ぴよぴよ大爆笑。そしてピーチブロッサムの始まり
第48話「ぴよぴよ大爆笑」
リビング。
“伝説の落差シングル”が再生される。
ぴよぴよフォルテ〜!!
⸻
その瞬間。
⸻
燈真&灯乃
「きたぁぁぁぁ!!」
⸻
まだ幼児の二人。
体いっぱいで反応する。
⸻
燈真
「ぴよぴよぉぉ!! どんどんするぅぅ!!」
灯乃
「ひの、ぴよダンスするぅぅ!!」
⸻
ぴょんぴょん跳ねて、くるくる回る。
⸻
燈真
「びゅんっ! ぶんっ!!」
灯乃
「てきとうに はしるぅぅ!!」
⸻
優子
「ホームラン理論まで混ざっとるやん!」
光子
「全部吸収しとる!」
⸻
結音と陽翔も横で大笑い。
⸻
結音
「それ違うやろ!」
陽翔
「適当に走るな!」
⸻
サビに入る。
⸻
ぴよぴよフォルテ〜!!
⸻
燈真
「ふぉるてぇぇぇ!!」
灯乃
「ぴよぴよぉぉぉ!!」
⸻
二人、転がりながら爆笑。
⸻
燈真
「おなか いたいぃぃ!!」
灯乃
「わらいすぎぃぃ!!」
⸻
優子もつられて笑う。
優子
「だめ……こっちも腹筋やられる……」
光子
「妊婦に優しくない曲やねこれ」
⸻
そして曲が終わり――
静かに流れ始める。
⸻
『雨の日曜日』
⸻
ピアノの音。
⸻
燈真
「……あれ?」
灯乃
「しずかぁぁ?」
⸻
二人、ぴたりと止まる。
⸻
燈真
「ぴよ どこいった?」
灯乃
「ぴよ いないぃ」
⸻
結音
「落差やね」
陽翔
「これが問題のやつ」
⸻
燈真、ぽつり。
⸻
燈真
「……ねむくなるぅ」
⸻
灯乃、小さく。
⸻
灯乃
「でも きれいぃ」
⸻
光子と優子、顔を見合わせる。
⸻
光子
「ちゃんと感じ取っとるね」
優子
「すごいね」
⸻
しかし数秒後。
⸻
燈真
「でもぉ……」
灯乃
「やっぱりぃ……」
⸻
二人同時に。
⸻
燈真&灯乃
「ぴよぴよがいいぃぃ!!」
⸻
全員
「そっちかい!!」
⸻
即リピート。
⸻
ぴよぴよフォルテ〜!!
⸻
燈真
「きたぁぁぁ!!」
灯乃
「ぴよぉぉぉ!!」
⸻
再び大爆笑。
⸻
燈真
「ぽよぽよぉぉ!!」
灯乃
「せきちゃんだぁぁ!!」
⸻
そのタイミングでテレビ。
⸻
せきちゃん閣下
「ぴよぴよフォルテは世界を――」
せいちゃん姫
「だから違うわ!!」
⸻
燈真&灯乃
「でたぁぁぁ!!」
⸻
さらに爆笑。
⸻
燈真
「つっこみぃぃ!!」
灯乃
「つんつんするぅぅ!!」
⸻
結音
「完全再現しとる」
陽翔
「次世代やね」
⸻
優子、笑いながら。
⸻
優子
「これ……止まらんね」
⸻
光子、やさしくお腹に手を当てる。
⸻
光子
「この子たちも、そのうちこうなるんやろうね」
⸻
優子
「絶対なる」
⸻
リビングには、ずっと笑い声が響いていた。
⸻
未来の子どもたちはまだここにはいない。
でも――
この笑いは、確実にその先へ続いていく。
⸻
ぴよぴよフォルテは、時代を越えて伝染する。
第49話「きらきら、はじめの一音」
ある日の午後。
ぴよぴよフォルテでひとしきり騒いだあと、
リビングにふっと静かな時間が戻った。
⸻
灯乃
「ねぇ……」
結音
「ん?」
⸻
灯乃、小さく言う。
⸻
灯乃
「ひの、ピアノ ひきたい」
⸻
結音も、少し考えてからうなずく。
⸻
結音
「うちも。やってみたい」
⸻
光子と優子は顔を見合わせた。
⸻
優子
「来たね」
光子
「来たね」
⸻
部屋の隅に置かれていた電子ピアノ。
カバーを開ける。
⸻
優子
「じゃあ、まずは一番簡単なやつからいこか」
光子
「定番いく?」
⸻
優子
「うん」
⸻
優子、ゆっくり鍵盤を押す。
⸻
ド ド ソ ソ
ラ ラ ソー
⸻
灯乃
「きらきらぼしぃ!!」
結音
「知っとる!」
⸻
優子
「そう、“きらきら星”。ここから始めるよ」
⸻
灯乃、鍵盤にちょこんと手を置く。
⸻
