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爆笑三姉妹〜陽翔・結音誕生から、燈真・灯乃、彩羽・悠翔誕生まで  作者: リンダ


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76/140

優勝



福岡大会予選決勝


博多ドンタクス vs 小倉ギオンタイコーズ


――23-23、そこから先の意地


タイムアウト明け。


15-9からじわじわ差を詰めてきた博多ドンタクスは、もう別のチームのように見えていた。

押されていたはずなのに、今は相手のほうが落ち着きを失い始めている。


ギオンタイコーズの強打一辺倒のリズムに、ドンタクスはもう飲まれていなかった。

ゆるいサーブ。

深い返球。

前へ落とす球。

左右への散らし。


“強い”に対して、“上手く揺らす”で対抗する。


その手応えが、選手たちの表情を変えていた。



第1セット終盤


スコアは 16-13。


ギオンタイコーズのタイムアウト明け、相手はすぐに修正してきた。


今度は簡単に崩れない。

ゆるいサーブには前へ入り、短い返球には二人目が素早くカバーする。

さすが強豪。対応力が高い。


実況

「さあ、ギオンタイコーズも立て直してきました! やはり県内屈指の実力、簡単には崩れません!」


解説

「はい。ただ、先ほどまでと違うのは、もうドンタクスが相手のペースに完全には乗せられていないことです。ここからは“どちらが我慢できるか”ですね」


次の一本。

ギオンタイコーズの速いサーブ。

みゆが低く受ける。

真理子が走って整える。

千景が打つ――が、相手ブロックに触れて外へ。


一点。


16-14。


続くラリー。

里香がワンタッチを取り、由紀が転がりながら拾う。

美鈴が二段を高く返す。

相手の強打。

志穂が体を張る。

長いラリーの末、最後はまどかがコースに落とした。


16-15。


客席が大きく沸く。


光子が立ち上がる。


「一点差見えてきた!」


優子が拳を握る。


「行ける! これ行ける!」



だが、ギオンタイコーズもさすがだった。


次の一本では、高い打点から鋭いクロス。


17-15。


さらに次も、速い組み立てからの強打。


18-15。


少しだけ、会場の流れが戻りかける。


その時、美鈴がコートの中央で両手を叩いた。


「まだある!」

「ここで止まらんよ!」


その声が、また全員の顔を上げさせた。


由紀が頷く。


「オッケー、切らん!」


真理子も叫ぶ。


「一本ずつ!」



次のサーブはドンタクス。

今度は真理子。


速い球ではなく、やや深く、レシーバーの間へ落とす。

相手が迷う。

返球がやや甘い。


「チャンス!」


ほのかが声を出す。

美鈴がつなぎ、千景が強打と見せて前へ落とす。


ぽとり。


18-16。


実況

「決めたー! 博多ドンタクス、またしても相手の逆を突く一打!」


解説

「これですね。もう“打てる時は全部強打”じゃない。見て、選んで、崩している。非常にいい判断です」


続く一本。


ギオンタイコーズが今度はフェイントで来る。

だが、美鈴が読んでいた。


前へ一歩。

低く入る。

ぱしっ。


「ナイス!」


そのボールを真理子がつなぐ。

里香が速いテンポで押し込む。


18-17。


会場の熱が、さらに上がる。



ここからは、本当に一進一退だった。


19-17

19-18

20-18

20-19


相手が離す。

ドンタクスが食らいつく。


由紀の粘り。

みゆの低い守備。

さよりの落ち着いた前衛。

はづきの思い切り。

明美とさやかのベンチからの声。

全部が、少しずつ点差を削っていく。


そして――


ギオンタイコーズのアタックが、わずかにアウト。


20-20。



実況

「追いついたー!! 博多ドンタクス、ついに20点で並びました!!」


解説

「いやあ、見事です。15-9からここまで持ち直すとは。しかも勢いだけじゃない。崩しと我慢、両方できています」


実況

「会場の空気も一気に変わりました!」


解説

「はい。ここからは技術だけじゃなく、最後は気持ち。どちらが“取り切るか”です」



だが終盤は、さらに厳しかった。


ギオンタイコーズも意地を見せる。


エースが決める。

こちらも返す。

また向こうが押し込む。


