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爆笑三姉妹〜陽翔・結音誕生から、燈真・灯乃、彩羽・悠翔誕生まで  作者: リンダ


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コンクール課題曲決まる



《翌日・放課後 “アイネクライネ(なのに)Zガンダム”事件》


佐伯先生「課題曲は――モーツァルト『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』吹奏楽版。クラシカルに、軽やかに、ね?」


譜面が配られ、全員で1楽章のAllegroを確認。

その静けさの中で――


春介(超小声)「アンタ クライネ ナハトム……Zガンダム……」


部員全員「ズコーーーッ!!」(椅子ガタガタ)


春海(即ツッコミ)「誰がZまで飛ぶかーーっ!!クラシカルに宇宙世紀入れんで!!」


佐伯先生(腹抱えながら)「“夜の小さな音楽”が急に“夜の巨大ロボ”に……!」



合奏スタート(でも笑い止まらん)


佐伯先生「はい、気を取り直して1小節目から。モーツァルトは“軽やか・短い・丸い”。長く吹かない、突かない、尖らない。金管、スタッカートは“ポン”。木管は丸い“トゥ”。打楽器、ティンパニは“ぽんっ”。わかった?」


全員「はい!」


春介チューバ「ぼんっ(理想の短さ)」

佐伯先生「ブラボー!それそれ!」


春海スネア「タ・タ・タ(超繊細のショート)」

佐伯先生「春海ちゃん、天才。……で、笑いは長い!」


春海「そっちは切れんでよか!」



“Zガンダム”の後始末(?)


上村部長「春介、そのボソッとが曲者よ。笑いの残響、昨日も起こしとるけん。」


春介「反省して、“Z(ゼッタイ言わん)モード”に入ります。」


春海「今言いよるやん!!」


古城先輩パーカス「じゃあメトロノームの名前を“アンタさん”にして、ズレたら“アンタ鳴っとる?”って確認しよ。」


佐伯先生「採用。今日の練習メモ:

1.“アンタ”=テンポ 2) “クライネ”=音量小さく 3) “ナハト”=短く 4) “ムジーク”=歌心

……Zは存在しません!」


全員「了解です、先生!(笑)」



仕上げのひと通し


佐伯先生「じゃ、AからCまで通すよ。“V字の歌い回し”を意識――ふわっと開いて、そっと閉じる。」


合図。

クラリネットが明るくテーマを色付け、フルートが春風、

トランペットは華やかに、ホルンは抱きしめるように、

低音――春介のチューバが“ぽんっ”と床を支える。

スネアの春海は、笑いを噛み殺しつつ、見事にテンポをキープ。


終止。静寂。


佐伯先生(満足げ)「うん、“Z抜き”で上品! これよ、モーツァルトは“お行儀のよいお調子者”。」


春介(挙手)「先生……“お行儀のよいお調子者”って、僕のことですか?」


春海(食い気味)「ちゃうわ!!」


全員「アハハハハ!!」



放課後メモ(黒板)

•今日の名言:「笑いは長め、音は短め(クラシックのときは)」

•禁則事項:“Zガンダム口走り”(※指揮停止の可能性あり)

•次回:2楽章 Andante(“夜”を歩く上品なレガート/息の支え特訓)







《博多南中・吹奏楽部 第二楽章「夜の散歩」練習》


譜面の上には「Andante・夜の光に歩くように」と先生の書き込み。

だが――


佐伯先生「では、赤嶺チーム、息の支えを感じて。春介くん、低音で“夜の足音”を作ってね」

春介「了解っす。ナハトムZ……(小声)」

春海「まだ言うかーーーっ!!」

全員「アハハハハハ!!!」


クラリネット陣、腹筋を押さえながら涙目。

フルート陣、笑いすぎて音がスカスカ。

トランペット隊、唇が笑いで震えてマウスピースが「ぷひゅっ」。


佐伯先生(必死)「笑うな!笑うな!息が逃げる!!音が夜に帰れなくなる!!」

春海(手を叩きながら)「いや先生、“夜に帰れない”ってどんな状態ですか!」

佐伯先生「成仏できないクラリネットになる!!」



《練習中盤・耐久戦》


春介(チューバのベルを覗き込みながら)

