一人暮らしの距離感会議
夜。
佐伯が眠ったあと。部屋の空気が、少しだけ濃くなる。
(もうっ!)
座敷童子が床を踏み鳴らした。
(ここはあの娘の“一人暮らし”の部屋なのよ!?それなのに何なの、この出入りの多さ!)
梁から、ぴし。
(もともといたし)
家鳴はあっさり言う。
(あなたはいいの!建物付属!)
(付属言うな)
ぴき。
足元で、すねこすりが丸まりながら言う。
(白沢さまに言われた〜、ずっと一緒〜)
(それはわかってるわよ!ただ、“白沢さま”が来ると規模が違うの!)
空気が、すっと冷える。白い影が、静かに現れる。
(規模とは失礼ですね)
(出たわね!)
座敷童子は腕を組む。
(ここは生活圏なの。神獣レベルが常駐する場所じゃないのよ)
(常駐はしていません。巡回です)
(巡回ってなによ!頻度が多いのよ!)
今度は天井の隅に、じわ、と目が浮かぶ。
(……会議と聞きまして)
(……あなたこそ、会社担当でしょう!?)
目目連は静かに瞬く。
(リモート参加です)
(世の中便利になったものね!?)
目目連が冷静に言う。
(……会社での様子を見る限り、最近ストレス指数がやや高めです。自宅での解消程度も把握したく思います。)
(だからって常駐増員は聞いてないわ!)
(増員ではなく、情報と連携の強化です)
(ものは言いようね!)
ぴし。
ぱき。
梁が笑う。
(にぎやかでいいじゃん)
(よくないのよ!)
座敷童子は指を突きつける。
(一人暮らしっていうのはね、“適度な孤独”が醍醐味なの!静かな夜!自分のペース!それが大事なの!)
しん。
怪異たちが少し黙る。
確かに。今この部屋は。
家鳴。座敷童子。すねこすり。目目連(遠隔)。白沢(高頻度訪問)。
やや多い。
(……あの娘、気づいてるかな)
すねこすりがぽつり。
全員、静かになる。
そのとき。ベッドの上で、彼女が寝返りを打った。
「ん〜……なんか今日、部屋あったかい……」
もぞもぞ。
布団を抱きしめる。
「安心……」
寝息。
静か。
怪異たち、顔を見合わせる。
((気にしてない))
座敷童子が言う。
(むしろ満足度高めじゃないのよ…)
目目連が補足。
(幸福度指数、安定)
白沢がうなずく。
家鳴が梁を鳴らす。ぴし。
(じゃあ、いっか)
すねこすりが丸まる。
座敷童子は小さくため息をついた。
(……仕方ないわね)
腕をほどき、しかし釘を刺すことは忘れない。
(でも!節度は守るのよ!夜中の大集合は禁止!白沢は週三まで!)
(善処します)
(絶対守りなさいよ!)
梁がくすくす鳴る。
目目連の目がいくつか閉じる。
空気がゆるむ。
ベッドの上。彼女は穏やかな寝顔。
一人暮らし。静かな部屋。見えないだけで、ちょっと賑やか。
でも本人が気にしていないのなら。それはもう、ただの“快適”だ。




