表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆笑三姉妹〜陽翔・結音誕生から、燈真・灯乃、彩羽・悠翔誕生まで  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/138

ルパン三世ジャズバージョンが紡ぐ絆

ルパン三世ジャズVer. ― 親子+叔母スペシャルセッション


午後のリビング兼スタジオ。

譜面台の上には「LUPIN THE THIRD (Jazz Ver.)」。

春介は大きなチューバを抱えて、春海はスティックケースを開いている。

ソファには美香とアキラ、キッチンカウンターの向こうで光子と優子がベビー達を見ながらニヤニヤ。



美香「はい、まずテンポは♩=116くらい。スウィングで“ツ・ターッツ・ターッ”ね。春介、チューバは歩くベースのつもりで“ドーン・ド・ドン”を地面に敷く。

春海はライドで“チーン・チッ・チーン・チッ”、スネアは裏を軽く。」


アキラ「ブレイクは3小節目と7小節目。ここ、急に静かにして“タッ・タッ・タッ…ドン!”で戻る。ホーン(=チューバだけど)も小粋にね。」


春介「小粋…(チューバを見つめる)この巨体で小粋……やれるかな。」


光子「できるったい。低音のネクタイをキュッと締める感じでいこう!」


優子「春海は、リムショットで“カンッ”入れると一気にジャズ顔になるけぇ、勇気出して鳴らしんさい。」


ソファの足元では、陽翔(2)と結音(2)が譜面をのぞき込み、燈真(0)&灯乃(0)はベビー布団で手足をばたばた。


陽翔(小声)「るぱ…ん…♪」

結音「ちょま…(燈真)うにゃ言うた」

燈真うにゃ

灯乃あー



1回目テイク

春海「ワン、ツー、ワンツースリー…」


ライドが軽く転がり、チューバがドン・ドドンと歩き出す。

いい感じ……と思った瞬間、春介の腹筋に“ギャグの記憶”がフラッシュバック。


春介「(頭の中)アンタ クライネ ナハトム Zガンダム……」

春海「やめてそれ今出すんやない!」


春海、笑いを噛み殺してリムショットがカンッではなくカーン

テンポが一瞬グラつく。


美香「止め! 今の“カーン”は甲子園のファールやね。」

優子「でも音色はえぇ。小さく当てて、長く鳴らす。“カッ…ン”って余韻で色っぽく。」


アキラ「春介、四分の後ろにほんの1ミリ腰掛けて。前のめり過ぎるとスウィングが硬くなる。」


光子「そう。“前のめりの人生”は良かけど、ビートは半歩うしろ。覚えときんしゃい。」


陽翔と結音がうんばぁポーズで頷く。

燈真と灯乃は同時にぶぁっくしゅん(小さなくしゃみ)。スタジオ全員、かわいさで崩れる。



ブレイクの稽古

美香「3小節目ブレイク、“タッ・タッ・タッ”のあと――」


春介「“ズドン!”」

春海「“カンッ!”」

美香「正解。で、その“ズドン”は音程を少し上から落として色気出す。“ド(↑)—ン”。」


春介「了解。チューバ色気、出します。」


優子「春海、その“カンッ”の直後にハイハット閉じて“チッ”。空気が止まる音をつくるんよ。」


春海「“カン…チッ”――はい、止まりました。交通整理完了。」



2回目テイク(テーマ~Aメロ)

春海「ワン、ツー……」


ライドがブラシのように流れ、チューバの低音が床を磨くみたいに滑る。

3小節目、ブレイク――

春介「タッ・タッ・タッ…ド(↑)—ン!」

春海「カン…チッ!」


美香「ナイス!」

アキラ「戻りの4拍目裏のアクセント、今の感じで固定しよう。」


カウンターから光子が、赤子の背中トントンと同じリズムで**“トン・トトン”。

優子はベビーカーを“スイ・スイスイ”でスウィング**させてる。


陽翔「まんま〜、スイ・スイスイ♪」

結音「えりょじゃい魔王ダンスしたい(小声)」

春海「やめて、今は“ジャズ魔王”に集中!」



ソロ風コーナー(チューバ即興)

