友人宅は閑静な部屋?
あれ以来、佐伯と水上は互いに部屋を行き来する仲だ。
「いらっしゃい、先輩」
「おかえり、早苗ちゃん」
どちらの部屋でどちらを迎えるときも、二人はお互いを歓迎する。
それで良い。何も問題ない。
だが、相変わらず水上の部屋は静かなままだった。
ーー
水上の部屋。今日も佐伯が遊びに来ている。
これからも協力してプレイしたい。新しいゲームが出たら一緒に遊びたい。そのためにも、水上宅のゲーム環境の充実は必須である。作業を買って出た佐伯はやる気満々。
「チャットも出来たし、音響もOK!これでいつでも一緒に遊べるね!」
「先輩、ありがとうございます。これなら週末を待たずにステージクリアも出来そうですね」
そのまま二人はゲームに突入。夢中になって遊んでいる頃、すねこすりはちょっと退屈していた。
ーー
(早苗ちゃんち、誰もいない)
もう、部屋は隅々までチェック済み。キッチンも梁も黙っている。
しかし、それでも、部屋は整っている。洗濯物は片付いているし、キッチンには洗い残しの皿など一枚もない。佐伯とは違って、早苗は生活力も高めであるらしい。
(早苗ちゃんは立派!)
座敷童子に言ったら不満を漏らすかもしれないが、なんだかちょっと嬉しいすねこすり。
でも、つまらないのは結局同じ。
ウロウロと部屋をさまよっているうち、たまたま面白そうなものを見つけた。
見覚えのあるこけし。
(あ、お土産だ)
二人が温泉から持ち帰って来たのを覚えている。木彫りのなんだかブサイクなヤツ。でも、佐伯は何やらとても大事にしていた。それが、今は水上の部屋にある。
ちょっとだけ、イタズラ心が疼く。
ーー
(ただの置き物なのかな?)
少しだけちょっかい。
(スリスリ)(……)
(スリスリ)(……ッ)
すねこすり(ん?)
ちょっと、反応があった?
(スリスリスリス〜リ)(……)
勘違いか……
(やっぱり、ただのこけしだよね)
いっそのこと倒してみようか?
体勢を整えるすねこすり。
そのとき、微かな声が聞こえた。
(……ャメテョ)
すねこすり
(んん?)
すねこすりは少し慎重になる。
(くんくんくん)
こけしをよく調べてみる。特におかしなところはない。
そんなところで
「早苗ちゃん!今日は帰るね!明日は夕飯のあとでログインだからね!」
「先輩ありがとうございました。また明日」
ーー
残念、今日はここまで。
仕方ない。でも、これは"白沢様に報告したほうがいい"のかな?
すねこすりは、ちゃんと考えた。
でも、帰り際に水上が足元に微笑んでくれたせいか、佐伯が嬉しそうだったせいか、
(楽しかったね!)
無邪気に舞い上がったフワフワは、帰り道ですっかりそのことを忘れてしまったのだった。




