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一人暮らしにつきものの憑き物  作者: ぴよ
第一部 一人暮らしと憑き物

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10/30

一人暮らしの距離感会議

夜。


佐伯が眠ったあと。部屋の空気が、少しだけ濃くなる。


(もうっ!)

座敷童子が床を踏み鳴らした。


(ここはあの娘の“一人暮らし”の部屋なのよ!?それなのに何なの、この出入りの多さ!)


梁から、ぴし。

(もともといたし)

家鳴はあっさり言う。


(あなたはいいの!建物付属!)


(付属言うな)

ぴき。


足元で、すねこすりが丸まりながら言う。

(白沢さまに言われた〜、ずっと一緒〜)


(それはわかってるわよ!ただ、“白沢さま”が来ると規模が違うの!)


空気が、すっと冷える。白い影が、静かに現れる。

(規模とは失礼ですね)


(出たわね!)

座敷童子は腕を組む。

(ここは生活圏なの。神獣レベルが常駐する場所じゃないのよ)


(常駐はしていません。巡回です)


(巡回ってなによ!頻度が多いのよ!)


今度は天井の隅に、じわ、と目が浮かぶ。

(……会議と聞きまして)


(……あなたこそ、会社担当でしょう!?)


目目連は静かに瞬く。

(リモート参加です)


(世の中便利になったものね!?)


目目連が冷静に言う。

(……会社での様子を見る限り、最近ストレス指数がやや高めです。自宅での解消程度も把握したく思います。)


(だからって常駐増員は聞いてないわ!)


(増員ではなく、情報と連携の強化です)


(ものは言いようね!)


ぴし。

ぱき。

梁が笑う。

(にぎやかでいいじゃん)


(よくないのよ!)

座敷童子は指を突きつける。


(一人暮らしっていうのはね、“適度な孤独”が醍醐味なの!静かな夜!自分のペース!それが大事なの!)


しん。

怪異たちが少し黙る。

確かに。今この部屋は。

家鳴。座敷童子。すねこすり。目目連(遠隔)。白沢(高頻度訪問)。


やや多い。


(……あの娘、気づいてるかな)

すねこすりがぽつり。


全員、静かになる。


そのとき。ベッドの上で、彼女が寝返りを打った。


「ん〜……なんか今日、部屋あったかい……」


もぞもぞ。

布団を抱きしめる。


「安心……」


寝息。

静か。


怪異たち、顔を見合わせる。

((気にしてない))


座敷童子が言う。

(むしろ満足度高めじゃないのよ…)


目目連が補足。

(幸福度指数、安定)


白沢がうなずく。

家鳴が梁を鳴らす。ぴし。

(じゃあ、いっか)

すねこすりが丸まる。


座敷童子は小さくため息をついた。

(……仕方ないわね)

腕をほどき、しかし釘を刺すことは忘れない。

(でも!節度は守るのよ!夜中の大集合は禁止!白沢は週三まで!)


(善処します)


(絶対守りなさいよ!)


梁がくすくす鳴る。

目目連の目がいくつか閉じる。

空気がゆるむ。


ベッドの上。彼女は穏やかな寝顔。


一人暮らし。静かな部屋。見えないだけで、ちょっと賑やか。


でも本人が気にしていないのなら。それはもう、ただの“快適”だ。

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