21-20

21-21

22-21

22-22


ラリーの一本一本が、重くなる。


客席も息を飲む。

徳島支部のリモート画面の向こうでも、由理恵も香苗も、インコ一家までじっと画面を見つめていた。


せきちゃん閣下が小さな声でつぶやく。


「……せきちゃん、どきどき」


せいちゃん姫も今は黙っている。



そして、ついに。


ギオンタイコーズの速いサーブ。

みゆが下げられながらも上げる。

真理子が走る。

少し乱れた。

でも、美鈴が後ろから声を飛ばした。


「上げてよか! つなげばよか!」


真理子が高く二段を上げる。

千景が打つ。

相手が拾う。

今度は強打。

由紀が弾くように上げる。

里香が押し込む。

ワンタッチ。

ボールが浮く。


最後は、美鈴。


前に詰めたその一歩で、相手前方の空いたコースを見た。

大振りではない。

でも迷いのない押し込み。


ぽとり。


23-23。



会場が、割れんばかりに沸いた。


実況

「並んだーーー!! 23-23!! 博多ドンタクス、ついに追いついた!!」


解説

「すばらしい……! この一点は大きいです。技術だけではありません。ドンタクスが完全にこの勝負を“我慢比べ”に持ち込みました」


優馬が立ち上がる。

光子も優子も叫ぶ。

春介が思わず手すりを握る。

春海の目も真っ直ぐコートに向いている。


美鈴は、叫ばなかった。

でも、強く拳を握った。


「よし、ここから」


そのひと言だけで、全員の顔が引き締まる。



23-23からの死闘


ここからは、まさに意地と意地のぶつかり合いだった。


24-23 ギオンタイコーズ


相手エースの強打。

ブロックの上から叩き込まれる。


実況

「ギオンタイコーズ、先にセットポイント!」


解説

「ここで決めにきましたね。さすがです」


コート内で、ドンタクスの輪ができる。

美鈴が全員を見た。


「まだ終わっとらん」

「うちら、ここまで何で来た?」

「つないで、崩して、諦めんで来たやろ」

「もう一本、同じことするだけたい」


「はい!」



24-24


サーブは由紀。

深い。

相手がやや崩れる。

返球は高い。


「チャンス!」


真理子が整える。

はづきが、今度は強打ではなくブロックの指先を狙って抜く。


タッチアウト。


24-24。


実況

「追いついた!! セットポイントをしのいだ、博多ドンタクス!」


解説

「見事です。冷静でしたね。力みがない」



25-24 ドンタクス


続く一本。

長いラリー。

みゆが拾う。

さよりが押さえる。

里香が触る。

ボールは何度もコートを行き来する。


最後、相手が焦って打った強打が、わずかにネットにかかる。


25-24。


今度はドンタクスのセットポイント。


会場が立ち上がりそうになる。


光子が叫ぶ。


「一本!! 一本たい!!」


優子も両手を握る。


「ここで取れ!!」



25-25


だが、ギオンタイコーズも終わらない。


速攻。

完璧なタイミング。

こちらのブロックがわずかに遅れる。


25-25。


実況

「いやあ、簡単には終わりません! 決勝にふさわしい大接戦!」


解説

「はい。もうここは技術と同じくらい、胆力が問われています」



26-25 ドンタクス


次の一本。


美鈴のサーブ。

ここでまた――

ゆるい。


でもただのゆるさではない。

相手の構えた“速さ”を、また一拍外す絶妙な軌道。


レシーブがわずかに乱れる。

返球が浅い。


真理子が前へ。

ほのかがつなぐ。

千景が打つと見せて、また落とす。


ぽとり。


26-25。


ドンタクス、再びセットポイント。


美鈴が小さく息を吐く。


「……あと一本」



27-25 ドンタクス


会場中が立ち会う中、最後の一本が始まる。


由紀のサーブ。

相手がしっかり返す。

強打。

みゆが低く入る。

真理子がつなぐ。

志穂が押し返す。

また相手の強打。

里香がワンタッチを取る。

ボールが高く浮く。


「美鈴!」


その声で、美鈴が走る。


前へ出る。

いや、ただ前へではない。

相手ブロックと後衛の間、そのわずかな空間を見ていた。


真理子が、信じて上げる。

美鈴が、打つ。


強打ではない。

でも、逃げない。

狙い澄ました、まっすぐな一打。


ボールは、相手コートの真ん中へすとんと落ちた。