「夜が深いっすねぇ……音が宇宙に吸い込まれそうです。」

春海「もうええ!寝とけ宇宙!」


管楽器勢、吹くたびに“ぷふっ”“ぶふっ”。

副部長・結城(Cl)「誰か……春介くんの“宇宙シリーズ”止めてぇぇ!」

パーカスの古城「腹筋の夜明けぜよ……!」



《ついに事件勃発》


トロンボーンのスライドが笑いで震えて「ビュルッ」。

ホルンが共鳴して「ブォン」。

ティンパニのバチがすっぽ抜け、シンバルの間にスパァンッ。

一瞬の沈黙。


春介「……これが、“夜の小さな爆発音楽”です。」

春海「どこがモーツァルトやねん!!!」

全員「うわぁぁーーっはっはっは!!!」


佐伯先生、もはや床に崩れ落ちる。

「……モーツァルトが笑ってる……多分……」



《練習後の黒板メモ》

今日のテーマ:「夜の静けさを守る」→ 守れず。

被害報告:腹筋 全滅、トロンボーン1本脱線、ティンパニ バチ迷子。

反省点:「Zガンダム」と「宇宙」を封印。

次回:「静かな夜と笑わない勇気」特訓。




春海(帰り際)「先生、次“夜の静けさ”って言った瞬間、兄ちゃん笑うと思います。」

春介「いや、もう悟り開いた。俺、笑わんよ。」

(1秒後)

春介「でも“Z”って付くと強そうよね……」

春海「はい終了ーーーっ!!!」

全員「アハハハハ!!!」








《放課後 腹筋壊滅の余韻》


練習が終わった音楽室。

あちこちに「ぷふっ……」「まだ笑うな……」の残響が残る。


佐伯先生「ぜ、全員……いったん撤収……。

笑いの反動で……腰が……(ピキッ)」

内田先生(副顧問)「ちょ、ちょっと待って先生!私も……肩……つった……アハハ……うっ!」


ついに2人とも笑いすぎで整骨院送り。

吹奏楽部史上初の“笑いによる負傷”を記録。



《校内放送:臨時アナウンス》


「吹奏楽部顧問・佐伯先生、内田先生は笑いすぎによる筋肉疲労のため、本日午後は整骨院で療養されます」

「部員のみなさんは笑いの自主練を控えましょう」


全校生徒、ざわっ。


生徒A(サッカー部)「博多南の吹奏楽、そんな激しいん?」

生徒B(美術部)「音で笑わせる部活って新しいな……」



《帰宅後・小倉家スタジオ》


夜。

春介と春海が帰宅し、玄関で報告。


春介「今日、先生が整骨院行きになった。」

春海「うちの部、もう吹奏楽じゃなくて“腹筋楽部”。」


居間の奥では、美香とアキラが新曲制作中。

トロンボーンのミュートを付けて音確認中の美香が振り返る。


美香「……なにそれ?(吹きそう)」

アキラ「整骨院て……吹奏楽で骨まで鳴らすとはな……」


2人、じわじわ笑いがこみあげ、爆発。


美香「ぷはっ……!!もうダメ!!音符見えん!!」

アキラ「俺も譜面の♭が笑ってるように見える!!」



《制作現場、カオス化》


DAWの画面上で「Zガンダム音源」という仮トラックが誕生。

プロジェクト名もなぜか「夜の小さな暴走音楽」。


美香「どこまで編曲したっけ……?」

アキラ「不明。俺の腹筋が爆発してから記憶が飛んだ。」

春海「兄ちゃんのボケがリフレインしたせいや……」

春介「でも音楽的には進化した気がする!」

春海「進化やなくて進撃や!!」



《夜の小倉家スタジオ・記録ノート》


[進捗状況]

