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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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15/29

二人暮らしと初顔合わせ

「どうしたの!?大丈夫!?」


先輩の声で意識が戻る。


はっ!と周りを見渡す……も、何もいない。

さっきは確かに何かが、え?でも……


「すみません、ちょっとボーっとしたみたいで……」

「そっか、そうだよね?いろいろあったんだもん、仕方ないよ!」


先輩は何も気にしてない様子。


「さぁ、入って〜。そこのソファで少しゆっくりしててね!」


促されて部屋にお邪魔する。

ひとまず荷物を置いて、すすめられたソファに座った。


先輩はキッチンに買い込んだデパ地下のお惣菜を並べつつ

「あ!お風呂も準備しなきゃ」

と廊下の奥へ行ってしまった。


--


いったいなんだったの?

少し放心したあと気づく。

あ、お惣菜温めないと。


そう思って立ち上がったところで、

チン♪

レンジが鳴った。


(しまったのよ!ついいつものクセで!)


何故かそこには、既に皿に移されて温められたお惣菜。

「え?なんで?」


そこへ先輩が戻ってくる。

「あ、ありがとう!温めておいてくれたの?食べよ食べよ〜。これ美味しいんだよ〜」


--


釈然としないながらも、お惣菜をテーブルに並べて夕食の時間はすすむ。


「ね、これ美味しいよね!」

「わたし辛いの苦手〜、早苗ちゃんは?」

「早苗ちゃんの好きなもの教えて〜。明日はそれにしよっか?」


先輩はとりとめもなく話しかけてくれる。気づかいに心が温かくなる。そんな先輩の部屋だもの。そう、さっきまでのことは私の気のせい。しばらく、先輩とゆったりおしゃべりを楽しむ。


しかし


キッチンの床から落ち着かない足音。

(もどかしいのよ!空いたお皿はすぐに水につけたいのよ!)


誰も触っていないゲーム機のランプが点滅する。

(早く!続き!)

(あ、今日はダメだよ)

(我慢、我慢)


天井の隅から視線を感じる。

(即座に見返されました。やはり目視での観測は高難度。無念です。)


極め付けは、テーブルの下。

私の足元にナニやらいる気がする。しかも、リラックスしてる。

(んふ〜、匂い覚えた〜)


やっぱり気のせいなんかじゃない。気配が多すぎる。

箸を持つ手が震えた。


--


夕食も済んでしばらく、明日も仕事、そろそろこの時間がやってくる。


「早苗ちゃん、お風呂どうぞ。ゆっくりしていいからね〜」


ありがたい。でも、申し訳ないけど普通に怖い。

でも、先輩はニコニコ。

仕方ない。私は覚悟を決めた。


--


脱衣所、目の前の洗面台。そっと鏡を見る。


おかしなものは映っていない。

でも、依然気配は消えない。


浴室に入る。

髪を洗う。視界のすみで湯気のかたまりが動く気がする。

体を洗う。水滴の音が妙に響くような気がする。


「もぅやだぁぁ……やめてよぉぉ……」

本当に、もう泣いてしまいそう。

やっぱり、やっぱりナニかいる!


そのとき、浴室の壁から音が鳴った。

ぴしっ。


「ひいっ」


でも、気づくとその音をきっかけに空気が変わっていた。

(ごめんね。もうみてないよ)


浴室に温度が戻って来た。


--


湯船に浸かって、人心地。朝からの緊張がお湯に溶けていく。気になることは多すぎたけれど、なんだか今は大丈夫。


思いの外長風呂になって、先輩に平謝りした。


--


「リビングで悪いけど、お布団ここでいい?」

「ありがとうございます。」

「わたしはこっちの部屋にいるから。何かあったらなんでも言ってね」


なんやかやとあって就寝時間。先輩は寝室へ行ってしまった。すぐ隣りとはいえ別の部屋。今、私は一人きりだ。


考えないようにしていたのに、また緊張がやってくる。


布団に入って、こっそり天井を見上げる。

端の方にこちらを見つめる目がいた気がする。


キッチンからは微かながら足音が、聞こえたような?


「気のせいよっ」

布団を頭まで被る。


しばらく様子を見つつ、あれは勘違い、きっと緊張のせいと自分に言い聞かせて、どうにかうつらうつらとしはじめたころ。


布団の裾に乗ってくるかすかな重み。


「やっぱりなんかいるっ、無理無理無理無理無理無理っ」


足を抱えて、出来るだけ体を小さくする。ギュッと目を閉じる。耳を塞ぐ。


慌てて気配達が散っていく。


しかし、しばらくしてから、またナニかが布団へ近付いてくる。


「イヤぁ、もうヤダぁ」


ゆっくりと近付いてきたナニかは、とうとう乱れた布団の端にたどりついて……


--めくれていた裾を、ふわっと直した。


え?


満足そうに、足元で小さく丸まる気配。


なんとなく思う。

怖がらせたいわけじゃない?


ーー


「い、いきなりは怖いので、もう少し加減してもらえたら……」

布団の中で小さくつぶやいてみる。


途端に、少し慌てた様子で部屋から気配がすっと遠のく。

消えてはいない。でも、やっぱり気づかわれてる。


怖いけど、やっと、どうにか安心できた気がした。

緊張しながらも、疲れのせいか眠気がやってくる。


ぴし。

誰かの

(おやすみ)

が聞こえた。

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