アチー午後と、ディスコの夜
第43話「アチー午後と、ディスコの夜」
六ヶ月目。
梅雨が明けきらない湿気と、じわっとした暑さが部屋にまとわりつく。
⸻
光子
「……アチー」
優子
「アチー……」
⸻
ソファに並ぶ二人。
お腹ははっきりと形を持ち始め、
その分、熱もこもる。
⸻
優子
「なんか……お腹のとこに汗たまる感じせん?」
光子
「する。完全に小さい温室」
優子
「天然サウナ」
光子
「でも中は快適にしとかんとね」
優子
「母は大変や」
⸻
エアコンの風がやさしく流れる中、
しばらく二人はぐったりしていた。
……が。
⸻
光子
「……ちょっと待って」
優子
「なに?」
⸻
光子は、ゆっくりと立ち上がる。
部屋の隅に置いてあったベースを手に取る。
⸻
優子
「え、今やる?」
光子
「なんか来た」
⸻
ぽん、と弦を鳴らす。
低く、丸い音。
⸻
光子
「この暑さ……」
ぽん、ぽん、ぽん。
⸻
光子
「なんか、ゆるいグルーヴに変えられそう」
⸻
優子の目が、少しずつ変わる。
⸻
優子
「……それ」
光子
「うん?」
優子
「ドラム入れたら跳ねるやつや」
⸻
優子はゆっくり立ち上がり、ドラムセットに座る。
スティックを軽く握る。
⸻
カツ、カツ。
⸻
優子
「ディスコ寄りにしたら面白いかも」
⸻
光子
「アチーけど踊りたくなる感じ?」
優子
「そう。汗かくの前提の音楽」
⸻
光子、笑う。
光子
「妊婦ディスコ」
優子
「新ジャンルや」
⸻
セッションが始まる。
ベースがうねる。
ドラムが刻む。
⸻
ぽん、ぽん、ぽん。
カツ、カツ、タッ。
⸻
優子
「これ、サビで開けるね」
光子
「うん。そこにコーラス入る」
⸻
優子
「“アチーけど踊れ”みたいな」
光子
「それタイトルやん」
⸻
二人、笑いながら音を重ねていく。
⸻
その空気を、結音と陽翔が見ていた。
結音
「始まった」
陽翔
「新曲モードや」
⸻
灯乃
「おんがくー!」
燈真
「どんどん!」
⸻
優子
「今日は軽めにね」
光子
「うん。無理せん程度に」
⸻
それでも、音は止まらない。
⸻
やがて。
⸻
優子
「……あ」
光子
「どうした?」
⸻
優子
「今日、ラジオやん」
⸻
二人、同時に止まる。
⸻
光子&優子
「フライデーラジオカフェ!!」
⸻
時計を見る。
⸻
優子
「準備!!」
光子
「テーマ決めた?」
⸻
優子、ニヤッと笑う。
⸻
優子
「今日のテーマは――鳥」
⸻
光子
「来た」
⸻
優子
「“鳥にまつわる面白ネタ”募集」
光子
「せきちゃん閣下、確定やん」
⸻
結音
「もう優勝決まっとる」
陽翔
「いや、あの人は出禁にした方がいい」
⸻
優子
「いや来るやろ」
光子
「むしろ来ない方が怖い」
⸻
スタジオ(自宅配信環境)準備。
マイクチェック。
⸻
優子
「こんばんはー!」
光子
「M&Yのフライデーラジオカフェです!」
⸻
ジングルが流れる。
⸻
優子
「今日もゆるく楽しくやっていきます」
光子
「そして今日のテーマはこちら!」
⸻
二人、声を揃える。
⸻
「鳥にまつわる面白ネタ!!」
⸻
コメント欄、即爆発。
⸻
「きたあああ!!」
「閣下準備しとるやろw」
「ぴよぴよ案件確定」
「今日は荒れるぞwww」
⸻
優子
「なお、特定のインコは控えめにお願いします」
光子
「たぶん無理です」
⸻
その瞬間。
⸻
通知音。
⸻
優子
「……来た」
光子
「早い」
⸻
画面に表示される投稿。
⸻
せきちゃん閣下:
「せきちゃん、飛ばずに太る」
⸻
0.5秒。
⸻
優子
「ただのメタボ報告や!!」
光子
「テーマ守れ!!」
⸻
コメント欄、ドカン。
⸻
こうして。
暑さと汗と音楽と笑いが混ざった夜。
⸻
新曲の種が生まれ、
ラジオが始まり、
そして――
また一つ、爆笑の物語が動き出した。
⸻
その夜のキーワード。
⸻