・新曲タイトル案:「夜の小さな爆笑音楽(Eine Kleine Wahaha Musik)」

・録音状況:笑い声トラック4本、まともな演奏トラック2本

・被害者:腹筋×5、頬筋×3、顧問×2(整骨院)

・犯人:春介(Zガンダム語録)、共犯:春海(即ツッコミ反射神経)




《深夜の家族会議》


美香「春介、春海……お願いだから、次の合奏では先生を整骨院送りにせんで。」

春介「了解っす。でもZは宇宙規模の響きが――」

春海「もうその口封印や!!」

アキラ「(爆笑)美香ぁ、俺もうアレンジ無理や……腹筋痛くて座れん……」

美香「あたしもトロンボーン吹いたら笑いでスライド外れそう!!」



《エピローグ》


翌朝。

小倉家の前に、新聞の地域欄の見出しが並ぶ。


「吹奏楽部 顧問2名 笑いすぎで整骨院送り」

「“Zガンダム事件”が生んだ奇跡の合奏」

「作曲家夫妻も笑いで進捗迷子に」


SNSではハッシュタグ

#笑奏リフレイン #Zガンダム封印失敗 #整骨院セッション がトレンド入り。







『爆笑通信・第248号』


~春介チューバ反抗期とZガンダム事件、全国デビュー!?~



【トップニュース】


「チューバが反抗期に入りました」

―博多南中吹奏楽部1年・赤嶺春介談


春介くんのチューバくん、思春期真っ只中。

朝の音出しで「ぼぉお〜〜っ」と鳴らすたびに、なぜか“ため息系”の音に。

先生に「息を入れて!」と言われると、

「今、反抗期なんでぇ〜」と答え、部室が地響きのような笑いに包まれる。



【事件その②:アイネクライネ・ナハトム・Zガンダム事件】


「アンタ クライネ ナハトム Zガンダム」


春介の口から放たれた一言が、吹奏楽部を宇宙へ飛ばした。

クラリネットが笑いで音を外し、ホルンは“ブォッ”と戦闘音を再現。

ティンパニはバチが吹っ飛び、顧問の先生は笑いすぎて整骨院送り。


その日、博多南中は文字通り“音で爆発”した。



【爆笑通信編集部コメント】


光子(編集長)「春介、アンタほんとに“夜の小さなZ音楽”にしたやろ!!」

優子(副編集長)「しかも“Z”だけ妙に発音よかし!」

美香(音楽監修)「あたしらも笑いすぎて編曲進まんやったけんね!」

アキラ(録音担当)「もう“Zチューバ・リミックス”として出すか?」



【爆笑発電所女性部・博多支部コメント】


古賀真理子:「チューバが反抗期て、もうそれ楽器の人格変わっとるやん!」

高山由紀:「アンタクライネナハトムZガンダム、舌噛むけど言いたくなる!」

森本さやか:「Zガンダムって吹奏楽にあったっけ?って真剣にググった私が悲しい!」

中原志穂:「あの顧問、整骨院送りとか前代未聞やけん!」

井上明美:「もうTシャツ作って!“Zガンダム封印中”ってやつ!」



【SNSの反応まとめ】


ハッシュタグ

投稿内容

#チューバ反抗期

「低音なのに態度でかいw」「思春期楽器シリーズ始動?」

#ナハトムZガンダム

「博多南中の吹奏楽、もはやロボアニメ」「Zより吹奏の魂を見た」

#整骨院セッション

「先生のリハビリ中のリズム感が良すぎる」「笑いで治療」

#爆笑通信

「読むたびに腹筋が鍛えられる定期刊行物」「今回も泣くほど笑った」



【特別称号授与】



種別

受賞者

称号

ボケ大魔王

赤嶺春介(博多南中)

「夜の小さな暴走音楽家」

ツッコミ大魔王

赤嶺春海(同)