灯乃
「ど……?」
⸻
優子
「そう。“ド”」
⸻
ぽん。
⸻
少しだけ不安定な音。
でも、ちゃんと鳴る。
⸻
灯乃
「でたぁぁ!」
⸻
結音も隣で。
⸻
結音
「うちもやる」
⸻
ド ド
⸻
光子、少しだけ微笑む。
⸻
光子
「いいね。最初の一音」
⸻
優子
「音楽の入り口やね」
⸻
ゆっくり。
⸻
ド ド ソ ソ
⸻
結音、指を動かす。
灯乃、真似する。
⸻
結音
「ソってこれ?」
優子
「そう、それ」
⸻
灯乃
「ひのもぉ!」
⸻
ソ(ちょっとズレる)
⸻
灯乃
「あれぇ?」
⸻
優子
「大丈夫大丈夫。ゆっくりでいい」
⸻
何度も繰り返す。
⸻
ド ド ソ ソ
ラ ラ ソー
⸻
少しずつ、形になっていく。
⸻
灯乃
「できたぁぁ!!」
結音
「できた!」
⸻
二人、顔を見合わせて笑う。
⸻
その様子を見ていた燈真が近づいてくる。
⸻
燈真
「ぼくもぉ!」
⸻
結音
「じゃあ一緒にやろ」
⸻
三人で、ちょっとぎこちない演奏。
⸻
ド ド ソ(混線)ソ
⸻
優子
「カオスやね」
光子
「でもいいね」
⸻
結音、ふと思いつく。
⸻
結音
「これさ」
優子
「ん?」
⸻
結音
「ぴよぴよフォルテで弾けるんちゃう?」
⸻
全員、一瞬止まる。
⸻
優子
「やめなさい」
光子
「初日で崩壊する」
⸻
灯乃
「ぴよぴよぉぉ!!」
⸻
ドドドド(暴走)
⸻
燈真
「びゅんっ!」
⸻
優子
「だからホームラン混ぜるな!!」
⸻
結音
「ちゃんとやる!」
⸻
再び、静かに。
⸻
ド ド ソ ソ
ラ ラ ソー
⸻
今度は、少しだけ揃っている。
⸻
光子は、そっとお腹に手を当てる。
⸻
光子
「聞こえとるかな」
⸻
優子も同じように。
⸻
優子
「たぶん、聞いとる」
⸻
小さな音。
小さな指。
⸻
でもその音は、確かに“始まり”だった。
⸻
灯乃
「きらきらぁぁ」
結音
「またやろ」
⸻
優子
「うん、またやろ」
⸻
その日の午後。
リビングには、やさしい音が何度も響いた。
⸻
笑いだけじゃない。
静かな音も、ちゃんと育っていく。
⸻
そしていつか――
この「ド」の一音が、
また新しい物語につながっていくのだった。
第50話「最初の一歩 ― ピーチブロッサムのはじまり」
午後の光が、やわらかくリビングに差し込んでいた。
さっきまでの賑やかな笑いは少し落ち着き、
部屋には、ぎこちないけれど温かい音が響いている。
⸻
ド ド ソ ソ
ラ ラ ソー
⸻
結音の指は、まだ少し慎重で。
灯乃の音は、ときどき迷子になる。
でも――
二人の目は、同じ方向を見ていた。
⸻
灯乃
「きらきらぁぁ……できたぁぁ」
結音
「うん、できた」
⸻
その瞬間。
何気ないその一音が、
ただの“遊び”ではなくなった。
⸻
優子は、その様子を静かに見ていた。
優子
「……いいね」
⸻
光子も、小さくうなずく。
⸻
光子
「これやね」
⸻
優子
「ん?」
⸻
光子
「最初の一歩」
⸻
結音が、もう一度鍵盤に触れる。
⸻
ド
⸻
たった一音。
でも、その音には――
「やってみたい」
「もっと弾きたい」
そんな気持ちが詰まっていた。
⸻
灯乃も、真似して。
⸻
ド(ちょっとズレる)
⸻
灯乃
「ひのもぉ!」
⸻
結音
「一緒にやろ」
⸻
並んで弾く。
まだ揃わない。
でも、揃えようとしている。
⸻
光子は、そっとつぶやいた。
⸻
光子
「これが……」
⸻
優子が、続ける。
⸻
優子
「ピーチブロッサムの最初の一歩やね」
⸻
その言葉に、少しだけ時間が止まる。
⸻
結音
「ぴーち……?」
灯乃
「ぶろっさむぅ?」
⸻
優子、やさしく笑う。
⸻
優子
「うん。これから二人で音を作っていく名前」
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結音、少しだけ照れながら。
