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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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21/30

二人暮らしの終わりのお知らせ

佐伯と水上は、今日も仕事を終えて帰宅した。

「今日も大変だったね〜」

「でも、おかげさまでなんとかなりました」

他愛のない会話。いつも通り、居心地のいいリビング。


座敷童子のこっそりな手伝いのおかげで今日の夕飯も和気藹々。食後のゲームは少しだけ。明日も頑張ろうと、二人はそれぞれ床についた。


--


しかし、張り切り度MAXな目目連と家鳴は今も活躍の機会を伺っている。


水上は思っていた。最近、部屋の圧が高い。大丈夫だとはわかっていても、緊張続きの日々は少なからず水上を疲弊させていた。


寝苦しさに何度か寝がえりを打つ。やっとウトウトした頃、寝汗が不快で声が漏れた。

「うぅっ、ぅん」


--


普段は寝つきのいい水上がうめき声をあげた。

これを異変と感知した目目連は、すわっとばかりに全能力を解放した。深夜のリビング。天井。壁。


(手遅れになってはいけません!)

……さらに布団の中まで。

あらゆるところにその目が開かれる。


負けじと呼応した家鳴も全力。

(緊急事態!緊急事態!)

もはや、部屋中がギシギシと揺れるほどに鳴らす。


ーー


突然の異常事態に目を覚ました水上は、見てしまった。


自分が被っている布団が”目”で埋め尽くされている。

「ひぃっ!」


逃げようにも、揺れる室内ではまともに動くことも出来ない。

「いやぁっ!」


どちらが上か下か、それすらわからなくなるほどに揺れは強くなっていく。

焦って動いたせいで、余計に手足に布団が絡まる。さらに至近距離からこちらを覗き込む無数の”目”が、ギョロリと音を立てた。


人は恐怖からは逃れられない。これは仕方のないこと。

安心して眠っていたところを突かれたのも良くなかった。

水上の脳裏が恐怖で塗りつぶされる。

初めて部屋に来たとき、キッチンで気絶したとき、外で出会った人の悪意、危険な怪異に出会ったときの刺激臭。あらゆる恐怖がフラッシュバックした。


--


「いやぁぁあああ!!ひぃっ!いやっ!ぎゃああぁぁああ!!」


目を見開き、涙をこぼし、裂けんばかりに開けた口から絶叫をこぼす。何を掴めばいいのかも知らず振り回される腕。モニターを倒し、脇に寄せたテーブルにしがみついても収まらない。


「何っ!どうしたの!早苗ちゃん!」


隣の部屋から飛び出してきた佐伯が駆け寄るが、水上の目は開いていても何も見ていなかった。バタバタと暴れる水上の腕や足に強かに打たれながら、佐伯はそれでも水上を精一杯抱きしめた。


「早苗ちゃん?大丈夫だよ?わたしがいるよ?」

耳元に直接言葉を届ける。


「あぁっ、はぁ」

水上の動きが止まった。


「どうしたの?何があったの?」


水上は、まだハクハクと息の仕方を忘れたようにしながらも、途切れ途切れに話しだす。


「こ、この部屋、ナニかいて、目が一杯で……」

「うん……」

「お風呂も、あと道は危なくて……」


取り乱し、混乱している。

一度部屋を見回した後、佐伯は水上を抱きしたまま、ゆっくりと話しだした。


「早苗ちゃんが怖いなら、今からでも部屋をでよう。」

「ホテルに泊まってもいいよ、なんなら引っ越したっていい。」

「早苗ちゃんが安心出来ないところになんている必要ないんだよ」


佐伯の体温を感じ取り、やっと落ち着きはじめる。だが、恐怖からは抜け出せずにエグエグと喉を鳴らす水上を、佐伯は自分のベッドに寝かせた。


その夜、水上は寄る辺のない子供のように、佐伯の身体に取り縋って、やっと眠りについた。

部屋は、一切の物音を立てなかった。

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