アキラ「8小節、春介にウォーキング・ソロやらせてみよう。

3度→5度→ブルーノート挟んで、最後はルートへ“タッタッタ・ターン”で落ちる。」


春介「いきます。ドミソ、ミ♭、ソ、ラ…(低音で歌心)」


美香「いい! 音の後ろに微笑みが乗ってきた。そこがジャズ。」


優子「春海、ソロのラストで**スネアの“ブラッシュアップ・ロール”**薄く。春介の語尾にキラッと粉砂糖かけるイメージ。」


春海「(小声)兄ちゃんに粉砂糖……糖度上げとくわ。」



ラストテーマ~エンディング

A’に戻って、テンポはそのまま。

最後のリタルダンドで全員の呼吸がそろい、ドーン+**チャン!**で締め。


美香「……はい、録れた。今のテイク、残します。」


アキラ「最初の迷いが消えて、“音が前に出た”ね。春介の低音で部屋の床がいい具合に鳴ってる。春海のリムも“カン”から“コーン”に育ってきた。」


光子「うちの甥姪、スウィングで寝かしつけできるレベルに到達。」


優子「じゃあ恒例、“育児ジャズ検定”。

— おしめ替えのテンポは?

春介・春海「♩=120、四分でキビキビ!」

— ミルクの温度感は?

春介「ミディアムウォーム」

春海「バラードじゃぬるい」


スタジオ、爆笑。



ベビー達の“内なるアンコール”

陽翔(内なる声)『なんかかっこよかったやん。』

結音(内なる声)『今回は今やねんってツッコまんで済んだわ。』

燈真(内なる声)『うにゃ(=ブラボー)』

灯乃(内なる声)『あー(=アンコール)』


美香「じゃあ、アンコールは**“テーマ短縮版”で。春介、最初のブレイク前にウィンク**入れて。」


春介「チューバでウィンク……(ベルの縁でコツン)――カンペキ。」


春海「それはベル・ウィンクって名付けとこ。」



仕上げ&アップロード

録音を聴き返す。

1回目テイクの粗っぽさから、2回目で**音が“笑って前に出た”**瞬間が分かる。


美香「タイトルは――**『LUPIN WALKルパン・ウォーク』にしよう。

副題“うちのツインズの実話”はブックレットに。“寝かしつけはスウィングで”**の一文も入れる。」


アキラ「今のミックス、ベビーの“ぶぁっくしゅん”だけ残してうっすら環境音で入れよう。ライブ感が一気に出る。」


光子「SNS告知は“#低音ネクタイ #ベルウィンク #寝かしつけスウィング”。」


優子「発売日は金曜。プレイリストの一曲目をさらっていく導入曲にしよ。」


春介・春海「はいっ!」


再びカウント。

低音が歩き、スティックが笑い、リビングがジャズクラブになる――。


陽翔と結音はいつの間にか、スイ・スイスイのリズムでお昼寝。

燈真と灯乃は、うにゃとあーを交互に言いながら、足で小さくスウィングしていた。




午後の日差しがリビングに差し込む。

譜面台の上には「LUPIN THE THIRD ― Jazz Ver.」のスコア。

空気が少しピリッとして、同時にワクワクが広がる。



メンバー配置

•トランペット:美香

•バリトンサックス:アキラ

•トロンボーン:光子

•ユーフォニウム:優子

•チューバ:春介

•ドラム:春海


そして、観客席(=ソファ)には陽翔、結音、燈真、灯乃のベビー部隊が並び、

おしゃぶりをくわえたまま、準備万端の“リトル審査員”。



美香「ワン・ツー・ワンツースリー!」


軽快なハイハットの刻み。春海のドラムがチッチッチッチッと空気を切り、

チューバの春介が**ドゥン・ドゥドゥン・ドゥン!**と地を鳴らす。


バリサクのアキラが「ズッ、ズッ、ズララ〜♪」と低音を転がす。

その間に、美香のトランペットが華やかに飛び出す――

パパッパ〜♪ パパッパ〜♪ パーパパパッパ〜♪



光子のトロンボーンがトランペットのメロディに絡み、

優子のユーフォがまろやかに中域を支える。


光子スライドしながら「ふふっ、トロンボーンは滑らんけんね〜!」

優子「いや、滑っとるのはギャグの方やろ!」

春海ドラム「はいツッコミ入りまーす!」


ドドッ・パーン!(ツッコミシンバル)


ソファの陽翔たちは笑いすぎてベビーガラガラを落とす。



バリサク・ソロタイム


アキラがニヤリと笑い、サックスを傾ける。

低音が唸る――ブォォォ…ズラァァァン!!