床に響く音。


そして、一拍遅れて――


試合終了の笛。


27-25。博多ドンタクス、第1セット奪取。



実況席


実況

「決まったあああああ!!! 博多ドンタクス!! 15-9からの大逆転!! 27-25で第1セットをもぎ取りましたーーー!!」


解説

「信じられません……いや、本当に見事です。崩し、我慢、判断、そして最後の胆力。全部ありました」


実況

「会場が大歓声に包まれています!」


解説

「キャプテン小倉美鈴、すばらしいセットの締め方でしたね。自分で決めきったのもそうですが、ここまでの流れをずっと作り続けていました」



コートの中では、全員が一気に飛びつくように集まった。


「よっしゃあああ!!」


由紀が美鈴の肩を叩く。

真理子が叫ぶ。

みゆが珍しく大きく笑う。

里香も、志穂も、千景も、みんな声を上げる。


美鈴は、輪の真ん中で笑っていた。

汗だくで、息を切らしながら、それでも真っ直ぐに。


「まだ一つたい!」

「でも……よく取った!!」



第2セットへ向けて


ベンチに戻ると、コーチがすぐに全員を見る。


「よし」

「でも、次は相手も確実に対策してくる」


全員の顔が引き締まる。


「さっきの“ゆるいサーブ”“散らし”“前後左右”は、もう一回目ほど効かんと思え」

「向こうは修正してくる」

「やけん第2セットは、そのさらに先を行く」


志穂がうなずく。


「つまり、“崩しを読まれたあとの崩し”ですね」


「そうたい」とコーチ。


「相手が前へ詰めたら、今度は奥」

「散らしを警戒したら、逆に速い一本を混ぜる」

「同じ手を同じタイミングで繰り返さんこと」


みゆが静かに言う。


「我慢比べ、続きますね」


美鈴はタオルで汗を拭いながら、全員を見た。


「向こうは絶対、“最初の逆転は事故やった”と思いたいはずたい」

「やけん、第2セットの最初で教えようや」

「これは事故やない」

「うちらが取りに来とる試合やって」


その言葉に、全員が頷いた。


由紀が笑う。


「キャプテン、今日仕上がりすぎやろ」


真理子も笑う。


「ほんとにね」


美鈴は少し照れながらも、はっきり言った。


「まだ終わっとらん」

「ここからが、本当の勝負たい」



客席では、優馬が静かに息を吐いた。


「……すごい試合やな」


春介が目を輝かせる。


「おばあちゃん、完全にキャプテンやん」


春海も小さく頷く。


「うん。もう“人を惹きつける”とか、そういう言葉だけじゃ足りんね」

「流れごと持っていく人や」


徳島支部の画面の向こうでは、せきちゃん閣下が大興奮していた。


「せきちゃん、どんたくす!!」


せいちゃん姫まで珍しく大きな声を出す。


「今のはすごかったたい!」


あわまるも羽をばたつかせる。


「今日は閣下よりドンタクスが熱い」


「比較対象にするな!」と香苗が笑い、また一つ、会場の外でも笑いが起きる。



こうして、第1セットは博多ドンタクスが奪った。


それはただのセット先取ではなかった。


強豪相手に、押され、苦しみ、それでも考えて、耐えて、ひっくり返したセット。


その意味は大きかった。


だが、戦いはまだ終わらない。

むしろここから、ギオンタイコーズは本当の強さを見せてくる。


そして美鈴は、キャプテンとして、

その先の戦いにも立ち向かうことになる。






福岡大会予選決勝


博多ドンタクス vs 小倉ギオンタイコーズ


――第2セット、そして第3セットへ


第1セットを27-25でひっくり返した博多ドンタクス。

だが、ベンチにもコートにも、浮かれた空気はなかった。


むしろ全員がわかっていた。

ここからのギオンタイコーズが、本当に怖い。


県内強豪。

修正力が高く、崩れたまま終わるチームではない。

第1セットでやられたことを、そのまま繰り返されるはずがない。


第2セット開始


笛が鳴る。


立ち上がりから、やはりギオンタイコーズは変えてきた。


ゆるいサーブへの前入りが速い。

短い返球には迷いがない。

前後左右への揺さぶりにも、最初の一歩が合っている。


さらに――


こちらが散らそうとしたボールを、今度は逆に速い展開で打ち切ってくる。


実況

「さあ、第2セット。やはりギオンタイコーズ、しっかり修正してきました!」


解説

「はい。第1セット終盤にやられた“テンポのずらし”に対して、受ける位置も意識も明らかに変わっています」