「音速ツッコミの春風」

顧問特別賞

佐伯先生・内田先生

「整骨院交響曲第一番・腰痛調」




【エンディングコメント】


光子「今回も爆笑レベルMAX!Zガンダム封印令が出たけど、どうせまた言うやろ!」

優子「あんたら、Z言いたくなったら“ズッ友”ってごまかしとき!」

美香「Zチューバ、次のライブでサウンドチェック予定!」

アキラ「整骨院の先生、うちのCD予約したらしいぞ……!」






『爆笑通信・第249号』


~薔薇の謝肉祭か、豚バラの謝肉祭か、それが問題だ!~



【発端:課題曲発表の日】


放課後の音楽室。

佐伯先生が黒板に大きく書く。


『2048年度 吹奏楽コンクール課題曲:薔薇の謝肉祭』


部員たちはざわつく。


トランペット・有村悠音「わぁ、きれいなタイトル!」

サックス・木原梨央「なんかオシャレ〜!」

春介チューバ「……バラ?……しゃにくさい……?」(真剣に読んで)


そして──


春介「……豚バラの謝肉祭、ですね?」


シーン。

次の瞬間、音楽室が爆発した。


春海ドラム「豚が謝る祭りちゃうわぁあ!!」

部員全員「ブフォッッ!!!」



【笑撃の余波】


クラリネット隊、吹きながら笑って音が裏返り「ピギィッ」。

ホルン隊、ベルの中で笑いを堪えきれず「ブボボボ」

フルート隊、酸欠で目がうるうる。


佐伯先生「春介……またお前か……。

今度は“肉”で攻めてきたか……」

春介「先生、僕、肉厚系チューバなんで。」

春海「知らんがなっ!!」



【練習中:謝肉祭カーニバル大混乱】


演奏が始まる。

春介のチューバが“豚バラテーマ”に聞こえる。

トロンボーンが低音で「ブーブー」。

打楽器がリズムを取るたび「トン・トン・トン」。


副部長・結城(Cl)「もう焼肉屋のテーマやん!」

部長・松井(Tp)「誰か春介を止めて!」



【再び起きた悲劇】


顧問・佐伯先生、笑いすぎて背中がピキッ。

内田先生「先生!また整骨院ですか!?」

佐伯先生「“薔薇”で“腰”をやられるとは……!」


※整骨院先生、2週連続で吹奏楽部顧問を施術中。



【帰宅後・小倉家スタジオ】


夜。

春介と春海が報告。


春介「今日の課題曲、“豚バラの謝肉祭”やった。」

美香「ちょ、待って。それ“薔薇”やろ!」

アキラ「謝る豚ってどんな曲やねん!」


爆笑再発。

譜面の上に涙のしみができ、作曲ソフトの名前が「ButaFest2048」に変わる。


アキラ「……誰や勝手にプロジェクト名変えたん!!」

美香「もうそれでええやん、“豚バラ・カーニバル”!」



【爆笑通信・読者コメント】


投稿者

コメント

古賀真理子

「うちの晩ご飯、豚バラ使っとったけんタイムリー!」

森本さやか

「謝肉祭=焼肉祭と勘違いしてたの私だけじゃなかった!」

高山由紀

「部員全員、次は“肉フェス吹奏楽団”名乗ってよ!」

中原志穂

「整骨院の先生、もう常連枠やね」




【SNSトレンド】


ハッシュタグ

投稿内容

#豚バラの謝肉祭

「もはや吹奏楽グルメ」「肉汁の音色が聴こえる」

#薔薇か豚か

「バラ吹奏楽団 vs ブタ吹奏楽団」「チューバが主役」

#整骨院シリーズ

「顧問また腰いった」「笑いは治療」



【特別称号授与】



種別

受賞者

称号

ボケ大魔王 3代目

赤嶺春介

「肉厚旋律王」

ツッコミ大魔王 4代目

赤嶺春海

「脂肪カットの早口女王」

顧問特別賞

佐伯先生

「腰の薔薇賞」





【エンディングコメント】


光子「“豚バラの謝肉祭”で笑いすぎて、腹筋がカーニバル!」

優子「次の定演は“ロースト交響曲”で決まりやね!」

美香「この兄妹、音より笑いが鳴っとる」

アキラ「チューバの音圧で肉が焼ける日も近い!」






《師弟の春 ― 音が笑いを超えるとき》


日曜の午後、博多の春はやわらかい光に包まれていた。

青柳家と柳川家の玄関に、春介と春海の姿があった。

それぞれチューバとスティックバッグを抱え、やけに緊張した面持ちだ。


「光子おばちゃん、お願いします!」

「優子おばちゃんも、よろしくです!」


ふたりは同時に頭を下げた。



【光子の特訓開始】


庭にチューバを構えた春介。

光子は笑いながらも、その目は真剣だ。


光子「春介、吹奏楽ってのはな、“音”だけやなか。

 腹で語って、息で笑うっちゃ。…まずは息、ぜんぶ出してみい。」


春介、肺いっぱいに吸い込んで――

「ぶぉぉぉっ!!」


植木鉢が震え、近所の犬がワン!


光子「よし!いまの一発、悪くなか!