美香「出た、我が家の低音番長!」

光子「アキラ兄ちゃん、低音で床揺らさんで〜!」

優子「赤ちゃんたち寝かしつけモード入るでぇ!」


燈真と灯乃、まさかのリズム寝落ち。

陽翔と結音が小さく拍手してる。



春介チューバソロ


春介「じゃあ俺も…ちょっと低音歩いてみるか!」

ドゥ〜ン・ドドン・ドン・ドドド〜ン…


そこに春海のドラムがブラシでサッサッと支え、

美香のトランペットが軽く**アドリブで“クィッ”**と答える。


光子「兄妹でスウィングしとるっちゃ!」

優子「赤嶺家、血の中にジャズ流れとるわ。」



エンディング


全員の呼吸が合い、最後のキメ!


春海「ラストいくで!せーのっ!」

全員「パーーン!!!」


音が跳ねるように響き、リビングの空気がキラリと揺れる。

春介がチューバを高く掲げ、春海がドラムスティックを交差!


光子「ルパン逮捕ぉぉーーっ!」

優子「そのセリフ、トロンボーンで鳴らさんで!」



拍手!拍手!拍手!

ベビー部隊が「うにゃー!」「あー!」と歓声を上げ、

最後は全員でお辞儀+爆笑。



美香「はい、今日のセッション記録。“家族でスウィング、犯人は笑い”。」

アキラ「次は“名探偵コナン・ボサノバver.”でもやるか?」

光子&優子(同時に)「爆笑確定やん!」


家族全員の笑い声が、ルパンのテーマの余韻に溶けていった――。





その日の夜。


美香がスマホで録画した映像を編集し、タイトルをこう付けてアップした。



【家族でルパン三世 Jazz Ver.】 〜スウィングする育児と爆笑の午後〜

出演:赤嶺ファミリー+青柳家+柳川家

#寝かしつけスウィング #ベルウィンク #家庭内Mステ #爆笑通信支部



サムネイルには、

トランペットのベル越しに笑う美香、

トロンボーンのスライドを構える光子、

ユーフォで真顔ツッコミ中の優子、

そしてチューバを抱えた春介&ドラムで跳ねる春海――

その背後では、陽翔と結音がタンバリンを叩きながらうにゃリズム。



アップから30分後。


コメント欄がえらいことになっていた。


「音楽でここまで笑えるとは思わんかった!」

「プロやのに家庭感すごいw 最高!」

「“ルパン逮捕ぉぉー!”で腹筋持ってかれた」

「ベビーのタイミング完璧、将来有望すぎる」

「うにゃーーが曲と合っとるの奇跡では?」



投稿から2時間で再生数 120万回突破。

#寝かしつけスウィング が急上昇トレンド入り。


さらに、夜の音楽ニュース番組が取り上げる。

画面には“家族で奏でるジャズ×ギャグ=奇跡の爆笑アンサンブル”の見出し。



アナウンサー「視聴者からは“元気をもらった”“笑いながら涙出た”という声が殺到しています!」


光子(VTRコメント)「音楽は真剣に、ギャグは命がけ。両方やらんとウチらじゃなかですけん!」

優子「寝かしつけにもリズムが大事やけぇね!」



翌日。

幼稚園でも、保育園でも、小中学校でも、

「ルパン三世ジャズ踊ってみた」ブームが発生。

陽翔と結音は、園の先生に「プロデビューいつ?」と聞かれ、

燈真と灯乃は“ぶぁっくしゅん・ソロ”がバズ音源入り。



そして、コメント欄の最後には――


『M&Yの次の公演、家族セッションもぜひ!』