「しかも今度は、速い展開を混ぜてドンタクスに考える時間を与えていません」


序盤は一進一退。


3-3

5-5

7-7


点差は開かない。

だが、ラリーの濃さは第1セット以上だった。


みゆが飛ぶ。

由紀が転ぶ。

真理子が走る。

千景が打つ。

里香が止める。

さよりがつなぐ。


そしてその全部の真ん中で、美鈴の声が飛び続ける。


「焦らんでよか!」

「相手、速さで来とるよ!」

「一回止めよう、うちらのリズムに戻すよ!」



だが、中盤に差しかかるころ、ギオンタイコーズが一歩前に出た。


強打のコースが厳しくなる。

こちらのレシーブの間を抜かれる。

二段トスにまでしっかりブロックがついてくる。


12-9。ギオンタイコーズ。


会場に、少しだけ不穏な空気が流れる。


実況

「ここでギオンタイコーズ、3点のリード!」


解説

「第1セット終盤で崩された分、第2セットはかなり“整理されたバレー”をしていますね。ドンタクスとしては、ここで慌てたくないです」


コート内でも、少しだけ選手たちの表情が固くなる。


その時だった。


美鈴が、ラリーの合間に全員へ向けて、はっきり言った。


「ねえ、みんな」

「今、向こうが強いのはわかる」

「でも、“強いから押されとる”んやなくて、“向こうの速さに付き合いすぎとる”だけたい」


全員が顔を上げる。


「付き合わんでよか」

「うちらが合わせるんやない」

「うちらの間合いに、一回引き戻そう」


志穂が、はっとしたように頷く。


「……そうか」


真理子も息を吐く。


「速さに焦って、こっちまで急ぎよった」


由紀が拳を握る。


「よし、一回切るよ」



次の一本から、ドンタクスはまた変えた。


速く来る相手に対して、無理に速く返さない。

一回高く、深く、整える。

そこから、打つ時だけ打つ。


美鈴が拾う。

真理子が高く上げる。

千景が奥へ深く送る。

相手が下がる。

次は由紀のサーブで前へ落とす。


テンポを一度「こちら側」に戻す。


すると、じわじわ効いてきた。


12-10

12-11

13-12


また点差が縮まる。



実況

「博多ドンタクス、再び流れを変えてきました!」


解説

「大きいですね。今度は“ゆるい球そのもの”ではなく、“間合い”を変えています。相手の速さに全部付き合わない。これが効いています」


実況

「そしてキャプテン小倉美鈴、やはり声が出ています!」


解説

「はい。今のドンタクスは、美鈴の一言で“何をするチームか”がそろうんです。そこが非常に強い」



終盤。


スコアは19-19。


ここからまた、1点が重くなる。


相手のサーブ。

みゆが低く入る。

真理子が整える。

はづきが打つ。

ブロックに当たって外へ。


19-20。ドンタクス逆転。


客席が大きく沸く。


だが次の一本、ギオンタイコーズもすぐ返してくる。


20-20。


さらに相手のエースが決める。


21-20。


由紀がすぐさまサーブで崩す。


21-21。


もう完全に、気持ちの勝負だった。



ここで、美鈴がサーブ前に全員を見た。


「ここから二本たい」

「取られても下向かん」

「先に折れたほうが終わるよ」


その言葉が、まっすぐ全員に入る。


里香が短く言う。


「折れん」


さよりが頷く。


「つなぐ」


真理子が笑う。


「じゃあ、取り切るよ」



22-21 ギオンタイコーズ

速いコンビで抜かれる。


22-22 ドンタクス

千景がクロスではなくストレートへ決める。


23-22 ギオンタイコーズ

フェイントで前を落とされる。


会場がざわつく。


ギオンタイコーズ、セットポイントまであと二つ。

だが、美鈴は表情を変えなかった。


「まだある」

「次、前も後ろも見といて」

「一回、絶対拾ける」


次の一本。


相手の返球がふわりと前へ落ちる。

まさに、今さっきやられた形。


でも今度は、美鈴が飛び込んだ。


腕が床すれすれに入る。

ぱしっ。


上がる。


「ナイス!!!」


真理子が走る。

二段。

由紀が押し込む。


23-23。



実況

「出たーーー!! 小倉美鈴、読み切った!!」


解説

「これは大きいです! さっきやられた形を、次の一本で取り返した。しかもセット終盤で。キャプテンとして完璧な仕事です」



その後も互いに譲らない。


24-23 ドンタクス

