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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第一部 一人暮らしと憑き物

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12/30

一人暮らしと憑き物の大騒ぎ

スマホのアラームが鳴る。


「んー……もう朝?」

画面を見て、蒼白。

「スヌーズじゃん!?しかも三回目!?」


ベッド脇で腕を組む座敷童子。

(もう、さっきから何度も起こしてたのよ!全然起きなかったのよ!)


梁がぴし。

(アラーム五分前にも鳴らした)


天井の目が瞬く。

(覚醒反応、鈍化)


「やばい!」


焦って跳ね起きようとして。布団が足に絡まる。

"もんどりうつ"のお手本かのようにそのまま床へダイブ。


「いったぁぁぁ!」


おでこが赤い。


目目連が即時診断。

(軽度の打撲。問題はありません。が、化粧下地は通常の二割増しが必要です)


(分析してる場合!?)


座敷童子が手を叩く。

(総員出動!なんとしても時間までに身支度、朝食を済ませるのよ!)


ぴしぴしぴし。家鳴三体、活性化。

すねこすり、待機。

目目連、自宅監視モード全開。


ーー


ドライヤーの風量、最適化。

化粧ポーチ、微妙に手元へスライド。

冷蔵庫から出したヨーグルトの蓋、なぜか開けやすい。

トースターの焼き加減、完璧。


「あれ?今日なんかスムーズじゃない?」


気のせい。完全に気のせい。


ーー


通勤中。


「やばい!間に合いそう!?やっぱりギリギリ遅刻!?」


駅まで猛ダッシュ。と、ここでヒールがマンホールの縁にかかる。


ぐら。


(危ないよ)

足元から、ふわり。すねこすりが肩を押す。


「あっぶな!セーフ!……いやセーフじゃない!急がなきゃ!」


横断歩道。信号が変わる寸前、風が背中を押す。人混みでよろける。カバンが落ちそうになる。


そのたびに、

ふわり。とん。

さりげない補助。


会社に着く頃には、すねこすりが少し息を切らしていた。


ーー


始業。


「間に合ったぁ……」

PCを立ち上げて仕事を始める。


安堵した瞬間、集中力が落ちる。

うつらうつら。


目目連の視線がデスクに落ちる。

(参照する資料が違います)

(ファイルの保存名に注意)

マウスが、なぜか正しいフォルダへ吸い寄せられる。


(コーヒー倒しそう)

すねこすり、カップの影に待機。


部長が通る。

「今日は眠そうだな」

「ちょっと朝バタバタで」

「無理はするなよ」


天井の目が、静かに瞬く。


一日中。

目が離せない。

本当に。目が、離せない。


ーー


夜。


やっとのことで帰宅。


「うあ〜、今日は危なかった〜」


ソファに倒れ込む。


ぴし。梁が小さく鳴る。


座敷童子は腕を組みながら言う。

(ほんと、手がかかるんだから)


すねこすりは床で伸びる。

(おつかれさま〜)


目目連の目がゆっくり閉じる。

白沢は遠くで微笑む。


誰も、対価を求めない。契約もない。呪いもない。

ただ。

この部屋が好きで。この娘がここで笑っているのが、少し誇らしいだけ。


ベッドに潜り込む彼女。

「一人暮らしって大変だけど……でも、なんとか回ってるよね〜」


ぴし。

それは肯定の音。


一人暮らしには、憑き物がつきもの。

それが騒がしくても。世話焼きでも。

本人が気づかない程度なら。それはもう、ただの“運がいい日”。


怪異たちはどうやら、彼女との生活が気に入ってしまったようだ。

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