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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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22/29

二人暮らしと甘えと信頼

翌日の昼前、佐伯と水上は荷物をまとめていた。


「先輩……あの、私昨日は……」

「いいのいいの!気にしないで!気分転換にちょっと外泊もいいでしょ?」


朝から先輩は会社に連絡をして、二人分の有休休暇を申請してくれていた。


「知ってる?今の時期温泉って空いてるんだって!早苗ちゃんと温泉旅行!修学旅行みたい!」

大袈裟にはしゃいでくれる先輩。


「あ、でも知らない部屋で寝たくないとかだったら……」

「いえいえいえ!でも、オフシーズンとはいえ予約はどうしたんですか?」

「なんか、営業部のコネですぐとれたらしいよ。部長もゆっくりしてきなさいって言ってた」


部長は、ナンパ男をキッチリ成敗してくれたらしいよ、と。

絶えず明るく冗談や軽口を口にしながら、先輩は私の背中を支え続けてくれた。


「ごめん……」

部屋を出る前に、背中越しに小さくつぶやく。

わかってる。昨日の大失態。でも、今は心の整理をする時間が欲しい。


とりあえず今は、先輩の優しさに、お縋りすることにした。


--


(やって……くれましたね……)

見慣れた、ヤギ顔の男ではない。本来の姿に戻りこちらを睥睨する神獣の前


目目連

家鳴


どちらも今はほんの小さな影でしかない。


(申開きのしようもなく……)

(ひっ……)


白沢の体に浮かぶ瞳は、今全て憤怒で真っ赤に燃えている。


(あの娘たちは、家を出るとまで言った……)

(お前達は、あの二人の信頼を踏み躙ったのだぞ……)


あまりの激怒に空気が熱を帯びている。


(……度し難し)


追放どころではない……

存在すら、許されないかもしれない……


そう思えるほどの緊迫のなか、震える手で座敷童子が小振りな手帳を取り出した。

部屋を出る前に、水上がそっとリビングに残していったもの。


(白沢……さま。これを見るのよ)


手帳は、水上が日記として利用していたものらしい。

この部屋に来てからの体験や、怪異たちへの愚痴らしきものもある。

しかし、そこには少しずつながら、部屋のナニかたちに歩み寄ろうとする言葉も記されていた。


そして、最後のページ


"どうしてだろう。みんな優しいって知ってたのに。信頼してた……つもりだったのに。ごめんなさい、私怖がりだから。"


後悔のメッセージ。謝罪の言葉。


"今は、まだ怖い。でも、またこの部屋に帰りたいとも思ってるから……"


白沢は、しばらくの間手帳を喰い入るように見つめていた。


張り詰めた緊張はそのまま、周囲の温度だけがふっと下がる。

こめかみに青筋をたてながらも、そこには、いつものヤギ顔の男が立っていた。


(もし、当人が許すというのなら、私が勝手に断罪することはできません)

(彼女は、これまでと同じ、この部屋を望んでいる)

(我々は、取るに足らぬ影でしかない。貴方たちも学んだでしょう。)

(成長なさい。しばらくは見張ります。これはペナルティです)


--


白沢が去って、緊張がほどけるのと同時に座敷童子の腰が抜けた。

(とんでもないのよ、あのヤギ)


目目連と家鳴はすっかり引っ込んでいる。


(あいつら!お礼の言葉もないのよ!)

(怖かったからねー)

座敷童子の足元にすねこすりが寄り添う。


(とにかく、こっちはどうにかなったのよ。)

(あとは早苗ちゃんね。大丈夫かしら……)


この部屋は、今も二人を待っている。

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