「アチー」
「ディスコ」
「鳥」
「そしてやっぱり、せきちゃん閣下」
第44話「鳥ネタ、止まらない夜」
ジングルが鳴り終わると同時に、コメント欄はもう洪水だった。
優子
「早すぎるやろ!」
光子
「テーマ投げた瞬間に回収されとる」
⸻
優子
「じゃあさっそくいきましょう!」
光子
「鳥にまつわる面白ネタ、紹介していきます!」
⸻
◆投稿①「チャボ事件」
光子
「ラジオネーム:にわとりダッシュさん」
優子
「もう嫌な予感」
⸻
光子(読み上げ)
「実家で飼ってるチャボにちょっかい出したら――」
優子
「やめとけ!」
⸻
光子
「全力で追いかけ回されました」
⸻
優子
「ほらああああ!!」
⸻
光子
「しかも、方向転換がめちゃくちゃ速くて、逃げられませんでした」
⸻
優子
「チャボ、機動力高いからね!」
⸻
光子
「最終的に、こけて土まみれになりながら謝りました」
⸻
優子
「謝るんや!」
⸻
コメント欄
「チャボ強いwww」
「謝罪エンド草」
「小型なのに速いの分かるw」
⸻
優子
「これは教訓」
光子
「鳥はナメたらあかん」
⸻
◆投稿②「スズメの圧」
優子
「次!」
光子
「ラジオネーム:パンくず王子さん」
⸻
優子
「もう怪しい」
⸻
光子(読み上げ)
「庭にパン屑をまいていたら」
⸻
優子
「優しい話やね」
⸻
光子
「毎日スズメが来るようになりました」
⸻
優子
「かわいい」
⸻
光子
「そしてある日、撒くのを忘れたら――」
⸻
一瞬の間。
⸻
光子
「窓の外で“チュン”って鳴いて催促されました」
⸻
優子
「圧や!!」
⸻
光子
「しかも、どんどん数が増えていき」
⸻
優子
「嫌な流れ」
⸻
光子
「気づいたら、スズメがメタボ体型になっていました」
⸻
優子
「お前が育てたんや!!」
⸻
コメント欄、大爆発。
⸻
「スズメ太らせるなwww」
「餌付けの末路w」
「チュン=請求www」
⸻
優子
「しかも催促型やからね」
光子
「完全に常連」
⸻
◆投稿③「謎の朝礼」
優子
「次いきます!」
光子
「ラジオネーム:鳩会議さん」
⸻
光子(読み上げ)
「朝、庭に出たら」
⸻
優子
「うん」
⸻
光子
「ハトが5羽、円になってこっち見てました」
⸻
優子
「怖い!!」
⸻
光子
「一歩動いたら、全員で一歩近づいてきます」
⸻
優子
「ホラーや!!」
⸻
光子
「結局、私が謝りました」
⸻
優子
「なんで人間が謝る流れなん!!」
⸻
コメント欄
「鳥に支配されてるwww」
「会議の議題お前やw」
「謝罪文化ここにもw」
⸻
◆投稿④(問題作)
優子
「次……ちょっと怖いけどいくね」
光子
「ラジオネーム:ぴよぴよ帝王」
⸻
優子
「来たな」
⸻
光子(読み上げ)
「せきちゃん、飛ばずに太る」
⸻
0.3秒。
⸻
優子
「またお前かあああああ!!」
⸻
光子
「テーマ守れ!!」
⸻
コメント欄
「本人投稿www」
「メタボネタ継続中w」
「自虐に見せかけて自慢w」
⸻
優子
「はい不採用!」
光子
「強制終了!」
⸻
◆投稿⑤「インコ語通訳」
光子
「最後にちょっといいやつ」
優子
「いいやつ来た?」
⸻
光子
「ラジオネーム:通訳係さん」
⸻
光子(読み上げ)
「うちのインコ、朝になると“おはよう”って言うんですが」
⸻
優子
「賢い」
⸻
光子
「たまに“おはよ…ごはん?”って言います」
⸻
優子
「目的バレとる!!」
⸻
光子
「完全に交渉です」
⸻
コメント欄
「交渉型インコw」
「言葉覚えた結果がこれw」
「人間に近づいてるw」
⸻
◆まとめ
優子
「いやー今日はレベル高い」
光子
「鳥ネタ、強すぎる」
⸻
優子
「今日のMVPは……」
光子
「スズメメタボ事件!」
⸻
優子
「理由は」
光子
「“かわいい”から“圧”への進化」
⸻
優子
「なお、特別賞は」
光子