の嵐。


美香「まさか…“家庭内セッション”が世界デビューのきっかけになるとはね。」

光子「いや、うちらの家、もはやライブハウス化しとるけん。」

優子「次のツアータイトル、“ベビーベル・スウィング”に決定やね!」


爆笑と拍手とジャズの余韻が、

夜更けまでリビングを包んでいた。





夏の陽ざしが真上から差し込む七月下旬。

蝉の声が響く博多南中の音楽室では、扇風機がうなりを上げる中、

吹奏楽部のメンバーたちが最後の合奏練習に臨んでいた。



【博多南中吹奏楽部・県大会直前リハーサル】


顧問の佐伯美帆先生が指揮台に立つ。

「今日が仕上げよー! 笑って本番に行くけんね!」


部員たちの顔が一斉に引き締まる。

50人の仲間たちが、譜面台越しに目配せを交わす。


その中で、ひときわ真剣な表情をしているのが――

チューバの春介と、打楽器の春海。

美香とアキラの子どもであり、“音楽一家のDNA”を受け継ぐ二人だ。



春介チューバ「よっしゃ…今日も低音で床抜いたる!」

春海ドラム「あんた、また楽器壊したらパパ泣くけぇね!」


周囲の部員たちが笑う。

「双子兄妹、今日も息ぴったりやね!」



リズム合わせ練習


春海のスネアが刻むテンポに、春介のチューバがぴたりと乗る。

「どんなに速くても、兄妹のグルーヴはずれん」と有名になっていた。


トランペットの森下紗良、クラリネットの西村澪、フルートの多治見透子らも、

思わず笑顔で吹いてしまう。


澪「ねえ、春海ちゃんの“カン!”って音、気持ちよすぎ!」

透子「春介くんのベースライン、映画のサントラみたい!」



全体合奏開始


佐伯先生が静かにタクトを上げる。

曲は――「アルメニアン・ダンス PartⅠ」。


冒頭の金管ファンファーレ。

美しい木管の旋律。

そして、チューバの春介が支える重厚な低音。


春海のシンバルが炸裂するたびに、音楽室が震える。

光子や優子、そして美香がかつて吹いていた頃の“魂”が受け継がれていた。



リハーサル後


汗だくの部員たち。

その中で佐伯先生が口を開く。


「春介、春海、あんたら…音の表情がこの数ヶ月で変わったね。」


春介「母ちゃんと叔母ちゃんに、毎晩“お腹に響かせろ”って言われてて…」

春海「“リズムはツッコミやと思え”って言われてるけぇ!」


佐伯先生、苦笑。

「さすが“ギャグと音楽の家系”ね。でも、ほんと良い音になったよ。」



そして、県大会当日


会場は福岡サンパレスホール。

舞台袖で緊張する春介と春海。


春海「兄ちゃん、手汗やばい!」

春介「大丈夫。汗も音楽のスパイスや。」

春海「それ言い訳やろ!」


光子と優子、美香、アキラ、そして陽翔と結音たち家族が客席から手を振る。


優子が小声で言う。

「どんなに緊張しても、うちらの子たちやけぇ、笑って吹きよるよ。」



ステージに立つ。

ライトが照らす中、佐伯先生が深呼吸。

春介と春海がアイコンタクトを取る。


タクトが上がる――。

その瞬間、音楽が走り出す。


重厚で、華やかで、どこか温かく、笑顔がこぼれるような音。

それはまるで、“博多南の風”そのものだった。



演奏後、会場が静まり――次の瞬間、大きな拍手と歓声!


