ーー
佐伯と憑き物たちが遊びに来るたび、こけしは彼らと相撲をしたり、おしゃべりしたり、ゲームの応援をしたり。
憑き物たちも生まれたての付喪神のたまごが可愛くて何かと構うのが恒例となっていた。
そんなある日、佐伯と水上が夢中でゲームをプレイしている最中にすねこすりの耳がピクピクと動いた。
他のみんなの応援の中、こけしの声だけが聞こえない。
こけしに擦り寄るすねこすり。
こけし
(……ガンバレ、……サナエチャ)
応援はしていた。だがいつの間にか、随分と声が小さくなっている。
すねこすり
(どうしたの?)
問いかけが聞こえないのか、こけしはモニターを、早苗を見つめて繰り返している。
(ガンバレ、サナエチャ……サナエチャ……、ガンバレ)




