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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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24/29

二人暮らしとおかえりとただいま

「着いたね……」

「はい……」


ついに帰宅。

ほんの数日前、俯いて逃げ出した部屋の前。

私は、帰って来た。


真っ直ぐ前を向く。

こちらをちらりと確認してから、先輩が部屋の扉を開けた。


(お帰り、なのよ)

和装の少女がこちらを見ている。


(おかえり?)

足元に擦り寄る体温を感じる。


そして、天井の向こう側、梁の奥から微かな気配。壁の目もとても薄い、けど消えていない。


(……ゴメン)

(……おかえり……なさいませ)


小さな、とても小さな聞き逃しそうな声。

それでも聞こえた。


「た、ただいま…….帰りました。っ、ひぐっ、……ごめんね。」


ほんの微かに梁が鳴る。

瞬きのしばたく音がする。


「私、怖がりだから、でも、知ってるから」


今、私が伝えられる精一杯を。

「待っててくれて、ありがとう」


青鬼たちは、まだこの部屋にいてくれた。


グスグスと泣き続ける私の背中を先輩がなでる。

「早苗ちゃん、ありがとう。これからもよろしくね。」


先輩は、きっと本当のことは知らない。でも、だからこそわかる優しさもある。


奥の部屋、その窓の向こうからも声が聞こえた。

(もう、お客様ではありませんね。お帰りなさい。)


私は、帰ってこれた。


--


とりあえず荷物を片付けて一休み。夕飯はあり物で済ませようということになった。


(久しぶりのお夕飯なのよ!準備は万端なのよ!)

キッチンから伝わってくる、漲る歓迎の空気。

何故か豊富な作り置きで、ありがたく充実の夕飯をいただいた。


先輩は、部屋に帰ってからも私を気遣ってくれる。


「まだお休みあるし、今日は夜更かししちゃう?それとももう寝る?好きにしていいんだよ?」


大事にされてるなと、胸が暖かくなる。でも、まだやるべきことがある。


「それなら……先輩!イベント進めますよ!」


梁が、天井が思わずというように軋む。先輩もビックリ顔。


「よしっ!行くよ!早苗ちゃん!」

でも、先輩はやる気の様子。


久しぶりのプレイは、いつかのようにチグハグだった。でも、とても楽しいのもいつもと同じ。

きっと、この部屋も同じだろう。


就寝時、私は布団の足元を丁寧に整えておいた。

横になってしばらく、遠慮がちに、でも嬉しそうに寄ってくる気配。


(おやすみー)

くるりと丸まって落ち着く重みに、私も安心して眠りに着いた。


ーー


翌日、スマホのアラームはなぜか鳴らなかった。

でも、以前と違うのはこれが気づかいだとわかること。


(お休みの日くらい朝はゆっくりでいいのよ。家鳴もやっと覚えたのだわ)


(張り切りすぎ、ダメ)

(ちょうどいいお役立ち)

(お役立ち)


天井の隅からは微かな気配。でも視線は感じない。

(常時監視は不要。わたくし成長いたしました)


足元にフワフワとした何かが寄り添う。

(よく言うよね)


これからも、不意のことにビックリしてしまうことはあるだろう。怖いと感じることもあるかもしれない。でも……


「ふわぁ、早苗ちゃんおはよう。あ!いい天気!まだ少しお休みあるし、今日は何しようか!」


先輩と一緒なら、この部屋なら、私はもう大丈夫。

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