春介と春海は、互いに拳を突き合わせた。

「やったな!」


結果発表。

「金賞! 九州大会出場!」



舞台裏で抱き合う二人。

光子と優子、美香とアキラも涙ぐむ。


美香「やっぱり…音楽って、血でつながってるんやね。」

光子「いや、魂やろ!」

優子「笑いの方も遺伝しとるけどな!」



帰り道、春介がつぶやく。

「今度はうちらで、“爆笑スウィング”やりたいな。」

春海が笑う。

「ほな、目標は“吹奏楽で笑わせる全国金賞”やね!」


その瞬間――

風が吹き抜け、博多の空に「音と笑いの旋律」が舞い上がった。






ロビーの喧騒が少しずつ遠のく。

春介と春海はケースを抱えたまま小走りで客席通路を抜け、家族のもとへ。


「よう頑張ったね。」

美香が二人をぎゅっと抱きしめる。胸に顔を埋めた春海の肩が、ふるふる震えた。

アキラが手を載せる。「最後のクレッシェンド、鳥肌立ったぞ。あれは“本番の音”や。」


光子が春介の譜面をそっと撫でて、にかっと笑う。

「低音、ちゃんと客席の床まで届いとった。あんたの音で全員が前に進めたんよ。」

優子が春海のスティックを受け取り、指でリズムを刻む。「テンポ、ブレんかった。怖いときほど“間合い”が効いとったね。」


「……母ちゃん、叔母ちゃん……」

「……パパ……」

こらえきれず流れた涙が、客席の薄明かりを受けてきらりと光る。

それは、努力の数だけ刻まれた時間の粒。二人の頬を伝い落ちるたび、家族の手があたたかく受け止めた。


「金賞おめでとう。」

四人の声が重なる。春介と春海は同時にうなずき、顔を上げる。

「次は九州大会。もっといい音、聴かせるけえ。」

「今日の涙、ぜんぶ音にするけえ。」


その時、陽翔が前に飛び出して、ちいさな声で「すごかったー!」

結音が胸を張って「かっこよかったー!」

燈真と灯乃がベビーカーの中で、タイミングよく「うにゃっ」「あうっ」と合いの手。

家族の輪に笑いがほどける。


宝石みたいに光った涙は、もう恥ずかしさじゃない。

誇りと覚悟のしるし。

そのきらめきが、二人の次の舞台への道を、まっすぐ照らしていた。




放課後の音楽室。

コンクールが終わった静けさがまだ残る中、春介と春海は向かい合って譜面ノートを広げていた。


「兄ちゃん、これ見て。メロディ考えたんやけど、どんな?」

春海が五線紙に鉛筆で描いた旋律を指差す。

「おぉ、なんか“笑って泣ける”感じするやん。」

「うち、ちょっと“お兄ちゃんが吹くとこ想像して”作ったんよ。」


そこへ光子と優子が、ドアを軽くノックして入ってくる。

「おっ、やっと“作曲沼”に足突っ込んだねぇ〜。」

「この世界、一度ハマったら戻れんけんね!」


二人は椅子に腰を下ろし、春介と春海の譜面を覗き込む。


光子「ねぇ、春介。チューバの音って、低いけど“地面のぬくもり”があるやろ?」

春介「うん、なんか家の床ん中に響く感じ。」

光子「そう。その“響き”が、あんたにしか出せんメロディになるんよ。」


優子は春海の手元に目を落としながら、やわらかく笑う。

「春海、リズムって“心の鼓動”やけん。楽譜通りに叩くんじゃなくて、自分の一日を音にするつもりで。

 今日のうれしかったこと、悔しかったこと、ぜーんぶリズムに入れたら、絶対伝わるけぇ。」


春介と春海は顔を見合わせ、小さくうなずいた。


春介「……俺らにしか出せん音、か。」

春海「日常の中の音、探してみる。」


光子「そうそう。日常って、曲の宝箱やけん。」

優子「炊飯器のピーピーでも、電車のガタンゴトンでも、心が動いたらそれが音楽の始まりやけんね。」


春介が少し照れながら笑う。

「ほんなら、次は“博多南中の放課後シンフォニー”でも作ろっか。」

春海も頬を赤らめて笑う。

「タイトル、なんかロマンチックやん!」


光子と優子は、そんな二人を見つめながらそっと手を合わせる。

「うちらが昔、音大で感じた“音の魔法”を、いまこの子たちが見つけてくれるんやね。」


夕陽が窓から差し込み、譜面の上に二人の影を落とす。

その影は、確かに未来へと続く旋律の始まりだった。




光子と優子は、いつもの柔らかな笑みを少しだけ引き締め、

譜面ノートを見つめていた春介と春海に、静かに向き直った。



光子(真剣な声で)「……ただし、ひとつだけ約束して。」

その言葉に、春介と春海は背筋を伸ばす。


優子「音楽っちゅうのはね、人に“ワクワク”とか“感動”とか“楽しさ”を伝えるもんやけん。

 どんな時も、聴いた人がちょっとでも笑顔になれるように――それを忘れちゃいかんよ。」


光子は少し間をおいて、静かに続ける。

「絶対にね、人を傷つけるような言葉や、差別的な表現は使わないこと。

 それと、自分を蔑むような表現も、しないこと。

 それは“自分の音を信じてない”ってことになるけんね。」


春海が小さくうなずいた。

「……人を笑わせるのと、笑いものにするのは違うってことやね。」


優子「そうそう! “真剣にふざける”っちゅうのが、うちらのポリシーやけん。」

光子「ふざけることも、ギャグも、全部“優しさの延長線”でやるんよ。」


春介が、少し考え込むように言う。

「音楽って……そう考えたら、めっちゃ責任あるんやな。」

光子「そう。でもね、“責任”って言葉は怖がらんでいいよ。

 誰かを笑顔にしたり、ちょっと前を向かせる――それができるのは、音を持つ人の特権やけん。」


優子が、春海の頭をぽん、と軽くたたく。

「音楽は、心のごはん。

 愛情とユーモアをちゃんと入れたら、みんなお腹いっぱい幸せになるけぇ。」



二人の言葉を聞いた春介と春海は、顔を見合わせ、真剣にうなずいた。

「うん。俺たち、ちゃんと“笑顔になる音”を作る。」

「聴いた人が、ちょっとでも優しい気持ちになれるように。」


光子と優子は、同時に微笑んだ。

「それでこそ、うちらの家族やね。」


窓の外では、夕焼けがゆっくりとオレンジ色に染まり、

まるでその約束を祝福するかのように、音楽室を温かく包んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