二人暮らしと初顔合わせ
「どうしたの!?大丈夫!?」
先輩の声で意識が戻る。
はっ!と周りを見渡す……も、何もいない。
さっきは確かに何かが、え?でも……
「すみません、ちょっとボーっとしたみたいで……」
「そっか、そうだよね?いろいろあったんだもん、仕方ないよ!」
先輩は何も気にしてない様子。
「さぁ、入って〜。そこのソファで少しゆっくりしててね!」
促されて部屋にお邪魔する。
ひとまず荷物を置いて、すすめられたソファに座った。
先輩はキッチンに買い込んだデパ地下のお惣菜を並べつつ
「あ!お風呂も準備しなきゃ」
と廊下の奥へ行ってしまった。
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いったいなんだったの?
少し放心したあと気づく。
あ、お惣菜温めないと。
そう思って立ち上がったところで、
チン♪
レンジが鳴った。
(しまったのよ!ついいつものクセで!)
何故かそこには、既に皿に移されて温められたお惣菜。
「え?なんで?」
そこへ先輩が戻ってくる。
「あ、ありがとう!温めておいてくれたの?食べよ食べよ〜。これ美味しいんだよ〜」
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釈然としないながらも、お惣菜をテーブルに並べて夕食の時間はすすむ。
「ね、これ美味しいよね!」
「わたし辛いの苦手〜、早苗ちゃんは?」
「早苗ちゃんの好きなもの教えて〜。明日はそれにしよっか?」
先輩はとりとめもなく話しかけてくれる。気づかいに心が温かくなる。そんな先輩の部屋だもの。そう、さっきまでのことは私の気のせい。しばらく、先輩とゆったりおしゃべりを楽しむ。
しかし
キッチンの床から落ち着かない足音。
(もどかしいのよ!空いたお皿はすぐに水につけたいのよ!)
誰も触っていないゲーム機のランプが点滅する。
(早く!続き!)
(あ、今日はダメだよ)
(我慢、我慢)
天井の隅から視線を感じる。
(即座に見返されました。やはり目視での観測は高難度。無念です。)
極め付けは、テーブルの下。
私の足元にナニやらいる気がする。しかも、リラックスしてる。
(んふ〜、匂い覚えた〜)
やっぱり気のせいなんかじゃない。気配が多すぎる。
箸を持つ手が震えた。
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夕食も済んでしばらく、明日も仕事、そろそろこの時間がやってくる。
「早苗ちゃん、お風呂どうぞ。ゆっくりしていいからね〜」
ありがたい。でも、申し訳ないけど普通に怖い。
でも、先輩はニコニコ。
仕方ない。私は覚悟を決めた。
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脱衣所、目の前の洗面台。そっと鏡を見る。
おかしなものは映っていない。
でも、依然気配は消えない。
浴室に入る。
髪を洗う。視界のすみで湯気のかたまりが動く気がする。
体を洗う。水滴の音が妙に響くような気がする。
「もぅやだぁぁ……やめてよぉぉ……」
本当に、もう泣いてしまいそう。
やっぱり、やっぱりナニかいる!
そのとき、浴室の壁から音が鳴った。
ぴしっ。
「ひいっ」
でも、気づくとその音をきっかけに空気が変わっていた。
(ごめんね。もうみてないよ)
浴室に温度が戻って来た。
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湯船に浸かって、人心地。朝からの緊張がお湯に溶けていく。気になることは多すぎたけれど、なんだか今は大丈夫。
思いの外長風呂になって、先輩に平謝りした。
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「リビングで悪いけど、お布団ここでいい?」
「ありがとうございます。」
「わたしはこっちの部屋にいるから。何かあったらなんでも言ってね」
なんやかやとあって就寝時間。先輩は寝室へ行ってしまった。すぐ隣りとはいえ別の部屋。今、私は一人きりだ。
考えないようにしていたのに、また緊張がやってくる。
布団に入って、こっそり天井を見上げる。
端の方にこちらを見つめる目がいた気がする。
キッチンからは微かながら足音が、聞こえたような?
「気のせいよっ」
布団を頭まで被る。
しばらく様子を見つつ、あれは勘違い、きっと緊張のせいと自分に言い聞かせて、どうにかうつらうつらとしはじめたころ。
布団の裾に乗ってくるかすかな重み。
「やっぱりなんかいるっ、無理無理無理無理無理無理っ」
足を抱えて、出来るだけ体を小さくする。ギュッと目を閉じる。耳を塞ぐ。
慌てて気配達が散っていく。
しかし、しばらくしてから、またナニかが布団へ近付いてくる。
「イヤぁ、もうヤダぁ」
ゆっくりと近付いてきたナニかは、とうとう乱れた布団の端にたどりついて……
--めくれていた裾を、ふわっと直した。
え?
満足そうに、足元で小さく丸まる気配。
なんとなく思う。
怖がらせたいわけじゃない?
ーー
「い、いきなりは怖いので、もう少し加減してもらえたら……」
布団の中で小さくつぶやいてみる。
途端に、少し慌てた様子で部屋から気配がすっと遠のく。
消えてはいない。でも、やっぱり気づかわれてる。
怖いけど、やっと、どうにか安心できた気がした。
緊張しながらも、疲れのせいか眠気がやってくる。
ぴし。
誰かの
(おやすみ)
が聞こえた。