「チャボダッシュ」
⸻
優子
「走らされた人間に拍手」
⸻
その瞬間。
⸻
通知音。
⸻
優子
「……また来た」
光子
「嫌な予感」
⸻
画面表示。
⸻
せきちゃん閣下:
「せきちゃん、チャボにも勝てる」
⸻
優子
「勝てるかあああああ!!」
光子
「絶対追いかけられる側やろ!!」
⸻
コメント欄、再びドカン。
⸻
その夜。
ラジオは予定時間を大幅にオーバーしながらも、
笑いで包まれていた。
⸻
優子
「来週もやる?」
光子
「テーマ決めとこ」
⸻
優子
「次は……」
光子
「危険なやつやめよう」
⸻
優子
「無理やね」
⸻
光子
「うん、無理やね」
⸻
二人、笑う。
⸻
その夜の締め。
⸻
二人
「それではまた来週!」
⸻
少し間を置いて。
⸻
優子
「ぴよぴよフォルテ!」
光子
「だから違うって!!」
⸻
コメント欄
「締めそれwww」
⸻
こうして、鳥たちの物語は――
また一つ、笑いとともに広がっていった。
第45話「オンエアの向こう側、さらに向こうへ」
ジングルがフェードアウトし、
本放送のエンディングが締まった――その瞬間。
優子
「はい、ここからは裏トークでーす!」
光子
「本編で笑い足りん人、ようこそ」
コメント欄
「待ってましたw」
「ここからが本番」
「むしろここがメイン」
⸻
◆爆笑裏トーク
優子
「いや今日やばかったね」
光子
「スズメの圧が強すぎた」
優子
「“チュン=請求”は名言やろ」
光子
「チャボも強かった」
優子
「人間が謝る流れ多すぎ」
⸻
結音(横から)
「鳥って強いよね」
陽翔
「人間の方が弱い説ある」
優子
「幼稚園で何学んできたん」
⸻
通知音。
⸻
優子
「……また来た」
光子
「開ける前から分かる」
⸻
画面表示。
⸻
せきちゃん閣下:
「せきちゃん、スズメに指導する側」
⸻
0秒。
⸻
優子
「無理やあああああ!!」
光子
「逆に指導される側やろ!!」
⸻
コメント欄
「スズメに教育される閣下w」
「むしろ餌係www」
⸻
せいちゃん姫(乱入)
「この鳥、朝からパン配る係や!」
⸻
優子
「確定や!!」
光子
「正式役職“餌配り担当”」
⸻
きびまる
「お父ちゃん、しごとできた」
あわまる
「パンー」
しらゆき
「責任重大」
⸻
裏トーク、完全に崩壊。
⸻
優子
「ちょっと待って、もう一回整理しよ」
光子
「今日の鳥ランキング」
⸻
二人同時に。
⸻
光子&優子
「1位:スズメ(圧)」
⸻
優子
「2位:チャボ(機動力)」
光子
「3位:せきちゃん閣下」
⸻
せきちゃん閣下
「納得いかん!!」
⸻
せいちゃん姫
「妥当や!!」
⸻
コメント欄
「完全同意www」
「ランキング強すぎw」
⸻
◆爆笑通信 接続
優子
「ということで!」
光子
「ここからは爆笑通信、全支部つなぎます!」
⸻
画面分割。
⸻
札幌支部
「寒いけど笑ってます!」
メルボルン支部
「Good birds everywhere!」
ブエノスアイレス支部
「No entiendo pero me río!」
⸻
キーウ支部――ソフィーアも笑顔。
ソフィーア
「今日は“鳥の日”ですね」
⸻
優子
「完全に鳥の日やね」
光子
「公式認定」
⸻
徳島支部、インコ一家。
せきちゃん閣下
「世界に伝える!せきちゃんの魅力!」
せいちゃん姫
「まず体重落とせ!!」
⸻
全支部
「wwwwwww」
⸻
◆各支部からネタ投下
札幌支部
「カラスにパン取られました」
優子
「それは負け」
⸻
メルボルン支部
「カモに追いかけられました」
光子
「また人間が追われとる」
⸻
ブエノスアイレス支部
「ハトに囲まれました」
優子
「もう世界共通やね」
⸻
キーウ支部
「ここでも鳥は自由です。でも今日は、笑いも自由です」
光子
「いいこと言う」
優子
「締まりそうで締まらん流れやね」
⸻