相手の乱れた返球を、里香が押し込む。


24-24 ギオンタイコーズ

ブロックアウトを取られる。


会場中の視線が、コートの一点一点に吸い寄せられる。


そして次の一本。


美鈴のサーブ。

速くもなく、遅すぎもしない。

相手の中間を裂くような一本。


返球が少しだけ浮く。


「来た!」


真理子。

はづき。

強打かと思わせて、ブロックの横を抜く。


25-24。ドンタクス。


続く最後の一本。


長いラリー。

由紀が拾う。

みゆがつなぐ。

美鈴がカバー。

真理子が高く上げる。

千景が、最後は迷わず打ち抜いた。


どんっ。


床に落ちる。


25-23。第2セット、博多ドンタクス。



実況席


実況

「決めたーーー!! 第2セットも博多ドンタクス!! 25-23!!」


解説

「見事です……! 第1セットとはまた違う勝ち方でしたね」

「相手の修正に対して、さらにその上を行った。“合わせる”のではなく、“戻す”ことで勝ちました」


実況

「これでセットカウント2-0! 博多ドンタクス、全国へ王手です!」



ベンチに戻ると、全員の息は荒かった。

肩も上下している。

足も重い。


でも、目だけは強かった。


コーチが短く言う。


「よし」

「でも、次が一番きつい」


全員が頷く。


「2-0は、一番危ない点差や」

「向こうは全部出してくる」

「うちらは、“あと一つ”を意識しすぎたら崩れる」


美鈴が静かに言った。


「じゃあ、“あと一つ”って思わんどこうや」

「次の一点、次の一本、それだけたい」


由紀が笑う。


「それで二セット取ってきたしね」


真理子も頷く。


「うん、それでいこう」



第3セット


予想通りだった。


ギオンタイコーズは、すべてを出してきた。


サーブの質がさらに上がる。

強打の角度が鋭くなる。

ブロックの寄りも早い。

ベンチも大きく声を出している。


最初から、激しい打ち合いになった。


実況

「さあ第3セット! ギオンタイコーズ、ここが正念場です!」


解説

「はい。もう余力を残している場合ではありません。ドンタクスとしては、“決め急がないこと”が大事になります」


序盤から点の奪い合い。


4-4

7-7

10-10


どちらがリードしても、すぐに追いつかれる。

もはや勢いだけではない。

技術と気迫の削り合いだった。



中盤、ギオンタイコーズが一歩出る。


14-12。


続けて、速攻。

15-12。


客席がざわつく。


春介が思わず言う。


「……やばい?」


春海はすぐに首を振った。


「いや、まだ」

「でもここ、踏ん張りどころやね」


コートの中で、美鈴がすぐに全員を集めた。


「ここ、慌てると一気に行かれる」

「でも逆に、ここで止めたら向こうが焦る」

「次の三本、死守しよう」

「点差やなくて、“向こうに気持ちよく連続させん”」


志穂が頷く。


「一本切ります」


里香が低く言う。


「前、触る」


みゆが構える。


「後ろ、拾います」



そこから、まさに死闘だった。


15-13

由紀の粘りから千景が決める。


16-13

相手の強打が決まる。


16-14

真理子のサーブで崩す。


17-14

また相手が押し込む。


17-15

はづきが打ち抜く。


18-15

ギオンタイコーズの速攻。


……離されそうで、離されない。

切れそうで、切れない。


そして何より、美鈴が崩れなかった。


苦しい時ほど、声が落ちない。


「よかよ!」

「一本返したら変わる!」

「まだ終わっとらん!」


その声に、全員がまた戻る。



終盤。


ついにドンタクスが追いつく。


20-20。


会場が揺れる。


実況

「並んだーーー!! 第3セットも20点で並びました!!」


解説

「これはすごい……! ギオンタイコーズ、何度も突き放しかけましたが、ドンタクスが全部食らいついている」



そこからは、本当に互いに譲らなかった。


21-20 ドンタクス

里香のブロックポイント。


21-21 ギオンタイコーズ

エースがクロスを決める。


22-21 ドンタクス

千景が前へ落とす。


22-22 ギオンタイコーズ

フェイント返し。


23-22 ドンタクス

美鈴のサーブで崩す。


23-23 ギオンタイコーズ

二段を打ち切られる。


24-23 ドンタクス

はづきのブロックアウト。


