59-02.気遣い
「また増やしてきたわね。マスター」
キトリの半笑いは結構効くわね。ごめんて。
「我が王。ご帰還を待ちわびておりましたわ」
「ありがとう、フラン」
流石我が騎士♪ 今日も決まってるわね♪
「お姉ちゃんは行く先々でナンパしてるの?」
「ハスミンちゃんと出会った時にナンパしたのは、ハスミンちゃんの方じゃない」
私はいつだって声掛ける側ってわけでもないからね。そこんとこ誤解なきよう。
「今日は三人だけなのね。他の皆は依頼で出てるの?」
「ええ。久々の大物よ。【金色の牙】と合同討伐を請け負ったの」
「あらま」
「当然うちの子たちなら一人で倒せるわ。けど足並みを揃えるのも必要でしょ」
「なるほどね。相手は竜種?」
「フィリアスよ」
「えぇ!?」
「安心して。こっそり回収するわ」
「……大丈夫? トラウマになっちゃわない?」
「だから上位三人がここに残ったのよ」
大雑把な手加減ねぇ……。
「アストもマチェーレもノワールもいるわ。何の心配も要らないわよ」
そりゃあね。
「なるほどね。ここに残った三人は知名度が高すぎるのね」
「そういうこと。マチェーレもSランクだけど、あの子たちはなってからまだ日が浅いもの」
有名であるということは、それだけ手の内も知れ渡っているということだ。手加減しようにも難しいのね。多くの人が見守る中だと。
歴代二位の若さ&早さでSランクになった、キトリ。
十年以上Sランクとして活躍してきたベテラン、フラン。
『雷光』の後継者、ハスミンちゃん。
この三人はそもそも動かしづらいのね。
「退屈してるならフランとハスミンちゃんはついてくる?」
「行く!!」
「行きますわ!!」
「ちょっと。勝手に引き抜かないでよ。私の話し相手が居なくなるじゃない」
あはは~。ごめんね、キトリ。
サブマスターのキトリは連れ歩けないもんね。
「代わりに残ってもいいかな♪ 小春様♪」
影裡が?
「影裡ったら酷いわ。そんなに私と一緒に居たくないのね」
「空気読んで、キスイ。そんな言い方したら変な気遣いさせちゃうかもでしょ。小春様の方はお願いね」
本当に残るつもりのようだ。
「わたくしも残りますわ。我が王よ。今回はハスミンを同行させてくださいまし」
「ううん! ボクの方こそ残ってるよ!」
気遣いの連鎖が生まれている。
「小春様。ここは主らしくスパッと決めてしまいなさいな」
キスイの言う事も尤もね。この空気を作った張本人ではあるけども。
「影裡の冒険者登録お願いね♪ キトリ♪ フラン♪」
「「がってん!!」」
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私はキスイとハスミンちゃんを連れて、メルちゃんの修行の様子を見に自宅へ向かった。
『メルビスはルネルたちと共にいるみたいよ』
……マズいかしら?
『カルネは相変わらずね』
……。
「お姉ちゃん?」
「先に子どもたちの様子を見に行きましょう。レヴィたちも寂しがっているでしょうから」
「だね♪ 皆会いたがっていたよ♪ 間違いなく喜ぶね♪」
「もしかしてハスミンちゃん、子どもたちの相手もしてくれていたの?」
「たまにね♪ ボクも子どもは大好きさ♪」
「ありがとう♪ ハスミンちゃん♪」
エルヴィも助かっているでしょうね♪
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子どもたちとたっぷり遊んでいる内に日が暮れていた。
「悪くないわね。こういうの」
「キスイも子供好きなのね♪」
「ええ。私にもいるの。娘が」
「サニーちゃんね♪」
「あら。会ったことがあるのね」
「ちらっとね。植樹の時に」
「今度うちにもいらっしゃいな。ゆっくり出来る時にでも」
「ええ♪ 必ず♪」
「そう。歓迎するわ」
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「アルカ姉!」
「頑張っているわね♪ メルちゃん♪」
子どもたちと別れた後、メルちゃんがカルネたちと別れたのを見計らって合流した。
「見違えたわ♪」
メルちゃんは大きく成長していた。
このくらいの力量だと、たった数日で目に見えて変化するのよね~♪ メルちゃんの場合は特にだ♪
彼女は高い素質を持ちながら豊富な経験も積んでいる。その上で歳も若い。一般的な水準においては限界が見えてきた頃だとしても、私たちの側からしたら伸びしろの塊だ。
しかもメルちゃんは、あのジュジュが逸材とまで評した人物だ。やはり生半可な成長速度ではなかったわね。
「凄いよ! アルカ姉! アルカ姉!」
何やら興奮している様子だ。私の称賛は届いていなかったようだ。
「ルネル様もカルネ様も本当に!」
あ……しまった。
「お姉ちゃん。気を遣ったね」
「……ごめんね、ハスミンちゃん」
「っ!? 私は何かやらかしたか!?」
あ、メルちゃんが戻った。
「ううん。気にしないで」
取り敢えず場所を移しましょうか。