⸻
結音
「……いいやん」
⸻
灯乃、満面の笑みで。
⸻
灯乃
「ぴよぶろっさむぅ!!」
⸻
全員
「違う!!」
⸻
笑いが戻る。
⸻
でもその笑いの奥に、
確かに何かが生まれていた。
⸻
まだ小さな手。
まだ不揃いな音。
⸻
それでも――
誰かと一緒に音を鳴らす喜び。
それは、すべての始まりだった。
⸻
燈真も横から加わる。
⸻
燈真
「ぼくもぉ!」
⸻
ド(さらにズレる)
⸻
優子
「ユニット崩壊しとる」
光子
「でも、それもいい」
⸻
再び、きらきら星。
⸻
ド ド ソ ソ
ラ ラ ソー
⸻
少しずつ。
ほんの少しずつ。
音が重なっていく。
⸻
光子は、お腹に手を当てた。
⸻
光子
「この子たちも、いつか一緒に弾くんやろうね」
⸻
優子
「うん。絶対に」
⸻
まだ見ぬ未来。
でも、確かに続いていく音。
⸻
その日。
何気ない午後に生まれた、小さな音。
⸻
それはやがて――
ステージへ。
世界へ。
笑いと音楽を運ぶ存在へ。
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つながっていく。
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ド
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その一音は、
ただの音じゃなかった。
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ピーチブロッサムの、はじまりの音だった。
第51話「小さな姉妹の、はじめての歌声」
春の終わり。
テレビ番組の小さな音楽コーナーに、結音と灯乃が出演することになった。
結音、4歳。
灯乃、2歳。
まだ幼い姉妹。
けれど、家では毎日のようにピアノに触れ、歌を口ずさみ、音の中で遊んでいた。
本番前。
優子
「緊張しとる?」
結音
「ちょっとだけ」
灯乃
「ひの、うたうー」
結音
「灯乃、楽しく歌えばいいと」
灯乃
「たのしくー!」
優子は二人の頭をそっとなでた。
優子
「うん。それで十分」
光子も隣で微笑む。
光子
「今日は上手に見せようとせんでいい。楽しく歌っておいで」
結音
「うん」
灯乃
「ととろー!」
そして本番。
最初の曲は、『となりのトトロ』。
イントロが流れた瞬間、灯乃の顔がぱっと明るくなった。
灯乃
「とっとろー!」
観客席にやわらかい笑いが広がる。
結音が、やさしく歌い始める。
まだ4歳とは思えない、澄んだ声。
音程は驚くほど安定していて、言葉も丁寧に届く。
そこに灯乃の小さな声が重なる。
少し幼い発音。
でも、まっすぐで、濁りのない響き。
司会者が、思わず目を見開いた。
観客も、最初は「かわいい」と見ていた。
けれど途中から、空気が変わる。
かわいいだけではない。
うまい。
いや、年齢を考えると、明らかに異次元だった。
一曲目が終わると、スタジオは大きな拍手に包まれた。
司会
「すごい……本当に4歳と2歳ですか?」
結音
「はい」
灯乃
「ひの、にさい!」
会場、笑い。
続いて二曲目。
『君をのせて』。
こちらは一転して、静かな曲。
結音は、少し背筋を伸ばした。
優子は袖で見守りながら、そっと手を握る。
優子
「いけるよ」
光子
「大丈夫」
ピアノの音が流れる。
結音の声が、静かに立ち上がる。
さっきの明るさとは違う、透明な歌声。
幼いのに、どこか物語を知っているような表現。
灯乃も、難しいところは無理に追わず、結音の声に寄り添うように歌う。
小さな妹が、姉の背中を追いかける。
姉は、その妹を置いていかない。
その関係が、歌の中にそのまま出ていた。