◆最後の爆弾
せきちゃん閣下
「最後にまとめる」
全員
「やめろ」
⸻
せきちゃん閣下
「鳥とは――」
⸻
一瞬の静寂。
⸻
せきちゃん閣下
「ぴよぴよフォルテである」
⸻
せいちゃん姫
「違うわあああああ!!」
⸻
全支部、同時崩壊。
⸻
コメント欄
「それ万能すぎwww」
「全部それでまとめるなw」
⸻
◆締め
優子
「えー、本日の裏トークまとめ」
光子
「鳥は強い」
優子
「人間は追われる」
光子
「そして」
⸻
二人、同時に。
⸻
光子&優子
「せきちゃん閣下はメタボ」
⸻
せきちゃん閣下
「そこやない!!」
⸻
せいちゃん姫
「そこや!!」
⸻
全員
「それやあああああ!!」
⸻
◆エンド
優子
「それでは!」
光子
「来週も!」
⸻
少し間。
⸻
優子
「ぴよぴよフォルテ!」
光子
「だから違うって!!」
⸻
コメント欄
「もうそれでいいwww」
⸻
こうして、
本放送より長い裏トークと、
世界を巻き込む爆笑通信は――
また一つ、伝説を更新した。
第46話「ディスコなぴよ、雨の日の祈り」
爆笑通信の翌日。
光子はベースを抱えたまま、ぽつりと言った。
「……昨日の鳥ネタ、曲にできるね」
優子はドラムスティックをくるっと回した。
「ディスコでいこう」
光子
「ぴよぴよフォルテ、ディスコ版?」
優子
「うん。踊れるやつ」
数日後、完成した。
タイトルは――
『ぴよぴよフォルテ Disco Flight』
ベースはうねり、ドラムは軽快に跳ねる。
ホーンセクションが派手に鳴り、サビでは全員で叫ぶ。
ぴよぴよフォルテ
夜空へ飛び出せ
ミラーボールの下で
羽ばたけ Dancing Bird
ちゅんちゅんビートで
心を鳴らせ
粟穂も夢も抱えて
Tonight, we fly away
優子
「……これ、普通に踊れる」
光子
「悔しいけど、かなりいい」
美香
「なんで“粟穂”入ってるのに成立してると?」
奏太
「ベースラインが強すぎる」
小春
「また問題作やね」
そしてカップリング。
タイトルは――
『雨の日曜日』
こちらは一転、静かなバラードだった。
雨音のようなピアノ。
遠くで鳴る弦。
日曜の午後、誰かを思い出すような歌。
雨の日曜日
窓辺にひとり
君の声だけが
胸に残ってる
会えない時間も
消えないぬくもり
静かな雨が
心をほどいていく
録音後、全員しばらく黙った。
美香
「……落差えぐい」
奏太
「片方はミラーボールで粟穂、片方は雨の日曜の孤独」
小春
「同じシングルに入れる曲じゃない」
優子
「でも、どっちも私たちやん」
光子
「うん。笑いと静けさ。両方ある」
リリースされると、SNSは即反応した。
「ぴよぴよで踊らせてから、雨の日曜日で泣かせに来るな」
「落差で耳が迷子」
「A面で腹筋、B面で涙腺」
「ファイブピーチ★、振れ幅がバグってる」
徳島支部では、せきちゃん閣下が胸を張った。
せきちゃん閣下
「ディスコでも、せきちゃんは主役!」
せいちゃん姫
「雨の日曜日を少しは聴いて落ち着きなさい」
せきちゃん閣下
「雨の日曜日……粟穂は湿るな」
せいちゃん姫
「情緒を餌で処理するな!」
こうしてまた一枚、
ファイブピーチ★にしか作れない“落差の激しい名迷曲”が生まれた。
第47話「未来からのツッコミ」
――それから数年後。
リビングには、少し大きくなった子どもたちの声が響いていた。
末っ子の
悠翔と彩羽。
二人は、棚の中から一枚のCDを見つける。
⸻
悠翔
「これなに?」
彩羽
「ぴよ……ぴよフォルテ?」
⸻
優子が、少し遠くからそれを見ていた。
優子
「あー、それね」
光子も笑いながら振り返る。
光子
「懐かしいやつや」
⸻
悠翔
「聞いていい?」
優子
「どうぞ」
⸻
再生ボタン。
⸻
いきなり流れ出す――
ド派手なディスコミュージック。
⸻
ぴよぴよフォルテ〜!!