 でも、“笑い”やのうて、“うた”を吹け。音で、伝えたいこと言ってみ。」


春介、うなずき、もう一度深く息を吸う。

今度は、どこか優しい、柔らかい音。


光子「それたい!“豚バラ”やのうて、“薔薇”になった音や!」

春介「……おばちゃん、チューバって、奥が深いっすね。」

光子「人生と一緒たい。油断したら、すぐブタになるけん。」


ふたり、笑って、また音を出す。

光子の声が優しく響いた。


光子「音楽って、誰かを笑わせるだけやのうて、

 その笑顔の奥の“心”を震わせるもんなんよ。」



【優子のドラム教室】


一方そのころ、家の中では優子がスティックを持ち、春海の前に立っていた。

テーブルを叩いてリズムを刻む優子の姿は、どこかプロの風格。


優子「春海、パーカッションは“支える音”やけぇね。

 目立たんでも、みんなが安心して笑えるテンポを作るんよ。」


春海「わたし、笑わせるテンポは得意ですけど……」

優子「それは知っとる!ツッコミの間もリズム感やけん!」


ふたりは笑いながら、基礎打ちを始めた。

スティックが空気を切るたびに、リズムが少しずつ滑らかになる。


優子「ドラムは心臓たい。焦らんと、ドクンドクンって拍動感じて。」

春海「……なんか、音が生きとる気がする。」

優子「そげん感じられたら、もうドラマーの仲間入りたい。」


優子の目がやさしく光る。



【夕暮れのハーモニー】


夕方、光子と優子の家の前で、チューバとスネアが一緒に鳴った。

春介が低音でリズムを作り、春海がドラムで答える。


音が混ざると、まるで笑顔の波が広がるようだった。

春介のチューバはもう“豚バラ”ではなく、あたたかな“薔薇の風”を吹かせていた。


光子「うん、成長しとるねぇ。」

優子「このペア、絶対大会で化けるよ。」


そして――


春介「俺、もっと上手くなりたい。」

春海「うちも、みんなが笑顔になれる音出したい!」


ふたりの声が重なったとき、光子と優子はそっと目を合わせた。


光子「まるで、うちらの小学生時代見とるみたいやね。」

優子「次の“音の物語”は、この子らが奏でる番やね。」



春の博多の空に、ふたつの音が重なり合う。

笑いの中に、確かな情熱が芽吹く。


--


《練習用スコア解禁 ― スローは誤魔化せない》


居間のテーブルに置かれた一冊のスコア。

表紙には手書きでこうある――

「練:ALFEE風バラード『恋人の歌が聞こえる』」


光子「今日はこれ。とにかく“ゆっくり”。スローほど、あらが全部、丸見えになるっちゃ。」

優子「テンポ遅いからラク、って思ったら即死よ。基本ができてないと“伸びる音”がたんけん。」


春介と春海、顔を見合わせてゴクリ。



1回目:スローの洗礼


カウント「ワン…ツー…」が、やたら遠く感じる。

春介のチューバ、入った瞬間のアタックがわずかに揺れ、支えが足りず音程が下がる。

春海のスネアは**スティックの返り(リバウンド)**が取り切れず、ゴーストノートが重く落ちる。


光子(止めずに黙って聴く)

優子(腕を組み、テンポだけ軽く刻む)


曲が終わる。