曲が終わった瞬間、スタジオはしばらく静かだった。
そして、拍手。
今度は、大きく、長い拍手だった。
司会
「これは……すごいですね。かわいいを超えています」
音楽監督
「音程もリズムも驚きましたが、一番すごいのは、二人がちゃんと“聴き合っている”ことです。結音ちゃんは灯乃ちゃんを待っているし、灯乃ちゃんは結音ちゃんを追っている。これは教え込んだだけでは出ません」
袖で見ていた優子の目に、少し涙が浮かんだ。
優子
「……あの子たち、ちゃんと音楽してる」
光子
「うん。もう始まっとるね」
美香
「ピーチブロッサムの芽が出たね」
奏太
「早すぎる芽やけどな」
小春
「でも、確かに本物や」
放送後、SNSは一気にざわついた。
「4歳と2歳でこれはすごすぎる」
「灯乃ちゃんの幼い声がかわいすぎるのに、音が合ってる」
「結音ちゃん、もう表現力ある」
「将来が怖い」
「ピーチブロッサム、ここから始まるのか」
家に帰ったあと。
結音は少し照れながら、ソファに座っていた。
結音
「うまくできた?」
優子
「うん。すごくよかった」
灯乃
「ひのも?」
光子
「灯乃も、すごくよかったよ」
灯乃
「やったぁ」
陽翔
「結音、すごかった」
燈真
「ひの、うたったぁ!」
結音は灯乃の手を握った。
結音
「また歌おうね」
灯乃
「うん。ゆのんねぇねと、うたうー」
その小さな約束が、やがて大きな音楽へつながっていく。
ピーチブロッサムは、まだ名前だけの未来ではなかった。
もう、この日から確かに動き始めていた。
第52話「暮らしの中にある音」
結音と灯乃のテレビ初歌唱のあと、優子と光子の公式SNSには、子育て中の親たちから質問が相次いだ。
「どんな歌のレッスンをしているんですか?」
「毎日どれくらい練習しているんですか?」
「2歳であんなに歌えるなんて、特別な教育をしているんですか?」
コメント欄を見ながら、優子は少し照れたように笑った。
優子
「レッスンって言われてもね」
光子
「うん。特別なことはしてないよね」
その日の夜、二人は短い動画を投稿した。
優子
「たくさん質問ありがとうございます。結音と灯乃の歌についてですが……」
光子
「特別な英才教育みたいなことは、ほとんどしていません」
優子
「うちは、暮らしの中に音楽がある感じです」
光子
「ごはん作る時に歌ったり、お風呂で歌ったり、寝る前に子守歌を歌ったり」
優子
「あと、うちはギャグコントが多いので」
光子
「それも声を出す練習になってるかもしれません」
優子
「毎日、笑ったり、ツッコんだり、歌ったり。自然に声を使ってるんです」
光子
「だから“練習しなさい”というより、“楽しく声を出す時間”が多いんだと思います」
動画の横では、結音と灯乃が小さな声で『きらきら星』を歌っていた。
灯乃
「きらきらぁ……」
結音
「そこ、ゆっくりね」
優子はその様子を見て、やさしく笑った。
優子
「こんな感じです」
光子
「上手に歌わせるより、まず音楽を好きでいてくれることが一番かなと思っています」
投稿後、コメント欄には共感の声があふれた。
「暮らしの中に音楽、素敵」
「ギャグコントも発声練習になるの笑った」
「特別なことじゃなくて、毎日の積み重ねなんですね」
「親が楽しんでるから、子どもも楽しむんだろうな」
その中に、せきちゃん閣下からのコメントも混ざっていた。
せきちゃん閣下
「せきちゃんも毎日ぴよぴよフォルテで発声練習!」
せいちゃん姫
「近所迷惑やから控えめにしなさい」
優子
「最後に持っていかんで」
光子
「でもまあ、声を出すのは大事やね」
こうして、結音と灯乃の歌声は、ただの話題ではなく、
“暮らしの中で音楽を育てる”という小さなヒントとして、多くの家庭に広がっていった。




