友人宅と報告忘れ
今日は久しぶりに、佐伯の部屋に水上が遊びに来ている。
二人は楽しく夕飯を食べている。
「煮込み料理なんて、すごいですね、先輩」
「そう!?材料を切ってお鍋に入れて、あとはほっといただけなんだよー。でも美味しいね!」
実際は手間暇をかけたのだ、但し座敷童子が。
(面取りから下茹で、仕上げまでぬかりはないのよ!)
用意をした座敷童子はドヤ顔である。
きっと、このあとはゲームをするのだろう。家鳴も目目連もそわそわと待機中。
過去の反省から、梁は鳴らさず、瞳は開かず。しかし、ジリジリと待つ。
少しだけ濃くなってしまう部屋の気配。
だが、水上は相変わらず楽しそう。
「早苗ちゃん、自分のお部屋に戻ってから少し寂しそうだったけど、なんだか大丈夫みたいね!」
「おかげさまでやっと慣れて来ました。先輩に頂いたこけしもいますし。でも、やっぱりこの部屋が懐かしいです。」
ーー
(あっ!)
(どうしたのかしら?)
何かを思い出したらしいすねこすりに座敷童子が話しかける。
(……報告忘れてた)
耳を垂れて小さくなるすねこすり。
座敷童子
(一体なんなのよ?)
家鳴
(なんかあった?)
目目連
(情報共有は重要です)
(ちょっと……早苗ちゃんの部屋のことで……)
(何か問題があるのかしら!?)
(ちゃんと見てこなくちゃダメだろ!?)
(とにかく、情報共有をお願いします)
窓の向こうから白沢の声だけが届く。
(みなさん、今はお二人の時間です。すねこすりには、後ほど話しを聞かせてもらいましょう)
とりあえず、今夜の会議の予定が決まった。
ーー
深夜 水上は自宅に帰り、佐伯は就寝済み。
リビングに影たちが集まる。
(それで、一体なんなのかしら?)
身体を萎ませたままのすねこすりに座敷童子が問いかける。
(あのね……)
(早苗ちゃんちのこけし……起きてるかも)
座敷童子
(こけし?あぁ、あの温泉河童かしら?)
すねこすり
(ちょっとだけ、喋ったような……)
家鳴
(どういうこと?)
目目連
(現時点では状況は不明です。監視しますか?)
みんな状況がつかめずに戸惑うばかり。
そこに、何かに思い当たったように白沢が目を細めて言った。
(こけしですか?あぁ、覚えがあります。)
(あの娘に愛でられ、水上にも大事に扱われているようです。どうやら、新たに影が産まれようとしているのかも知れませんね。)
座敷童子
(じゃあ、どうするのよ?大丈夫なの?)
白沢
(まぁ、問題はないように思えますが、座敷童子の言う通り、間違いがあってはいけません。念には念を入れて、一度様子を見に行きましょうか)
(監視、観測でしたらわたくしの出番です)
白沢の言葉に張り切る目目連。
対して落ち込む座敷童子と家鳴。
(もどかしいのよ)
(建物付属がうらめしい)
しかし、白沢はこう続けた。
(いや、今回はみんなでいきましょう。この部屋も、あちらの部屋も、もう我々にとって大事なことに変わりない。家主の影を借りれば家憑きでも同行できますよ。)
(えっ!)
(いいの!)
(やった!)
俄かに活気づく家鳴。
(お、おでかけなのよ)
座敷童子も予想外の外出に戸惑いつつも、どこか嬉しそうである。
こうして、住人達にとって初の出張の予定が決まった。