部屋に、静かな“きまり悪さ”が残った。


春介「……今の、自分でも全部バレたってわかる。」

春海「スローやと、“”に自分の雑さが響く……。」


光子「それ。スローは嘘つかん。」

優子「でも裏返せば、一個ずつ直せば映えるっちゃ。やろうか。」


2人の目に、スッと火が入った。



ブレークダウン:音を磨く


光子→春介チューバ

•「息を“置く”つもりで。攻めず、まず支えて。

•ロングトーン:拍頭“タン”じゃなく**“フー”で置く**。

•メッサ・ディ・ヴォーチェ(<>)で1小節、ピッチをセンターから動かさない練習。

•タンギングは“Tu”じゃなく**“Du”**。硬音禁止。」


春介、呼吸を深く入れ直す。次の一音は、床に静かに根を張るみたいに鳴った。


優子→春海(スネア & ブラシ)

•「スローは**“重さの置き場所”**勝負。

•モラーで“上げ”から決める。当てにいかない。

•右:表の空気、左:裏の影。ゴーストは囁き。

•ハイハットは1拍=4つに“細かく”割る。グリッドが揺れたら全部崩れる。」


春海、スティックの高さを半分に落とす。触れるだけのゴーストが空気に溶け、バックビートだけがすっと立つ。



2回目:音が“立つ”


光子(最小の合図だけ)「ワン…ツー…」


春介の低音が、沈むのではなく支えるに変わる。

春海のスネアは、歌の呼吸に寄り添い、空白ブレスに怖さがない。


Bメロ。

春介の上行ラインがほんのり息の色で膨らみ、

春海のスワール(ブラシ円描き)が夜の路地の灯みたいに淡く回る。


曲が、終わった。


優子(小さく親指を立てる)「“間”が歌い出したね。」

光子にやり「ほらね、スローは正直。でも、できた時のご褒美もデカいっちゃ。」


春介はベルの中を覗いて、ぽつり。

「ここで初めて、“薔薇”に触れた気がする。」

春海はスティックを胸にあてて、笑った。

「“笑わせるテンポ”も好きやけど、“黙って泣かせるテンポ”……かっこいい。」



仕上げドリル(メモ置き)

•チューバ:

1.ロングトーン1分×5(センターピッチ維持)。

2.タンギング“Du・Lu”で1コーラス(硬音禁止)。

3.コラール2本(和声の中で呼吸合わせ)。

•パーカッション:

1.モラー8分×2分(高さ3種)。

2.ハイハット“4分=16分4つ割”メトロノーム60(グリッド死守)。

3.ブラシ・スワール8の字、歌フレーズに合わせ強弱だけで表情づけ。

•合奏:

1.イントロ無言→A頭入音、全員“置く”意識。

2.ブレイク後の復帰は、誰も急がない。

3.ラスト小節、消える方向。拍後ろで手を離す。



終わったあと


玄関先、暮れていく博多の空。

春介と春海はスコアを大事そうに抱えて、深く頭を下げた。


春介「また、やらせてください。」

春海「ゆっくりに勝てるようになる。」


光子「いつでもおいで。」

優子「次は**“黙って泣かせてから笑わせる”**。それがうちら流たい。」


ふたりの背が、少しだけ大きく見えた。












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