⸻
悠翔
「なにこれ!?」
彩羽
「なんか楽しい!」
⸻
二人、自然と体が動き出す。
⸻
悠翔
「お母さんたち、これ本気?」
光子
「本気やで」
優子
「めっちゃ本気」
⸻
そして曲が終わる。
次のトラックへ。
⸻
静かに流れ出す――
『雨の日曜日』
⸻
ピアノの音。
しっとりとした旋律。
⸻
悠翔
「……え?」
彩羽
「……さっきと違いすぎん?」
⸻
悠翔
「同じCD?」
彩羽
「間違えた?」
⸻
優子
「間違えてません」
光子
「正解です」
⸻
悠翔、完全に呆れた顔。
⸻
悠翔
「お母さんたち……」
⸻
彩羽、ぽつり。
⸻
彩羽
「僕らが生まれる前に……」
⸻
二人同時に。
⸻
悠翔&彩羽
「なんちゅう落差の曲作ってんの!?」
⸻
リビング、爆笑。
⸻
結音(横から)
「言うと思った」
灯乃
「これが通常運転」
陽翔
「むしろ優しい方」
燈真
「ぴよぴよは名曲やけどな」
⸻
悠翔
「いや、名曲かどうかじゃなくて!」
彩羽
「振れ幅がすごすぎる!」
⸻
優子、ちょっと得意げ。
優子
「それがファイブピーチ★です」
光子
「笑いも、涙も、全部やる」
⸻
悠翔
「いやいやいや」
彩羽
「普通はどっちかに寄せるやろ!」
⸻
その瞬間。
テレビから流れる。
⸻
ぴよぴよフォルテ〜!!
⸻
悠翔
「また流れてる!」
彩羽
「なんで再生されとるの!?」
⸻
画面を見ると――
徳島支部・インコ一家特集(再放送)
⸻
せきちゃん閣下
「この曲は、せきちゃんのための曲!」
⸻
せいちゃん姫
「違うわ!!」
⸻
悠翔
「元凶おった!!」
彩羽
「全部あの鳥やん!!」
⸻
家族全員、再び大爆笑。
⸻
光子は、少しだけ静かに言った。
光子
「でもね」
悠翔
「?」
⸻
光子
「あの時は、あれが一番“自分たちらしい音”やった」
⸻
優子もうなずく。
優子
「笑える時も、静かな時も、どっちも大事やった」
⸻
悠翔、少し考えて。
⸻
悠翔
「……まあ」
彩羽
「確かに」
⸻
悠翔
「両方いい曲やとは思う」
彩羽
「でも落差はやばい」
⸻
優子
「そこは否定せん」
光子
「むしろ誇り」
⸻
結音
「ジャンル:落差」
灯乃
「新ジャンル」
⸻
そして。
⸻
せきちゃん閣下
「ぴよぴよフォルテは世界を救う!」
⸻
せいちゃん姫
「救わん!!」
⸻
悠翔&彩羽
「やっぱり原因そこやあああ!!」
⸻
その日、
家族の笑いは止まらなかった。
⸻
そしてその一枚のCDは――
⸻
「伝説の落差シングル」
⸻
として、次の世代にも語り継がれていくことになる。




