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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第二部 二人暮らしと憑き物

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14/29

二人暮らしへのご招待

引き続き、拙作をお読みいただきありがとうございます。

第二部スタートいたします。

しばらくの間、ぜひよろしくお願いいたします。

私は水上早苗。

ただいま絶望的な気持ちで自宅キッチンの天井を見上げています。


ボタボタボタボタボタボタ


絶え間なく滴る水滴。

壁も、床も既にグシャグシャ。

レンジも冷蔵庫も無事とは思えない。


ーー


異様な冷気と水音で、普段より大分早い時間に目が覚めた。

恐る恐るベッドルームを出て、リビングを抜け、この惨状を発見。


すぐに管理会社に問い合わせ。意外なことに、それほど待つこともなく担当者が説明にやってきた。


「水上様、この度はご迷惑をお掛けしまして誠に申し訳ありません。実は昨晩、上階で漏水が発生しまして、ただいま復旧作業の最中でございます。えぇ、もちろんお部屋の原状回復、その他補償などはこちらで責任を持ちますので」


疲れた顔の担当者は、既に上階で対応に追われていたらしい。申し訳ないけど少し安心した。ただ、言いにくそうにそのあとが続く。


「ただ、査定や復旧工事の都合もございまして、つきましては、しばらくの間ご退去をお願いできれば。もちろん、その間のお家賃は減額いたしますので」


即、了承。

でも、同時に理解する。退去中の宿は自己責任ということらしい。


「ご理解とご協力誠にありがとうございます。いや、しかしお若いのにしっかりしていらっしゃる。こんなこと言うのもなんですが、わたしだったらとても冷静ではいられないところです。いや、本当にありがとうございます。」


担当者は、退去中の部屋や家財の管理諸々について説明してから、修繕の目処が立ったら連絡すると言い残して帰って行った。


高身長、キツ目の顔立ち、口下手なせいで言葉少な目。色々と重なって昔からクールだの冷徹だのと言われてきた。


でも実際は違う!頭はパニック!

(退去!その間どうすんの?ホテル?無理ぃぃ、高すぎるぅぅ!)


結局何も決められないまま、とりあえず身の回りの荷物をスーツケースに、そして混乱を頭に詰めて出勤した。


--


会社では、大きなスーツケースを持って出社した私に周りが声をかけてくれる。


事情を説明すると、みんな同情してくれた。


「大変だね」

「出来ることがあったらなんでも言ってね」


そう言ってくれる。

でも、そうとしか言ってくれない。

今日から寝床もないとしても、結局自分でどうにかするしかない。

わかってる。助けの手なんて、そう簡単には差し出せない。きっと、私だって。


--


昼休み、給湯室でまた声をかけられた。


佐伯先輩。

とても真面目で、少し抜けてて、不思議な雰囲気を持っている。でもこっそり尊敬している先輩。


「えっ?それ大丈夫なの?」

「それが、一時退去しなくちゃならなくて……」


仕方がない。先輩だって……


「じゃあさ、しばらくうちにきなよ!」


ん?なんて?


「わたし一人暮らしだし。うふふ、実はうちってすごく居心地がいいんだよね〜。ご招待しちゃう!」


軽い。あまりにも。


「いや、でもっ、ご迷惑では?」

「いいのいいの。いつも助けてもらってるし、前から水上さんとは仲良くなりたいと思ってたんだよね!」


なんてこと!尊敬する先輩と!一つ屋根の下!


ありがとう、上階の人。私は感謝すらした。

それがとんでもない勘違いであることは、当然まだ知らない。


--


お世話になるのだから、せめて今日の夕飯は私が作ると申し出たところ


「いろいろあったんだから無理しちゃダメ!今日は歓迎会だし、デパ地下パーティーにしよう!」


との先輩の一言で買い物に行くことになった。


「早苗ちゃん用のタオルもいるね〜。あ、お箸も買おう」


名前呼び!嬉しい!それに先輩は細々と私を気遣ってくれる。


「ありがとうございます……」

「んふ〜、しばらくよろしくね!楽しみだね!」


私も楽しみです!先輩!


--


先輩のお宅に到着。


「さぁ、どうぞ入って〜」


今朝の絶望も混乱もすっかり忘れて、このとき私は浮かれてさえいた。

「それでは、しばらくお世話になります。お邪魔します……っ!」


動けない。

玄関に一歩踏み入れた、その瞬間、全身が硬直した。


(あぁ、すねこすりから聞いているのよ。大変だったわね。)

ナニかがこちらを向いている。


天井には無数の目。

梁や柱にはりつくナニか。

足元にも、興奮して走り回るナニかの気配。


そして廊下の先の窓。

そこに、白い影が映っている。


必死に目線を彷徨わせるも、気付いたなとばかりの天井の目に視線をとらわれた。


そして、白い影が、ゆっくりとこちらを見た。

(おや、これはまた……興味深いですね)

うっそりと笑む気配。


「……綺麗なお部屋ですね。」

かろうじて一言述べて、私は意識を飛ばした。


二人暮らしは前途多難らしい。

新たな住人水上を迎え、第二部スタートとなりました。

この部屋で、これからどんな暮らしがはじまるのか。

皆様どうぞお付き合い下さい。

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