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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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17/30

二人暮らしと隠れんぼ

先輩の部屋にお世話になってから、意外なほどに生活は快適。

片付いた部屋。切れない消耗品。スマホの充電忘れもアラームの設定し忘れもない。


初日に見たナニかたちは、今はちょっとした違和感にまで落ち着いている。

"うちってすごく居心地がいいんだよね〜"

先輩が言っていたことにも納得してしまいそう。


しかし、それには理由がある。


座敷童子は、水上がいるときはキッチンに立たない。

(こっそりなのよ)


すねこすりは、水上の足に直接は触れない。

(ふわふわなのにね)


家鳴はゲーム我慢中。

(お客様だから……)


水上はそれを知らない。


--


ときどき、思いもしない遭遇もある。


冷蔵庫を開けて、閉めようとしてふわっと違和感。

(挟まった!)

サッと足元を逃げていく小さな獣のような影。

(だって、プリン美味しそうだったから……)


リビングの掃除中、モニター下のほこりをとっている最中に異音。

(やった!ゲーム!)

起動音が鳴る。

(バカ!違う!)

(オフ!オフ!)


料理中、棚や引き出しを確認すると何故か背後がソワソワ。

(それならあそこに、あっ、それはこっちに)


私はその度に

「ひぃっ!」


(あ、やば)

慌てて隠れるナニかたち。


なかなか難しい。


--


ある日、先輩は残業。私は一人でお先に上がらせていただいた。気配はあるけど快適な部屋。何故か気をつかわれているような気もして、少し慣れてきていた。


お世話になりっぱなしなのだから、今日はしっかり夕飯を作ろう。

炊飯器をセットして、野菜を洗う。私だって一人暮らしして来た。ときどき背後を気にしたりしながら、それでも手際良く調理をすすめていく。


そこへよせばいいのいに、気になりすぎて、座敷童子がこっそり手元を覗きこんだ。


ーー


視線を感じてはいた。

だが、人間は慣れる生き物。少し緊張しながらも料理を続ける。


「だ、大丈夫、大丈夫。」


そのとき、

(なにをつくるのかしら?)

息がかかるほどの耳元近くで、幼なげな女の子の声がした。


「ひいぃっ!!」


思わず手元がぶれて、指先を包丁で浅く切ってしまう。

「イタっ!」


血が一滴、まな板に落ちた。


ーー


大したことはない。

だが、見守る側は大慌て。


座敷童子

(っ!大変なのよ!)


すねこすりが足元に寄る。

(どうしたの!?あっ怪我してる!)


家鳴

(ぴし!)

(ぱし!)

(ぎし!)


目目連、ついつい怪我を診断。

(負傷は軽度。ですが念のため手当てを推奨)


一気に濃くなった気配。

こ、こ、怖い。

そっと天井を見上げて見てしまう。

そして見てしまう。

こちらを覗きこむ無数の目。


「ぴぃぃやああぁぁ!!」


腰が抜けてへたり込む。ふっと意識が遠のく。


--


気がついたときはまだ一人だった。部屋はやけに静か。


「無理っ、先輩っ、早く帰って来てっ」

慌ててスマホを確認。もうすぐ自宅に到着するとメッセージが来ていた。


びくびくしながら、とりあえず切ってしまった指の手当てをし、ただただ先輩の帰りを待つ。

「ただいま〜」

「あぁっ、先輩っ、おかえりなさいっ!」

「え?なに?早苗ちゃんどうかしたの?」


思わず駆け寄ってしまったけれど、キョトンとした顔の先輩を見てハッと思いなおす。

居候の身で、怖かっただとか、この部屋にナニかいるだとかいうのは失礼なのでは?

結局、何もいい出せなくなってしまった。


その後は、先輩と当初の予定より簡単な夕飯を完成させ、いつも通りの夜を過ごす。

先輩が帰って来たからは今は少し安心。


部屋は、いつになく静かだった。


--


翌日、昨日の続きのように朝から部屋は静か。

でも、


「あれ?スマホどこ?あ、日焼け止めなくなってる!ごめん早苗ちゃん貸して」

先輩はいつもより出勤の支度に手間取っている。


仕事から帰宅しても、部屋は物音ひとつしない。部屋が息をひそめている。


「だって、怖かったから……」言い訳してしまう。


--


夕飯後、2人でお茶を飲んでいるとき、先輩がつぶやく。

「なんか、今日寂しいね」


--


就寝後、迷ったけど、布団の中で独り言を言うことにした。


「昨日は怖がりすぎちゃったなー、大袈裟だったなー」


布団の裾にナニかがそっと寄ってくる気配。でもまだ乗ってはこない。


「怪我は私のミスだし、天井の目は…….あれはさすがに怖かったけど……でも多分見間違いだし」


キッチンにソワソワとした気配。天井の模様が少し撓んだように見える。


「まったくの無音って味気ないっていうか……」


(ぴし)

梁が小さく鳴る。


部屋に、また気配と音が戻って来た。遠慮がちに、伺うように。

布団の裾に、くるりと丸まった重みが乗った。


--


翌朝、先輩の支度がスムーズに戻っている。玄関の靴は揃っている。部屋は、何故か少し暖かい。

怖いものは怖い。でもほっともする。私は、部屋との付き合い方を少しだけ学んだ。

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