会場中が立ち上がりかける。


マッチポイント。


だが、ギオンタイコーズも執念を見せる。


24-24。


続く一本。


長い、本当に長いラリー。

みゆが拾い、由紀がつなぎ、美鈴がカバーし、真理子が整え、また相手が強打。

何度も何度も続く。


最後、志穂が押し返したボールが、わずかにライン外。


24-25。ギオンタイコーズ、セットポイント。


一瞬、空気が止まりそうになる。


その時。


美鈴が、はっきりと言った。


「まだ向こうは終わらせきれてない」

「やけん、うちらにもまだある」

「ここまで来たら、苦しいのは相手も同じたい」


その声が、落ちかけた空気をつなぎ止めた。



次の一本。


相手サーブ。

厳しい。


だが、みゆがきれいに上げる。

真理子が走る。

高い二段。

千景が打つ――と見せて、また短く落とす。


ぽとり。


25-25。



実況

「しのいだーーー!! 博多ドンタクス、土壇場で追いつく!!」


解説

「落ち着いています……! ここまで来ると、もう技術以上に“どう終わらせるか”の勝負です」



さらに。


26-25 ドンタクス

由紀のサーブで相手を崩し、返球ミスを誘う。


だがまた。


26-26 ギオンタイコーズ

執念の押し込み。


会場の熱が、限界まで上がる。



そして、最後の二本。


27-26 ドンタクス


美鈴のレシーブから始まる。

真理子が整え、里香が強打――ではなく、ブロックの手前へ落とす。

相手が飛び込むが届かない。


一点。


マッチポイント。


28-26 ドンタクス


最後の一本。


会場中が息を止める中、サーブは由紀。


深い。

相手がしっかり返す。

強打。

みゆが上げる。

真理子が走る。

美鈴が「ここ!」と叫ぶ。

上がったボールへ、千景が助走を入る。


今度は迷わない。

思いきり打ち抜く。


どんっ。


ブロックを抜け、床に突き刺さる。


笛。


28-26。第3セット、そして試合終了。

博多ドンタクス、決勝制覇。



実況席


実況

「決まったああああああーーー!!! 博多ドンタクスーーー!!! 第3セット28-26!!! 第2セット25-23、第3セット28-26!!! 小倉ギオンタイコーズとの死闘を制し、福岡大会予選突破!! 全国への切符をつかみましたーーー!!」


解説

「すばらしい、本当にすばらしい試合でした……!」

「第1セットの逆転、そして第2セットの修正合戦、第3セットの執念。どのセットも意味が違いました」

「でも全部に共通していたのは、博多ドンタクスが最後まで“自分たちのバレー”を失わなかったことです」


実況

「キャプテン小倉美鈴、まさにチームを引っ張りました!」


解説

「はい。目立つ一本だけではありません。声、判断、空気、粘り、そのすべてでチームの中心でした」



コートの中では、全員が一気に崩れるように集まった。


「やったああああ!!」


由紀が泣きながら笑う。

真理子が美鈴に抱きつく。

みゆまで目を潤ませている。

志穂は息を切らしながらも、珍しく大きく笑っていた。

里香も、千景も、はづきも、さよりも、明美も、さやかも、全員が声を上げる。


その輪の真ん中で、美鈴は泣き笑いになっていた。


「……取った」

「ほんとに、取った……!」


優馬が客席で静かに目をぬぐう。

光子と優子はもう叫びながら飛び跳ねている。

美香もアキラも、春介も春海も、塁も環奈も、誰もが立ち上がって拍手していた。


徳島支部の画面の向こうでは、せきちゃん閣下が大暴れしていた。


「せきちゃん、どんたくす! せきちゃん、どんたくす!」


せいちゃん姫まで大きく羽を広げる。


「今日は認めるたい! すごかった!」


あわまるが言う。


「今日は閣下の体重より、ドンタクスの勝利が上」


「比較すな!」と香苗が笑い、由理恵も涙をぬぐいながら拍手する。



この日、博多ドンタクスはただ勝ったのではなかった。


強豪相手に、押され、揺さぶられ、修正され、それでも最後まで折れずに勝ち切った。

その意味は、とても大きかった。


そして、小倉美鈴は、この試合で完全に証明した。


ただの人気キャプテンではない。

ただの象徴でもない。


勝てるチームを、本当に勝たせるキャプテン。


それが、小倉美鈴だった。



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